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王都の異変
第616話 ガオウVSゴウカ
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「まあ、政治的な話をしてもつまんないですよね。じゃあ、話題を変更しましょうか」
「え?唐突ですね……」
「私があげた魔力回復薬はどうしました?もう使いましたか?市販の魔力回復薬よりも濃度が濃いので飲みにくくありませんでした?」
「ああ、実はあれ……色々とあってあげました。スライム君に」
「スライムに!?」
ナイは川辺でスライムを発見した事、その際に魔力回復薬を分けてあげたら懐いてしまい、色々とあってスライムに命を助けられた事を話す。
イリアはまさか自分の魔力回復薬をスライムに渡されていたなど思いもよらなかったが、その話を聞いて興味深そうな表情を浮かべた。
「なるほど、スライムがですか……それは面白い事を聞きましたね」
「イリアさん?」
「そのスライムは何処に居るんですか?」
「え?えっと、王都の南の方に流れている川の近くで見かけたけど……」
「なるほど、ありがとうございます。じゃあ、これはお礼です」
「お礼?」
調合中の薬の中からイリアは一番色合いが濃い回復薬を取り出し、瞬く間に小瓶に詰めて渡す。どうやら回復薬をお礼に渡す様だが、ナイとしては結構な価値がある薬を毎回受け取るのは気が引けた。
「いや、別にいいですよ。これぐらいの事で貴重な薬を……」
「いえいえ、気にしないでください。どうせ私の作った薬なんて国のお偉いさんに持っていかれるんですから……あ、でもナイさんは回復魔法を扱えましたよね」
「うん、そうですけど……」
「じゃあ、こっちの方が良いかもしれませんね」
イリアは壁際に設置されている棚から新しい薬を取り出す。今度のは回復薬でも魔力回復薬でもなく、白色の液体が入った代物だった。他の二つと違う点は光り輝いており、ナイも初めて見る代物だった。
「これは私が開発した聖水です」
「えっ!?聖水って……あの!?」
聖水の事は陽光教会に世話になっていた時にナイも聞いた事がある代物であり、聖属性の魔力を帯びた液体である。この聖水の生産は陽光教会の本部でしか行われておらず、悪しき力を退く力を持つという。
この聖水を使用すると魔物は近寄らず、また怪我の治療や呪いなどの類にも効果があるという。先日にナイが戦ったイゾウは「死霊人形」なる存在に変異したが、この死霊系の敵にも絶大な効果を発揮するらしい。
「この聖水は教会が作っている物を参考に私が独自で生み出しました。本物の聖水には及びませんが、効果は保証します」
「え、それって大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ、別に聖水を作ってはいけない法律なんてありませんからね。それに私の場合は聖水を悪用するために作ったんじゃなくて、あくまでも研究のためですからね」
「な、なるほど……」
出来上がったばかりの新薬をイリアはナイに渡し、本当に受け取っていいのか不安に思いながらもナイは聖水を受け取ると、研究室を後にした――
――ナイはアルトの屋敷に戻ると、丁度入れ違いだったらしくてアルトは既に屋敷から出てしまった。彼は馬車で王城に戻ったらしく、行き違いになってしまったらしい。
また王城に戻るのも面倒に思ったナイは、この際に白猫亭の様子を見に行く。ビャクに乗りながら街の様子を伺う。
「こうしてビャクと二人きりなのも久しぶりに感じるな……あれ、前にもこんな事を言ったような気がする?」
「ウォンッ?」
街道をビャクの背中に乗りながら進んでいると、不意にナイは冒険者ギルドの近くを通り過ぎる時、聞き覚えのある声を耳にした。
『ふはははっ!!どうした、その程度か!?』
「ぐぐっ……ち、畜生」
「な、なんて強さだ……」
「あのガオウさんが手も足も出ないなんて……」
「やっぱり、ゴウカさん強いな……」
ギルドの建物の裏手から聞き覚えのある男の声が聞こえ、少し気になったナイはギルドの裏手に周り、こっそりと塀の上から様子を伺う。
「くそがっ……まだ終わっていないぞ!!」
『ほう、まだやるか。良いぞ、掛かってこい!!』
「うおおおっ!!」
冒険者ギルドの建物の裏に存在する訓練場にてガオウがゴウカに挑み、彼は両手に装着した鉤爪で切りかかる。それに対してゴウカは避ける事もせず、全ての攻撃を受け止めた。
ゴウカは全身に甲冑で覆われているため、ガオウは鎧越しに切りかかる。だが、いったいどんな素材で構成されているのか魔法金属のミスリルで構成されているガオウの鉤爪でもびくともせず、金属音が鳴り響く。
「ちぃっ……相変わらず馬鹿げた硬度だな!!」
『はっはっはっ!!どうした?もう終わりか!?』
「まだまだぁっ!!」
ガオウは甲冑の関節の隙間の部分を狙い、鉤爪を突き刺そうとした。しかし、それに対してゴウカは飛び込んできたガオウの腕を掴み、力ずくで振り回す。
「え?唐突ですね……」
「私があげた魔力回復薬はどうしました?もう使いましたか?市販の魔力回復薬よりも濃度が濃いので飲みにくくありませんでした?」
「ああ、実はあれ……色々とあってあげました。スライム君に」
「スライムに!?」
ナイは川辺でスライムを発見した事、その際に魔力回復薬を分けてあげたら懐いてしまい、色々とあってスライムに命を助けられた事を話す。
イリアはまさか自分の魔力回復薬をスライムに渡されていたなど思いもよらなかったが、その話を聞いて興味深そうな表情を浮かべた。
「なるほど、スライムがですか……それは面白い事を聞きましたね」
「イリアさん?」
「そのスライムは何処に居るんですか?」
「え?えっと、王都の南の方に流れている川の近くで見かけたけど……」
「なるほど、ありがとうございます。じゃあ、これはお礼です」
「お礼?」
調合中の薬の中からイリアは一番色合いが濃い回復薬を取り出し、瞬く間に小瓶に詰めて渡す。どうやら回復薬をお礼に渡す様だが、ナイとしては結構な価値がある薬を毎回受け取るのは気が引けた。
「いや、別にいいですよ。これぐらいの事で貴重な薬を……」
「いえいえ、気にしないでください。どうせ私の作った薬なんて国のお偉いさんに持っていかれるんですから……あ、でもナイさんは回復魔法を扱えましたよね」
「うん、そうですけど……」
「じゃあ、こっちの方が良いかもしれませんね」
イリアは壁際に設置されている棚から新しい薬を取り出す。今度のは回復薬でも魔力回復薬でもなく、白色の液体が入った代物だった。他の二つと違う点は光り輝いており、ナイも初めて見る代物だった。
「これは私が開発した聖水です」
「えっ!?聖水って……あの!?」
聖水の事は陽光教会に世話になっていた時にナイも聞いた事がある代物であり、聖属性の魔力を帯びた液体である。この聖水の生産は陽光教会の本部でしか行われておらず、悪しき力を退く力を持つという。
この聖水を使用すると魔物は近寄らず、また怪我の治療や呪いなどの類にも効果があるという。先日にナイが戦ったイゾウは「死霊人形」なる存在に変異したが、この死霊系の敵にも絶大な効果を発揮するらしい。
「この聖水は教会が作っている物を参考に私が独自で生み出しました。本物の聖水には及びませんが、効果は保証します」
「え、それって大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ、別に聖水を作ってはいけない法律なんてありませんからね。それに私の場合は聖水を悪用するために作ったんじゃなくて、あくまでも研究のためですからね」
「な、なるほど……」
出来上がったばかりの新薬をイリアはナイに渡し、本当に受け取っていいのか不安に思いながらもナイは聖水を受け取ると、研究室を後にした――
――ナイはアルトの屋敷に戻ると、丁度入れ違いだったらしくてアルトは既に屋敷から出てしまった。彼は馬車で王城に戻ったらしく、行き違いになってしまったらしい。
また王城に戻るのも面倒に思ったナイは、この際に白猫亭の様子を見に行く。ビャクに乗りながら街の様子を伺う。
「こうしてビャクと二人きりなのも久しぶりに感じるな……あれ、前にもこんな事を言ったような気がする?」
「ウォンッ?」
街道をビャクの背中に乗りながら進んでいると、不意にナイは冒険者ギルドの近くを通り過ぎる時、聞き覚えのある声を耳にした。
『ふはははっ!!どうした、その程度か!?』
「ぐぐっ……ち、畜生」
「な、なんて強さだ……」
「あのガオウさんが手も足も出ないなんて……」
「やっぱり、ゴウカさん強いな……」
ギルドの建物の裏手から聞き覚えのある男の声が聞こえ、少し気になったナイはギルドの裏手に周り、こっそりと塀の上から様子を伺う。
「くそがっ……まだ終わっていないぞ!!」
『ほう、まだやるか。良いぞ、掛かってこい!!』
「うおおおっ!!」
冒険者ギルドの建物の裏に存在する訓練場にてガオウがゴウカに挑み、彼は両手に装着した鉤爪で切りかかる。それに対してゴウカは避ける事もせず、全ての攻撃を受け止めた。
ゴウカは全身に甲冑で覆われているため、ガオウは鎧越しに切りかかる。だが、いったいどんな素材で構成されているのか魔法金属のミスリルで構成されているガオウの鉤爪でもびくともせず、金属音が鳴り響く。
「ちぃっ……相変わらず馬鹿げた硬度だな!!」
『はっはっはっ!!どうした?もう終わりか!?』
「まだまだぁっ!!」
ガオウは甲冑の関節の隙間の部分を狙い、鉤爪を突き刺そうとした。しかし、それに対してゴウカは飛び込んできたガオウの腕を掴み、力ずくで振り回す。
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