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王都の異変
第702話 ネズミの置き土産
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リノが銀狼騎士団を率いるようになってから、彼女は王都を離れて活動する事が多かった。実際にゴブリンキングの捜索の際も一年近くも王都を離れ、各領地を回ってゴブリンキングなる存在の捜索を行い、最終的にはイチノにてゴブリンの軍勢に襲われる事態を引き起こした。
これらの出来事が本当にただの偶然だったのか、バッシュはその事に疑問を抱く。王都を離れて行動する任務を銀狼騎士団はたて続けに与えられており、内密にバッシュは調査を行う。結果から言えばリノに任務を与えていたのは宰相のシンだと判明する。つまり、リノを王都から離れさせていた人間の正体はシンだった。
詳しく調べたところ、リノが生まれたばかりの頃、彼女を王女としてではなく王子として育てるように進言したのもシンである事が判明する。
『宰相め……まさか、お前がリノを排除しようとしていたのか……!?』
リノを王子として育てさせる事、そして彼女に遠征の任務ばかりを与えていた人物の正体がシンだと判明し、こうなると飛行船に現れた侵入者や空賊の件も彼が関わっているのではないかとバッシュは疑う。
飛行船に潜んでいた侵入者は殺され、空賊の頭も自決した事から黒幕に繋がる証拠は掴めなかった。だが、一番怪しい人物はシン以外には存在しないのは事実であり、バッシュは更に調査を進める。
この時に彼にとって嬉しい誤算はリノが連れて帰ってきたシノビであり、彼は非常に優秀な男だった。王都に存在するどんな暗殺者よりも腕が立ち、情報収集能力にも長けていた。しかもリノに対して思慕を抱いているのは明白であり、彼はリノのためならばどんな危険な任務も引き受けてくれた。
『宰相め……やはり、奴の仕業か』
『間違いはないかと……』
バッシュは内密にシノビから報告を受け、遂にシンがリノの命を狙う事を知る情報を突き止めた。その情報を持っていたのはネズミと呼ばれる老婆であり、実は彼女はシンと繋がりを持っていた事が判明する。
情報屋のネズミは現在は消息不明だが、実を言えば彼女が根城にしていた場所にシノビは訪れると、情報屋のネズミがシンと繋がりを持つ証拠が残っていた。それは彼女が残した日記であり、万が一の場合に備えてネズミは日記を書いていた。
その日記の内容によると、彼女は随分と前からシンと繋がりを持っていたらしく、宰相の命令で偽情報を流したりしていた。しかもネズミが調べたところによるとシンは裏社会の人物とも繋がりを持ち、その人物の正体があの「シャドウ」だと判明した。
『ネズミという情報屋、腕前は確かの様です』
『そうか……だが、よくこんな物を持ち帰れたな』
『実はネズミが死ぬ前、本人から話を伺いました』
イゾウが死んだ後、ネズミはシャドウと敵対した事を悟り、近い将来に自分は消される事に気付いた。そこで彼女は黙って殺されるぐらいならばとシノビと接触し、自分がもしも死んだときの場合に備えて彼女が根城にしている場所を教える。
娘のように愛情を抱いていたテンではなく、出会ったばかりのシノビに頼んだのかというと、テンの性格を考えるとネズミを殺されるかもしれないと知ればどんな手を使っても守ろうとする事を彼女は知っていた。だから、テンを危険な目に巻き込ませたくないと思ったネズミはシノビに託した。
『自分の娘に守られて生き長らえるぐらいなら、いっそのこと死んだ方がマシだね……そっちの方があいつも長生きするだろうよ』
『……逃げないのか?』
『逃げた所でどうしようもない事は知っているからね……だから、あいつの事は頼んだよ』
日記の存在をネズミはシノビに告げると、彼女はその日のうちに消息不明となり、現在も見つかっていない。しかし、シャドウが彼女を取り逃したとは思えず、シノビは彼女の死を悟る。
唯一の救いはネズミは最後にテンと言葉を交わし、自分は王都を去ると伝えた。そのため、テンはネズミが王都を去って今も生きていると信じている事だろう。しかし、シノビはシャドウという男がそれほど甘い人物だとは思わず、十中八九は既にネズミはこの世から消えていると判断した。
『この日記は残念ながら証拠にはならないでしょう。しかし、書かれている内容は真実だと俺は思います』
『どうして言い切れる?お前はネズミという女の事はよく知らないのだろう?』
『……別れ際、彼女の強い決意を感じました。自分が死ぬとしても、決してただで死なないという思いを感じました』
『決意、か……』
シノビの言葉を聞いたバッシュは日記を確認し、これだけではシンを追い詰める証拠にはならない。だが、シノビの言う通りに死を覚悟した人間が残した代物である事は間違いなく、彼はあった事もないネズミの事を信じてシンこそがリノの命を狙う黒幕だと確信を抱く――
これらの出来事が本当にただの偶然だったのか、バッシュはその事に疑問を抱く。王都を離れて行動する任務を銀狼騎士団はたて続けに与えられており、内密にバッシュは調査を行う。結果から言えばリノに任務を与えていたのは宰相のシンだと判明する。つまり、リノを王都から離れさせていた人間の正体はシンだった。
詳しく調べたところ、リノが生まれたばかりの頃、彼女を王女としてではなく王子として育てるように進言したのもシンである事が判明する。
『宰相め……まさか、お前がリノを排除しようとしていたのか……!?』
リノを王子として育てさせる事、そして彼女に遠征の任務ばかりを与えていた人物の正体がシンだと判明し、こうなると飛行船に現れた侵入者や空賊の件も彼が関わっているのではないかとバッシュは疑う。
飛行船に潜んでいた侵入者は殺され、空賊の頭も自決した事から黒幕に繋がる証拠は掴めなかった。だが、一番怪しい人物はシン以外には存在しないのは事実であり、バッシュは更に調査を進める。
この時に彼にとって嬉しい誤算はリノが連れて帰ってきたシノビであり、彼は非常に優秀な男だった。王都に存在するどんな暗殺者よりも腕が立ち、情報収集能力にも長けていた。しかもリノに対して思慕を抱いているのは明白であり、彼はリノのためならばどんな危険な任務も引き受けてくれた。
『宰相め……やはり、奴の仕業か』
『間違いはないかと……』
バッシュは内密にシノビから報告を受け、遂にシンがリノの命を狙う事を知る情報を突き止めた。その情報を持っていたのはネズミと呼ばれる老婆であり、実は彼女はシンと繋がりを持っていた事が判明する。
情報屋のネズミは現在は消息不明だが、実を言えば彼女が根城にしていた場所にシノビは訪れると、情報屋のネズミがシンと繋がりを持つ証拠が残っていた。それは彼女が残した日記であり、万が一の場合に備えてネズミは日記を書いていた。
その日記の内容によると、彼女は随分と前からシンと繋がりを持っていたらしく、宰相の命令で偽情報を流したりしていた。しかもネズミが調べたところによるとシンは裏社会の人物とも繋がりを持ち、その人物の正体があの「シャドウ」だと判明した。
『ネズミという情報屋、腕前は確かの様です』
『そうか……だが、よくこんな物を持ち帰れたな』
『実はネズミが死ぬ前、本人から話を伺いました』
イゾウが死んだ後、ネズミはシャドウと敵対した事を悟り、近い将来に自分は消される事に気付いた。そこで彼女は黙って殺されるぐらいならばとシノビと接触し、自分がもしも死んだときの場合に備えて彼女が根城にしている場所を教える。
娘のように愛情を抱いていたテンではなく、出会ったばかりのシノビに頼んだのかというと、テンの性格を考えるとネズミを殺されるかもしれないと知ればどんな手を使っても守ろうとする事を彼女は知っていた。だから、テンを危険な目に巻き込ませたくないと思ったネズミはシノビに託した。
『自分の娘に守られて生き長らえるぐらいなら、いっそのこと死んだ方がマシだね……そっちの方があいつも長生きするだろうよ』
『……逃げないのか?』
『逃げた所でどうしようもない事は知っているからね……だから、あいつの事は頼んだよ』
日記の存在をネズミはシノビに告げると、彼女はその日のうちに消息不明となり、現在も見つかっていない。しかし、シャドウが彼女を取り逃したとは思えず、シノビは彼女の死を悟る。
唯一の救いはネズミは最後にテンと言葉を交わし、自分は王都を去ると伝えた。そのため、テンはネズミが王都を去って今も生きていると信じている事だろう。しかし、シノビはシャドウという男がそれほど甘い人物だとは思わず、十中八九は既にネズミはこの世から消えていると判断した。
『この日記は残念ながら証拠にはならないでしょう。しかし、書かれている内容は真実だと俺は思います』
『どうして言い切れる?お前はネズミという女の事はよく知らないのだろう?』
『……別れ際、彼女の強い決意を感じました。自分が死ぬとしても、決してただで死なないという思いを感じました』
『決意、か……』
シノビの言葉を聞いたバッシュは日記を確認し、これだけではシンを追い詰める証拠にはならない。だが、シノビの言う通りに死を覚悟した人間が残した代物である事は間違いなく、彼はあった事もないネズミの事を信じてシンこそがリノの命を狙う黒幕だと確信を抱く――
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