819 / 1,110
王国の闇
第803話 付与魔法の弱点
しおりを挟む
(今のはまさか……エルマさんやイリアさんと同じ魔法か!?)
グシャの正体は「付与魔術師」だと判明し、エルマと同じく彼女は鎖に風の魔力を宿す事ができるらしい。その力で鎖を自由自在に操作し、下手に触れようとすれば鎖に纏った風の魔力で弾かれてしまう。エルフの血を継いでいるだけはあって中々に厄介な能力だった。
(強い……けど、ここで引き返すわけにはいかないんだ!!)
ナイは刺剣を抜くと両手で構えた。その姿を見てグシャは疑問を抱き、噂によればナイは大剣使いだと聞いているが、妙な形をした短剣を両手に構えたナイに対して尋ねる。
「何よ、それは……あんた、そんなちゃちな武器で私に勝つつもり?」
「……この武器を馬鹿にするな」
大切な養父の形見を馬鹿にしたグシャに対してナイは怒りを抱き、彼の鬼気迫る表情にグシャは冷や汗を流し大型の魔物と対峙した時のような威圧感を感じとる。
(このガキ……放っておいたらまずいわ)
暗殺者の本能がナイの危険性を伝え、グシャは目の前に現れたナイを一刻も早く始末する必要があると判断した。ここでナイを殺さなかった場合、後々に後悔する事態に陥る。そんな確信を抱いたグシャは鎖を引き寄せ、最後の攻撃を行う。
グシャとの戦闘にてナイは大剣ではなく、アルから受け継いだ刺剣を身に付けたのは理由があった。下手に大剣などの武器を使用した場合、恐らくは鎖に刃を巻き付けられて封じられる恐れがあり、それでもナイの力ならばグシャにも負けないと思われるが、問題なのは彼女の付与魔法である。
付与魔法の性質はナイもエルマやイリアが扱う場面を見て理解しており、普通の魔法と違って付与魔法は物体に魔力を宿す。魔法金属で構成された魔剣などの類は魔力を込めると様々な能力を発揮するが、付与魔法の場合は矢や鎖などの普通の金属の物体にも魔力を宿す事ができる。
グシャが手にする鎖は先端部分に刃が取り付けられており、風の魔力を操作して刃を高速回転させた状態で繰り出す事ができる。もしもあの刃を受ければ生身の人間はひとたまりもなく、いくらナイでも耐え切れる自信はない。
鎖に対抗するためにナイは両手に刺剣を握りしめ、更に動きやすいように岩砕剣と旋斧を下ろす。グシャは今度こそナイを仕留めるために鎖を繰り出す
「死ね!!」
「っ……!!」
これまでとは違い、確実にナイの命を奪うためにグシャはナイに目掛けて一直線に鎖を放ち、先端の刃を高速回転させる。正面から迫りくる刃にナイは両手の刺剣を構え、観察眼の技能と持ち前の動体視力を生かして鎖同士が繋がれる隙間に向けて刺剣を突き刺す。
「ここだっ!!」
「なぁっ!?」
「と、止めたっ!?」
これまでの戦闘からナイは先端部分に取り付けられている刃物は高速回転している時、他の部分に纏っている魔力が弱まる事を見抜くいていた。どうやら刃の部分を回転させる際に鎖に纏っていた魔力を先端部分に集中させないといけないらしく、その時が鎖に攻撃を仕掛ける好機だった。
隙間の部分に刺剣を貫かれた鎖は床に固定され、グシャは慌てて引き寄せようとしたが魔力を先端部分に集中し過ぎたせいで上手く動かせず、その間にナイはグシャに向かって駆け出す。
「喰らえっ!!」
「がはぁっ!?」
「グシャさん!?」
「そ、そんな馬鹿なっ!?」
グシャに接近したナイは彼女の腹部に目掛けて掌底を叩き込み、強烈な衝撃を受けたグシャは尻餅をつく。その様子を見て他の者達は慌てふためき、一方でナイは床に落ちた鎖と刃物を確認した。グシャが手放した途端に鎖の付与魔法の効果は切れたのか動かなくなった。
念のためにナイは鎖を拾い上げて確認すると、刃の部分はミスリルで構成されているようだが鎖の方はただの鉄で構成されていた。
「ひいいっ!?グ、グシャさんがやられるなんて……逃げろ!!」
「お、俺はもう足を洗うぞ!!まっとうに生きるんだ!!」
「殺さないでくれぇええっ!?」
グシャが敗れた事で他の暗殺者達は逃げ出し、その様子を見てナイは止めるべきかと思ったが、ここでグシャを放置するわけにもいかず、仕方なく彼女が話せるまで待つ。
グシャの正体は「付与魔術師」だと判明し、エルマと同じく彼女は鎖に風の魔力を宿す事ができるらしい。その力で鎖を自由自在に操作し、下手に触れようとすれば鎖に纏った風の魔力で弾かれてしまう。エルフの血を継いでいるだけはあって中々に厄介な能力だった。
(強い……けど、ここで引き返すわけにはいかないんだ!!)
ナイは刺剣を抜くと両手で構えた。その姿を見てグシャは疑問を抱き、噂によればナイは大剣使いだと聞いているが、妙な形をした短剣を両手に構えたナイに対して尋ねる。
「何よ、それは……あんた、そんなちゃちな武器で私に勝つつもり?」
「……この武器を馬鹿にするな」
大切な養父の形見を馬鹿にしたグシャに対してナイは怒りを抱き、彼の鬼気迫る表情にグシャは冷や汗を流し大型の魔物と対峙した時のような威圧感を感じとる。
(このガキ……放っておいたらまずいわ)
暗殺者の本能がナイの危険性を伝え、グシャは目の前に現れたナイを一刻も早く始末する必要があると判断した。ここでナイを殺さなかった場合、後々に後悔する事態に陥る。そんな確信を抱いたグシャは鎖を引き寄せ、最後の攻撃を行う。
グシャとの戦闘にてナイは大剣ではなく、アルから受け継いだ刺剣を身に付けたのは理由があった。下手に大剣などの武器を使用した場合、恐らくは鎖に刃を巻き付けられて封じられる恐れがあり、それでもナイの力ならばグシャにも負けないと思われるが、問題なのは彼女の付与魔法である。
付与魔法の性質はナイもエルマやイリアが扱う場面を見て理解しており、普通の魔法と違って付与魔法は物体に魔力を宿す。魔法金属で構成された魔剣などの類は魔力を込めると様々な能力を発揮するが、付与魔法の場合は矢や鎖などの普通の金属の物体にも魔力を宿す事ができる。
グシャが手にする鎖は先端部分に刃が取り付けられており、風の魔力を操作して刃を高速回転させた状態で繰り出す事ができる。もしもあの刃を受ければ生身の人間はひとたまりもなく、いくらナイでも耐え切れる自信はない。
鎖に対抗するためにナイは両手に刺剣を握りしめ、更に動きやすいように岩砕剣と旋斧を下ろす。グシャは今度こそナイを仕留めるために鎖を繰り出す
「死ね!!」
「っ……!!」
これまでとは違い、確実にナイの命を奪うためにグシャはナイに目掛けて一直線に鎖を放ち、先端の刃を高速回転させる。正面から迫りくる刃にナイは両手の刺剣を構え、観察眼の技能と持ち前の動体視力を生かして鎖同士が繋がれる隙間に向けて刺剣を突き刺す。
「ここだっ!!」
「なぁっ!?」
「と、止めたっ!?」
これまでの戦闘からナイは先端部分に取り付けられている刃物は高速回転している時、他の部分に纏っている魔力が弱まる事を見抜くいていた。どうやら刃の部分を回転させる際に鎖に纏っていた魔力を先端部分に集中させないといけないらしく、その時が鎖に攻撃を仕掛ける好機だった。
隙間の部分に刺剣を貫かれた鎖は床に固定され、グシャは慌てて引き寄せようとしたが魔力を先端部分に集中し過ぎたせいで上手く動かせず、その間にナイはグシャに向かって駆け出す。
「喰らえっ!!」
「がはぁっ!?」
「グシャさん!?」
「そ、そんな馬鹿なっ!?」
グシャに接近したナイは彼女の腹部に目掛けて掌底を叩き込み、強烈な衝撃を受けたグシャは尻餅をつく。その様子を見て他の者達は慌てふためき、一方でナイは床に落ちた鎖と刃物を確認した。グシャが手放した途端に鎖の付与魔法の効果は切れたのか動かなくなった。
念のためにナイは鎖を拾い上げて確認すると、刃の部分はミスリルで構成されているようだが鎖の方はただの鉄で構成されていた。
「ひいいっ!?グ、グシャさんがやられるなんて……逃げろ!!」
「お、俺はもう足を洗うぞ!!まっとうに生きるんだ!!」
「殺さないでくれぇええっ!?」
グシャが敗れた事で他の暗殺者達は逃げ出し、その様子を見てナイは止めるべきかと思ったが、ここでグシャを放置するわけにもいかず、仕方なく彼女が話せるまで待つ。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された「霧崎ルノ」彼を召還したのはバルトロス帝国の33代目の皇帝だった。現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が帝国領土に出現し、数多くの人々に被害を与えていた。そのために皇帝は魔王軍に対抗するため、帝国に古から伝わる召喚魔法を利用して異世界から「勇者」の素質を持つ人間を呼び出す。しかし、どういう事なのか召喚されたルノはこの帝国では「最弱職」として扱われる職業の人間だと発覚する。
彼の「初級魔術師」の職業とは普通の魔術師が覚えられる砲撃魔法と呼ばれる魔法を覚えられない職業であり、彼の職業は帝国では「最弱職」と呼ばれている職業だった。王国の人間は自分達が召喚したにも関わらずに身勝手にも彼を城外に追い出す。
だが、追い出されたルノには「成長」と呼ばれる能力が存在し、この能力は常人の数十倍の速度でレベルが上昇するスキルであり、彼は瞬く間にレベルを上げて最弱の魔法と言われた「初級魔法」を現実世界の知恵で工夫を重ねて威力を上昇させ、他の職業の魔術師にも真似できない「形態魔法」を生み出す――
※リメイク版です。付与魔術師や支援魔術師とは違う職業です。前半は「最強の職業は付与魔術師かもしれない」と「最弱職と追い出されたけど、スキル無双で生き残ります」に投稿していた話が多いですが、後半からは大きく変わります。
(旧題:最弱職の初級魔術師ですが、初級魔法を極めたら何時の間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。)
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる