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王国の闇
第824話 あの子のために……
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「――うおおおおっ!?死ぬぅううっ!?」
「わめいてないでちゃんと走らんかっ!?」
「シャアッ!!」
王都内の一般区にてドルトンとイーシャンは街道を駆け抜けていた。彼等の後方には白面が迫っており、二人の後を追いかける。どうして外に待機していたはずのドルトンとイーシャンが王都の中に入っているのかというと、実は二人とも猛虎騎士団が王都に入り込んだ時にどさくさに紛れて二人とも王都の中に入り込んでいた。
猛虎騎士団が入り込む際にアルトが騒動を引き起こしたお陰で兵士達の注目は彼に集中し、その隙に二人は王都の中に忍び込む。ちなみに二人以外にも商団の人間が中に入り込んでいたが、王都で再び騒動が起きた事で散り散りになってしまう。
ドルトンとイーシャンは街中を移動中、運悪く白面に見つかってしまう。必死に二人は逃げるが白面は逃さず、二人を始末するために毒を塗った短剣を構えた。
「シャアアッ!!」
「うわあっ!?」
「イーシャン!?」
遂にイーシャンは白面に背中を掴まれ、そのまま押し倒される。それを見たドルトンは彼を助けるため、渾身の力を込めて右腕を振りかざす。
「ぬぅんっ!!」
「ごふぅっ!?」
「うおおっ!?」
白面の仮面に目掛けてドルトンは拳をめり込ませると、仮面に亀裂が入る程の勢いで殴り込まれた白面は吹き飛び、地面に転がり込む。ドルトンは拳を痛めながらもイーシャンの腕を掴み、引き寄せて立ち上がらせる。
「イーシャン、大丈夫か?」
「お、おう……それにしても流石だな、大分身体の動きも戻って来たな」
「ふっ……お主の教えてくれリハビリのお陰じゃ」
イーシャンは殴りつけられて吹っ飛んだ白面に視線を向け、呆れた表情を浮かべる。その一方でドルトンは力こぶを作り、大分体力を取り戻した事を実感した。
実はイチノでの騒動の後、ドルトンは怪我の治療を終えるとリハビリがてらに身体をまた一から鍛え直した。その結果、今では全盛期程ではないが筋力の方も身に付き、素手の状態でも十分に戦える力を取り戻す。義足も完璧に使いこなして昔よりも早く走れるようになった。
(そういえば昔、アルの奴がドルトンに素手の喧嘩で一度も勝った事がないと言ってたな……あの時は冗談かと思ったが、まさか本当だったとは……)
怪力自慢のアルがドルトンに負けたという話を聞いた時はイーシャンは信じられなかったが、今の白面を殴り飛ばすドルトンの姿を見て真実だと気付く。冒険者をやっていたためにドルトンのレベルは40を超えており、年老いても肉体は一般人とは比べ物にならない。
「さあ、ナイの元へ急ぐぞ。手紙によると、白猫亭という宿屋にナイは宿泊しておると書いてあった」
「あ、ああ……そうだな」
「事前に買った王都の地図によるとこの辺りのはずだが……」
ドルトンとイーシャンはナイの元へ向かうため、危険を犯してここまでやってきた。その理由はヨウの予知夢の件も有り、ナイの身に危険が迫っているかもしれない。そう考えると落ち着いて王都の外で待機などできなかった。
二人は事前に購入しておいた地図を頼りに白猫亭を探していると、ここで先ほど殴りつけられた白面が起き上がり、頭を抑えながら二人を睨みつけた。
(こ、こいつら……ぶっ殺す!!)
白面は怒りを抱きながら毒を塗った短剣を振りかざし、先ほど自分を殴りつけたドルトンに攻撃を加えようとした。だが、そんな白面の背後に大きな人影が現れると、ドルトンを狙う白面を踏み潰す。
「ウォンッ!!」
「ぐええっ!?」
「んっ!?こ、この鳴き声は!?」
「おおっ、ビャクではないか!!」
二人を救ったのはビャクであり、白面を踏んだビャクは嬉しそうに二人に近付き、顔を舐め回す。
「クゥ~ンッ(ぺろぺろっ)」
「うわっ……ちょ、止めろ。くすぐったいだろうが」
「はっはっはっ、大きくなっても変わらんのう。よしよし、落ち着かんか」
ドルトンとイーシャンはビャクを宥めると、いつもナイと行動を共にしていたビャクがここにいる事に不思議に思い、ナイの姿を探すが見つからない。
「ビャク、ナイは何処におる?一緒ではないのか?」
「クゥンッ……」
「鼻の良いこいつがナイを見失うなんてあり得ねえ……きっと、何かあったんだろうな」
「ウォンッ!!」
イーシャンの指摘にビャクは肯定するように頷き、その様子を見てドルトンとイーシャンはナイが理由があってビャクと別れて行動している事を知る。
ナイを探しに来たのにビャクの傍にいない事に二人は不安を抱き、どんな理由でナイがビャクを離させたのかは分からないが、二人はとりあえずビャクと合流できたので彼と共にナイを待つ事に決めた。
「ドルトンよ、儂等はビャクと共に居よう。きっと、ナイもビャクの元に戻ってくるだろう」
「あ、ああ……けど、こんな場所で待つのは危険じゃないのか?」
「ウォンッ!!」
二人の言葉を聞いてビャクは何かを思いついた様にある建物を示すと、二人は顔を向けるとそこには「白猫亭」という看板を掲げた宿屋が存在した。
「わめいてないでちゃんと走らんかっ!?」
「シャアッ!!」
王都内の一般区にてドルトンとイーシャンは街道を駆け抜けていた。彼等の後方には白面が迫っており、二人の後を追いかける。どうして外に待機していたはずのドルトンとイーシャンが王都の中に入っているのかというと、実は二人とも猛虎騎士団が王都に入り込んだ時にどさくさに紛れて二人とも王都の中に入り込んでいた。
猛虎騎士団が入り込む際にアルトが騒動を引き起こしたお陰で兵士達の注目は彼に集中し、その隙に二人は王都の中に忍び込む。ちなみに二人以外にも商団の人間が中に入り込んでいたが、王都で再び騒動が起きた事で散り散りになってしまう。
ドルトンとイーシャンは街中を移動中、運悪く白面に見つかってしまう。必死に二人は逃げるが白面は逃さず、二人を始末するために毒を塗った短剣を構えた。
「シャアアッ!!」
「うわあっ!?」
「イーシャン!?」
遂にイーシャンは白面に背中を掴まれ、そのまま押し倒される。それを見たドルトンは彼を助けるため、渾身の力を込めて右腕を振りかざす。
「ぬぅんっ!!」
「ごふぅっ!?」
「うおおっ!?」
白面の仮面に目掛けてドルトンは拳をめり込ませると、仮面に亀裂が入る程の勢いで殴り込まれた白面は吹き飛び、地面に転がり込む。ドルトンは拳を痛めながらもイーシャンの腕を掴み、引き寄せて立ち上がらせる。
「イーシャン、大丈夫か?」
「お、おう……それにしても流石だな、大分身体の動きも戻って来たな」
「ふっ……お主の教えてくれリハビリのお陰じゃ」
イーシャンは殴りつけられて吹っ飛んだ白面に視線を向け、呆れた表情を浮かべる。その一方でドルトンは力こぶを作り、大分体力を取り戻した事を実感した。
実はイチノでの騒動の後、ドルトンは怪我の治療を終えるとリハビリがてらに身体をまた一から鍛え直した。その結果、今では全盛期程ではないが筋力の方も身に付き、素手の状態でも十分に戦える力を取り戻す。義足も完璧に使いこなして昔よりも早く走れるようになった。
(そういえば昔、アルの奴がドルトンに素手の喧嘩で一度も勝った事がないと言ってたな……あの時は冗談かと思ったが、まさか本当だったとは……)
怪力自慢のアルがドルトンに負けたという話を聞いた時はイーシャンは信じられなかったが、今の白面を殴り飛ばすドルトンの姿を見て真実だと気付く。冒険者をやっていたためにドルトンのレベルは40を超えており、年老いても肉体は一般人とは比べ物にならない。
「さあ、ナイの元へ急ぐぞ。手紙によると、白猫亭という宿屋にナイは宿泊しておると書いてあった」
「あ、ああ……そうだな」
「事前に買った王都の地図によるとこの辺りのはずだが……」
ドルトンとイーシャンはナイの元へ向かうため、危険を犯してここまでやってきた。その理由はヨウの予知夢の件も有り、ナイの身に危険が迫っているかもしれない。そう考えると落ち着いて王都の外で待機などできなかった。
二人は事前に購入しておいた地図を頼りに白猫亭を探していると、ここで先ほど殴りつけられた白面が起き上がり、頭を抑えながら二人を睨みつけた。
(こ、こいつら……ぶっ殺す!!)
白面は怒りを抱きながら毒を塗った短剣を振りかざし、先ほど自分を殴りつけたドルトンに攻撃を加えようとした。だが、そんな白面の背後に大きな人影が現れると、ドルトンを狙う白面を踏み潰す。
「ウォンッ!!」
「ぐええっ!?」
「んっ!?こ、この鳴き声は!?」
「おおっ、ビャクではないか!!」
二人を救ったのはビャクであり、白面を踏んだビャクは嬉しそうに二人に近付き、顔を舐め回す。
「クゥ~ンッ(ぺろぺろっ)」
「うわっ……ちょ、止めろ。くすぐったいだろうが」
「はっはっはっ、大きくなっても変わらんのう。よしよし、落ち着かんか」
ドルトンとイーシャンはビャクを宥めると、いつもナイと行動を共にしていたビャクがここにいる事に不思議に思い、ナイの姿を探すが見つからない。
「ビャク、ナイは何処におる?一緒ではないのか?」
「クゥンッ……」
「鼻の良いこいつがナイを見失うなんてあり得ねえ……きっと、何かあったんだろうな」
「ウォンッ!!」
イーシャンの指摘にビャクは肯定するように頷き、その様子を見てドルトンとイーシャンはナイが理由があってビャクと別れて行動している事を知る。
ナイを探しに来たのにビャクの傍にいない事に二人は不安を抱き、どんな理由でナイがビャクを離させたのかは分からないが、二人はとりあえずビャクと合流できたので彼と共にナイを待つ事に決めた。
「ドルトンよ、儂等はビャクと共に居よう。きっと、ナイもビャクの元に戻ってくるだろう」
「あ、ああ……けど、こんな場所で待つのは危険じゃないのか?」
「ウォンッ!!」
二人の言葉を聞いてビャクは何かを思いついた様にある建物を示すと、二人は顔を向けるとそこには「白猫亭」という看板を掲げた宿屋が存在した。
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