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王都の異変
第703話 全てはこの国のために……
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――時は現代へ戻り、宰相が用意した兵士によってバッシュは拘束され、彼は王城内に存在する地下牢へと送り込まれる。抵抗できない様に彼は魔法金属製の枷を嵌められ、檻の中へと閉じ込められた。
バッシュは憎々し気な表情を浮かべて鉄格子越しに自分を見下ろすシンを見上げ、その視線を正面から受けながらもシンは動じずに告げる。
「申し訳ございません、バッシュ王子……しかし、これも必要な事なのです」
「ふざけるな!!貴様、こんな事をしてただで済むと思っているのか!?」
「無論、相応の報いを受ける覚悟はあります。貴方はいずれこの国の王となられる御方……全てが終わればここから解放し、私は罪を受けましょう」
「……何だと?」
シンの意外な言葉にバッシュは呆気に取られ、彼は自分が目的を果たすまでの間だけ、この場所に彼を閉じ込める事を伝える。
「王子、これだけは信じてください。私は決して自分のためだけに貴方をこのような場所に閉じ込め、リノ王女を排除しようとしているわけではないのです」
「排除、だと……やはり、貴様の目的はリノか!?」
「正確に言えば……この国に害を為す存在全てを消す事が私の生涯の役目だと思っております」
バッシュはシンの言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべ、国に害を為す存在とはリノの事を差しているのかと思ったが、彼の口ぶりからリノ以外にもこの国を脅かす存在が居る様に聞こえた。
「どういう意味だ!!貴様の目的は何だ、全て答えろ!!」
「分かりました。ここまで来た以上、貴方には隠し事は行いませぬ……しかし、心しておき下さい」
「……言ってみろ」
シンは本当にバッシュには危害を与えるつもりはないらしく、檻越しに彼の前で跪き、自分の正体と目的を話し始めた――
――シンの一族は名家で彼の家の人間の殆どが宰相や大臣の位に就いている。建国した時から先祖代々国王の右腕として活躍し、この王国の発展のために尽くしていた。
王国が大国として発展したのはシンの一族の貢献が大きく、彼等は国を支えてきた忠臣の一族である。しかし、実際の所は彼等の正体は国を支えるというよりも、国に害を為す存在を排除する事で国を守ってきたという方が正しい。
これまでにシンの一族は表向きは王国に仕える一方で裏で暗躍し、国の害となる存在を抹消し続けてきた。時には王族さえも邪魔になると判断した存在を躊躇なく始末した事もあり、国の代表でもある国王を暗殺した事もあった。
シンの一族が真に忠誠を誓う相手は王族ではなく、この国その物だった。国の益に繋がるのならばそれが国を治める立場の王族であろうと容赦なく始末し、自分達に都合がいい王族を国王として仕立て上げる。そんな事を繰り返していくうちに王国は順調に発展していった。
実を言えば先代の国王が亡くなったのもシンの父親が関係しており、先代の国王は現在の国王と比べると好戦派の人間でよく他国に攻め入ろうとしていた。しかし、度重なる戦によって民に負担を大きく与え、このままでは国が崩壊してしまうと考えたシンの父親は国王を暗殺し、王子に王位を継がせた。その王子こそが現代の国王である。
国に仕える身でありながらシンの一族は影から国を動かし、国の害悪になると判断した存在を抹消してきた。そして今現在はこの国で最も害となる可能性が高いのはリノである事に間違いなく、シンは先祖と同じように彼女を排除する事を決めた――
「ご理解ください、王子様……リノ王女を生かせば獣人国との間に不和を齎します。それならばいっその事、リノ王女を始末して問題を解決するしかないのです」
「ふざけるな!!貴様は家臣の分際で忠誠を誓った相手を殺すのか!?」
「お言葉ですが、私が忠誠を誓うのは王族《あなたがた》ではなく、この国でございます。王国の発展のためとあれば私は喜んで犠牲となりましょう。それにリノ王女の排除をすれば獣人国の国王も公爵もこれまで通りの関係を結ぶ事を約束されました」
「何だと……貴様、まさか獣人国とも繋がっているというのか!?」
「獣人国だけではありません、巨人国も他の国も……我々の一族は貴方達が思っているよりも繋がりを持っています」
シンは獣人国と既に密約を交わし、リノを殺す事を条件に両国の関係を保つ事を約束していた。その話を聞いてバッシュは自分が思い違いをしていた事を知り、目の前の男はただの一家臣ではなく、自分の想像以上にこの国に根を張る存在だと知る。
(まずい……この男をこのまま放置すれば大変な事が起きる)
バッシュは自分がシンという存在を見誤っていた事を悟り、何としても止めようとした。しかし、牢獄に閉じ込められた彼ではどうしようもできない。
「リノ王女を殺し、そして私は自害すれば今回の一件は収まります。貴方は何も気にする事はありません……どうか、この国の未来のために立派な王となって下さい」
「ふざけるなぁあああっ!!」
シンはバッシュに一方的に告げると、彼を残して立ち去る。その後姿にバッシュは怒りをぶつけるが、檻に閉じ込められた彼にはどうする事もできなかった――
バッシュは憎々し気な表情を浮かべて鉄格子越しに自分を見下ろすシンを見上げ、その視線を正面から受けながらもシンは動じずに告げる。
「申し訳ございません、バッシュ王子……しかし、これも必要な事なのです」
「ふざけるな!!貴様、こんな事をしてただで済むと思っているのか!?」
「無論、相応の報いを受ける覚悟はあります。貴方はいずれこの国の王となられる御方……全てが終わればここから解放し、私は罪を受けましょう」
「……何だと?」
シンの意外な言葉にバッシュは呆気に取られ、彼は自分が目的を果たすまでの間だけ、この場所に彼を閉じ込める事を伝える。
「王子、これだけは信じてください。私は決して自分のためだけに貴方をこのような場所に閉じ込め、リノ王女を排除しようとしているわけではないのです」
「排除、だと……やはり、貴様の目的はリノか!?」
「正確に言えば……この国に害を為す存在全てを消す事が私の生涯の役目だと思っております」
バッシュはシンの言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべ、国に害を為す存在とはリノの事を差しているのかと思ったが、彼の口ぶりからリノ以外にもこの国を脅かす存在が居る様に聞こえた。
「どういう意味だ!!貴様の目的は何だ、全て答えろ!!」
「分かりました。ここまで来た以上、貴方には隠し事は行いませぬ……しかし、心しておき下さい」
「……言ってみろ」
シンは本当にバッシュには危害を与えるつもりはないらしく、檻越しに彼の前で跪き、自分の正体と目的を話し始めた――
――シンの一族は名家で彼の家の人間の殆どが宰相や大臣の位に就いている。建国した時から先祖代々国王の右腕として活躍し、この王国の発展のために尽くしていた。
王国が大国として発展したのはシンの一族の貢献が大きく、彼等は国を支えてきた忠臣の一族である。しかし、実際の所は彼等の正体は国を支えるというよりも、国に害を為す存在を排除する事で国を守ってきたという方が正しい。
これまでにシンの一族は表向きは王国に仕える一方で裏で暗躍し、国の害となる存在を抹消し続けてきた。時には王族さえも邪魔になると判断した存在を躊躇なく始末した事もあり、国の代表でもある国王を暗殺した事もあった。
シンの一族が真に忠誠を誓う相手は王族ではなく、この国その物だった。国の益に繋がるのならばそれが国を治める立場の王族であろうと容赦なく始末し、自分達に都合がいい王族を国王として仕立て上げる。そんな事を繰り返していくうちに王国は順調に発展していった。
実を言えば先代の国王が亡くなったのもシンの父親が関係しており、先代の国王は現在の国王と比べると好戦派の人間でよく他国に攻め入ろうとしていた。しかし、度重なる戦によって民に負担を大きく与え、このままでは国が崩壊してしまうと考えたシンの父親は国王を暗殺し、王子に王位を継がせた。その王子こそが現代の国王である。
国に仕える身でありながらシンの一族は影から国を動かし、国の害悪になると判断した存在を抹消してきた。そして今現在はこの国で最も害となる可能性が高いのはリノである事に間違いなく、シンは先祖と同じように彼女を排除する事を決めた――
「ご理解ください、王子様……リノ王女を生かせば獣人国との間に不和を齎します。それならばいっその事、リノ王女を始末して問題を解決するしかないのです」
「ふざけるな!!貴様は家臣の分際で忠誠を誓った相手を殺すのか!?」
「お言葉ですが、私が忠誠を誓うのは王族《あなたがた》ではなく、この国でございます。王国の発展のためとあれば私は喜んで犠牲となりましょう。それにリノ王女の排除をすれば獣人国の国王も公爵もこれまで通りの関係を結ぶ事を約束されました」
「何だと……貴様、まさか獣人国とも繋がっているというのか!?」
「獣人国だけではありません、巨人国も他の国も……我々の一族は貴方達が思っているよりも繋がりを持っています」
シンは獣人国と既に密約を交わし、リノを殺す事を条件に両国の関係を保つ事を約束していた。その話を聞いてバッシュは自分が思い違いをしていた事を知り、目の前の男はただの一家臣ではなく、自分の想像以上にこの国に根を張る存在だと知る。
(まずい……この男をこのまま放置すれば大変な事が起きる)
バッシュは自分がシンという存在を見誤っていた事を悟り、何としても止めようとした。しかし、牢獄に閉じ込められた彼ではどうしようもできない。
「リノ王女を殺し、そして私は自害すれば今回の一件は収まります。貴方は何も気にする事はありません……どうか、この国の未来のために立派な王となって下さい」
「ふざけるなぁあああっ!!」
シンはバッシュに一方的に告げると、彼を残して立ち去る。その後姿にバッシュは怒りをぶつけるが、檻に閉じ込められた彼にはどうする事もできなかった――
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