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王都の異変
第601話 立て籠もり
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「おい、あんたら……この宿の人間か?」
「え?ええ、そうですけど……どちら様ですか?」
「えっと、もしかしてお客さん?ごめんなさい、まだ店は開いてないから……」
「待って、二人とも……あの、顔色が悪いようですけど大丈夫ですか?」
三人に話しかけてきたのは若い男性であり、恐らくは冒険者だと思われた。獣人族の若者は顔色が悪く、若干興奮した様子で三人に話しかけてきた。
彼の様子を見てクロネは疑問を抱き、ヒナとモモも男性が普通の状態ではないように見えた。その一方で男性の方は三人が宿屋の人間だと確認すると、首筋に手を伸ばす。
「そうか、ならお前等が噂の……」
「えっ?あの、それってどういう……」
「モモちゃん、離れて!!」
「わっ!?」
男性の言葉にヒナはどういう意味なのかと尋ねようとした時、クロネはいち早く男性が何かを仕出かそうとしている事に気付き、咄嗟にモモを庇う。しかし、男性はクロネの腕を掴んで強制的に引き寄せる。
「動くな!!動けばこいつを殺すぞ!!」
「ひっ!?」
「ク、クロネさん!?」
「や、止めてよ!!どうしてそんな酷い事するの!?」
獣人族の男性はクロネを抱き寄せて首筋に短剣を構え、それを見たヒナとモモは咄嗟にクロネを救おうとした。しかし、相手が素人ならばともかく、戦い慣れしている冒険者だった事が災いし、男性は二人をあしらう。
「近寄るなと言っただろうが!!こいつがどうなってもいいのか!?」
「きゃああっ!?」
「な、何だ!?強盗か!?」
「ひいっ!?あ、あいつ何してんだ!?」
「おい、警備兵を呼べっ!!」
街道を歩いていた通行人たちも異変に気付き、悲鳴を上げて立ち去る。大騒ぎと化した街道にてヒナは歯を食いしばり、ここに聖女騎士団の人間を連れてこなかったのが仇になった。
(今日は店の確認だけだから護衛なんて必要ないと思ったのに……)
クロネを人質にされたヒナとモモは男に逆らう事は出来ず、他の人間に助けを求めようにも近くには警備兵もいない。男はクロネを人質に捉え、自分に逆らわない様に指示を出す。
「いいか、お前等は俺の言う通りに従え……言っておくが、逆らえばこいつの命はないからな!!」
「に、逃げて……二人とも」
「ま、待ちなさい!!分かった、分かったからその人に手を出さないで!!」
「こ、降参だよ~……」
ヒナとモモは両手を上げて男の指示に従う事を示すと、男は白猫亭の中に入るように促し、こうして三人は人質として捕まった――
――それからしばらくの時間が経過すると、屋敷の前にナイ達と警備兵が駆けつける。既に事情は把握しており、犯人は白猫亭に立て籠もっていた。
「うちの娘達はどうしたんだい!?無事なんだろうね!!」
「お、落ち着いて下さい!!私達も今ここに辿り着いたばかりで……状況が把握できていないんです!!」
「ふざけるんじゃないよ!!もしもあの子達の身に何か起きたら、あんたらも容赦しないからね!!」
「落ち着け、テン!!その人たちに怒っても仕方ないだろう!?」
テンは興奮した様子で警備兵に突っかかるが、他の者が引き剥がして落ち着かせる。その一方でナイは警備兵の中にリンダが含まれている事を知り、彼女に話しかける。
「リンダさん!!」
「ナイ様……大変な事になりましたね。現在、犯人は三人の人質と共に建物に閉じこもっています。全ての扉と窓は閉め切り、外部から侵入出来ない様に対処しています」
「そんな……」
現在の状況をリンダに報告されたナイは顔色を青ざめ、白猫亭を確認する。何処の窓も出入口扉も締め切られ、中の様子はうかがえない。
既に三人が捕まってから30分は経過しており、もしも強盗の正体が吸血鬼に操られている存在ならばあと30分で正気を取り戻すはずだった。しかし、ここで犯人の男が窓から顔を出す。
「おい、お前等!!今すぐに金と馬車を用意しろ!!金貨100枚、今すぐに用意しろ!!」
「あんた!!うちの娘と親友はどうした!?無事なんだろうね!!」
「ああ、まだ生きている……だが、逆らえばどうなるか分かっているな!?」
「ううっ……」
「ご、ごめんなさいテンさん……」
男はヒナとモモを連れ出すと、二人とも弱り切っており、それを見たテンは怒りのあまりに身体中の血管が浮き上がる。だが、ここで不用意に突っ込めば二人の命が危険に晒されてしまう。
「いいか、今から20分以内に金貨100枚と馬車を用意しろ!!俺はそれに乗って王都を出る、こいつらは外に出る時に解放してやる!!」
「20分以内って……」
「馬鹿言うんじゃないよ、そんな簡単にそれだけの金が用意できるかい!!」
「お前等があの第三王子と関りがある事は知っているんだ!!その程度の金ぐらい用意できるだろ!?さあ、離している間にも時間は過ぎているぞ!!」
「ちっ……!!」
どうやら犯人の男はナイ達がアルトとかかわりを持っている事を知っているらしく、その情報も吸血鬼に事前に知らされたかどうかは分からないが、金貨も馬車も用意しろなど無茶な要求だった。
「え?ええ、そうですけど……どちら様ですか?」
「えっと、もしかしてお客さん?ごめんなさい、まだ店は開いてないから……」
「待って、二人とも……あの、顔色が悪いようですけど大丈夫ですか?」
三人に話しかけてきたのは若い男性であり、恐らくは冒険者だと思われた。獣人族の若者は顔色が悪く、若干興奮した様子で三人に話しかけてきた。
彼の様子を見てクロネは疑問を抱き、ヒナとモモも男性が普通の状態ではないように見えた。その一方で男性の方は三人が宿屋の人間だと確認すると、首筋に手を伸ばす。
「そうか、ならお前等が噂の……」
「えっ?あの、それってどういう……」
「モモちゃん、離れて!!」
「わっ!?」
男性の言葉にヒナはどういう意味なのかと尋ねようとした時、クロネはいち早く男性が何かを仕出かそうとしている事に気付き、咄嗟にモモを庇う。しかし、男性はクロネの腕を掴んで強制的に引き寄せる。
「動くな!!動けばこいつを殺すぞ!!」
「ひっ!?」
「ク、クロネさん!?」
「や、止めてよ!!どうしてそんな酷い事するの!?」
獣人族の男性はクロネを抱き寄せて首筋に短剣を構え、それを見たヒナとモモは咄嗟にクロネを救おうとした。しかし、相手が素人ならばともかく、戦い慣れしている冒険者だった事が災いし、男性は二人をあしらう。
「近寄るなと言っただろうが!!こいつがどうなってもいいのか!?」
「きゃああっ!?」
「な、何だ!?強盗か!?」
「ひいっ!?あ、あいつ何してんだ!?」
「おい、警備兵を呼べっ!!」
街道を歩いていた通行人たちも異変に気付き、悲鳴を上げて立ち去る。大騒ぎと化した街道にてヒナは歯を食いしばり、ここに聖女騎士団の人間を連れてこなかったのが仇になった。
(今日は店の確認だけだから護衛なんて必要ないと思ったのに……)
クロネを人質にされたヒナとモモは男に逆らう事は出来ず、他の人間に助けを求めようにも近くには警備兵もいない。男はクロネを人質に捉え、自分に逆らわない様に指示を出す。
「いいか、お前等は俺の言う通りに従え……言っておくが、逆らえばこいつの命はないからな!!」
「に、逃げて……二人とも」
「ま、待ちなさい!!分かった、分かったからその人に手を出さないで!!」
「こ、降参だよ~……」
ヒナとモモは両手を上げて男の指示に従う事を示すと、男は白猫亭の中に入るように促し、こうして三人は人質として捕まった――
――それからしばらくの時間が経過すると、屋敷の前にナイ達と警備兵が駆けつける。既に事情は把握しており、犯人は白猫亭に立て籠もっていた。
「うちの娘達はどうしたんだい!?無事なんだろうね!!」
「お、落ち着いて下さい!!私達も今ここに辿り着いたばかりで……状況が把握できていないんです!!」
「ふざけるんじゃないよ!!もしもあの子達の身に何か起きたら、あんたらも容赦しないからね!!」
「落ち着け、テン!!その人たちに怒っても仕方ないだろう!?」
テンは興奮した様子で警備兵に突っかかるが、他の者が引き剥がして落ち着かせる。その一方でナイは警備兵の中にリンダが含まれている事を知り、彼女に話しかける。
「リンダさん!!」
「ナイ様……大変な事になりましたね。現在、犯人は三人の人質と共に建物に閉じこもっています。全ての扉と窓は閉め切り、外部から侵入出来ない様に対処しています」
「そんな……」
現在の状況をリンダに報告されたナイは顔色を青ざめ、白猫亭を確認する。何処の窓も出入口扉も締め切られ、中の様子はうかがえない。
既に三人が捕まってから30分は経過しており、もしも強盗の正体が吸血鬼に操られている存在ならばあと30分で正気を取り戻すはずだった。しかし、ここで犯人の男が窓から顔を出す。
「おい、お前等!!今すぐに金と馬車を用意しろ!!金貨100枚、今すぐに用意しろ!!」
「あんた!!うちの娘と親友はどうした!?無事なんだろうね!!」
「ああ、まだ生きている……だが、逆らえばどうなるか分かっているな!?」
「ううっ……」
「ご、ごめんなさいテンさん……」
男はヒナとモモを連れ出すと、二人とも弱り切っており、それを見たテンは怒りのあまりに身体中の血管が浮き上がる。だが、ここで不用意に突っ込めば二人の命が危険に晒されてしまう。
「いいか、今から20分以内に金貨100枚と馬車を用意しろ!!俺はそれに乗って王都を出る、こいつらは外に出る時に解放してやる!!」
「20分以内って……」
「馬鹿言うんじゃないよ、そんな簡単にそれだけの金が用意できるかい!!」
「お前等があの第三王子と関りがある事は知っているんだ!!その程度の金ぐらい用意できるだろ!?さあ、離している間にも時間は過ぎているぞ!!」
「ちっ……!!」
どうやら犯人の男はナイ達がアルトとかかわりを持っている事を知っているらしく、その情報も吸血鬼に事前に知らされたかどうかは分からないが、金貨も馬車も用意しろなど無茶な要求だった。
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