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王都の異変
第594話 新種ゴブリンキラー
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「――本当にすまなかった!!」
「うわっ!?びっくりした!!」
「ふむ……まさか、あの時のゴブリンが逃げ出しておったとはのう」
草原に現れたゴブリン亜種の討伐を終えた後、ナイはハマーンと連絡を取った。その後、彼は冒険者ギルドに討伐完了した事を伝えると、正体不明のゴブリンが討伐されたという報告をギルドから受けたアッシュが駆けつける。
ゴブリン亜種の討伐を果たしたナイも冒険者ギルドに訪れ、ギルド長室にてハマーンと共にアッシュから事情を受ける。当然だがギルドマスターも同席しており、話を聞き終えた彼は例の討伐したゴブリンが今まで確認されていない新種だと判明した。
「死骸を調べた結果、通常のゴブリンには存在しない体毛、爪を自由に伸ばして刃物として扱う、そして喰らった魔物の特徴を受け継ぐ能力……このようなゴブリンは歴史上でも確認されていない。間違いなく、新種だ」
「やはりギルドでも同じ見解か……まさか、ゴブリンの新種が現れるとは、これも世界変異の影響か」
「世界変異?」
「お主も知っておるじゃろう。この数年の間に急速に魔物共が数を増やして生態系が変化しておる。その異常事態を世界変異と呼んでおるのじゃ」
「あ、そうなんですか……」
世界変異は100年単位の周期で発生し、魔物が大量に繁殖するだけではなく、今回のように新種の魔物が誕生する事もあると言われている。グマグ火山のゴーレムキングやイチノのゴブリンキングが誕生したのもこの世界変異が原因だと考えられる。
しかし、今回の出来事は闘技場でゴブリン亜種の管理をしっかりとしていなかったアッシュに責任があり、彼が自ら出向いて謝罪を行う。今回は一般人の被害はなかったが、もしもナイが対処していなければ大変な事になっていた。
「本当に今回の一件は助かった。奇跡的にも一般人の被害はなかったのは幸いだが、まさか既に王都の外に逃げ出していたとは……」
「うむ、人間を襲わずに王都の外に逃げ出す所、相当に知能も高かったようじゃな。不用意に人間に手を出せば危険と判断して王都の外に逃げたのかもしれん」
「いや……それは違うんじゃないか? 」
ハマーンがゴブリン亜種が人間を襲わなかった理由は人間を恐れたからだと判断したが、冒険者ギルドのギルドマスターのギガンの見解は違った。
「人間を襲わなかったのは単純にこのゴブリン亜種が人間から奪える力は何もないと判断したからではないのか?」
「それは……どういう意味じゃ?」
「言葉通りの意味だ。この魔物は他の魔物を喰らう事で殺した魔物の能力を奪う。だが、普通の一般人は魔物のように特別な力を持つ者はいない。だからゴブリンは見向きもせず、魔物がいない街を抜け出して逃げ出したのではないか?」
「なるほど……つまり、人間は餌としては適していないと判断されたのか」
「それじゃあ、どうして僕は襲われたんですか?」
ギガンの意見が正しいのならばゴブリン亜種は人間であるナイを狙った理由が分からず、本人は首を傾げる。ギガンはナイがゴブリン亜種に襲われた状況を聞いており、二つの仮説を立てる。
「考えられるとしたらゴブリン亜種が狙ったのは白狼種……ビャクという名前の狼を狙ったのではないか?そして主人である君を邪魔に感じ、襲い掛かった」
「あ、なるほど……言われ見れば確かに」
「もう一つの理由は……いや、これは考え過ぎか。忘れてくれ」
「……?」
二つ目の仮説に関しては何故かギガンは口にせず、ナイは不思議に思うが他のアッシュとハマーンは彼の言いたいことを理解した。
(ゴブリン亜種が坊主を襲った理由……それは坊主を非力な人間として捉えず、強大な力を持つ敵と定めたからか)
ゴブリン亜種がナイを狙った真の理由、それはナイが他の人間とは桁違いの力を誇り、それをゴブリン亜種は本能で感じ取り、彼に襲い掛かったという説だった。この考え方ならば確かに色々と説明はつくが本人には黙っておく。
ナイは魔物であるゴブリン亜種に人間として捉えられず、野生の魔物のように強大な力を持つ存在として認識された。それはつまり、彼を人間扱いしなかった事を意味する。流石にそれを本人に素直に伝えるのは酷であり、敢えてギガンは言葉を濁した。
「……それはともかく、あの新種のゴブリンに関しては仮称としてゴブリンキラーと名付けておく。問題ないか?」
「ほう、ゴブリンキラーか……」
「ゴブリンキラー……」
「ふむ、しっくりくる名前だな」
こうしてナイが倒したゴブリン亜種は後に正式に「ゴブリンキラー」という名前で登録された。
「うわっ!?びっくりした!!」
「ふむ……まさか、あの時のゴブリンが逃げ出しておったとはのう」
草原に現れたゴブリン亜種の討伐を終えた後、ナイはハマーンと連絡を取った。その後、彼は冒険者ギルドに討伐完了した事を伝えると、正体不明のゴブリンが討伐されたという報告をギルドから受けたアッシュが駆けつける。
ゴブリン亜種の討伐を果たしたナイも冒険者ギルドに訪れ、ギルド長室にてハマーンと共にアッシュから事情を受ける。当然だがギルドマスターも同席しており、話を聞き終えた彼は例の討伐したゴブリンが今まで確認されていない新種だと判明した。
「死骸を調べた結果、通常のゴブリンには存在しない体毛、爪を自由に伸ばして刃物として扱う、そして喰らった魔物の特徴を受け継ぐ能力……このようなゴブリンは歴史上でも確認されていない。間違いなく、新種だ」
「やはりギルドでも同じ見解か……まさか、ゴブリンの新種が現れるとは、これも世界変異の影響か」
「世界変異?」
「お主も知っておるじゃろう。この数年の間に急速に魔物共が数を増やして生態系が変化しておる。その異常事態を世界変異と呼んでおるのじゃ」
「あ、そうなんですか……」
世界変異は100年単位の周期で発生し、魔物が大量に繁殖するだけではなく、今回のように新種の魔物が誕生する事もあると言われている。グマグ火山のゴーレムキングやイチノのゴブリンキングが誕生したのもこの世界変異が原因だと考えられる。
しかし、今回の出来事は闘技場でゴブリン亜種の管理をしっかりとしていなかったアッシュに責任があり、彼が自ら出向いて謝罪を行う。今回は一般人の被害はなかったが、もしもナイが対処していなければ大変な事になっていた。
「本当に今回の一件は助かった。奇跡的にも一般人の被害はなかったのは幸いだが、まさか既に王都の外に逃げ出していたとは……」
「うむ、人間を襲わずに王都の外に逃げ出す所、相当に知能も高かったようじゃな。不用意に人間に手を出せば危険と判断して王都の外に逃げたのかもしれん」
「いや……それは違うんじゃないか? 」
ハマーンがゴブリン亜種が人間を襲わなかった理由は人間を恐れたからだと判断したが、冒険者ギルドのギルドマスターのギガンの見解は違った。
「人間を襲わなかったのは単純にこのゴブリン亜種が人間から奪える力は何もないと判断したからではないのか?」
「それは……どういう意味じゃ?」
「言葉通りの意味だ。この魔物は他の魔物を喰らう事で殺した魔物の能力を奪う。だが、普通の一般人は魔物のように特別な力を持つ者はいない。だからゴブリンは見向きもせず、魔物がいない街を抜け出して逃げ出したのではないか?」
「なるほど……つまり、人間は餌としては適していないと判断されたのか」
「それじゃあ、どうして僕は襲われたんですか?」
ギガンの意見が正しいのならばゴブリン亜種は人間であるナイを狙った理由が分からず、本人は首を傾げる。ギガンはナイがゴブリン亜種に襲われた状況を聞いており、二つの仮説を立てる。
「考えられるとしたらゴブリン亜種が狙ったのは白狼種……ビャクという名前の狼を狙ったのではないか?そして主人である君を邪魔に感じ、襲い掛かった」
「あ、なるほど……言われ見れば確かに」
「もう一つの理由は……いや、これは考え過ぎか。忘れてくれ」
「……?」
二つ目の仮説に関しては何故かギガンは口にせず、ナイは不思議に思うが他のアッシュとハマーンは彼の言いたいことを理解した。
(ゴブリン亜種が坊主を襲った理由……それは坊主を非力な人間として捉えず、強大な力を持つ敵と定めたからか)
ゴブリン亜種がナイを狙った真の理由、それはナイが他の人間とは桁違いの力を誇り、それをゴブリン亜種は本能で感じ取り、彼に襲い掛かったという説だった。この考え方ならば確かに色々と説明はつくが本人には黙っておく。
ナイは魔物であるゴブリン亜種に人間として捉えられず、野生の魔物のように強大な力を持つ存在として認識された。それはつまり、彼を人間扱いしなかった事を意味する。流石にそれを本人に素直に伝えるのは酷であり、敢えてギガンは言葉を濁した。
「……それはともかく、あの新種のゴブリンに関しては仮称としてゴブリンキラーと名付けておく。問題ないか?」
「ほう、ゴブリンキラーか……」
「ゴブリンキラー……」
「ふむ、しっくりくる名前だな」
こうしてナイが倒したゴブリン亜種は後に正式に「ゴブリンキラー」という名前で登録された。
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