664 / 1,110
王都の異変
第653話 クーノへの道中
しおりを挟む
――旅立ちから一時間ほど経過すると、狼車は大きな川の前で立ち止まる。この川を渡らなければ辿り着けないのだが、何故か橋の方に商団が立ち止まっており、橋を渡ろうとしない彼等にナイは疑問を抱く。
「何だろう?何かあったのかな?」
「ふむ、気になるね……話を聞いてみようか」
「ウォンッ……」
狼車が停車すると、商団の人間は白狼種が馬車を引いている事に驚くが、降りてきた人間の殆どが子供ばかりなので更に驚く。
「あの、何かあったんですか?」
「あ、ああ……いや、実は我々は王都へ向かう途中なんだが、橋を渡ろうとしたらあんなのがいてね」
「あんなの?」
「どれどれ?」
「あれは……」
ナイ達は川に繋がる橋を確認すると、そこには思いがけない存在が待ち構えていた。橋の真ん中には巨大な青色の皮膚で覆われた人型の生物が存在し、並の巨人族よりも体躯が大きく、しかも顔面には瞳が一つしか存在しなかった。
その姿を見てナイ達は驚き、特に冒険者稼業をやっているリーナと博識のアルトは橋に横たわる存在を確認して正体を見抜く。
「あれは……サイクロプスだね」
「うん、間違いないよ。でも、どうしてこんな場所に魔人族が……」
「わあっ……お、おっきいね」
「何という恐ろしい姿でしょう……」
「あいつのせいで橋が通れない?」
怪物の正体はサイクロプスと呼ばれる魔人族であり、ミノタウロスと同等の危険度を誇る魔人族だった。リーナも見るのは初めてらしく、彼女はどうしてこんな場所にサイクロプスが存在するのかと混乱すると、商団の人々が事情を説明する。
「実はあいつは俺達が運んでいた積荷の中に入っていたんだ」
「えっ!?あの怪物を!?」
「あ、ああ……でも、勘違いしないでくれ。俺達はあんな化物が積荷の中に紛れているなんて気づかなかったんだ。俺達はこの荷物を王都の闘技場に送るように依頼されただけなんだが……」
「闘技場、という事はアッシュ公爵か……リーナ君は何か知っているかい?」
「う、ううん……僕は何も聞いてないよ」
商団の人間は王都の闘技場にサイクロプスが入った積荷を運ぶように依頼されいたらしく、運搬の際中は中身を見ない事を厳重注意され、彼等は積荷を運んでいたらしい。
本来、荷物を送る場合は必ず運搬前に積荷の確認を行う決まりなのだが、依頼を出した相手が積荷を絶対に確認しない条件ならば金貨10枚を支払うと言い出した。その条件で商団の人間は引き受けてしまい、約束通りに彼等はここまでの道中は積荷を確認せずに運び込んだ。
しかし、橋を渡る途中で積荷を運んでいた荷車の車輪が限界が壊れてしまった。その拍子に積荷の中に眠っていたと思われるサイクロプスが目を覚まし、箱を破壊して橋の上に居座ったせいで彼等は困り果てていた。
「まさか、あんな化物が積荷の中に隠れていたなんて……」
「正直、こんな場所から早く逃げ出したいんだが……あいつを放っておいたら何をしでかすか分からないからな」
「俺達の中には冒険者も同行しているんだが、もしもあいつがこの橋の上で暴れて壊しでもしたら大変な事になるからな。迂闊に手を出せないんだよ……」
「くそ、あんな場所に居座りやがって……」
「なるほど、そういう事か」
商団に同行していた冒険者は全員が銀級の冒険者であり、人数は五名だった。だが、サイクロプスの危険度を考えれば銀級の冒険者程度ではどうしようもない相手であり、仮に倍の数の銀級冒険者が存在したとしもどうにかできない相手だった。
「誰が闘技場に送るように依頼したんですか?」
「それが俺達も知らないんだよ。ただ、この荷物を闘技場まで運んでくれれば分かるって……引き渡す時はこの手紙を渡せば分かってくれるとだけ言われたよ」
「そんな条件でよくこんな怪しい仕事を引き受けましたね!?」
「か、金払いが良かったんだよ!!それに冒険者を雇う金も依頼人が払ってくれたんだぞ!?」
「なるほど、確かに気前がいいね……すまないが、それを見せてくれるかい?」
「はあっ!?いったい何を言って……だいたい、お前等は何者なんだよ!!白狼種なんか連れている辺り、冒険者か?」
商団の人間はナイ達を怪しむが、そんな彼等の態度を見てアルトは仕方なく王家の紋章が刻まれたペンダントを取り出し、それを見せつける。
「このペンダントを見てくれ」
「はっ?なんだ、それ……」
「えっ!?こ、これって……王国の紋章!?まさか、これを持っている事が許されるのは……」
「ナイ君、リーナ君、君達も見せてくれ」
「メダルの事?」
「これ?」
ナイは二つの貴族のメダルを取り出し、リーナは黄金冒険者の証である冒険者バッジを見せつけると、商団の人間は顔色を青ざめ、冒険者は度肝を抜かす。
「何だろう?何かあったのかな?」
「ふむ、気になるね……話を聞いてみようか」
「ウォンッ……」
狼車が停車すると、商団の人間は白狼種が馬車を引いている事に驚くが、降りてきた人間の殆どが子供ばかりなので更に驚く。
「あの、何かあったんですか?」
「あ、ああ……いや、実は我々は王都へ向かう途中なんだが、橋を渡ろうとしたらあんなのがいてね」
「あんなの?」
「どれどれ?」
「あれは……」
ナイ達は川に繋がる橋を確認すると、そこには思いがけない存在が待ち構えていた。橋の真ん中には巨大な青色の皮膚で覆われた人型の生物が存在し、並の巨人族よりも体躯が大きく、しかも顔面には瞳が一つしか存在しなかった。
その姿を見てナイ達は驚き、特に冒険者稼業をやっているリーナと博識のアルトは橋に横たわる存在を確認して正体を見抜く。
「あれは……サイクロプスだね」
「うん、間違いないよ。でも、どうしてこんな場所に魔人族が……」
「わあっ……お、おっきいね」
「何という恐ろしい姿でしょう……」
「あいつのせいで橋が通れない?」
怪物の正体はサイクロプスと呼ばれる魔人族であり、ミノタウロスと同等の危険度を誇る魔人族だった。リーナも見るのは初めてらしく、彼女はどうしてこんな場所にサイクロプスが存在するのかと混乱すると、商団の人々が事情を説明する。
「実はあいつは俺達が運んでいた積荷の中に入っていたんだ」
「えっ!?あの怪物を!?」
「あ、ああ……でも、勘違いしないでくれ。俺達はあんな化物が積荷の中に紛れているなんて気づかなかったんだ。俺達はこの荷物を王都の闘技場に送るように依頼されただけなんだが……」
「闘技場、という事はアッシュ公爵か……リーナ君は何か知っているかい?」
「う、ううん……僕は何も聞いてないよ」
商団の人間は王都の闘技場にサイクロプスが入った積荷を運ぶように依頼されいたらしく、運搬の際中は中身を見ない事を厳重注意され、彼等は積荷を運んでいたらしい。
本来、荷物を送る場合は必ず運搬前に積荷の確認を行う決まりなのだが、依頼を出した相手が積荷を絶対に確認しない条件ならば金貨10枚を支払うと言い出した。その条件で商団の人間は引き受けてしまい、約束通りに彼等はここまでの道中は積荷を確認せずに運び込んだ。
しかし、橋を渡る途中で積荷を運んでいた荷車の車輪が限界が壊れてしまった。その拍子に積荷の中に眠っていたと思われるサイクロプスが目を覚まし、箱を破壊して橋の上に居座ったせいで彼等は困り果てていた。
「まさか、あんな化物が積荷の中に隠れていたなんて……」
「正直、こんな場所から早く逃げ出したいんだが……あいつを放っておいたら何をしでかすか分からないからな」
「俺達の中には冒険者も同行しているんだが、もしもあいつがこの橋の上で暴れて壊しでもしたら大変な事になるからな。迂闊に手を出せないんだよ……」
「くそ、あんな場所に居座りやがって……」
「なるほど、そういう事か」
商団に同行していた冒険者は全員が銀級の冒険者であり、人数は五名だった。だが、サイクロプスの危険度を考えれば銀級の冒険者程度ではどうしようもない相手であり、仮に倍の数の銀級冒険者が存在したとしもどうにかできない相手だった。
「誰が闘技場に送るように依頼したんですか?」
「それが俺達も知らないんだよ。ただ、この荷物を闘技場まで運んでくれれば分かるって……引き渡す時はこの手紙を渡せば分かってくれるとだけ言われたよ」
「そんな条件でよくこんな怪しい仕事を引き受けましたね!?」
「か、金払いが良かったんだよ!!それに冒険者を雇う金も依頼人が払ってくれたんだぞ!?」
「なるほど、確かに気前がいいね……すまないが、それを見せてくれるかい?」
「はあっ!?いったい何を言って……だいたい、お前等は何者なんだよ!!白狼種なんか連れている辺り、冒険者か?」
商団の人間はナイ達を怪しむが、そんな彼等の態度を見てアルトは仕方なく王家の紋章が刻まれたペンダントを取り出し、それを見せつける。
「このペンダントを見てくれ」
「はっ?なんだ、それ……」
「えっ!?こ、これって……王国の紋章!?まさか、これを持っている事が許されるのは……」
「ナイ君、リーナ君、君達も見せてくれ」
「メダルの事?」
「これ?」
ナイは二つの貴族のメダルを取り出し、リーナは黄金冒険者の証である冒険者バッジを見せつけると、商団の人間は顔色を青ざめ、冒険者は度肝を抜かす。
10
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる