貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
825 / 1,110
王国の闇

第809話 ロランVSリョフ

しおりを挟む
(あ、あれがリョフ……なんて威圧感だ!?)


ゴウカに匹敵する威圧感を放つリョフに対してナイは無意識に身体を震わせ、その一方で他の騎士達に至っては顔色を青ざめ、身体が震えて思うように動けない。しかし、ロランだけは態度を変えずに双紅刃を片手に歩み寄る。

リョフは近づいてくるロランに対して雷戟を構え、今度こそシャドウの邪魔が入らないように意識を強く保つ。昼間の時は途中で死霊石に蓄積した魔力が尽きかけてしまったが、現在は昼間の時よりもリョフの肉体に埋め込まれた死霊石は魔力が込められており、途中で魔力切れを引き起こす心配もない。


「リョフ!!お前の噂は何度も聞いたことがある!!いったいどれほど強いのか興味はあったぞ!!」
「ふんっ!!大将軍がどれほどの実力か、楽しませてもらおうか!!」
「抜かせ、小僧がっ!!」


ロランは双紅刃を構えると、その場で回転させる。彼の双紅刃は回転を加える事に柄の両端に取り付けられている刃に地属性の魔力が送り込められ、魔力を刃に蓄積させる。回転が早ければ早いほどに魔力が溜まりやすく、ナイの攻撃さえも弾かれる威力を発揮する。

回転する事に刃に紅色の魔力を宿る光景を見てリョフは直感で危険を感じとるが、彼は逃げも隠れもせずに雷戟を構える。そしてロランはリョフを倒すには十分な魔力が蓄積されたと判断すると、彼に目掛けて突っ込む。


「ぬぅんっ!!」
「ぬおっ!?」
「「「おおっ!!」」」


ロランの攻撃をリョフは正面から受け止めるが、あまりの威力に防ぎ切れずにリョフの身体は大きく後退した。その光景を見た騎士達は歓声を上げるが、その一方でロランの方は眉をしかめた。

渾身の一撃を受けたリョフは後退したが、この際に彼は屋敷の建物の壁に衝突しかけるが、その前に地面に戟を突き刺して壁に衝突する前に停止する。並の人間ならば鎧を纏っていても衝撃だけで骨が砕けてもおかしくはないが、リョフは何事もなかったように雷戟を構えた。


「良い一撃だ……ここまでの重い攻撃はゴウカでも出せなかったぞ」
「馬鹿なっ!?」
「そんなっ……」


自分の攻撃をリョフが正面から受け切った事にロランは動揺し、先の一撃はナイですらも岩砕剣と旋斧を同時に魔法剣を発動させて防いだ攻撃である。しかし、リョフは何事もなかったように振舞う。

リョフは雷撃を振りかざし、今度はロランへと接近する。先の攻撃でロランは刃に蓄積させた魔力を使い果たし、もう一度魔力を込める必要があったが、その隙を逃さずにリョフは猛攻を仕掛けた。


「ふんっ!!」
「ちぃっ!!」


リョフが繰り出した刃に対してロランは双紅刃を振りかざし、攻撃を弾き返す。魔力を蓄積させずともロラン自身の技量も高く、ゴウカにも匹敵する威力のリョフの猛攻を彼は全て受け流す。


「いいぞ、その調子だっ!!もっと俺を楽しませろ!!」
「調子に乗るなっ……亡霊がっ!!」


二人のあまりの戦いぶりに他の人間達は介入する事ができず、ナイでさえも迂闊に手出しできなかった。だが、リョフとロランの攻防は徐々にロランが押され、防戦一方に陥る。


(想像以上だ!!これほどの剣士だったとは!?)


リョフの繰り出す攻撃全て一撃必殺の威力を誇り、一瞬でも気を抜けばロランは敗北する事は必須だった。だが、それでもロランは退く事はせず、大将軍の意地として決して敵に背は見せない。

ロランは周囲の光景を確認し、この場所は彼が幼少期に暮らしていた屋敷であり、昔と全く変わっていない。それを利用してロランは場所を移動すると、ちょうど花壇が存在する場所に移動した。


(ここだ!!)


屋敷内の敷地に存在する花壇を利用し、彼は地面に双紅刃を突き刺す。そして地属性の魔力を送り込むと、地面の内部に衝撃波を送り込んで大量の土砂と埋まっていた花を利用して目眩ましを行う。


「喰らえっ!!」
「ぬおっ!?」


突如として舞い上がった土砂と花びらに対してリョフは呆気にとられ、その隙を逃さずにロランは距離を置くと、今度は双紅刃を横向きに構えて技を繰り出す。


「閃紅斬!!」
「ぐがぁっ!?」
「やった!?」


横向きに放たれた双紅刃の一撃により、リョフは正面から受けて今度こそ吹き飛ぶ。その光景を見たナイ達は勝利を確信したが、空中に飛ばされた状態からリョフは地面に戟を突き刺し、態勢を整える。

ロランの一撃を受けてもリョフは倒れず、身に付けていた漆黒の鎧の一部に罅がはいるが、即座に彼の身体から放たれる闇属性の魔力が罅の部分に付着し、やがて罅が消え去る。それを見たナイは驚き、まるで鎧が再生したかのように罅が消えた事に戸惑う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...