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王国の闇
第777話 英雄の器
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「イリアよ……お主、イチノであの少年を生かした時から儂に歯向かうつもりだったか!!」
「ええ、まあ……そうなりますかね」
「何故だ!!何故、あんな子供を生かすために……」
「あんな子供、なんて言っている時点で貴方はナイさんの価値を分かっていないんですよ」
イチノに飛行船で赴く際、イリアはシンに命じられてナイの暗殺を引き受けていた。しかし、彼女はその命令を無視してナイを生かした。
最初の頃にイリアはナイに薬を渡そうとしていたのは彼に毒薬を与えるためであり、それを飲ませる事で死なせようかと考えていた。しかし、間近でナイの活躍ぶりを見せつけられたイリアは彼に興味を抱き、彼女はシンにナイを殺すのを辞めるように願う。
表向きはナイは殺すには惜しい人材であり、それに自分がその気になれば彼を病に見せかけていつでも殺す事ができる。しかし、ナイの力があればこの国に大きく貢献できる旨を伝えて彼を生かそうとした。そしてシンはイリアが命令を無視してナイを生かした時から自分を裏切っていた事を知る。
「宰相、貴方はナイさんの事を甘く見ています。何処の世界に火竜、ゴーレムキング、ゴブリンキングといった化物を相手に戦える子供がいると思っているんですか?」
「ぐっ……」
「はっきりと言いましょう、ナイさんは英雄の器です。つまり、英雄に成りえる力を持っています。あの王妃様と同じように……」
「うむ、それは儂も異論はない」
シンの最大の誤算はナイの価値を見誤り、安易に彼を殺そうとした事だった。イリアはナイの事を知れば知る程に彼がただの子供とは思えず、今は亡き王妃にも劣らぬ「英雄」に成りえる存在だと確信する。
魔導士であり、薬師であり、そして研究者でもあるイリアからすればナイは興味深い研究対象であり、アルトが彼に注目を向けているのも理解できた。それほどまでに研究者からすればナイは非常に興味深く、重要な存在だった。
「観念するのだ宰相よ。お主の不正の証拠は既にこのイリアが揃えておる、そこにいるイシも儂等に協力してくれるそうじゃ」
「悪いな……あんたのお陰で今の地位に就けた事は理解している。だが、俺はもう……人殺しの道具として利用されたくはないんだ」
「馬鹿なっ……お前達も分かっているだろう!!我々こそがこの国を支えてきたのだ!!我々がいなくなれば誰がこの国を支える!?」
「安心しろ、宰相よ……お主は分からぬだろうが、この国を支える相応しい人物はもう揃っておる……若者じゃよ」
「若者……だと!?」
マホの言葉にシンは驚愕の表情を浮かべるが、マホは魔導士として王国各地を訪れ、将来有望な若者たちと接触してきた。
「確かにお主等が裏でこの国を支えてきた事は確かじゃ。しかし、お主等がいなくとも王国内には将来有望な若者たちが育っておる。最初は大変じゃろうが、彼等ならばいずれこの国を立て直すであろう。彼等が育ち切るまでの間は儂のような老人でもこの国を支える柱となろう」
「馬鹿な……若者だと、ふざけるな!!そんな曖昧な言葉で儂を説得できると思ったか?」
「これは説得ではない、宣言じゃ。もうこの国にはシンという支えは必要はない、お主もこの国のためを思うのであれば……今すぐに国王の眠りを覚まさせ、謝罪するのじゃ」
「……ふざけるな!!」
シンはマホの言葉に怒りを露にすると、彼女に掴みかかる。シンの唐突な行動に誰もが驚く。
「さ、宰相!?魔導士殿に何てことを……」
「いったいどうされたというのですか!?」
「落ち着いて下され!!」
「ぐっ……」
「こんな事で本性を現すとは……昔からお主は追い詰められると興奮し、周りの出来事が良く見えなくなるのう」
誰よりも長生きして国に仕えてきたマホだからこそ、シンの性格の事も熟知していた。普段は冷静沈着な彼だが、一度怒ると手が付けられず、その性格を利用してマホはシンを嵌める。
周囲に集まった兵士や家臣はシンの行動に混乱していた。この状況ではシンがどんな言い訳を行おうと怪しまれるのは間違いなく、マホは杖を振って彼の手を引き剥がす。
「この者は宰相ではない!!宰相に化けた偽物じゃ、すぐに取り押さえよ!!」
「な、何をっ……!?」
「宰相、貴方の計画はこれでお終いです……ちなみに、裏切ったのは私達だけじゃありませんよ。既に貴方と繋がっている人たちにも根回しは済んでいます」
「……恐ろしい弟子だぜ」
マホの言葉に周囲の人間に衝撃が走り、更にイリアはシンと繋がっている人間に今回の計画に協力するようにした事を伝える。シンは完全に自分が嵌められたと知り、怒りで身体を震わせる。
「おのれ、貴様の様な小娘に我等が……我が一族が屈すると思うか!!」
「別に私に屈しなくてもいいですよ。貴方が捕まれば私も師匠も無事では済みませんしね……けど、情状酌量の余地はありますよね」
「やれやれ……思っていた以上にたくましい若者だのう」
イリアの言葉にマホは呆れた表情を浮かべ、今回の計画の条件として事前にイリアはマホに自分達が捕まる事になってもちゃんと弁護する様に頼み込んでいた。
「ええ、まあ……そうなりますかね」
「何故だ!!何故、あんな子供を生かすために……」
「あんな子供、なんて言っている時点で貴方はナイさんの価値を分かっていないんですよ」
イチノに飛行船で赴く際、イリアはシンに命じられてナイの暗殺を引き受けていた。しかし、彼女はその命令を無視してナイを生かした。
最初の頃にイリアはナイに薬を渡そうとしていたのは彼に毒薬を与えるためであり、それを飲ませる事で死なせようかと考えていた。しかし、間近でナイの活躍ぶりを見せつけられたイリアは彼に興味を抱き、彼女はシンにナイを殺すのを辞めるように願う。
表向きはナイは殺すには惜しい人材であり、それに自分がその気になれば彼を病に見せかけていつでも殺す事ができる。しかし、ナイの力があればこの国に大きく貢献できる旨を伝えて彼を生かそうとした。そしてシンはイリアが命令を無視してナイを生かした時から自分を裏切っていた事を知る。
「宰相、貴方はナイさんの事を甘く見ています。何処の世界に火竜、ゴーレムキング、ゴブリンキングといった化物を相手に戦える子供がいると思っているんですか?」
「ぐっ……」
「はっきりと言いましょう、ナイさんは英雄の器です。つまり、英雄に成りえる力を持っています。あの王妃様と同じように……」
「うむ、それは儂も異論はない」
シンの最大の誤算はナイの価値を見誤り、安易に彼を殺そうとした事だった。イリアはナイの事を知れば知る程に彼がただの子供とは思えず、今は亡き王妃にも劣らぬ「英雄」に成りえる存在だと確信する。
魔導士であり、薬師であり、そして研究者でもあるイリアからすればナイは興味深い研究対象であり、アルトが彼に注目を向けているのも理解できた。それほどまでに研究者からすればナイは非常に興味深く、重要な存在だった。
「観念するのだ宰相よ。お主の不正の証拠は既にこのイリアが揃えておる、そこにいるイシも儂等に協力してくれるそうじゃ」
「悪いな……あんたのお陰で今の地位に就けた事は理解している。だが、俺はもう……人殺しの道具として利用されたくはないんだ」
「馬鹿なっ……お前達も分かっているだろう!!我々こそがこの国を支えてきたのだ!!我々がいなくなれば誰がこの国を支える!?」
「安心しろ、宰相よ……お主は分からぬだろうが、この国を支える相応しい人物はもう揃っておる……若者じゃよ」
「若者……だと!?」
マホの言葉にシンは驚愕の表情を浮かべるが、マホは魔導士として王国各地を訪れ、将来有望な若者たちと接触してきた。
「確かにお主等が裏でこの国を支えてきた事は確かじゃ。しかし、お主等がいなくとも王国内には将来有望な若者たちが育っておる。最初は大変じゃろうが、彼等ならばいずれこの国を立て直すであろう。彼等が育ち切るまでの間は儂のような老人でもこの国を支える柱となろう」
「馬鹿な……若者だと、ふざけるな!!そんな曖昧な言葉で儂を説得できると思ったか?」
「これは説得ではない、宣言じゃ。もうこの国にはシンという支えは必要はない、お主もこの国のためを思うのであれば……今すぐに国王の眠りを覚まさせ、謝罪するのじゃ」
「……ふざけるな!!」
シンはマホの言葉に怒りを露にすると、彼女に掴みかかる。シンの唐突な行動に誰もが驚く。
「さ、宰相!?魔導士殿に何てことを……」
「いったいどうされたというのですか!?」
「落ち着いて下され!!」
「ぐっ……」
「こんな事で本性を現すとは……昔からお主は追い詰められると興奮し、周りの出来事が良く見えなくなるのう」
誰よりも長生きして国に仕えてきたマホだからこそ、シンの性格の事も熟知していた。普段は冷静沈着な彼だが、一度怒ると手が付けられず、その性格を利用してマホはシンを嵌める。
周囲に集まった兵士や家臣はシンの行動に混乱していた。この状況ではシンがどんな言い訳を行おうと怪しまれるのは間違いなく、マホは杖を振って彼の手を引き剥がす。
「この者は宰相ではない!!宰相に化けた偽物じゃ、すぐに取り押さえよ!!」
「な、何をっ……!?」
「宰相、貴方の計画はこれでお終いです……ちなみに、裏切ったのは私達だけじゃありませんよ。既に貴方と繋がっている人たちにも根回しは済んでいます」
「……恐ろしい弟子だぜ」
マホの言葉に周囲の人間に衝撃が走り、更にイリアはシンと繋がっている人間に今回の計画に協力するようにした事を伝える。シンは完全に自分が嵌められたと知り、怒りで身体を震わせる。
「おのれ、貴様の様な小娘に我等が……我が一族が屈すると思うか!!」
「別に私に屈しなくてもいいですよ。貴方が捕まれば私も師匠も無事では済みませんしね……けど、情状酌量の余地はありますよね」
「やれやれ……思っていた以上にたくましい若者だのう」
イリアの言葉にマホは呆れた表情を浮かべ、今回の計画の条件として事前にイリアはマホに自分達が捕まる事になってもちゃんと弁護する様に頼み込んでいた。
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