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王国の闇
第708話 城下町の攻防
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――王都の各地区では白面によって建物のあちこちで放火騒ぎが起きており、冒険者や警備兵だけでは対応できない状況に陥っていた。
「あちぃっ!?くそっ、おい誰か水属性の魔法を使える奴を呼んでくれよ!!」
「馬鹿野郎、そんな都合よく魔法が使える奴がいるかよ!!」
「じゃあ、俺達にどうしろってんだよ!?俺達に炎を消す方法なんてないだろ!!」
「だったら放火犯を探せ!!そいつをぶっ倒せば被害は抑えられる!!」
「くそっ……それしかないか!!」
「火災は我々に任せて下さい!!冒険者の皆様は住民の避難と白面の対処をお願いします!!」
「悪い、任せたぞ!!」
冒険者は主に住民の避難を行い、城下町の人間に白面が襲い掛かってきた場合は彼等が対処を行う。兵士は火事の対処に集中する。
だが、ここで火災の方に異変が生じ始めた。最初の内は燃え盛っていた炎だが、時間が経過するにつれて炎が急速的に弱まり、兵士が何かする前に勝手に火が消えてしまう。その光景を確認した兵士達は驚き、何が起きたのか理解できなかった。
「あ、あれ?おい、どうなってるんだ?火が勝手に消えたぞ……」
「こ、こっちの建物もだ!!」
「おいおい、どういう事だ!?」
炎を消すために大量のバケツに水を注いで駆けつけてきた兵士達だが、勝手に炎が消えていく光景を見て戸惑い、最初の内は城下町のあちこちで起きていた火災が自然と鎮火していく。
普通の炎ならば簡単に消える事はなく、勝手に炎が消えるなど有り得ない。ならば考えられるのはこの炎が普通の炎ではなく、魔法か何かで作り出された炎ならば時間経過で消えるのはあり得る話だった。
「お、おい!!これを見ろ、こいつが炎を噴き出していたんだ!!」
「何だって!?」
「これは……魔道具、か?工場区の職人が作ったのか?」
上の階だけが焼け崩れた建物の中から兵士が魔道具らしき物体を発見し、どうやら魔道具に嵌めた火属性の魔石を利用して炎を噴き出す仕掛けらしく、建物が燃えた原因は魔道具が炎を噴いたのが原因だと判明した。
魔法で生み出した炎は普通の水では消す事はできず、水属性の魔法で対処しなければならない。だが、魔法で作り出した炎は長時間の維持は出来ず、火属性の魔力を生み出し続けなければ燃え盛る事はない。だから魔石の魔力が切れれば自然と消えてしまう。
「おい、じゃあ建物が燃えていたのはこいつが炎を噴き出し続けていたせいか!?」
「ど、どうりで水を浴びせても消えないはずだ……」
「くそ、誰がこんな真似を!?悪戯にしては質が悪すぎるぞ!!」
「本当だよ、意味が分からねえっ……どうしてこんなもんを作ったんだ?」
城下町ではあちこちで火災が発生したが、実際の所は被害はそれほどではなく、全焼した建物は一軒も確認されていない。まるで放火魔が街に大きな被害を与えるのを故意に避けた様な感じさえするため、兵士達は不気味に思う――
――同時刻、商業区の方では冒険者達が白面を追跡し、彼等を捕まえるために高階級の冒険者達が対処を行っていた。
「おら、待ちやがれっ!!」
「シャアッ!!」
「何が……しゃあっ、だっ!!蛇かお前等はっ!!」
「ふがぁっ!?」
黄金級冒険者であるガオウは持ち前の身軽さを生かして、建物の屋根の上を疾走する白面を次々と打ち倒し、放火を食い止める。しかし、いくら倒してもあちこちに白面が出現して切りがない。
(こいつら、どんだけいるんだ!?今まで何処に隠れてやがった……くそっ、こんな時にリーナも坊主も居ないのか!!)
事前にガオウはリーナ達が王都を離れる話を聞いており、この話はハマーンから聞かされていた。ハマーンの方も工場区の自分の店を守るために行動に移しているはずであり、ガオウはこの商業区に現れた白面の対処に集中する。
白面の暗殺者は一人一人が手練れのため、いくら黄金級冒険者のガオウでも苦戦を強いられていた。もっと人手があればいいのだが、泣き言を言っている暇はない。
『はっはっはっ!!活躍しているようだな、ガオウ!!』
「ゴウカ!?お前、今まで何してやがった!?」
地上から声を掛けられたガオウは驚いて振り返ると、そこにはゴウカの姿があった。こんな時だけは頼りになる存在のため、ガオウはゴウカにも白面の捕縛を手伝うように告げようとした瞬間、彼が両手に抱えている者を見て戸惑う。
「お、おい……お前、何だそれは?」
『ん?ああ、こいつらの事か?最近に金級冒険者に昇格した剣士と槍使いだ。お前も顔を知っているだろう?』
「あ、ああ……知ってはいるが、俺が聞きたいのはどうしてそいつらを抱えているかだ」
ゴウカは何故か両腕に白銀級冒険者達を抱えており、この状況下でどうして彼が仲間であるはずの冒険者を捕まえているのか戸惑う。しかも様子を見た限りだと二人も深手を負っており、動ける状態ではない。
「あちぃっ!?くそっ、おい誰か水属性の魔法を使える奴を呼んでくれよ!!」
「馬鹿野郎、そんな都合よく魔法が使える奴がいるかよ!!」
「じゃあ、俺達にどうしろってんだよ!?俺達に炎を消す方法なんてないだろ!!」
「だったら放火犯を探せ!!そいつをぶっ倒せば被害は抑えられる!!」
「くそっ……それしかないか!!」
「火災は我々に任せて下さい!!冒険者の皆様は住民の避難と白面の対処をお願いします!!」
「悪い、任せたぞ!!」
冒険者は主に住民の避難を行い、城下町の人間に白面が襲い掛かってきた場合は彼等が対処を行う。兵士は火事の対処に集中する。
だが、ここで火災の方に異変が生じ始めた。最初の内は燃え盛っていた炎だが、時間が経過するにつれて炎が急速的に弱まり、兵士が何かする前に勝手に火が消えてしまう。その光景を確認した兵士達は驚き、何が起きたのか理解できなかった。
「あ、あれ?おい、どうなってるんだ?火が勝手に消えたぞ……」
「こ、こっちの建物もだ!!」
「おいおい、どういう事だ!?」
炎を消すために大量のバケツに水を注いで駆けつけてきた兵士達だが、勝手に炎が消えていく光景を見て戸惑い、最初の内は城下町のあちこちで起きていた火災が自然と鎮火していく。
普通の炎ならば簡単に消える事はなく、勝手に炎が消えるなど有り得ない。ならば考えられるのはこの炎が普通の炎ではなく、魔法か何かで作り出された炎ならば時間経過で消えるのはあり得る話だった。
「お、おい!!これを見ろ、こいつが炎を噴き出していたんだ!!」
「何だって!?」
「これは……魔道具、か?工場区の職人が作ったのか?」
上の階だけが焼け崩れた建物の中から兵士が魔道具らしき物体を発見し、どうやら魔道具に嵌めた火属性の魔石を利用して炎を噴き出す仕掛けらしく、建物が燃えた原因は魔道具が炎を噴いたのが原因だと判明した。
魔法で生み出した炎は普通の水では消す事はできず、水属性の魔法で対処しなければならない。だが、魔法で作り出した炎は長時間の維持は出来ず、火属性の魔力を生み出し続けなければ燃え盛る事はない。だから魔石の魔力が切れれば自然と消えてしまう。
「おい、じゃあ建物が燃えていたのはこいつが炎を噴き出し続けていたせいか!?」
「ど、どうりで水を浴びせても消えないはずだ……」
「くそ、誰がこんな真似を!?悪戯にしては質が悪すぎるぞ!!」
「本当だよ、意味が分からねえっ……どうしてこんなもんを作ったんだ?」
城下町ではあちこちで火災が発生したが、実際の所は被害はそれほどではなく、全焼した建物は一軒も確認されていない。まるで放火魔が街に大きな被害を与えるのを故意に避けた様な感じさえするため、兵士達は不気味に思う――
――同時刻、商業区の方では冒険者達が白面を追跡し、彼等を捕まえるために高階級の冒険者達が対処を行っていた。
「おら、待ちやがれっ!!」
「シャアッ!!」
「何が……しゃあっ、だっ!!蛇かお前等はっ!!」
「ふがぁっ!?」
黄金級冒険者であるガオウは持ち前の身軽さを生かして、建物の屋根の上を疾走する白面を次々と打ち倒し、放火を食い止める。しかし、いくら倒してもあちこちに白面が出現して切りがない。
(こいつら、どんだけいるんだ!?今まで何処に隠れてやがった……くそっ、こんな時にリーナも坊主も居ないのか!!)
事前にガオウはリーナ達が王都を離れる話を聞いており、この話はハマーンから聞かされていた。ハマーンの方も工場区の自分の店を守るために行動に移しているはずであり、ガオウはこの商業区に現れた白面の対処に集中する。
白面の暗殺者は一人一人が手練れのため、いくら黄金級冒険者のガオウでも苦戦を強いられていた。もっと人手があればいいのだが、泣き言を言っている暇はない。
『はっはっはっ!!活躍しているようだな、ガオウ!!』
「ゴウカ!?お前、今まで何してやがった!?」
地上から声を掛けられたガオウは驚いて振り返ると、そこにはゴウカの姿があった。こんな時だけは頼りになる存在のため、ガオウはゴウカにも白面の捕縛を手伝うように告げようとした瞬間、彼が両手に抱えている者を見て戸惑う。
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『ん?ああ、こいつらの事か?最近に金級冒険者に昇格した剣士と槍使いだ。お前も顔を知っているだろう?』
「あ、ああ……知ってはいるが、俺が聞きたいのはどうしてそいつらを抱えているかだ」
ゴウカは何故か両腕に白銀級冒険者達を抱えており、この状況下でどうして彼が仲間であるはずの冒険者を捕まえているのか戸惑う。しかも様子を見た限りだと二人も深手を負っており、動ける状態ではない。
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