貧弱の英雄

カタナヅキ

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王都の異変

第655話 一つ目の巨人

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「ギュロォッ!?」
「えっ!?」
「ど、どうしたんですか!?」
「これはいったい……!?」


口の中に果実を含んだ瞬間、サイクロプスは目を激しく咳き込む。その様子を見てナイは驚くが、冒険者が衝撃の事実を告げた。


「そ、その果実は駄目だ!!見た目は美味しそうな果実だが、齧るとめちゃくちゃ辛いんだ!!香辛料の素材に使われるぐらいに!!」
「ええっ!?」
「どうしてそんな物が混じっている事に気付かなかったんですか!?」
「い、いや……多分、誰かが果物と間違えて入れたんだと思う」


冒険者の言葉にナイ達は驚愕し、その一方で激辛の果実を口にしたサイクロプスは口元を抑え込み、耐え切れずに川の中に飛び込む。


「ギュロロッ!?」
「あっ!?」


自ら川の中に飛び込んだサイクロプスを見てナイは声を上げるが、そのままサイクロプスは派手に水飛沫を上げて潜り込み、しばらくの間は浮かばなかった。

心配した様子でナイ達は川の様子を伺うと、やがて水面に大きな影が映し出され、激怒したサイクロプスが姿を現す。その手には水底に沈んでいた岩石を掲げており、怒りの表情を浮かべてナイに振り返る。


「ギュロロロッ!!」
「えっ、ちょっ……まずい!?」
「危ない、ナイ君!!」


ナイは既に橋の上から移動しており、それをみたサイクロプスは岩石を振りかざす。慌てて他の者達が助けに向かおうとしたが、ナイは手にしていた籠を放り投げ、背中の岩砕剣に手を伸ばす。


「ギュロォッ!!」
「このぉっ!!」
「嘘だろ、おい!?」
「き、斬った!?いや、砕いたのか!?」


放り込まれた岩石に対してナイは咄嗟に岩砕剣を構えると、剛力を発動させて岩砕剣で岩石を破壊する。名前の通りに岩砕剣は岩をも破壊する程の硬度を誇り、その光景を見た他の冒険者達は驚く。

どうにか岩砕剣で投げ込まれた岩石を破壊する事には成功したナイだったが、その光景を確認したサイクロプスは水面から抜け出すと、改めてナイと向き合う。


「ギュロロロッ……!!」
「もしかして……凄く怒っている?」
「ナイ君がわざとまずい果物を食べさせたと勘違いしているのか?」
「……こうなったらやるしかない」
「ナイさん、助太刀します!!」


ミイナとヒイロは武器を構え、ナイの元へ近づこうとした。だが、この時にナイはサイクロプスの様子を伺い、他の者に手を出さない様に注意した。


「いや、大丈夫……ここれは僕一人で何とかするよ」
「えっ!?」
「ナ、ナイ君!?無茶だよ、相手は魔人族だよ!?」
「いいから任せて……うわっ!?」
「ギュロッ!!」


サイクロプスは拳を大きく振りかざすと、ナイに向けて放つ。その攻撃に対してナイは反射的に反魔の盾を装備した右腕を構えると、反魔の盾と拳が衝突して衝撃波が発生する。

反魔の盾は外部から魔法攻撃や衝撃を受けた場合は跳ね返す性質を誇るが、今回の場合はサイクロプスの攻撃が重くてナイも後方に後退る。その一方で衝撃波を受けたサイクロプスは体勢を崩し、再び川に落ちそうになるのを踏み止まる。


「ギュロロッ!?」
「くぅっ……なんて怪力だ」


以前にミノタウロスと戦った事があるナイだからこそ分かるが、サイクロプスの腕力はミノタウロスに匹敵するか、あるいはそれ以上の力を誇るかもしれない。ミノタウロス程の素早さこそないが、単純な腕力ならばサイクロプスが上回る。

態勢を整えたサイクロプスはナイに視線を向け、彼が装備した反魔の盾の存在が厄介だと判断し、サイクロプスは川に視線を向けると両手で水を救い上げる。その行為に他の者達は何をしているのかと思ったが、次の瞬間にサイクロプスは思いがけない行動を取った。


「ギュロォッ!!」
「うわっ!?」
「わあっ!?」
「め、目潰しか!?」


水を救い上げたサイクロプスはナイに目掛けて水を放ち、それを浴びたナイは目に水が入って瞼を閉じてしまう。その光景を見たアルトは驚きの声を上げ、その隙にサイクロプスは前脚を振りかざす。


「ギュロロッ!!」
「くぅっ!?」


咄嗟にナイは心眼を発動させて対処した結果、どうにかサイクロプスの突き出した前蹴りを躱す事に成功した。しかし、今度はサイクロプスは拳を振りかざし、倒れ込んだナイに目掛けて拳を振り下ろす。


「ギュロロッ!!」
「だ、駄目ぇっ!!」
「ナイ君、危ない!!」
「うわっ!?」


倒れたナイに目掛けてリーナとモモが突っ込み、二人は同時にナイに抱きついてそのまま転がり込む。サイクロプスの攻撃を躱す事には成功したが、三人は派手に転がり込む。


「いたたっ……ナ、ナイ君大丈夫?」
「むぐぐっ……!?」
「ひゃうっ!?だ、駄目ぇっ……そこは僕のお尻だよ」


転がった拍子にナイはモモの胸に顔を埋め、リーナのお尻を鷲摑みにしてしまう。こんな状況でなければ役得だったのかもしれないが、怒ったサイクロプスが迫っていた。




※サイクロプス「リア充、死すべし!!(#^ω^)ピキピキ」
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