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王都の異変
第644話 陽動
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「突けぇっ!!」
『はああっ!!』
コボルト亜種を取り囲んでいた女騎士は全員が槍を装備しており、取り囲んだ状態でコボルト亜種に突きを放つ。周囲を囲まれたコボルト亜種の逃げ場は上空しか存在せず、コボルト亜種は跳躍する。
「ウガァッ!!」
「今だ、撃てっ!!」
上空へ跳んだコボルト亜種に対して事前に弓を構えていた騎士達が矢を放ち、逃げ場がない空中のコボルト亜種を狙い撃ちする。見事に連携の取れた動き放たれた矢はコボルト亜種に的中すると思われた。
しかし、空中に浮上したコボルト亜種は四方八方から放たれた矢に対して身体を回転させると、鋭い爪で矢を叩き落す。そのコボルト亜種の動作を見てナイは驚き、リンは目つきを鋭くさせる。
「なっ!?馬鹿なっ……」
「あの攻撃を防ぐなんて……」
「取り乱すな!!陣形を崩すな!!」
空中に浮かんだ状態で攻撃を弾いたコボルト亜種に対して騎士達は戸惑うが、すぐにリンが注意すると彼女達は冷静になり、改めて地上に着地したコボルト亜種と向かい合う。
コボルト亜種は地上に降りた途端に四つん這いとなり、女騎士達を睨みつける。通常のコボルトならば攻撃された時点で激高して襲い掛かりそうだが、コボルト亜種は冷静に騎士達の様子を伺い、無暗に動かない。
(何だこいつ……!?)
ナイはコボルト亜種の様子を見て違和感を抱き、リンも彼と同様にコボルト亜種の行動に不審に思う。先ほどからコボルト亜種は攻撃を仕掛ける事もせず、回避と防御に専念して攻撃を仕掛ける様子もない。
(どうして逃げないんだ?戦う気があるのなら襲い掛かってもおかしくはないのに……)
騎士達とコボルト亜種は向かい合った状態で動かず、膠着状態へと陥る。何故かコボルト亜種は自分から襲い掛かろうとはせず、逃げる様子もない。その事に銀狼騎士団の団員達も不気味に思い、ここでリンは暴風に手を伸ばす。
「退け、私が仕留める」
「ふ、副団長……」
「下がれ、巻き込まれるぞ!!」
リンが白馬を降りて前に出ると、他の者達は慌てて距離を開き、改めてリンはコボルト亜種と向かい合う。コボルト亜種はリンを前にした瞬間、即座に逃げ出そうとした。
「ガアッ……!!」
「――逃さん!!」
しかし、逃げ出そうとしたコボルト亜種に対してリンは居合の状態から刃を放ち、暴風の力を発揮して風の斬撃を飛ばす。コボルト亜種の背中に向けて放たれた風の斬撃は見事に的中して血飛沫が舞う。
「ウガァッ……!?」
「や、やった!!」
「流石は副団長!!」
「一撃で仕留めるなんて!!」
コボルト亜種は呆気なく倒れ込み、しばらくは身体を痙攣させていたが、事切れたのか完全に動かなくなった。その様子を見て団員は歓喜の声を上げるが、当のリンは眉をしかめ、あまりにも手応えがなさ過ぎた。
確かにリンの暴風が生み出す風の斬撃ならばある程度の距離まで近づけばコボルト亜種を一撃で仕留める事は容易い。しかし、コボルト亜種の反応速度ならば彼女の攻撃を避ける事もできたはずだった。それなのに無防備に背中を向けて逃げ出そうとしたコボルト亜種にリンは違和感を抱き、死骸を調べる。
「こいつはいったい……!?」
「副団長?」
「どうかされたのですか?」
リンは死骸に近付いて確認を行うと、黒色の毛皮に隠れて分からなかったが、額の部分に「魔法陣」のような物が刻まれていた。それを確認したリンは即座にコボルト亜種が何者かに操られていた事を知り、誰かがコボルト亜種を操って銀狼騎士団をこの噴水広場まで誘導したのだ。
即座にリンは周囲を見渡し、この場所へ誘った者達が待ち構えているのかと身構えると、周囲の建物の屋根の上から仮面を身に付けた男達が現れ、彼等の手には筒が握りしめられていた。
「敵襲だ!!警戒態勢に入れ!!」
「「「っ!?」」」
リンの言葉を聞いた団員達は即座に反応し、周囲の建物に待ち構えていた謎の仮面の男達に武器を構える。しかし、仮面で顔を隠した男達は手にしていた筒を放り込んだ瞬間、筒から煙が噴き出す。
「きゃっ!?」
「こ、これは……目眩まし!?」
「げほげほっ!?」
「ギャインッ!?」
「ビャク!?」
男達が放った筒から煙が放出されて広場に蔓延する。団員とビャクもナイも巻き込まれ、リンは咄嗟に暴風を利用して煙を吹き飛ばそうとしたが、地上から彼女に近付く影が存在した。
「シャアッ!!」
「ちぃっ!?」
煙の中から現れたのは両手に鉤爪を装着した小男であり、仮面で顔を覆い隠したその男はリンに向けて鉤爪を放つ。その攻撃に対してリンは手にしていた刀で鉤爪を弾き返すと、男は煙の中に身を隠す。
周囲が煙に巻き込まれた事で状況を把握できず、リンは暴風を手にした状態で警戒を行う。耳を澄ませるとあちこちから金属音が鳴り響き、どうやら他の団員も襲われている事が伺る。
「な、何だお前達は!?」
「あぐっ!?」
「このぉっ!!」
団員達の激高した声や悲鳴が混じり、それを把握したリンはどうやら最初から敵の狙いが自分達だと判断し、敵に嵌められた事に彼女は怒りを抱く。
『はああっ!!』
コボルト亜種を取り囲んでいた女騎士は全員が槍を装備しており、取り囲んだ状態でコボルト亜種に突きを放つ。周囲を囲まれたコボルト亜種の逃げ場は上空しか存在せず、コボルト亜種は跳躍する。
「ウガァッ!!」
「今だ、撃てっ!!」
上空へ跳んだコボルト亜種に対して事前に弓を構えていた騎士達が矢を放ち、逃げ場がない空中のコボルト亜種を狙い撃ちする。見事に連携の取れた動き放たれた矢はコボルト亜種に的中すると思われた。
しかし、空中に浮上したコボルト亜種は四方八方から放たれた矢に対して身体を回転させると、鋭い爪で矢を叩き落す。そのコボルト亜種の動作を見てナイは驚き、リンは目つきを鋭くさせる。
「なっ!?馬鹿なっ……」
「あの攻撃を防ぐなんて……」
「取り乱すな!!陣形を崩すな!!」
空中に浮かんだ状態で攻撃を弾いたコボルト亜種に対して騎士達は戸惑うが、すぐにリンが注意すると彼女達は冷静になり、改めて地上に着地したコボルト亜種と向かい合う。
コボルト亜種は地上に降りた途端に四つん這いとなり、女騎士達を睨みつける。通常のコボルトならば攻撃された時点で激高して襲い掛かりそうだが、コボルト亜種は冷静に騎士達の様子を伺い、無暗に動かない。
(何だこいつ……!?)
ナイはコボルト亜種の様子を見て違和感を抱き、リンも彼と同様にコボルト亜種の行動に不審に思う。先ほどからコボルト亜種は攻撃を仕掛ける事もせず、回避と防御に専念して攻撃を仕掛ける様子もない。
(どうして逃げないんだ?戦う気があるのなら襲い掛かってもおかしくはないのに……)
騎士達とコボルト亜種は向かい合った状態で動かず、膠着状態へと陥る。何故かコボルト亜種は自分から襲い掛かろうとはせず、逃げる様子もない。その事に銀狼騎士団の団員達も不気味に思い、ここでリンは暴風に手を伸ばす。
「退け、私が仕留める」
「ふ、副団長……」
「下がれ、巻き込まれるぞ!!」
リンが白馬を降りて前に出ると、他の者達は慌てて距離を開き、改めてリンはコボルト亜種と向かい合う。コボルト亜種はリンを前にした瞬間、即座に逃げ出そうとした。
「ガアッ……!!」
「――逃さん!!」
しかし、逃げ出そうとしたコボルト亜種に対してリンは居合の状態から刃を放ち、暴風の力を発揮して風の斬撃を飛ばす。コボルト亜種の背中に向けて放たれた風の斬撃は見事に的中して血飛沫が舞う。
「ウガァッ……!?」
「や、やった!!」
「流石は副団長!!」
「一撃で仕留めるなんて!!」
コボルト亜種は呆気なく倒れ込み、しばらくは身体を痙攣させていたが、事切れたのか完全に動かなくなった。その様子を見て団員は歓喜の声を上げるが、当のリンは眉をしかめ、あまりにも手応えがなさ過ぎた。
確かにリンの暴風が生み出す風の斬撃ならばある程度の距離まで近づけばコボルト亜種を一撃で仕留める事は容易い。しかし、コボルト亜種の反応速度ならば彼女の攻撃を避ける事もできたはずだった。それなのに無防備に背中を向けて逃げ出そうとしたコボルト亜種にリンは違和感を抱き、死骸を調べる。
「こいつはいったい……!?」
「副団長?」
「どうかされたのですか?」
リンは死骸に近付いて確認を行うと、黒色の毛皮に隠れて分からなかったが、額の部分に「魔法陣」のような物が刻まれていた。それを確認したリンは即座にコボルト亜種が何者かに操られていた事を知り、誰かがコボルト亜種を操って銀狼騎士団をこの噴水広場まで誘導したのだ。
即座にリンは周囲を見渡し、この場所へ誘った者達が待ち構えているのかと身構えると、周囲の建物の屋根の上から仮面を身に付けた男達が現れ、彼等の手には筒が握りしめられていた。
「敵襲だ!!警戒態勢に入れ!!」
「「「っ!?」」」
リンの言葉を聞いた団員達は即座に反応し、周囲の建物に待ち構えていた謎の仮面の男達に武器を構える。しかし、仮面で顔を隠した男達は手にしていた筒を放り込んだ瞬間、筒から煙が噴き出す。
「きゃっ!?」
「こ、これは……目眩まし!?」
「げほげほっ!?」
「ギャインッ!?」
「ビャク!?」
男達が放った筒から煙が放出されて広場に蔓延する。団員とビャクもナイも巻き込まれ、リンは咄嗟に暴風を利用して煙を吹き飛ばそうとしたが、地上から彼女に近付く影が存在した。
「シャアッ!!」
「ちぃっ!?」
煙の中から現れたのは両手に鉤爪を装着した小男であり、仮面で顔を覆い隠したその男はリンに向けて鉤爪を放つ。その攻撃に対してリンは手にしていた刀で鉤爪を弾き返すと、男は煙の中に身を隠す。
周囲が煙に巻き込まれた事で状況を把握できず、リンは暴風を手にした状態で警戒を行う。耳を澄ませるとあちこちから金属音が鳴り響き、どうやら他の団員も襲われている事が伺る。
「な、何だお前達は!?」
「あぐっ!?」
「このぉっ!!」
団員達の激高した声や悲鳴が混じり、それを把握したリンはどうやら最初から敵の狙いが自分達だと判断し、敵に嵌められた事に彼女は怒りを抱く。
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