743 / 1,110
王国の闇
第730話 聖女騎士団の敗北
しおりを挟む
『そこを退け』
「くっ……行かせるわけないだろうがっ!!」
『ふむっ……余程大事な人間がいるらしいな』
テンは命に代えても通すわけには行かず、ゴウカの前に立ち塞がる。しかし、そんな彼女の態度を見て増々ゴウカは中に存在する人間に興味を抱き、彼女を押し退けて宿屋の中に入り込む。
『悪いが通らせてもらうぞ』
「ぐあっ!?」
「テ、テンさん!?どうしたの!?」
外からテンの悲鳴が聞こえて宿の中に居たヒナが飛び出すと、彼女はゴウカを前にして顔色を青ざめる。一方でゴウカはヒナに視線を向け、彼女に問い質す。
『教えてくれ、お前の他に中に誰かいるのか?』
「あっ、あっ……」
「や、止めろっ……その娘に手を出すなっ……!!」
テンは必死に地面を這いつくばり、ゴウカの足首を掴む。何としてもヒナを守ろうとするテンであったが、ゴウカはそんな彼女の態度を見てテンにとってヒナがどれほど大事な存在だと気付く。
『安心しろ、一般人に手を出す程落ちぶれてはいない。だが……中に居る人間の事を教えて貰おうか』
「ひっ!?」
「ヒナ、早く逃げろっ……こいつはあたしが食い止める!!」
「で、でも……」
這いつくばっているテンを見て、ヒナはどう考えても今の彼女がゴウカを抑えきれるとは思えずに立ち尽くす。その様子を見て埒が明かないと判断したゴウカはヒナを捕まえようと手を伸ばした時、ここで彼の兜に矢が衝突した。
自分の兜に矢が当てられた事にゴウカは驚き、顔を見上げるとそこには屋根の上に弓を構えるエリナの姿が存在した。彼女だけは先ほどの攻撃の際に難を逃れ、ずっと屋根の上でゴウカの様子を観察していたのだ。
「そ、それ以上に近付いたら容赦しないっすよ!!今度はその頭を撃ち抜きます!!」
『ほう、それは面白い……だが、お主の腕では無理だ。諦めろ、何もしなければ危害は加えない』
「そ、そういうわけにはいかない……私だって、聖女騎士団の団員ですから!!」
「エリナ、止めなっ!?」
ゴウカに向けてエリナは矢を構え、今度は兜の隙間に目掛けて放つ。その攻撃に対してテンは止めようとしたが、ゴウカは迫りくる矢を頭を反らして回避する。
エルマの矢を見切る程の動体視力を誇るゴウカならばエリナの矢が通用するはずがなく、彼はエリナに視線を向けるとドラゴンスレイヤーを振り払う。
「ふんっ!!」
「うわぁあああっ!?」
「エリナ!?」
「エリナさん!?」
剣圧のみで屋根の上のエリナを吹き飛ばし、彼女は屋根の上に転がりこんで意識を失ったのか動けなくなる。ゴウカはエリナの姿が見えなくなると、彼女達がここまでして宿屋の中に通そうとしない理由に疑問を抱く。
『娘よ、ここに誰がいる?』
「え、あっ……」
「駄目だ、言うんじゃないよ!!早く逃げなっ……うぐぅっ!?」
『すまん、静かにしてくれ』
ゴウカは倒れているテンの頭に手を伸ばし、彼女を気絶させるために地面に叩きつける。強い衝撃を受けたテンは白目を剥いて意識を失い、その光景を見たヒナは身体を震わせた。
「テ、テンさんっ……!?」
『大丈夫だ、気絶させただけだ……それよりも中に誰かいるのか教えてくれ』
「ああっ……!?」
ヒナはゴウカの問いかけに腰を抜かし、もう逃げられないと悟る。そんな彼女を見てゴウカは困ったように腕を組む。怯えさせるつもりはなかったのだが、これでは埒が明かない。
しかし、この時にヒナの後ろから足音が鳴り響き、ゴウカは顔を向けるとそこにはクロネに抱えて貰ったマホが姿を現す。
「すまんのう、ここまで運んでくれて助かった……下ろしてくれ」
「は、はいっ……」
「クロネ、さん……」
地下の酒場に避難していたはずのクロネがマホを連れてきた事にヒナは驚くが、マホを前にしてゴウカは呆気に取られ、彼は魔導士であるマホと対峙するのは初めてだった。
「お主がゴウカか、噂はよく耳にしておるぞ」
『むう、なんだこのちびっ子は……いや、この気配。只者ではないな』
「無礼な男じゃな、儂はここにいる誰よりも大人じゃぞ」
『何だと!?それは失礼した、謝ろう!!』
魔導士であるマホと、黄金級冒険者のゴウカが向き合い、その光景を見ただけでヒナは失禁しそうになったが、どうにか堪えて二人の様子を伺う。
この状況下でマホが現れた事にヒナは戸惑うが、彼女の方はゴウカを見上げ、他の者は彼の気迫を受けただけで身体を震わせるが、マホは特に怯えた様子もなく、自然な態度を貫く。
「なるほど、これは凄まじい力の持ち主のようじゃ……あの二人を思い出す」
『ほう!!その二人とは誰の事だ?』
「残念じゃが、どちらも死んでおるよ」
『それは残念だ……』
マホの口ぶりに興味を抱いたゴウカだが、彼女の次の言葉を聞いてあからさまに落ち込む。しかし、そんな彼に対してマホは告げた。
「くっ……行かせるわけないだろうがっ!!」
『ふむっ……余程大事な人間がいるらしいな』
テンは命に代えても通すわけには行かず、ゴウカの前に立ち塞がる。しかし、そんな彼女の態度を見て増々ゴウカは中に存在する人間に興味を抱き、彼女を押し退けて宿屋の中に入り込む。
『悪いが通らせてもらうぞ』
「ぐあっ!?」
「テ、テンさん!?どうしたの!?」
外からテンの悲鳴が聞こえて宿の中に居たヒナが飛び出すと、彼女はゴウカを前にして顔色を青ざめる。一方でゴウカはヒナに視線を向け、彼女に問い質す。
『教えてくれ、お前の他に中に誰かいるのか?』
「あっ、あっ……」
「や、止めろっ……その娘に手を出すなっ……!!」
テンは必死に地面を這いつくばり、ゴウカの足首を掴む。何としてもヒナを守ろうとするテンであったが、ゴウカはそんな彼女の態度を見てテンにとってヒナがどれほど大事な存在だと気付く。
『安心しろ、一般人に手を出す程落ちぶれてはいない。だが……中に居る人間の事を教えて貰おうか』
「ひっ!?」
「ヒナ、早く逃げろっ……こいつはあたしが食い止める!!」
「で、でも……」
這いつくばっているテンを見て、ヒナはどう考えても今の彼女がゴウカを抑えきれるとは思えずに立ち尽くす。その様子を見て埒が明かないと判断したゴウカはヒナを捕まえようと手を伸ばした時、ここで彼の兜に矢が衝突した。
自分の兜に矢が当てられた事にゴウカは驚き、顔を見上げるとそこには屋根の上に弓を構えるエリナの姿が存在した。彼女だけは先ほどの攻撃の際に難を逃れ、ずっと屋根の上でゴウカの様子を観察していたのだ。
「そ、それ以上に近付いたら容赦しないっすよ!!今度はその頭を撃ち抜きます!!」
『ほう、それは面白い……だが、お主の腕では無理だ。諦めろ、何もしなければ危害は加えない』
「そ、そういうわけにはいかない……私だって、聖女騎士団の団員ですから!!」
「エリナ、止めなっ!?」
ゴウカに向けてエリナは矢を構え、今度は兜の隙間に目掛けて放つ。その攻撃に対してテンは止めようとしたが、ゴウカは迫りくる矢を頭を反らして回避する。
エルマの矢を見切る程の動体視力を誇るゴウカならばエリナの矢が通用するはずがなく、彼はエリナに視線を向けるとドラゴンスレイヤーを振り払う。
「ふんっ!!」
「うわぁあああっ!?」
「エリナ!?」
「エリナさん!?」
剣圧のみで屋根の上のエリナを吹き飛ばし、彼女は屋根の上に転がりこんで意識を失ったのか動けなくなる。ゴウカはエリナの姿が見えなくなると、彼女達がここまでして宿屋の中に通そうとしない理由に疑問を抱く。
『娘よ、ここに誰がいる?』
「え、あっ……」
「駄目だ、言うんじゃないよ!!早く逃げなっ……うぐぅっ!?」
『すまん、静かにしてくれ』
ゴウカは倒れているテンの頭に手を伸ばし、彼女を気絶させるために地面に叩きつける。強い衝撃を受けたテンは白目を剥いて意識を失い、その光景を見たヒナは身体を震わせた。
「テ、テンさんっ……!?」
『大丈夫だ、気絶させただけだ……それよりも中に誰かいるのか教えてくれ』
「ああっ……!?」
ヒナはゴウカの問いかけに腰を抜かし、もう逃げられないと悟る。そんな彼女を見てゴウカは困ったように腕を組む。怯えさせるつもりはなかったのだが、これでは埒が明かない。
しかし、この時にヒナの後ろから足音が鳴り響き、ゴウカは顔を向けるとそこにはクロネに抱えて貰ったマホが姿を現す。
「すまんのう、ここまで運んでくれて助かった……下ろしてくれ」
「は、はいっ……」
「クロネ、さん……」
地下の酒場に避難していたはずのクロネがマホを連れてきた事にヒナは驚くが、マホを前にしてゴウカは呆気に取られ、彼は魔導士であるマホと対峙するのは初めてだった。
「お主がゴウカか、噂はよく耳にしておるぞ」
『むう、なんだこのちびっ子は……いや、この気配。只者ではないな』
「無礼な男じゃな、儂はここにいる誰よりも大人じゃぞ」
『何だと!?それは失礼した、謝ろう!!』
魔導士であるマホと、黄金級冒険者のゴウカが向き合い、その光景を見ただけでヒナは失禁しそうになったが、どうにか堪えて二人の様子を伺う。
この状況下でマホが現れた事にヒナは戸惑うが、彼女の方はゴウカを見上げ、他の者は彼の気迫を受けただけで身体を震わせるが、マホは特に怯えた様子もなく、自然な態度を貫く。
「なるほど、これは凄まじい力の持ち主のようじゃ……あの二人を思い出す」
『ほう!!その二人とは誰の事だ?』
「残念じゃが、どちらも死んでおるよ」
『それは残念だ……』
マホの口ぶりに興味を抱いたゴウカだが、彼女の次の言葉を聞いてあからさまに落ち込む。しかし、そんな彼に対してマホは告げた。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる