貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
722 / 1,110
王国の闇

第709話 現代の最強の冒険者

しおりを挟む
(まさかこいつらもやられたのか!?そんな馬鹿なっ!!)


ゴウカが抱えている白銀級冒険者達とはガオウも接点があり、最近に昇格したばかりではあるが王都に滞在する白銀級冒険者の中で上位の実力を誇り、将来的には黄金級冒険者にも昇格する逸材だった。

いくら白面の暗殺者が厄介な相手とはいえ、白銀級冒険者が簡単に負けるとは思えない。しかし、現実にゴウカに抱えられた二人は酷い状態であり、いったい何があったのかを問い質す。


「そいつらをやったのは誰だ!?白面の仕業か!?」
『いいや、違うぞ』
「違うだと……なら、誰だ!?」
『ふむ……』


ガオウの質問に対してゴウカは抱えていた二人を近くの建物に背中を預けさせる形で座らせると、改めてガオウは二人の様子を見てある事に気付く。この二人の共通点はどちらも鎧を身に付けており、しかもただの鎧ではない。魔法金属のミスリルで構成された鎧だった。

魔法金属は普通の金属よりも硬度が高く、高い魔法耐性を誇る。だからこそ簡単には壊れないはずだが、二人の身に付けているミスリルの鎧は何があったのか亀裂が走り、半ば砕けていた。


(馬鹿なっ……ミスリルの鎧をここまで破壊する奴が敵にいるのか!?ゴブリンキングでも迷い込んだってのか!?)


魔法金属製の鎧が無残に砕けており、その光景を確認したガオウは焦りを抱かずにはいられない。魔法金属を破壊する程の強大な力を持つ存在が敵に回っていた場合、放置できない。


(くそ、こいつらは誰にやられたんだ!?ゴウカが連れてきたという事は敵を倒したのか……待てよ、こいつそもそも何処からこの二人を連れてきた?)


ゴウカが負傷した二人を運んでいた事にガオウはここで疑問を抱き、そもそも彼は何処でこの二人を回収したのか気になった。ここでガオウは二人が身に付けたミスリルの鎧の壊れ具合を確認し、ある予感を抱く。


(馬鹿な……いや、流石にないか)


自分の考えに対してガオウは即座に否定し、いくら何でも有り得ないと考えた。しかし、どうしてもガオウは確認せずにはいられず、震える声でゴウカに問い質す。


「おい、ゴウカ……こいつらをやったのは誰だ?」
『……やはり、お前は勘が鋭いな』
「まさかっ!?」


ゴウカはガオウの言葉に応えず、黙って彼は背中に抱えていた「竜殺しの大剣|《ドラゴンスレイヤー》」を引き抜く。その光景を見たガオウは即座に駆け出して彼と距離を取った。



――信じがたい事に白銀級冒険者二人を追い詰めた相手はゴウカである事が判明し、即座にガオウは臨戦態勢に入った。彼が何の目的でどうして同じ仲間であるはずの冒険者を狙ったのかは分からない。だが、この男が敵に回ったのであれば最悪の事態である。



王都の冒険者の間ではある話題がよく口にされる。その内容というのが最強の黄金級冒険者は何者かという議論であり、大半の冒険者は「ゴウカ」の名前を口にする。その理由は彼が他の黄金級冒険者と比べても圧倒的な功績を誇り、他の黄金級冒険者を相手にして後れを取った事がない。

組手という名目で冒険者達は互いに戦う事もあるが、ガオウは黄金級冒険者に昇格する前からゴウカに挑み、結局は一度も勝った事はない。彼だけではなく、ハマーンもリーナも元黄金級冒険者であるギガンでさえもゴウカに勝利した事は一度だってなかった。

唯一にゴウカに勝てる存在といえばマリンであり、魔術師である彼女ならば遠距離から攻撃を行ってゴウカを魔法で吹き飛ばす事はできるかもしれない。しかし、ゴウカとマリンが戦った事は一度もない。そもそもマリンは魔術師であっても武人ではなく、あまり自分の強さに興味はない。

しかし、ゴウカは常日頃から強者との戦いを求め、その姿はかつて王都に存在した伝説の冒険者「リョフ」と酷似しているとギガンとハマーンは考えていた。


『性格は全く違うが、ゴウカはリョフとよく似ておる』
『似ている……どんな感じだ?』
『口で説明するのは難しいが……二人とも絶対的な強者であるが故に同じ苦しみを抱いておるよるに儂は見えるな』
『何だそれ……意味が分からねえ』
『はははっ、お主も奴と同じぐらい強くなれば分かるかもしれんぞ……いや、それは無理か』
『喧嘩売ってんのか!?』
『すまんすまん、別にからかったわけではない。そもそも同じぐらいの強さを持つ相手がいればそれは最強とは呼ばんからな……』


若かりし頃にガオウはハマーンから言われた言葉を思い出し、リョフもゴウカも自分が強すぎるが故に戦いにおいても自分を追い詰める存在が居なくなり、満足できなかった。



――但し、リョフの場合は自分の強さを高め続けるために敵を求めたのに対し、ゴウカの場合は生まれた時から彼に並ぶ存在は一人もおらず、一度でいいから自分と同程度、あるいはそれ以上の強さを持つ存在との戦いを求めて彼は冒険者になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...