貧弱の英雄

カタナヅキ

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王国の闇

第739話 明日には到着

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「どれも凄くいい感じだよ。でも、鎖帷子の方は前より少し重くなった?」
「ああ、その分に防御力と耐久性は上がってるはずだよ。今のナイ君ならそれぐらいの重さでも大丈夫かと思ってね」
「うん、むしろこれぐらいがちょうどいいかもしれない」


鉄製の鎖帷子は以前の物だと軽すぎる気がしたため、ナイはアルトが用意してくれた新しい鎖帷子を気に入り、その場で軽く跳躍を行う。以前よりも重さは増したが問題なく動ける事を確認し、満足そうに頷く。

明日には王都に到着するため、今日の所はしっかりと身体を休めておく。しかし、ナイは妙に落ち着かず、星空を眺めながらアルトに語り掛ける。


「明日には王都に戻れるんだよね」
「そうだね……何か気になるのかい?」
「まあ、色々とね……」


気になる事があるのかと言われれば山ほどあり、白面の事や解毒剤、他にも色々とあった。しかし、まずは王都に戻らない限りはどうしようもない。


「さあ、寝ようか。明日の昼には王都へ辿り着くよ」
「うん……」


アルトの言葉にナイは頷き、その場に横になろうとした時、隣で寝そべっていたビャクが顔を上げ、先に眠っていたクノも何かに気付いたように目を開く。


「むっ!?この気配は……」
「ウォンッ!!」
「わあっ!?な、何々!?」
「敵が現れたの!?」
「ふぇっ!?」
「……眠い」


ビャクが鳴き声を上げると他の者達も目を覚まし、慌てて周囲を警戒する。だが、特に魔物らしき姿は見えないが、遠くの方から聞き覚えのある狼の鳴き声が響く。



――ウォオオオンッ!!



聞こえてきたのは狼の鳴き声であり、しかもファングやコボルトとは違う鳴き声だった。それはウルの鳴き声とも似ており、すぐにナイは正体に気付く。

鳴き声のした方向を振り返ると、そこにはナイ達に迫る黒い狼の姿が存在した。その狼はシノビとクノの相棒である「忍犬」のコクで間違いなく、コクの声に反応したのかクロも何処からか駆けつけてきた。


「あれはコク!?どうしてここに……」
「何か抱えているように見えるが……あれは何だ?」
「ウォンッ!!」


駆けつけてきたコクは酷く疲れた様子でクノの前で倒れ込み、随分と息が荒かった。どうやらずっと走り続けていたらしく、彼女に苦しそうに声を掛ける。


「ウォンッ……」
「コク、大丈夫でござるか!?」
「首輪の鞄に何か入っているようだよ。確認してみたらどうだい?」


アルトの指摘にクノは頷き、コクの首元に装着している鞄から丸めた羊皮紙が入っていた。クノは羊皮紙の内容を確認すると、信じられない表情を浮かべる。彼女の態度にナイ達は不思議に思うと、クノは王都の危機を伝えた。


「お、王都が……王都がとんでもない事になっているでござる!!」
「えっ!?ど、どういう意味!?」
「貸してくれ!!」


クノの呆然とした言葉に皆が戸惑い、即座にアルトが彼女から羊皮紙を奪い取って中身を確認する。そして書かれている内容を全員に伝えた。


「……王都で白面が出現した。しかも前回の時よりも数を増やし、一般市民にも被害が及んでいるらしい」
「な、何だって!?」
「それだけじゃない、敵は白面だけじゃなくて闘技場の魔物や黄金級冒険者のゴウカが敵に回ったらしい。そのせいで王都内の王国騎士団はほぼ壊滅、しかも姉上が命を狙われているらしい」
「姉上って……まさか、リノ王女様が!?」
「くっ、拙者達がいない間にまさかそんな事が起きているとは!!」


アルトの言葉を聞いて全員が驚愕し、動揺を隠しきれない。現在の王都では大変なことが起きている事だけは判明し、一刻も早く戻る必要があった。


「皆、すぐに王都へ戻ろう!!ビャク、疲れているだろうけど頑張って全速力で向かって!!」
「ウォンッ!!」


ナイの言葉に全員が頷き、急いで狼車に乗り込む。遂にナイ達も王都の異常事態に気付き、王都へ向けて急いで帰還を行う――





――既に時刻は夜明けを迎えようとしており、この日が王国史上最大の事件が起きようとしている事を気付いているのはただだけだった
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