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王国の闇
第723話 闘技場の異変
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「ハマーンさん、これから私達は闘技場へ入りますわ。よろしかったら同行してくれませんか?」
「儂もか?」
「恐らく、既に闘技場内にも敵が入り込んでいる。そいつらを抑えない限り、魔物はまた街中に放逐される可能性が高い」
「親方、そういう事なら二人に付いて行ってください!!」
「店の方は俺達が守りますよ!!」
ドリスとリンの言葉にハマーンは思い悩み、弟子たちの言葉を聞いて彼はため息を吐きながら同行を承諾した。
「仕方ないな……いいだろう、一緒に行ってやるか」
「助かりますわ!!」
「頼りにしているぞ……よし、行くぞ二人とも!!」
リンを先頭にドリスとハマーンも続き、三人は闘技場の内部へと入り込む。闘技場には普段はアッシュ公爵の配下の兵士達が待機しているはずだが、魔物が抜け出す時に最初の犠牲者になったのは兵士達だと判明する。
「こ、これは……」
「酷すぎますわ……」
「……間に合わなかったか」
闘技場の内部には多数の兵士と魔物の死骸が横たわっており、どうやら闘技場内に残っていた兵士達も魔物が外部に出さないために交戦したようだが、奮戦は虚しく敗れてしまったらしい。
闘技場の出入口の付近には数十体の兵士とオークの死骸が倒れており、他にもコボルトやホブゴブリンらしき魔物の死骸も含まれていた。ハマーンが対処したのは闘技場内の兵士が抑えきれなかった魔物達だと判明し、彼は両手を合わせて兵士達の冥福を祈る。
「どうやら闘技場の兵士が裏切って魔物を解放した……というわけでもなさそうですわね。中には魔物を外に出さない様に懸命に戦った者も居る様ですわ」
「ああ、そうだな……きっと、警備兵の一部が裏切ったんだろう」
「裏切った?どういう事だ、こいつは事故じゃないのか?」
「実は……」
ハマーンは闘技場から魔物が逃げ出したのは事故か何かだと思っていたが、ドリスとリンは彼に闘技場内の兵士の中にシンと通じる裏切り者が存在し、その裏切り者が魔物を故意に解放した可能性がある事を話す。
「何だと……じゃあ、あの宰相がシャドウや白面と繋がっていたのか!?そんな馬鹿な……」
「私達も信じられませんわ。あの方はこの国のために尽くしてきたというのに……」
「だが、バッシュ王子の言葉と姫様が狙われた事、それにシノビの話が嘘だとは思えない……私達は騙されていたんだ」
「むうっ……あの宰相がまさかそんな大それたことを……」
ハマーンは宰相とは直接的な繋がりはないが、それでも彼が宰相になった時からよく噂は耳にしていた。この国がここまで大きく発展したのは宰相の手腕でもあり、まさかそんな彼が今回の騒動を引き起こした張本人の可能性が高いと聞かされて急には納得できない。
しかし、ドリスとリンがこの状況下で嘘を吐く理由が思い当たらず、そもそもハマーンも王国の関係者の中にこの国を転覆させようとする存在が居る事を薄々と勘付いていた。
イチノへ向かう途中、飛行船の操縦と補強を任せられたのはハマーンであり、あの時に侵入者や空賊が現れた時から彼も王国の内部に敵が潜んでいると察した。しかし、その相手がまさかの宰相と聞かされ、動揺を隠しきれない。
「儂はどうも信じられん。あの宰相が裏切り者など……」
「私も同じ気持ちですわ……もしかして宰相も脅されているのでは?シャドウと繋がりを持っているとリンさんはさっき言いましたが、もしかしたらそのシャドウに脅迫されてこんな事を仕出かしたのでは……」
「いや、それは有り得ないな」
「どうして言い切れる?」
ドリスとハマーンは宰相の行動は全てシャドウが裏で操っているのではないかと考えるが、その予想をリンは否定した。
「宰相の性格ならば脅迫に屈するぐらいならば死を選んでもおかしくはない。それにシノビが聞いた話によると宰相の一族は代々宰相の座に就き、この国を陰から操っていた……そう聞くと心当たりがあるだろう」
「た、確かに……」
「言われてみればおかしな話だな……そういえばかなり前、先代の宰相が引退した時、宰相候補だった貴族が死んだという噂も聞いた事があるが、まさかあれも宰相、いやシンの仕業なのか……?」
シンが宰相になる前、彼の父親が引退して宰相の位を息子に譲ろうとした時、実は別にもう一人だけ宰相の候補者が存在した。その候補者は貴族の出身でアッシュ公爵と同様に国王からの信頼も厚い男性だった。
しかし、彼は事故にあって死亡してしまい、宰相の座はシンが着く事になった。二人の話を聞かされたハマーンは今更ながらにあの時に死んだ宰相候補の貴族もシンの手の一族によって始末されたのかと考える。
「仮に今回の騒動が全て宰相が裏で引いていたとしたら……この国はこれからとんでもない事になるぞ。お主等、それを止める事が出来るのか?」
「「…………」」
ハマーンの言葉にドリスとリンは何も言い返せず、彼女達もこれからこの国がどうなるのか予想も出来なかった。
「儂もか?」
「恐らく、既に闘技場内にも敵が入り込んでいる。そいつらを抑えない限り、魔物はまた街中に放逐される可能性が高い」
「親方、そういう事なら二人に付いて行ってください!!」
「店の方は俺達が守りますよ!!」
ドリスとリンの言葉にハマーンは思い悩み、弟子たちの言葉を聞いて彼はため息を吐きながら同行を承諾した。
「仕方ないな……いいだろう、一緒に行ってやるか」
「助かりますわ!!」
「頼りにしているぞ……よし、行くぞ二人とも!!」
リンを先頭にドリスとハマーンも続き、三人は闘技場の内部へと入り込む。闘技場には普段はアッシュ公爵の配下の兵士達が待機しているはずだが、魔物が抜け出す時に最初の犠牲者になったのは兵士達だと判明する。
「こ、これは……」
「酷すぎますわ……」
「……間に合わなかったか」
闘技場の内部には多数の兵士と魔物の死骸が横たわっており、どうやら闘技場内に残っていた兵士達も魔物が外部に出さないために交戦したようだが、奮戦は虚しく敗れてしまったらしい。
闘技場の出入口の付近には数十体の兵士とオークの死骸が倒れており、他にもコボルトやホブゴブリンらしき魔物の死骸も含まれていた。ハマーンが対処したのは闘技場内の兵士が抑えきれなかった魔物達だと判明し、彼は両手を合わせて兵士達の冥福を祈る。
「どうやら闘技場の兵士が裏切って魔物を解放した……というわけでもなさそうですわね。中には魔物を外に出さない様に懸命に戦った者も居る様ですわ」
「ああ、そうだな……きっと、警備兵の一部が裏切ったんだろう」
「裏切った?どういう事だ、こいつは事故じゃないのか?」
「実は……」
ハマーンは闘技場から魔物が逃げ出したのは事故か何かだと思っていたが、ドリスとリンは彼に闘技場内の兵士の中にシンと通じる裏切り者が存在し、その裏切り者が魔物を故意に解放した可能性がある事を話す。
「何だと……じゃあ、あの宰相がシャドウや白面と繋がっていたのか!?そんな馬鹿な……」
「私達も信じられませんわ。あの方はこの国のために尽くしてきたというのに……」
「だが、バッシュ王子の言葉と姫様が狙われた事、それにシノビの話が嘘だとは思えない……私達は騙されていたんだ」
「むうっ……あの宰相がまさかそんな大それたことを……」
ハマーンは宰相とは直接的な繋がりはないが、それでも彼が宰相になった時からよく噂は耳にしていた。この国がここまで大きく発展したのは宰相の手腕でもあり、まさかそんな彼が今回の騒動を引き起こした張本人の可能性が高いと聞かされて急には納得できない。
しかし、ドリスとリンがこの状況下で嘘を吐く理由が思い当たらず、そもそもハマーンも王国の関係者の中にこの国を転覆させようとする存在が居る事を薄々と勘付いていた。
イチノへ向かう途中、飛行船の操縦と補強を任せられたのはハマーンであり、あの時に侵入者や空賊が現れた時から彼も王国の内部に敵が潜んでいると察した。しかし、その相手がまさかの宰相と聞かされ、動揺を隠しきれない。
「儂はどうも信じられん。あの宰相が裏切り者など……」
「私も同じ気持ちですわ……もしかして宰相も脅されているのでは?シャドウと繋がりを持っているとリンさんはさっき言いましたが、もしかしたらそのシャドウに脅迫されてこんな事を仕出かしたのでは……」
「いや、それは有り得ないな」
「どうして言い切れる?」
ドリスとハマーンは宰相の行動は全てシャドウが裏で操っているのではないかと考えるが、その予想をリンは否定した。
「宰相の性格ならば脅迫に屈するぐらいならば死を選んでもおかしくはない。それにシノビが聞いた話によると宰相の一族は代々宰相の座に就き、この国を陰から操っていた……そう聞くと心当たりがあるだろう」
「た、確かに……」
「言われてみればおかしな話だな……そういえばかなり前、先代の宰相が引退した時、宰相候補だった貴族が死んだという噂も聞いた事があるが、まさかあれも宰相、いやシンの仕業なのか……?」
シンが宰相になる前、彼の父親が引退して宰相の位を息子に譲ろうとした時、実は別にもう一人だけ宰相の候補者が存在した。その候補者は貴族の出身でアッシュ公爵と同様に国王からの信頼も厚い男性だった。
しかし、彼は事故にあって死亡してしまい、宰相の座はシンが着く事になった。二人の話を聞かされたハマーンは今更ながらにあの時に死んだ宰相候補の貴族もシンの手の一族によって始末されたのかと考える。
「仮に今回の騒動が全て宰相が裏で引いていたとしたら……この国はこれからとんでもない事になるぞ。お主等、それを止める事が出来るのか?」
「「…………」」
ハマーンの言葉にドリスとリンは何も言い返せず、彼女達もこれからこの国がどうなるのか予想も出来なかった。
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