貧弱の英雄

カタナヅキ

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王国の闇

第729話 ゴウカの実力

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「テン、こいつを倒していいんだな!?」
「……仕方ないね、やりな!!あたしも本気を出すよ!!エルマ、それにあんた等も下がってな!!ここはルナとあたしでやる!!」
「テン!?本気ですか!?」
『ほほうっ!!本当に奥の手があるのか!?』


テンとルナは武器を構えると、その態度にゴウカは期待するようにドラゴンスレイヤーを構える。その気迫だけで普通の人間は卒倒しそうだが、テンとルナはお互いに視線を向けると頷き合う。


「行くぞぉおおおっ!!」
「うおおおおっ!!」


二人は同時に「強化術」を発動させ、全身から白炎を放つ。聖属性の魔力を限界まで活性化させ、身体能力を一気に向上させる。強化術の発動時間は30秒だけであり、その間にゴウカを仕留めなければならない。

ゴウカに対してテンとルナは同時に踏み込み、二人は全力の一撃を放つ。恐らくは今の二人ならば赤毛熊程度の相手ならば一撃で屠れる程の力を誇り、ゴウカに全力の一撃を叩き込む。


「うらああああっ!!」
「だあああっ!!」
『――ふんっ!!』


二人の攻撃に対してゴウカも大剣を振りかざす。三人の刃が触れ合った瞬間、激しい金属音と衝撃波が周囲に拡散した。

刃を交わしただけで衝撃波が発生した事にエルマ達は驚愕するが、その衝撃波によってテンとルナは後方へと吹き飛び、ゴウカの巨体も後退る。テンとルナの渾身の一撃を受けてもゴウカを後退る程度で精いっぱいであり、その光景に他の者達は衝撃を受けた。


「そ、そんな馬鹿なっ……」
「あの二人の攻撃を受けて……無傷だと!?」
「有り得ないっ……!!」
『ぐうっ……驚いたな、俺の攻撃を弾くとは!!』


ゴウカは興奮した様子で立ち上がり、自分の攻撃を二人がかりとはいえ弾き返した事に興奮する。これまでの戦闘でゴウカの攻撃を弾き返した敵は数年ぶりであり、彼は興奮した様子で叫ぶ。


『さあ、続けよう!!もっとお前達の全力を見せて見ろ!!』
「う、ううっ……」
「はあっ、はあっ……」


しかし、興奮するゴウカとは対照的にテンとルナの顔色は悪く、二人とも立ち上がるのも辛そうな表情だった。先ほどの攻防で二人は体力を出し尽くし、強化術を強制的に解除されてしまった。

二人の全力を込めた一撃をゴウカは弾き返し、結果的にはたった一度の攻撃でテンとルナは体力を使い果たしてしまう。その様子を見てゴウカはどうして二人が立ち上がらないのかと不満を抱く。


『どうした!?さっきの威勢はどうした、早く立て!!そして戦えっ!!』
「化物がっ……!!」
「ううっ……い、痛い……!?」


テンは悪態を吐くが、ルナの方は全身筋肉痛に襲われてまともに動く事もできず、二人とも戦える状態ではない。その様子を見て他の者達も黙っていられず、全員てゴウカに襲い掛かった。


「二人を助けろ!!我々も続くぞ!!」
「強化術を発動させろ、こいつは全力で挑まなければ勝てないっ!!」
「うおおおっ!!」
『……つまらんっ!!』


他の者達も白炎を身体に纏った状態でゴウカへと襲い掛かるが、それに対してゴウカはドラゴンスレイヤーを横向きに構えると、。その光景を見たテンは嫌な予感を抱き、他の者達に注意した。


「あんた達、逃げなっ!!それを喰らったら……!?」
『――はああっ!!』


テンが言葉を言い終える前に力を貯め終えたゴウカがドラゴンスレイヤーを振り抜いた瞬間、強烈な衝撃波が発生して聖女騎士団へと襲い掛かった。


『っ――!?』


全員が悲鳴を上げる事も出来ず、衝撃波を受けた瞬間に吹き飛び、地面に倒れ込む。エルマも、レイラも、アリシアも、彼の一撃によって吹き飛び、その光景を見ていたテンは目を見開く。

かつては王国最強の騎士団と呼ばれた聖女騎士団が、たった一人の剣士の攻撃によって敗北した。その事実にテンは身体を震わせ、目の前に立つゴウカは間違いなく、彼女がかつて目標としていた「ジャンヌ」とに立つ人間だと察した。


(こいつ……王妃様と同じなのかい……!?)


テンはジャンヌにも匹敵するかもしれぬ力を誇るゴウカに身体を震わせ、普段の彼女ならば仲間を傷つけられた怒りで頭がどうにかなっていたかもしれない。しかし、あまりにも圧倒的な力の差を見せつけられて彼女は動けず、自分が怯えている事に気付く。


(くそっ……ふざけんじゃないよっ!!動け、動けっ!!)


怯える身体を無理やりに奮い立たせ、テンは退魔刀を構えようとした。だが、その退魔刀すらも支える腕も振るえており、とても戦える状態ではなかった。


『ほう……まだ立ち上がるか、流石だな。だが、その状態では戦えないだろう』
「くっ……!!」
『それよりもお前達がそこまでして戦う理由……この中に誰かいるのか?』
「なっ!?ち、近寄るんじゃないよ!!」


ゴウカが白猫亭を庇うように立つテンを見て彼女が誰かを守るためにここに居る事を知り、彼はそれを知るために歩み寄る。
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