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王国の闇
第805話 黒騎士
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ロランの提案に全員が不安を抱く中、この時に会議を行っている部屋の扉が開く。全員が視線を向けると、そこにはアッシュの姿があった。
「リーナ、お前も戻ってきたのか」
「あ、お父さん!?大丈夫だったの?」
「うむ、先ほど誤解も解けた」
「アッシュか……久しぶりだな」
冒険者ギルドにて王命の書状を破り捨て、その後は王城に連行された。しかし、シンが居なくなった後に調査した結果、冒険者ギルドに持ち込まれた王命の書状は偽物だと判明する。
書状が偽物だと判明した事でアッシュは無事に解放された。ロランはアッシュと顔を合わせると、お互いに黙って拳を重ねる。この二人は20年以上の付き合いであり、親友同士だった。
「ロラン、やっと戻って来たか!!」
「うむ。俺がいない間に色々と苦労したようだな」
「全くだ」
「……俺もお前には色々と話さなければならない事がある。だが、今は一緒に戦ってくれ」
「当たり前だ!!」
ロランとしては父親の悪行をこれまで見過ごしていた件も有り、本来ならば他の人間に合わせる顔がない。しかし、今は緊急事態なのでそれらの問題は後回しにして、これからの事を話し合う。
「アッシュよ、シャドウの居場所はこの五つの地下の拠点の何処かに隠れている事は間違いない。そして恐らくは俺の勘だが、この中央の施設が怪しい」
「どうしてそう思う?」
「この施設が最も俺の父が暮らす屋敷から近いからだ。恐らく、父の屋敷の何処かに地下施設に繋がる秘密の通路があるんだろう。そこに行けば何か分かるかもしれない」
「ふむ、確かにな……だが、実はある御方が別の心当たりがあるらしい」
「心当たり?」
「王子、お入りください!!」
アッシュが声をかけると、扉から出てきたのバッシュだった。彼の姿を見て全員が驚き、バッシュは宰相に拘束されて王城の秘密の地下牢に閉じ込められていたが、救出された後はずっと寝込んでいたと聞いていた。
バッシュは既に武装して「防魔の盾」も背負っていた。バッシュが武装した状態で現れた事に驚くが、彼の後ろからリノとシノビとクノも現れる。
「入るぞ」
「失礼します」
「失礼する」
「失礼するでござる」
「バッシュ王子……それにリノ王女まで、急にどうしたんだい?」
会議室に入ってきた四人にテンは戸惑いの表情を浮かべると、この時にシノビは大きな羊皮紙を所有しており、彼は羊皮紙を机の上に広げる。その羊皮紙は王都の下水道の地図が記されていた。
「これを見てくれ、何百年も前に記された下水道の地図だ」
「えっ!?」
「何百年も前という事は……まさか、建国時に記された代物か?」
「その通りだ」
建国時の下水道の地図を持ち込んできたアッシュ達にナイ達は驚くが、この地図はあくまでも数百年前に記された地図であり、現在の下水道とは異なる点も多い。特に白面の地下拠点は比較的最近の時代に作られたはずである。
しかし、逆に言えばこの地図に記されていない場所が改造を加えられた場所である事は間違いなく、この地図を頼りに進んでもしも地図と違う場所を発見した場合、そこが白面の地下施設に繋がる通路である可能性が高い。
「王都の下水道は元々、敵の侵入を防ぐためにわざと複雑化しており、他にも王族の緊急避難用の通路などが設けられている。だから地図も無しに進むのは厳しいぞ」
「それは確かにそうだろうけど……それにしても随分と古い地図だね」
「ああ、しかし既に写しは済んでいる。各騎士団はこの地図を頼りに進んでくれ」
「地上の事は我々に任せろ。もう白面も闇ギルドの奴等も好きにはさせん、俺達の手で奴等を止めてみせる」
「バッシュ王子……」
バッシュの言葉に他の者達は後顧の憂いがなくなり、地上にもまだ頼れる人間は残っていた。それならばナイ達は地下施設の捜索に専念するため、早速準備に取り掛かる。
「あのシャドウと対決か……王妃様を殺した罪、必ず償ってもらうよ」
「敵の勢力があとどれくらい残っているのか分からないのが不気味ですわね」
「仮にもこの国を陥れようとする輩だ。それに例の謎の黒騎士の件も気になる」
「黒騎士?」
「リョフの事だね、あたしは見てないけど……本当にあのリョフが蘇ったのかい?」
死霊人形として蘇ったリョフの事は「黒騎士」という仮称が与えられ、実際に彼を見ていない人間からすればリョフが蘇ったなど信じられない。リョフは大分前に行方不明となり、既に死んだ人間扱いされている存在だった。
しかし、実際にリョフの顔を見知っている人間からすれば突如として現れた敵の正体はリョフで間違いないが、彼を実際に見ていない人間の間では「黒騎士」と呼ばれているらしい。
「リーナ、お前も戻ってきたのか」
「あ、お父さん!?大丈夫だったの?」
「うむ、先ほど誤解も解けた」
「アッシュか……久しぶりだな」
冒険者ギルドにて王命の書状を破り捨て、その後は王城に連行された。しかし、シンが居なくなった後に調査した結果、冒険者ギルドに持ち込まれた王命の書状は偽物だと判明する。
書状が偽物だと判明した事でアッシュは無事に解放された。ロランはアッシュと顔を合わせると、お互いに黙って拳を重ねる。この二人は20年以上の付き合いであり、親友同士だった。
「ロラン、やっと戻って来たか!!」
「うむ。俺がいない間に色々と苦労したようだな」
「全くだ」
「……俺もお前には色々と話さなければならない事がある。だが、今は一緒に戦ってくれ」
「当たり前だ!!」
ロランとしては父親の悪行をこれまで見過ごしていた件も有り、本来ならば他の人間に合わせる顔がない。しかし、今は緊急事態なのでそれらの問題は後回しにして、これからの事を話し合う。
「アッシュよ、シャドウの居場所はこの五つの地下の拠点の何処かに隠れている事は間違いない。そして恐らくは俺の勘だが、この中央の施設が怪しい」
「どうしてそう思う?」
「この施設が最も俺の父が暮らす屋敷から近いからだ。恐らく、父の屋敷の何処かに地下施設に繋がる秘密の通路があるんだろう。そこに行けば何か分かるかもしれない」
「ふむ、確かにな……だが、実はある御方が別の心当たりがあるらしい」
「心当たり?」
「王子、お入りください!!」
アッシュが声をかけると、扉から出てきたのバッシュだった。彼の姿を見て全員が驚き、バッシュは宰相に拘束されて王城の秘密の地下牢に閉じ込められていたが、救出された後はずっと寝込んでいたと聞いていた。
バッシュは既に武装して「防魔の盾」も背負っていた。バッシュが武装した状態で現れた事に驚くが、彼の後ろからリノとシノビとクノも現れる。
「入るぞ」
「失礼します」
「失礼する」
「失礼するでござる」
「バッシュ王子……それにリノ王女まで、急にどうしたんだい?」
会議室に入ってきた四人にテンは戸惑いの表情を浮かべると、この時にシノビは大きな羊皮紙を所有しており、彼は羊皮紙を机の上に広げる。その羊皮紙は王都の下水道の地図が記されていた。
「これを見てくれ、何百年も前に記された下水道の地図だ」
「えっ!?」
「何百年も前という事は……まさか、建国時に記された代物か?」
「その通りだ」
建国時の下水道の地図を持ち込んできたアッシュ達にナイ達は驚くが、この地図はあくまでも数百年前に記された地図であり、現在の下水道とは異なる点も多い。特に白面の地下拠点は比較的最近の時代に作られたはずである。
しかし、逆に言えばこの地図に記されていない場所が改造を加えられた場所である事は間違いなく、この地図を頼りに進んでもしも地図と違う場所を発見した場合、そこが白面の地下施設に繋がる通路である可能性が高い。
「王都の下水道は元々、敵の侵入を防ぐためにわざと複雑化しており、他にも王族の緊急避難用の通路などが設けられている。だから地図も無しに進むのは厳しいぞ」
「それは確かにそうだろうけど……それにしても随分と古い地図だね」
「ああ、しかし既に写しは済んでいる。各騎士団はこの地図を頼りに進んでくれ」
「地上の事は我々に任せろ。もう白面も闇ギルドの奴等も好きにはさせん、俺達の手で奴等を止めてみせる」
「バッシュ王子……」
バッシュの言葉に他の者達は後顧の憂いがなくなり、地上にもまだ頼れる人間は残っていた。それならばナイ達は地下施設の捜索に専念するため、早速準備に取り掛かる。
「あのシャドウと対決か……王妃様を殺した罪、必ず償ってもらうよ」
「敵の勢力があとどれくらい残っているのか分からないのが不気味ですわね」
「仮にもこの国を陥れようとする輩だ。それに例の謎の黒騎士の件も気になる」
「黒騎士?」
「リョフの事だね、あたしは見てないけど……本当にあのリョフが蘇ったのかい?」
死霊人形として蘇ったリョフの事は「黒騎士」という仮称が与えられ、実際に彼を見ていない人間からすればリョフが蘇ったなど信じられない。リョフは大分前に行方不明となり、既に死んだ人間扱いされている存在だった。
しかし、実際にリョフの顔を見知っている人間からすれば突如として現れた敵の正体はリョフで間違いないが、彼を実際に見ていない人間の間では「黒騎士」と呼ばれているらしい。
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