貧弱の英雄

カタナヅキ

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王国の闇

第705話 王女誘拐

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「――何だか、嫌な予感がするね」
「や、止めてください!!テンさんの予感ほど当たる事はないのですから……」
「やはり、バッシュ王子の事が気になりますか?」


王城内にて白狼騎士団を除く、三つの騎士団が勢揃いしていた。黒狼騎士団、銀狼騎士団、聖女騎士団の全員が揃っており、彼女達はバッシュの命令を受けてこの場所で待機していた。

バッシュは国王の元へ向かい、シンこそが裏社会を牛耳る存在と恐れられたシャドウと繋がりを持ち、リノの命を狙った存在だと報告するつもりだった。だが、国王にそんな事を話しても信じて貰えるとは限らず、もしも彼の話を国王が聞き入れなかった場合は力ずくでもシンを捕縛するつもりだった。

王国騎士団がここに集めれられた理由はバッシュの命令を待ち、シンを捕えるためである。バッシュが戻り次第、彼女達はシン宰相を捕まえるつもりだった。シンはシャドウや白面とも繋がりを持ち、もしもシンが逃げだそうとした時にシャドウや白面の妨害を会う可能性を考慮して戦力を集結させる。


「それにしても宰相を一人捕まえるためにこれだけの騎士を集める必要があったのかね」
「合同訓練という名目上、仕方がありませんわ」
「だが、これだけの人数を集めれば仮にシャドウが現れようと確実に捕まえられる」


訓練場内には王国騎士が勢揃いしており、この場に集まった者達がこの国の精鋭部隊といっても過言ではなく、仮にシャドウや白面が現れようと負ける気はしない。

テンからすればシャドウは王妃を死に追い込んだ相手の一人でもあり、他の聖女騎士団の騎士達からすれば王妃の仇を討つ絶好の機会である。まんまとシャドウが姿を現した時、彼女達は何を犠牲にしても彼を討つ事を誓う。


「出てくるならさっさと現れてほしいね……」
「……だが、いくら何でも遅くはないか?」
「まさか、バッシュ王子の身に何か起きたのでは……」
「けど、シノビの奴がバッシュ王子の様子を見に行ったんだろう?」


バッシュが去った後、彼の身を心配したリノはシノビに命じて彼の後を追わせる。もしもバッシュの身に何か起きた場合、この国の未来が脅かされる。そう諭してリノはバッシュの事をシノビに頼んだ。

もしもバッシュの身に何か起きればシノビが彼を助け出し、すぐにテン達に連絡を送る手はずだった。だが、どういう事かバッシュもシノビも連絡が送り込まれず、彼女達は訝しむ。


「……そういえばリノ王女は何処に行ったんだい?」
「あら?確かに先ほどまでここに居ましたのに……」
「何だと……リノ王女は何処だ!?」


何時の間にかリノも姿を消している事に気付いたテン達は彼女の姿を探すが、何処にもいない。急に消えたリノの身を案じ、三人は探し出そうとした時に慌てた兵士が駆けつけてきた。


「た、大変です!!」
「どうした!?」
「何があったんだい!?」
「バッシュ王子の伝言ですの!?」


駆けつけてきた兵士に3人は顔を向けると、兵士は酷く慌てた様子でその場に跪き、信じられない言葉を告げた。


「バ、バッシュ王子とリノ王女が……誘拐されました!!」
「何だって!?」
「そ、そんな馬鹿なっ……」
「どういう事だ、詳しく話せっ!!」


兵士の言葉を聞いて王国騎士達は衝撃の表情を浮かべ、報告に訪れた兵士にリンが詰め寄り、無理やりに立ち上がらせて詳細を問い質す。兵士は苦しそうな表情を浮かべながら伝言を伝えた。


「わ、我々も詳しい状況は分からないんです……急に城内からバッシュ王子が姿を消し、更にシノビという男がリノ王女を連れ去ったとしか聞いておりません……!!」
「シノビがリノ王女!?」
「そ、そんな馬鹿な……」
「確かに王女の姿は見えないが……何故、そんな事を!?」


兵士の報告を聞いてテン達は何が起きているのか分からず、リンは兵士を手放すとドリスとテンに向かい合う。

いったい何が起きているのか分からず、バッシュの作戦はどうなったのか、どうしてシノビがリノを連れて逃げたのか、疑問が尽きないが分かっている事があるとすれば今回の一件はシンが裏で糸を引いている事だけだった。


(宰相……あんた、いったい何を仕出かすつもりだい!?)


シンの考えは読み取れないが、状況的に考えても彼に先手を取られた事は間違いなく、テンは悔しく思う。彼女はシンとも付き合いが長く、とても国を裏切るような男には思えなかった。だからこそバッシュの話を聞いた時も半信半疑だったのに、この状況下では彼が何かを市郡だようにしか思えない。

テンは自分達が嵌められた事を悟り、急いでバッシュを救い出してリノ達の後を追う必要があった。だが、こんな時に更に三人の元に急報が届く。
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