806 / 1,110
王国の闇
第790話 ジャンヌの仇
しおりを挟む
「奴め……今まで何処に隠れていた!!」
「もう死んだかと思っていたが……生きていたのか」
「いや……あれは本当に生きているのか?」
遂に見つけたジャンヌの仇に対してアリシア達は怒りを抱くが、同時にリョフの今の姿に戸惑いを隠せず、どう見ても今のリョフは普通ではない。
言動はリョフで間違いないが、その姿はかつての彼とは大きく変わっており、まず昔のリョフはあんな漆黒の鎧など纏っていなかった。しかも現在の彼は全身から闇属性の魔力を放ち、あれでは先日に聖女騎士団が遭遇した「イゾウ」と同じ姿だった。
「あれではまるでイゾウとやらと一緒ではないか……」
「一緒、というよりも同じじゃないのか?」
「という事は……やっぱり奴は死霊人形なのか?」
三人はリョフの変貌ぶりを見せつけられて戸惑い、今現在のリョフはどう見ても普通の状態ではない。そもそもリョフに闇属性の魔力の適正があるなど聞いた事もなかった。
リョフの正体は「死霊人形」と化したと判断し、既にリョフが故人である事に驚く。ジャンヌが死亡してから聖女騎士団の元団員は秘密裏に行方不明となったリョフを探したが、手がかりすら掴めなかったため、彼がもう既に死んでいるのだと判断した。
しかし、目の前に死んだと思われたリョフが現れ、彼女達はジャンヌを殺された恨みを思い出す。武人としてはゴウカとリョフの戦闘に介入するなど無粋だとは理解しているが、それでも慕っていたジャンヌを殺した男が現れて冷静でいられるはずがない。
「……隙を見て奴を討つ、お前達も力を貸してくれるか?」
「本気か?」
「私達だけでどうにかできるのか?」
「できるできないの問題じゃない……やるんだ」
レイラの言葉にアリシアとランファンは黙り込み、リョフを討つ絶好の機会を逃すわけにはいかなかった。ゴウカとリョフの実力は拮抗しており、このまま戦えばどちらが倒れるのかは想像できない。
だが、ゴウカがリョフを打ち破った場合、三人はジャンヌの仇を討つ機会を永遠に失う。それぐらいならば戦闘に介入し、リョフが隙を見せた瞬間に狙うのが良いと考えた三人は教会に近付こうとした。
「テンがこの場に居なくて正解だったな……」
「ああ……あいつにジャンヌ様の死の真相を知らせなくてよかった」
「死ぬのは私たちだけでいい」
三人はジャンヌを殺した相手はリョフだと見切りは付けていたが、それをテンに教えなかったのは彼女が復讐の道を辿るのを良しとしなかった。三人ともテンよりも年上であり、テンの事は彼女が小さい頃からよく知っていた。
テンの姉貴分として三人は彼女だけは真っ当な道を生きてほしいと願い、彼女が聖女騎士団を再結成させると聞いた時は心の底から喜んだ。しかし、一方でテンのために三人は手を汚す覚悟を抱き、彼女の姉として代わりにジャンヌの仇を討つ覚悟を決める。
「行くぞ……合図を出したら、突っ込め」
「分かった」
「ああっ……」
各々が武器を構えながら教会に近付こうとした瞬間、ここでゴウカと打ち合っていたリョフが何かに気付いた様に立ち止まり、身体から魔力を噴き出す。
『うぐぅっ……!?』
『むっ!?どうした、いったい何の真似だ!?』
『ぐうっ……邪魔をするな、シャドウ!?』
シャドウの名前を口にしたリョフは身体を震わせながら雷戟を構えると、この際に雷戟に黒色の電流が迸り、苦しむ声を出しながらリョフは振り払う。
『ガアアッ!!』
『ぬあっ!?』
「うわっ!?」
「くぅっ!?」
「これは……ぐああっ!?」
リョフが雷戟を振りかざした瞬間、漆黒の雷が周囲に拡散し、それを浴びたゴウカは感電して倒れ込み、ランファンも避け切れずに電撃を受けた。
二人とも身体から黒色の電流を迸らせながら倒れ込み、どちらも巨人族であったが故に他の人間と比べて体躯が大きすぎて電撃を避け切れなかった。アリシアとレイラは慌てて倒れたランファンに近付く。
「大丈夫か、ランファン!?」
「しっかりしろ……うあっ!?」
「レイラ!?」
ランファンにレイラが触れた途端、電流は彼女の身体にも伝わり、その場に倒れ込む。その様子を見て残されたアリシアは戸惑うが、リョフの方は更に雷戟を振り回す。
『ウガァアアアアッ!!』
「いかん!?避けろ!!」
「シノビ!?」
「わああっ!?」
リョフは雷戟を振り回し、あちこちに漆黒の雷を放つ。咄嗟にシノビはリノを守るために突き飛ばし、ルナは戦斧を手放してその場で身体を伏せる。この際にリノを庇ったシノビは雷を受け、他の聖女騎士団も何人かが雷を受ける。
「がはぁっ!?」
「きゃああっ!?」
「うああっ!?」
無差別に漆黒の雷が周囲に拡散し、やっと収まった時には教会の周囲に存在した殆どの人間が感電し、動けない状態に陥っていた。
「もう死んだかと思っていたが……生きていたのか」
「いや……あれは本当に生きているのか?」
遂に見つけたジャンヌの仇に対してアリシア達は怒りを抱くが、同時にリョフの今の姿に戸惑いを隠せず、どう見ても今のリョフは普通ではない。
言動はリョフで間違いないが、その姿はかつての彼とは大きく変わっており、まず昔のリョフはあんな漆黒の鎧など纏っていなかった。しかも現在の彼は全身から闇属性の魔力を放ち、あれでは先日に聖女騎士団が遭遇した「イゾウ」と同じ姿だった。
「あれではまるでイゾウとやらと一緒ではないか……」
「一緒、というよりも同じじゃないのか?」
「という事は……やっぱり奴は死霊人形なのか?」
三人はリョフの変貌ぶりを見せつけられて戸惑い、今現在のリョフはどう見ても普通の状態ではない。そもそもリョフに闇属性の魔力の適正があるなど聞いた事もなかった。
リョフの正体は「死霊人形」と化したと判断し、既にリョフが故人である事に驚く。ジャンヌが死亡してから聖女騎士団の元団員は秘密裏に行方不明となったリョフを探したが、手がかりすら掴めなかったため、彼がもう既に死んでいるのだと判断した。
しかし、目の前に死んだと思われたリョフが現れ、彼女達はジャンヌを殺された恨みを思い出す。武人としてはゴウカとリョフの戦闘に介入するなど無粋だとは理解しているが、それでも慕っていたジャンヌを殺した男が現れて冷静でいられるはずがない。
「……隙を見て奴を討つ、お前達も力を貸してくれるか?」
「本気か?」
「私達だけでどうにかできるのか?」
「できるできないの問題じゃない……やるんだ」
レイラの言葉にアリシアとランファンは黙り込み、リョフを討つ絶好の機会を逃すわけにはいかなかった。ゴウカとリョフの実力は拮抗しており、このまま戦えばどちらが倒れるのかは想像できない。
だが、ゴウカがリョフを打ち破った場合、三人はジャンヌの仇を討つ機会を永遠に失う。それぐらいならば戦闘に介入し、リョフが隙を見せた瞬間に狙うのが良いと考えた三人は教会に近付こうとした。
「テンがこの場に居なくて正解だったな……」
「ああ……あいつにジャンヌ様の死の真相を知らせなくてよかった」
「死ぬのは私たちだけでいい」
三人はジャンヌを殺した相手はリョフだと見切りは付けていたが、それをテンに教えなかったのは彼女が復讐の道を辿るのを良しとしなかった。三人ともテンよりも年上であり、テンの事は彼女が小さい頃からよく知っていた。
テンの姉貴分として三人は彼女だけは真っ当な道を生きてほしいと願い、彼女が聖女騎士団を再結成させると聞いた時は心の底から喜んだ。しかし、一方でテンのために三人は手を汚す覚悟を抱き、彼女の姉として代わりにジャンヌの仇を討つ覚悟を決める。
「行くぞ……合図を出したら、突っ込め」
「分かった」
「ああっ……」
各々が武器を構えながら教会に近付こうとした瞬間、ここでゴウカと打ち合っていたリョフが何かに気付いた様に立ち止まり、身体から魔力を噴き出す。
『うぐぅっ……!?』
『むっ!?どうした、いったい何の真似だ!?』
『ぐうっ……邪魔をするな、シャドウ!?』
シャドウの名前を口にしたリョフは身体を震わせながら雷戟を構えると、この際に雷戟に黒色の電流が迸り、苦しむ声を出しながらリョフは振り払う。
『ガアアッ!!』
『ぬあっ!?』
「うわっ!?」
「くぅっ!?」
「これは……ぐああっ!?」
リョフが雷戟を振りかざした瞬間、漆黒の雷が周囲に拡散し、それを浴びたゴウカは感電して倒れ込み、ランファンも避け切れずに電撃を受けた。
二人とも身体から黒色の電流を迸らせながら倒れ込み、どちらも巨人族であったが故に他の人間と比べて体躯が大きすぎて電撃を避け切れなかった。アリシアとレイラは慌てて倒れたランファンに近付く。
「大丈夫か、ランファン!?」
「しっかりしろ……うあっ!?」
「レイラ!?」
ランファンにレイラが触れた途端、電流は彼女の身体にも伝わり、その場に倒れ込む。その様子を見て残されたアリシアは戸惑うが、リョフの方は更に雷戟を振り回す。
『ウガァアアアアッ!!』
「いかん!?避けろ!!」
「シノビ!?」
「わああっ!?」
リョフは雷戟を振り回し、あちこちに漆黒の雷を放つ。咄嗟にシノビはリノを守るために突き飛ばし、ルナは戦斧を手放してその場で身体を伏せる。この際にリノを庇ったシノビは雷を受け、他の聖女騎士団も何人かが雷を受ける。
「がはぁっ!?」
「きゃああっ!?」
「うああっ!?」
無差別に漆黒の雷が周囲に拡散し、やっと収まった時には教会の周囲に存在した殆どの人間が感電し、動けない状態に陥っていた。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる