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王都の異変
第682話 クーノの下水道
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――時は現代に戻り、アルト達の連絡と捕縛した白面の引き渡しはクノに任せ、ナイ達はゴエモンの案内で下水道へと降りると、白面の拠点と思われる区画へ向かう。
「へえっ、下水道というから汚い所を想像してたけど……臭くはないんだね」
「あちこちに魔石が嵌め込まれているだろう?そいつは悪臭を吸い上げる機能を持っている。消臭石と呼ばれる魔石だ」
「臭いは感じないのは良いけど、あんまり綺麗な場所じゃないのは間違いないからね……」
「そういえば随分前にイチノの下水道でも見たことがある気がする」
モモは下水道を降りるのは初めてらしく、リーナは駆け出しの冒険者の頃は下水道の仕事などもやらされていたため慣れた様子だった。ナイもかつてイチノの下水道に降りた事があり、名前は知らなかったが臭いを吸い上げる魔石の存在は知っていた。
ゴエモンは記憶を辿りに先を進み、彼が書き嗅げた地図の方はクノに渡していた。何年も費やしてゴエモンはこの街の下水道を完璧に把握し、迷わずに突き進む。
「もうそろそろ、目的地に辿り着く!!奴等の見張りもいる可能性が高い、ここからは灯り無しで進むぞ!!」
「えっ!?暗くて見えないよ!?」
「大丈夫、僕は暗視の技能もあるから暗い場所でも平気……だから手を握ってモモを連れて行くよ」
「あ、うん……し、しっかり握ってね」
「むうっ……」
「ぷるぷるっ……」
ナイは暗闇の中でも見通せる暗視の技能も所持しており、こちらの技能は暗闇の中でも周囲の光景を把握できる非情に便利な技能だった。
モモがナイに手を握りしめられて照れくさそうな表情を浮かべると、リーナが胸がもやもやとするが、今は仕事に集中する事にした。この時にプルミンはナイの頭の上に移動し、何かを感知したらすぐに知らせる。
「ぷるぷるっ……」
「プルリン、何か感じるの?」
「ぷるんっ……」
プルリンは下水道の曲がり角を頭に生えている触手で示し、それを確認したナイとゴモエンはお互いの顔を見て頷く。
ナイは心眼を発動させ、曲がり角の先に潜む存在を感知する。距離が離れていようと心眼の範囲内ならば捉える事ができるため、曲がり角の先に誰かが立っている事に気付いたナイは皆に伝える。
「モモ、リーナの傍に居て……あの角の先に見張りが居ると思う」
「えっ……だ、大丈夫?」
「問題ない、すぐに終わらせるよ」
ナイはリーナにモモの事を任せると、曲がり角に慎重に近づき、この時に「隠密」
「無音歩行」の技能を発動させ、存在感を限りなく消す。ゴエモン程ではないがナイも隠密を扱え、更にこの暗闇では姿が見えにくい事も重なって一流の暗殺者だとしても気づかない。
曲がり角の先に立っていたのは予想通り白面であり、こんな人気のない場所でも白面を被って立ち尽くしていた。人数は一人だと把握したナイはゴエモンに頷く。
(よし……今だ!!)
ナイは水路に向けて空になった聖水が入っていた硝子瓶を放り込むと、水面に瓶が落ちた際に水飛沫が上がり、それに勘付いた白面の注意が反れる。その瞬間を逃さずにナイとゴエモンは白面の元へ向かう。
「ッ――!?」
「ふんっ!!」
唐突に現れた二人に白面は驚愕し、慌てて武器を構えようとしたがナイの方が一瞬早く相手の顔面を掴み、壁に叩きつける。音を立ててしまったが相手を気絶させる事には成功し、白面を取り外すと獣人族の男の顔が露わになる。
頭を強く打って男は白目を剥くと、ゆっくりと壁に背中を預けて座らせる。生きている事を確認したナイは安堵するが、ゴエモンは険しい表情を浮かべた。
「大きな音を立て過ぎだ……近くに仲間がいたらどうする?」
「すいません……でも、これで人数分は集まりましたよ?」
「……そうだな」
ナイは男から外した仮面を見せつけるとゴエモンは頷き、遅れてやってきたリーナ達も事前に持っていた白面の仮面を取り出す。
ここから先は白面の拠点であるため、変装して中に入る事にした。白面の仮面を取り付け、それぞれの衣装に着替えて忍び込む予定だった――
『――奴等の拠点に入るには変装する必要がある。だから武器の類はここに置いていけ、後で回収に戻ればいいだろう』
『え?全部ですか?』
『服の中に隠せる物は持って行っても問題はない。それと余計な荷物は置いていけ……何か役立ちそうな者だけを選ぶんだ』
『ええっ!?』
『アルト君の収納鞄があれば良かったのにね……』
『確かに……』
出発前にナイ達は既に装備品を地上へ置いており、現在の装備は敵から奪った衣装と仮面、それと短剣のみであった。ナイの場合は服の中に刺剣を隠し、地下へと潜る――
「へえっ、下水道というから汚い所を想像してたけど……臭くはないんだね」
「あちこちに魔石が嵌め込まれているだろう?そいつは悪臭を吸い上げる機能を持っている。消臭石と呼ばれる魔石だ」
「臭いは感じないのは良いけど、あんまり綺麗な場所じゃないのは間違いないからね……」
「そういえば随分前にイチノの下水道でも見たことがある気がする」
モモは下水道を降りるのは初めてらしく、リーナは駆け出しの冒険者の頃は下水道の仕事などもやらされていたため慣れた様子だった。ナイもかつてイチノの下水道に降りた事があり、名前は知らなかったが臭いを吸い上げる魔石の存在は知っていた。
ゴエモンは記憶を辿りに先を進み、彼が書き嗅げた地図の方はクノに渡していた。何年も費やしてゴエモンはこの街の下水道を完璧に把握し、迷わずに突き進む。
「もうそろそろ、目的地に辿り着く!!奴等の見張りもいる可能性が高い、ここからは灯り無しで進むぞ!!」
「えっ!?暗くて見えないよ!?」
「大丈夫、僕は暗視の技能もあるから暗い場所でも平気……だから手を握ってモモを連れて行くよ」
「あ、うん……し、しっかり握ってね」
「むうっ……」
「ぷるぷるっ……」
ナイは暗闇の中でも見通せる暗視の技能も所持しており、こちらの技能は暗闇の中でも周囲の光景を把握できる非情に便利な技能だった。
モモがナイに手を握りしめられて照れくさそうな表情を浮かべると、リーナが胸がもやもやとするが、今は仕事に集中する事にした。この時にプルミンはナイの頭の上に移動し、何かを感知したらすぐに知らせる。
「ぷるぷるっ……」
「プルリン、何か感じるの?」
「ぷるんっ……」
プルリンは下水道の曲がり角を頭に生えている触手で示し、それを確認したナイとゴモエンはお互いの顔を見て頷く。
ナイは心眼を発動させ、曲がり角の先に潜む存在を感知する。距離が離れていようと心眼の範囲内ならば捉える事ができるため、曲がり角の先に誰かが立っている事に気付いたナイは皆に伝える。
「モモ、リーナの傍に居て……あの角の先に見張りが居ると思う」
「えっ……だ、大丈夫?」
「問題ない、すぐに終わらせるよ」
ナイはリーナにモモの事を任せると、曲がり角に慎重に近づき、この時に「隠密」
「無音歩行」の技能を発動させ、存在感を限りなく消す。ゴエモン程ではないがナイも隠密を扱え、更にこの暗闇では姿が見えにくい事も重なって一流の暗殺者だとしても気づかない。
曲がり角の先に立っていたのは予想通り白面であり、こんな人気のない場所でも白面を被って立ち尽くしていた。人数は一人だと把握したナイはゴエモンに頷く。
(よし……今だ!!)
ナイは水路に向けて空になった聖水が入っていた硝子瓶を放り込むと、水面に瓶が落ちた際に水飛沫が上がり、それに勘付いた白面の注意が反れる。その瞬間を逃さずにナイとゴエモンは白面の元へ向かう。
「ッ――!?」
「ふんっ!!」
唐突に現れた二人に白面は驚愕し、慌てて武器を構えようとしたがナイの方が一瞬早く相手の顔面を掴み、壁に叩きつける。音を立ててしまったが相手を気絶させる事には成功し、白面を取り外すと獣人族の男の顔が露わになる。
頭を強く打って男は白目を剥くと、ゆっくりと壁に背中を預けて座らせる。生きている事を確認したナイは安堵するが、ゴエモンは険しい表情を浮かべた。
「大きな音を立て過ぎだ……近くに仲間がいたらどうする?」
「すいません……でも、これで人数分は集まりましたよ?」
「……そうだな」
ナイは男から外した仮面を見せつけるとゴエモンは頷き、遅れてやってきたリーナ達も事前に持っていた白面の仮面を取り出す。
ここから先は白面の拠点であるため、変装して中に入る事にした。白面の仮面を取り付け、それぞれの衣装に着替えて忍び込む予定だった――
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『ええっ!?』
『アルト君の収納鞄があれば良かったのにね……』
『確かに……』
出発前にナイ達は既に装備品を地上へ置いており、現在の装備は敵から奪った衣装と仮面、それと短剣のみであった。ナイの場合は服の中に刺剣を隠し、地下へと潜る――
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