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王国の闇
第854話 告白
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――地上で火竜と王国騎士団が激戦を繰り広げる中、ナイは猛虎騎士団の騎士達を連れて地上へ向けて移動していた。シャドウとの戦闘でロラン以外の騎士達は体力を消耗し、まともに歩けない状態だったが、ナイは彼等を見捨てずに外まで運び出す。
「さあ、辿り着きましたよ……もう大丈夫ですからね」
「す、すまない……」
「助かったよ……」
「まさか、我々全員を連れ出すとはな……」
ナイは何度も下水道を往復して騎士達を地上へと連れ出し、最後の騎士を運び込むと額の汗を拭う。多少の時間は掛かったが地下に残った猛虎騎士団全員を救い出す事ができた。
猛虎騎士団の団員達を救い出すと、改めてナイは商業区の方へ顔を向けた。先ほどから嫌な気配を感じ取り、以前にも覚えがある気配だった。かつてグマグ火山で遭遇した最強の魔物であり、恐らくはゴブリンキングをも上回る存在が街中に現れたのだろう。
地下に残った猛虎騎士団の団員全員を救い出したナイは、自分も商業区へ向かおうとした時、ここで足音を耳にする。それは白猫亭の警備のために残したビャクであり、彼はナイの元へ駆けつけてきた。
「ウォオオンッ!!」
「ビャク!?どうしてここに!?」
「わ、私達もいるわよ!!」
「ナイく~ん!!大丈夫~!?」
「うおおっ!?お、落ちる!!」
「イーシャン、しっかりと掴まれ!!」
ビャクの背中にはモモ、ヒナ、ドルトン、イーシャンの四人もしがみついており、この状況下で現れた彼等にナイは驚くが、とりあえずは事情を聞く事にする。
「ビャク、どうして皆を連れてきたの!?白猫亭で待っているように言ったでしょ!?」
「クゥ~ンッ……」
「待って!!ビャク君を怒らないで上げて……ナイ君を探すように頼んだのは私たちなのよ!!」
「え?」
ヒナの言葉にナイは驚き、どうして彼女達が自分を探しているのかと戸惑うと、ここでドルトンとイーシャンが申し訳なさそうな表情を浮かべて謝罪した。
「すまぬ……ナイよ、この娘達にもヨウの予知夢の事を教えてしまったんじゃ」
「お前が漆黒の騎士に殺されるかもしれないと伝えたら、この二人が放っておけないって……」
「ナイ君、どうしてそんな事を黙っていたの!?」
「そうよ、水臭いわよ!!私達を心配させないように気を遣ったつもりかもしれないけど……」
「いや、それは……」
モモはドルトン達の話を聞いて彼が死ぬかとも知れないと知って居ても立っても居られず、ビャクに頼み込んで彼の元へ連れて行ってもらう。モモはナイに対して涙目で抱きつき、そんな彼女の行動にナイは戸惑う。
「ナイ君、行かないで……ナイ君はここまで頑張ったよ、だからもう頑張る必要なんてないんだよ」
「モモ……」
「私、ナイ君の事が好き……一番大好き、だからずっと一緒に居てよ」
「えっ!?」
ナイはモモの告白の言葉を聞いて驚き、彼女は頬を赤らめながらナイを手放さない。そんなモモの態度にナイは戸惑うが、正直に言えば嬉しかった。
思えばナイはモモがどんなときも自分に素直に好意を示していた事を思い出し、彼女を抱きしめようとする。しかし、ここでモモを抱きしめてしまえばナイは決心が鈍ると判断し、敢えて彼女の肩を掴んでモモを引き剥がす。
「ありがとう、モモ……でも、僕は行くよ」
「ナイ君、駄目だよ……死んじゃうかもしれないんだよ」
「違う、ここで行かなければ……きっと僕は一生後悔する事になる」
ナイに死んでほしくないモモは彼を引き留めようとするが、そんな彼女に対してナイは額に口づけする。その行為にモモは驚くが、ナイの行動を見て他の者達も驚愕した。
「全部終わったら必ずモモの元に帰ってくるから……だから、待っていてほしい」
「ナ、ナイ君……」
「これ……爺ちゃんの形見なんだ、だから大切に持っていてくれる?」
「え?」
モモに対してナイはアルの形見である木彫りのお守りを渡す。モモは戸惑いながらも受け取ると、ナイは覚悟を決めた様にビャクに顔を向けた。
「相棒……一緒に行こう」
「ウォンッ!!」
「モモ、ヒナ、ドルトンさん、イーシャンさん……この人達の事を頼みます」
「ナ、ナイ君……」
「ナイ……」
ナイの覚悟を決めた顔を見て他の者達は止める事はできないと悟り、モモは木彫りのお守りを胸にしまうと、彼女は涙目を拭って笑顔を浮かべてナイを見送る。
「絶対……絶対戻ってきてね、ナイ君!!」
「……ああ、約束するよ。必ず戻ってくる、だから待ってて!!」
「ウォンッ!!」
ビャクの背中にナイは乗り込むと、最後にモモ達の顔を見て満面の笑顔を浮かべた。そして彼はビャクを走らせ、商業区へと向かった――
「さあ、辿り着きましたよ……もう大丈夫ですからね」
「す、すまない……」
「助かったよ……」
「まさか、我々全員を連れ出すとはな……」
ナイは何度も下水道を往復して騎士達を地上へと連れ出し、最後の騎士を運び込むと額の汗を拭う。多少の時間は掛かったが地下に残った猛虎騎士団全員を救い出す事ができた。
猛虎騎士団の団員達を救い出すと、改めてナイは商業区の方へ顔を向けた。先ほどから嫌な気配を感じ取り、以前にも覚えがある気配だった。かつてグマグ火山で遭遇した最強の魔物であり、恐らくはゴブリンキングをも上回る存在が街中に現れたのだろう。
地下に残った猛虎騎士団の団員全員を救い出したナイは、自分も商業区へ向かおうとした時、ここで足音を耳にする。それは白猫亭の警備のために残したビャクであり、彼はナイの元へ駆けつけてきた。
「ウォオオンッ!!」
「ビャク!?どうしてここに!?」
「わ、私達もいるわよ!!」
「ナイく~ん!!大丈夫~!?」
「うおおっ!?お、落ちる!!」
「イーシャン、しっかりと掴まれ!!」
ビャクの背中にはモモ、ヒナ、ドルトン、イーシャンの四人もしがみついており、この状況下で現れた彼等にナイは驚くが、とりあえずは事情を聞く事にする。
「ビャク、どうして皆を連れてきたの!?白猫亭で待っているように言ったでしょ!?」
「クゥ~ンッ……」
「待って!!ビャク君を怒らないで上げて……ナイ君を探すように頼んだのは私たちなのよ!!」
「え?」
ヒナの言葉にナイは驚き、どうして彼女達が自分を探しているのかと戸惑うと、ここでドルトンとイーシャンが申し訳なさそうな表情を浮かべて謝罪した。
「すまぬ……ナイよ、この娘達にもヨウの予知夢の事を教えてしまったんじゃ」
「お前が漆黒の騎士に殺されるかもしれないと伝えたら、この二人が放っておけないって……」
「ナイ君、どうしてそんな事を黙っていたの!?」
「そうよ、水臭いわよ!!私達を心配させないように気を遣ったつもりかもしれないけど……」
「いや、それは……」
モモはドルトン達の話を聞いて彼が死ぬかとも知れないと知って居ても立っても居られず、ビャクに頼み込んで彼の元へ連れて行ってもらう。モモはナイに対して涙目で抱きつき、そんな彼女の行動にナイは戸惑う。
「ナイ君、行かないで……ナイ君はここまで頑張ったよ、だからもう頑張る必要なんてないんだよ」
「モモ……」
「私、ナイ君の事が好き……一番大好き、だからずっと一緒に居てよ」
「えっ!?」
ナイはモモの告白の言葉を聞いて驚き、彼女は頬を赤らめながらナイを手放さない。そんなモモの態度にナイは戸惑うが、正直に言えば嬉しかった。
思えばナイはモモがどんなときも自分に素直に好意を示していた事を思い出し、彼女を抱きしめようとする。しかし、ここでモモを抱きしめてしまえばナイは決心が鈍ると判断し、敢えて彼女の肩を掴んでモモを引き剥がす。
「ありがとう、モモ……でも、僕は行くよ」
「ナイ君、駄目だよ……死んじゃうかもしれないんだよ」
「違う、ここで行かなければ……きっと僕は一生後悔する事になる」
ナイに死んでほしくないモモは彼を引き留めようとするが、そんな彼女に対してナイは額に口づけする。その行為にモモは驚くが、ナイの行動を見て他の者達も驚愕した。
「全部終わったら必ずモモの元に帰ってくるから……だから、待っていてほしい」
「ナ、ナイ君……」
「これ……爺ちゃんの形見なんだ、だから大切に持っていてくれる?」
「え?」
モモに対してナイはアルの形見である木彫りのお守りを渡す。モモは戸惑いながらも受け取ると、ナイは覚悟を決めた様にビャクに顔を向けた。
「相棒……一緒に行こう」
「ウォンッ!!」
「モモ、ヒナ、ドルトンさん、イーシャンさん……この人達の事を頼みます」
「ナ、ナイ君……」
「ナイ……」
ナイの覚悟を決めた顔を見て他の者達は止める事はできないと悟り、モモは木彫りのお守りを胸にしまうと、彼女は涙目を拭って笑顔を浮かべてナイを見送る。
「絶対……絶対戻ってきてね、ナイ君!!」
「……ああ、約束するよ。必ず戻ってくる、だから待ってて!!」
「ウォンッ!!」
ビャクの背中にナイは乗り込むと、最後にモモ達の顔を見て満面の笑顔を浮かべた。そして彼はビャクを走らせ、商業区へと向かった――
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