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王国の闇
第753話 アルトの推理
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「……僕が怪しいと思うのはシン宰相だと思う」
「えっ!?さ、宰相殿!?」
「それは……有り得ないとは言い切れないかも」
「宰相?」
アルトの言葉にヒイロは驚愕するが、ミイナの方は納得した表情を浮かべ、その一方で他の者達は宰相を疑うアルトに不思議に思う。アルトは宰相を疑う理由としてこれまで彼が不審な行動を取っていた事を告げる。
「シン宰相は僕が小さい頃から他の人からも信頼の厚い人間だが、実は色々と噂される事も多い人なんだ。なんでも宰相はこの国を裏で牛耳るつもりだとか、実は裏社会の人間に繋がっているとかね」
「でも、それはただの噂では?少なくとも私は宰相がこんな非道な真似をするような人とは思えません」
「僕だってそう思いたいさ。けどね、宰相はこれまでに国のために進言した方策の殆どは採用されている。つまり、彼が提案した事は殆どが実行されているんだ。不自然なまでにね」
「え?どう不自然なの?」
「これまで宰相が考えた国を発展させるための方策の殆どは反対する人間が居なかった。いや、いなかったというよりは……反対しようとした人間が不自然に態度を改めているんだ」
シンがこれまでに国のために出した方策に関してはほぼ全て実行され、反対者は殆ど現れなかったという。稀に反対する人間が現れても、唐突に態度を一変させ、賛成を申し出た事が何度かあったという。
そんな事が何度も繰り返され、結局はシンの出した方策のお陰で国は発展した事は間違いはない。しかし、あまりにも彼の出す方策だけが実行される事にアルトは長年疑問を抱いていた。
「こうして冷静に考えると、いくら宰相といっても彼が提案した事がこれまで殆ど実行されている事はおかしく思えてきたね。勿論、彼のお陰で国が発展してきたのは事実だ。でも、同時に僕はこう思うんだ……この国を動かしているのは僕達王族ではなく、宰相なんじゃないかとね」
「それは流石に考え過ぎでは……」
「いや、宰相を疑う理由は他にもある。前に僕が調べたところ、宰相の地位に就く人間の殆どは先祖代々、現在のシン宰相の一族だったんだ。彼の父親も、その前の祖父も宰相の座に就いている」
「えっ……それって、そんなにおかしいの?」
「他の国ではあり得ない事だね。この国の宰相は世襲制じゃない、宰相の座に相応しい能力がある者だけが就く事を許されるんだ。それなのにこれまでに宰相に就いた人間ほぼ全員が宰相の一族というのは……不自然に思えないかい?」
アルトは前々から宰相の地位に就くのがシンの一族の人間である事を知り、彼の事を怪しんでいた。そして今回の事件が起きる前、宰相と王族の間で揉め事が起きた事を話す。
「この間、リノ姉上が自分の本当の性別を宣言し、これからは王女として生きていく事を誓った。その事にはアッシュ公爵も父上も兄上も賛成した。昔から姉上が苦労をしている事を知っている人間の殆どが賛成したよ。だけど、宰相だけは違った。王国と獣人国との友好関係を保つため、リノ姉上にこれまで通りに性別を偽るように進言したんだ」
「おいおい、ちょっと待てよ……なんで坊主はそんな事に詳しいんだ?」
「イーシャンさん、その辺は後で話しますから……」
黙って話を聞いていたイーシャンはアルトが妙に政治に詳しい事に疑問を抱き、彼が王子である事を知らないのでこのような反応をするのは仕方ないが、一先ずはナイはアルトに話の続きを促す。
「今更だが、姉上が騎士団を率いるようになってからは妙に遠征の任務が多かった。僕もどうして今まで疑問を抱かなかったのか……冷静に考えてみれば王族を王都から遠くに引き離す事自体が異常だろう?」
「た、確かに……言われてみればそうですね」
「実際、王都から離れ過ぎたせいでイチノで王女様は大変な目に巻き込まれた」
「そういわれれば……」
ナイ達はアルトの言葉に納得し、銀狼騎士団の団長でありながらリノは常に遠征の任務を任せられ、イチノで彼女を救出する前もリノは一年近くも王都から離れて活動していた。
「姉上に遠征の任務を与えていたのは僕もよく知らないが、それが宰相の仕業だとした場合……宰相は明らかに姉上を故意に王都から離れさせて国の政治から遠ざけているのかもしれない」
彼女が遠征の任務ばかりに就いているのはリノを政治から遠ざけるため、シンの仕業だと考えたら色々と辻褄は合う。シンはリノの事を危険視しており、だからこそ彼女を王都から離れさせる遠征任務ばかり与え、国の政治に関わらせない様にした。
リノ王女は正体を現す前は国の第二王子であり、第一王子のバッシュの身に何か起きれば彼女がこの国を受け継ぐ立場である。そんな彼女を故意に王都から離れさせるなど普通ではなく、どうしてアルトはこれまで疑問を抱かなかったのかと自分を責めたる。
「えっ!?さ、宰相殿!?」
「それは……有り得ないとは言い切れないかも」
「宰相?」
アルトの言葉にヒイロは驚愕するが、ミイナの方は納得した表情を浮かべ、その一方で他の者達は宰相を疑うアルトに不思議に思う。アルトは宰相を疑う理由としてこれまで彼が不審な行動を取っていた事を告げる。
「シン宰相は僕が小さい頃から他の人からも信頼の厚い人間だが、実は色々と噂される事も多い人なんだ。なんでも宰相はこの国を裏で牛耳るつもりだとか、実は裏社会の人間に繋がっているとかね」
「でも、それはただの噂では?少なくとも私は宰相がこんな非道な真似をするような人とは思えません」
「僕だってそう思いたいさ。けどね、宰相はこれまでに国のために進言した方策の殆どは採用されている。つまり、彼が提案した事は殆どが実行されているんだ。不自然なまでにね」
「え?どう不自然なの?」
「これまで宰相が考えた国を発展させるための方策の殆どは反対する人間が居なかった。いや、いなかったというよりは……反対しようとした人間が不自然に態度を改めているんだ」
シンがこれまでに国のために出した方策に関してはほぼ全て実行され、反対者は殆ど現れなかったという。稀に反対する人間が現れても、唐突に態度を一変させ、賛成を申し出た事が何度かあったという。
そんな事が何度も繰り返され、結局はシンの出した方策のお陰で国は発展した事は間違いはない。しかし、あまりにも彼の出す方策だけが実行される事にアルトは長年疑問を抱いていた。
「こうして冷静に考えると、いくら宰相といっても彼が提案した事がこれまで殆ど実行されている事はおかしく思えてきたね。勿論、彼のお陰で国が発展してきたのは事実だ。でも、同時に僕はこう思うんだ……この国を動かしているのは僕達王族ではなく、宰相なんじゃないかとね」
「それは流石に考え過ぎでは……」
「いや、宰相を疑う理由は他にもある。前に僕が調べたところ、宰相の地位に就く人間の殆どは先祖代々、現在のシン宰相の一族だったんだ。彼の父親も、その前の祖父も宰相の座に就いている」
「えっ……それって、そんなにおかしいの?」
「他の国ではあり得ない事だね。この国の宰相は世襲制じゃない、宰相の座に相応しい能力がある者だけが就く事を許されるんだ。それなのにこれまでに宰相に就いた人間ほぼ全員が宰相の一族というのは……不自然に思えないかい?」
アルトは前々から宰相の地位に就くのがシンの一族の人間である事を知り、彼の事を怪しんでいた。そして今回の事件が起きる前、宰相と王族の間で揉め事が起きた事を話す。
「この間、リノ姉上が自分の本当の性別を宣言し、これからは王女として生きていく事を誓った。その事にはアッシュ公爵も父上も兄上も賛成した。昔から姉上が苦労をしている事を知っている人間の殆どが賛成したよ。だけど、宰相だけは違った。王国と獣人国との友好関係を保つため、リノ姉上にこれまで通りに性別を偽るように進言したんだ」
「おいおい、ちょっと待てよ……なんで坊主はそんな事に詳しいんだ?」
「イーシャンさん、その辺は後で話しますから……」
黙って話を聞いていたイーシャンはアルトが妙に政治に詳しい事に疑問を抱き、彼が王子である事を知らないのでこのような反応をするのは仕方ないが、一先ずはナイはアルトに話の続きを促す。
「今更だが、姉上が騎士団を率いるようになってからは妙に遠征の任務が多かった。僕もどうして今まで疑問を抱かなかったのか……冷静に考えてみれば王族を王都から遠くに引き離す事自体が異常だろう?」
「た、確かに……言われてみればそうですね」
「実際、王都から離れ過ぎたせいでイチノで王女様は大変な目に巻き込まれた」
「そういわれれば……」
ナイ達はアルトの言葉に納得し、銀狼騎士団の団長でありながらリノは常に遠征の任務を任せられ、イチノで彼女を救出する前もリノは一年近くも王都から離れて活動していた。
「姉上に遠征の任務を与えていたのは僕もよく知らないが、それが宰相の仕業だとした場合……宰相は明らかに姉上を故意に王都から離れさせて国の政治から遠ざけているのかもしれない」
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