632 / 1,110
王都の異変
第621話 囮大作戦
しおりを挟む
「――よし、都合の良いぐらいの大きさのボアを発見!!ビャク、やれ!!」
「ウォオオンッ!!」
「フゴォオオッ!?」
湖から一度離れたナイはビャクと共に草原に生息していたボアを発見する。ボアはビャクの姿を見ただけで怯えて逃げ出すが、今回ばかりはナイも見逃す事はできず、ある程度まで距離を詰めると拳を握りしめる。
「ここだ!!」
「フゴォッ――!?」
ビャクの背中からナイはボアの背中に飛び移ると、脳天に目掛けて拳を叩きつける。かつてナイは赤毛熊を一撃で殴り殺した事があり、いくらボアでも彼の拳を受けて無傷では済まなかった。
頭部の強烈な一撃を受けたボアは倒れ込み、ナイはボアの大きさを確認する。この程度の大きさならば問題ないと判断すると、ビャクに運ぶように手伝わせる。
「よし、ビャク!!こいつを湖まで運んで!!」
「ウォンッ!?」
ナイの言葉にビャクは不思議に思いながらも背中にボアを乗せると、改めてナイは湖へと戻る――
――湖へ戻ったナイはまだエルマ達が到着していないのを確認し、二人がいないのは逆に都合が良かった。もしも二人が居たらナイの作戦を聞いたら反対するかもしれず、この場に二人がいなければナイは作戦を躊躇なく開始する事が出来た。
「よし、ビャク……準備はいい?舌を噛まないように気を付けるんだよ」
「アガァッ……」
ビャクはナイの言葉に頷き、大きな口を開く。それを確認したナイは闘拳に搭載されたフックショットを利用し、まずはミスリルの刃をビャクに噛みつかせて鋼線を引き寄せる。
「これで良し……鋼線を咬み切らない様に気を付けるんだぞ」
「ワフッ……」
ナイの言葉にミスリルの刃をしっかりと加えたビャクは頷き、これでナイが風属性の魔石を利用すればミスリルの刃を加えたビャクに引き寄せられる。左腕の鋼線を伸ばしながらナイはここまで運んだボアの死骸を確認し、剛力を発動させた。
「ふんぬらばぁっ!!」
「ワフッ!?」
剛力を発動させたナイは全身の筋力を強化させると、一気にボアを持ち上げる。ボアは普通の猪よりも一回りは大きい魔物なので相当な重量を誇が、今のナイの筋力ならばボアを持ち上げるだけではなく、湖に投げ飛ばす事もできた。
湖に目掛けてナイはボアを放り込むと、狙い通りに岸辺にボアの死骸が落下して派手な水飛沫が舞い上がる。そしてボアの死骸が水中に沈んだ途端、水面が揺れ動いて巨大なワニとトカゲが合わさったような魔物が出現した。
「シャアアッ!!」
「よし、今だっ……ビャク、頼んだぞ」
「ワフッ……!!」
ナイの狙い通りに水中に潜んでいた魔物はボアの死骸に喰らいつき、その間にナイは別の場所から水面に飛び込む。
事前に衣服は脱いでおり、左腕の腕鉄鋼と下着姿の状態でナイは水中の潜り込み、魔物がボアの肉に夢中の間に水中に沈んでいる薬草の採取を行う。
(よし、これならあいつに見つかってもフックショットを起動させればビャクの元に戻れる……今のうちに取るんだ!!)
闘拳から鋼線を伸ばしながらナイは水中に生えている薬草の採取を試み、腕を伸ばす。だが、ナイの「気配感知」の技能で複数の反応を感じ取る。
(何だ……!?)
先ほどボアに喰らいついた魔物とは別の気配を感知したナイは視線を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた。湖の底の方から砂を舞い上げながら近付いてくる影が存在し、しかも一つではなく、複数の影がナイに向けて接近していた。
嫌な予感を浮かべたナイは即座に水底に生えている薬草に手を伸ばし、数本ほど引き抜くと即座に闘拳に搭載されている風属性の魔石を操作して鋼線を手繰り寄せる。地上に存在するビャクの元にナイは引き寄せられる。
『シャアアアアッ!!』
「ぷはぁっ!?」
派手に水飛沫を上げながらナイは湖から脱出した直後、ボアに喰らいついていた魔物と同種の生物が水面に顔を出す。最初に現れた魔物と比べると体格は小さいが、それでも3、4メートルほどの大きさは存在した。
ボアに喰らいついていた湖の主と思われる魔物も異変に気付き、ナイの存在を確認すると主はボアを一気に飲み込み、改めて地上へと乗り込む。その間にナイは闘拳を手繰り寄せ、ビャクと合流を果たす。
「よし、十分だビャク!!逃げよう!!」
「ウォンッ!!」
ビャクの元まで戻るとナイは背中に乗り込み、薬草の採取は果たしたので逃げようとした時、何処からか矢が放たれてナイ達の前に突き刺さる。
「うわっ!?」
「ウォンッ!?」
『シャアアアッ!?』
突き刺さった矢には風属性の魔力が付与されていたらしく、地面に衝突した瞬間に風圧が発生し、土砂を舞い上げて土煙を作り出す。
ナイ達と魔物の間に土煙が舞い上がった事でお互いに見えなくなり、この時に近くの丘の上から弓矢を構えたエルマがナイ達に声を掛けた。
「ウォオオンッ!!」
「フゴォオオッ!?」
湖から一度離れたナイはビャクと共に草原に生息していたボアを発見する。ボアはビャクの姿を見ただけで怯えて逃げ出すが、今回ばかりはナイも見逃す事はできず、ある程度まで距離を詰めると拳を握りしめる。
「ここだ!!」
「フゴォッ――!?」
ビャクの背中からナイはボアの背中に飛び移ると、脳天に目掛けて拳を叩きつける。かつてナイは赤毛熊を一撃で殴り殺した事があり、いくらボアでも彼の拳を受けて無傷では済まなかった。
頭部の強烈な一撃を受けたボアは倒れ込み、ナイはボアの大きさを確認する。この程度の大きさならば問題ないと判断すると、ビャクに運ぶように手伝わせる。
「よし、ビャク!!こいつを湖まで運んで!!」
「ウォンッ!?」
ナイの言葉にビャクは不思議に思いながらも背中にボアを乗せると、改めてナイは湖へと戻る――
――湖へ戻ったナイはまだエルマ達が到着していないのを確認し、二人がいないのは逆に都合が良かった。もしも二人が居たらナイの作戦を聞いたら反対するかもしれず、この場に二人がいなければナイは作戦を躊躇なく開始する事が出来た。
「よし、ビャク……準備はいい?舌を噛まないように気を付けるんだよ」
「アガァッ……」
ビャクはナイの言葉に頷き、大きな口を開く。それを確認したナイは闘拳に搭載されたフックショットを利用し、まずはミスリルの刃をビャクに噛みつかせて鋼線を引き寄せる。
「これで良し……鋼線を咬み切らない様に気を付けるんだぞ」
「ワフッ……」
ナイの言葉にミスリルの刃をしっかりと加えたビャクは頷き、これでナイが風属性の魔石を利用すればミスリルの刃を加えたビャクに引き寄せられる。左腕の鋼線を伸ばしながらナイはここまで運んだボアの死骸を確認し、剛力を発動させた。
「ふんぬらばぁっ!!」
「ワフッ!?」
剛力を発動させたナイは全身の筋力を強化させると、一気にボアを持ち上げる。ボアは普通の猪よりも一回りは大きい魔物なので相当な重量を誇が、今のナイの筋力ならばボアを持ち上げるだけではなく、湖に投げ飛ばす事もできた。
湖に目掛けてナイはボアを放り込むと、狙い通りに岸辺にボアの死骸が落下して派手な水飛沫が舞い上がる。そしてボアの死骸が水中に沈んだ途端、水面が揺れ動いて巨大なワニとトカゲが合わさったような魔物が出現した。
「シャアアッ!!」
「よし、今だっ……ビャク、頼んだぞ」
「ワフッ……!!」
ナイの狙い通りに水中に潜んでいた魔物はボアの死骸に喰らいつき、その間にナイは別の場所から水面に飛び込む。
事前に衣服は脱いでおり、左腕の腕鉄鋼と下着姿の状態でナイは水中の潜り込み、魔物がボアの肉に夢中の間に水中に沈んでいる薬草の採取を行う。
(よし、これならあいつに見つかってもフックショットを起動させればビャクの元に戻れる……今のうちに取るんだ!!)
闘拳から鋼線を伸ばしながらナイは水中に生えている薬草の採取を試み、腕を伸ばす。だが、ナイの「気配感知」の技能で複数の反応を感じ取る。
(何だ……!?)
先ほどボアに喰らいついた魔物とは別の気配を感知したナイは視線を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた。湖の底の方から砂を舞い上げながら近付いてくる影が存在し、しかも一つではなく、複数の影がナイに向けて接近していた。
嫌な予感を浮かべたナイは即座に水底に生えている薬草に手を伸ばし、数本ほど引き抜くと即座に闘拳に搭載されている風属性の魔石を操作して鋼線を手繰り寄せる。地上に存在するビャクの元にナイは引き寄せられる。
『シャアアアアッ!!』
「ぷはぁっ!?」
派手に水飛沫を上げながらナイは湖から脱出した直後、ボアに喰らいついていた魔物と同種の生物が水面に顔を出す。最初に現れた魔物と比べると体格は小さいが、それでも3、4メートルほどの大きさは存在した。
ボアに喰らいついていた湖の主と思われる魔物も異変に気付き、ナイの存在を確認すると主はボアを一気に飲み込み、改めて地上へと乗り込む。その間にナイは闘拳を手繰り寄せ、ビャクと合流を果たす。
「よし、十分だビャク!!逃げよう!!」
「ウォンッ!!」
ビャクの元まで戻るとナイは背中に乗り込み、薬草の採取は果たしたので逃げようとした時、何処からか矢が放たれてナイ達の前に突き刺さる。
「うわっ!?」
「ウォンッ!?」
『シャアアアッ!?』
突き刺さった矢には風属性の魔力が付与されていたらしく、地面に衝突した瞬間に風圧が発生し、土砂を舞い上げて土煙を作り出す。
ナイ達と魔物の間に土煙が舞い上がった事でお互いに見えなくなり、この時に近くの丘の上から弓矢を構えたエルマがナイ達に声を掛けた。
10
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる