661 / 1,110
王都の異変
第650話 旅立つ前に
しおりを挟む
「手っ取り早く、あたしが言って話を聞いた方が良いんだけどね。騎士団長のあたしが勝手に王都の外に出向く事は色々と問題があってね……それであんたに代わりに人探しをしてほしいわけさ」
「なるほど、そういう事ならいいですよ」
「助かるよ……まあ、あんたは旅に慣れてるだろうし、実力も確かだからね」
自分の代わりにクーノに暮らすと思われる情報屋の老人の元に赴き、もしも彼が生きていれば20年前に存在した白面の情報を聞き出すようにテンはナイに頼む。クーノの街はナイも王都に辿り着く前に一度立ち寄った事があるので道に迷う心配はない。
「旅費に関しては悪いけど立て替えてくれるかい?戻って来た時に騎士団の予算から支払うよ」
「え、いいんですか?」
「こっちが頼みごとをしている立場だからね、むしろ謝礼金も支払わないといけないよ。それと、念のために言っておくけど旅に出るときは気を付けるんだよ」
「はい、分かりました」
「なら、早速出悪いんだけど準備が出来次第にすぐに向かってくれるかい?一応、他の連中にも街を離れる事は伝えておいた方がいいからね……特にモモの奴には」
「え?あ、はい……分かりました」
テンはモモがナイに惚れている事は知っており、もしもナイが一人で何も言わずに旅に出たら相当なショックを受けるかもしれず、念のために注意しておく。ナイはテンの言葉に不思議に思いながらも従う――
――旅立ちの準備の際、ナイは白猫亭で暮らすモモ達に旅に出る事を伝えると、テンの予想通りにナイが王都を離れると知ってモモは衝撃を受けた。
「ええっ!?ナイ君、王都から出ていくの!?そんなのやだようっ!!」
「いや、少しの間だけ離れるだけだから……」
「あ、そうなんだ……良かった~」
「でも、少しと言ってもクーノからここまで距離があるわよね。具体的にはどれくらいかかるの?」
「ビャクに乗ればそんなに時間は掛からないと思うけど……まあ、人探しも兼ねたら一週間ぐらいかな?」
「一週間か……」
モモはナイが旅に出ると聞いて必死に引き留めようとするが、すぐに戻ってくる事を伝えると安心する。その一方でヒナはナイが一週間で戻ってくるという話を聞き、これは好機ではないのかと考える。
「ねえ、ナイ君……良かったらモモも一緒に連れて行ってくれない?」
「えっ!?」
「ヒナちゃん!?急にどうしたの!?」
「いや、その……ほら、白面のせいで街の人たちもあまり外に出歩かなくなったでしょ?それが原因でうちの店も客足が減って少し暇になったから、モモ一人がいなくても別に大丈夫だと思うし……それにこの子も前から旅に出る事に興味があったのよ」
「そ、そうなの!?」
「あれ、本人が一番驚いているけど!?」
ヒナの言葉にモモは戸惑うが、そんな彼女の身体を抱き寄せてヒナはナイに聞かれない様に小声で話しかける。
「ちょっと、モモ……いいから話を合わせない、これは好機よ」
「こ、好機?」
「いい?旅に出るという事はずっとナイ君と一緒に居られるのよ。それはつまり、ナイ君と距離を縮める絶好の機会よ」
「仲を縮める……で、でも私は旅に出た事なんてないよ?」
「大丈夫、あんたは料理も上手くなったし、旅の途中でナイ君の胃袋を掴むのよ。とにかく、ナイ君の役に立てば今以上に仲良くなれるわ」
「仲良くなる……う、うん!!頑張るよ!!」
「あの、どうしたの二人とも?」
こそこそと話し合う二人にナイは疑問を抱くと、ここでヒナはモモを彼に同行させるため、それらしい理由を考えてナイを説得した。
「ほ、ほら!!旅に出る事になるとしたら魔物と遭遇するかもしれないでしょ?その時にナイ君やビャクちゃんが怪我をした時、モモが側に居れば怪我を治してあげられるじゃない?それにナイ君の煌魔石だってモモが居れば魔力を回復できるでしょう」
「あ、なるほど……それは確かに助かるかもしれない」
「でしょ!?ねえ、モモもナイ君が心配だから一緒に付いて行きたいでしょう!?」
「う、うん!!そうだね、ナイ君一人だとまた無茶をするかもしれないし……一緒に行こうよ!!」
「うわっ!?」
モモはナイの右腕に抱きつき、この時に彼女は無意識に自分の最大の武器である大きな乳房を押し付ける。無意識に身体を密着させ、ナイにモモは必死に頼み込む。
「ねえ、いいでしょ?私、ナイ君のためなら何でもするから!!」
「な、何でもって……」
「料理でも肩もみでも膝枕でも何でもするから!!」
「……わ、分かったよ。でも、別にそこまで気負わなくてもいいよ?」
「やった!!」
「モモ……恐ろしい子ね」
本人は特に意識しているわけではないだろうが、彼女は強引に押し切って旅の同行を許可してもらう――
「なるほど、そういう事ならいいですよ」
「助かるよ……まあ、あんたは旅に慣れてるだろうし、実力も確かだからね」
自分の代わりにクーノに暮らすと思われる情報屋の老人の元に赴き、もしも彼が生きていれば20年前に存在した白面の情報を聞き出すようにテンはナイに頼む。クーノの街はナイも王都に辿り着く前に一度立ち寄った事があるので道に迷う心配はない。
「旅費に関しては悪いけど立て替えてくれるかい?戻って来た時に騎士団の予算から支払うよ」
「え、いいんですか?」
「こっちが頼みごとをしている立場だからね、むしろ謝礼金も支払わないといけないよ。それと、念のために言っておくけど旅に出るときは気を付けるんだよ」
「はい、分かりました」
「なら、早速出悪いんだけど準備が出来次第にすぐに向かってくれるかい?一応、他の連中にも街を離れる事は伝えておいた方がいいからね……特にモモの奴には」
「え?あ、はい……分かりました」
テンはモモがナイに惚れている事は知っており、もしもナイが一人で何も言わずに旅に出たら相当なショックを受けるかもしれず、念のために注意しておく。ナイはテンの言葉に不思議に思いながらも従う――
――旅立ちの準備の際、ナイは白猫亭で暮らすモモ達に旅に出る事を伝えると、テンの予想通りにナイが王都を離れると知ってモモは衝撃を受けた。
「ええっ!?ナイ君、王都から出ていくの!?そんなのやだようっ!!」
「いや、少しの間だけ離れるだけだから……」
「あ、そうなんだ……良かった~」
「でも、少しと言ってもクーノからここまで距離があるわよね。具体的にはどれくらいかかるの?」
「ビャクに乗ればそんなに時間は掛からないと思うけど……まあ、人探しも兼ねたら一週間ぐらいかな?」
「一週間か……」
モモはナイが旅に出ると聞いて必死に引き留めようとするが、すぐに戻ってくる事を伝えると安心する。その一方でヒナはナイが一週間で戻ってくるという話を聞き、これは好機ではないのかと考える。
「ねえ、ナイ君……良かったらモモも一緒に連れて行ってくれない?」
「えっ!?」
「ヒナちゃん!?急にどうしたの!?」
「いや、その……ほら、白面のせいで街の人たちもあまり外に出歩かなくなったでしょ?それが原因でうちの店も客足が減って少し暇になったから、モモ一人がいなくても別に大丈夫だと思うし……それにこの子も前から旅に出る事に興味があったのよ」
「そ、そうなの!?」
「あれ、本人が一番驚いているけど!?」
ヒナの言葉にモモは戸惑うが、そんな彼女の身体を抱き寄せてヒナはナイに聞かれない様に小声で話しかける。
「ちょっと、モモ……いいから話を合わせない、これは好機よ」
「こ、好機?」
「いい?旅に出るという事はずっとナイ君と一緒に居られるのよ。それはつまり、ナイ君と距離を縮める絶好の機会よ」
「仲を縮める……で、でも私は旅に出た事なんてないよ?」
「大丈夫、あんたは料理も上手くなったし、旅の途中でナイ君の胃袋を掴むのよ。とにかく、ナイ君の役に立てば今以上に仲良くなれるわ」
「仲良くなる……う、うん!!頑張るよ!!」
「あの、どうしたの二人とも?」
こそこそと話し合う二人にナイは疑問を抱くと、ここでヒナはモモを彼に同行させるため、それらしい理由を考えてナイを説得した。
「ほ、ほら!!旅に出る事になるとしたら魔物と遭遇するかもしれないでしょ?その時にナイ君やビャクちゃんが怪我をした時、モモが側に居れば怪我を治してあげられるじゃない?それにナイ君の煌魔石だってモモが居れば魔力を回復できるでしょう」
「あ、なるほど……それは確かに助かるかもしれない」
「でしょ!?ねえ、モモもナイ君が心配だから一緒に付いて行きたいでしょう!?」
「う、うん!!そうだね、ナイ君一人だとまた無茶をするかもしれないし……一緒に行こうよ!!」
「うわっ!?」
モモはナイの右腕に抱きつき、この時に彼女は無意識に自分の最大の武器である大きな乳房を押し付ける。無意識に身体を密着させ、ナイにモモは必死に頼み込む。
「ねえ、いいでしょ?私、ナイ君のためなら何でもするから!!」
「な、何でもって……」
「料理でも肩もみでも膝枕でも何でもするから!!」
「……わ、分かったよ。でも、別にそこまで気負わなくてもいいよ?」
「やった!!」
「モモ……恐ろしい子ね」
本人は特に意識しているわけではないだろうが、彼女は強引に押し切って旅の同行を許可してもらう――
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる