588 / 1,110
王都の異変
第584話 黒炎
しおりを挟む
(――何だ!?何が起きているんだ!?)
クノに突き飛ばされたナイは身体を起き上げると、視界には信じられない光景が広がっていた。全身に火傷を負い、自ら心臓を突き刺したイゾウの身体は全身から黒色の泥のような物を生み出していた。
黒い泥の正体が闇属性の魔力だと気付くのにそれほど時間は掛からず、ナイは闇属性の魔法剣を発動させる時に味わう嫌な感覚を覚え、即座に距離を取る。
「な、何だい!?何が起きてるんだい!?」
「こ、こいつは……!?」
「これはいったい……!?」
「グルルルッ……!!」
イゾウの変化に戸惑っているのは他の者達も一緒であり、情報屋であるネズミも忍者のクノもイゾウの変化には心当たりがなかった。だが、テンだけは何か心当たりがあるのか顔色を変える。
「こいつ、まさか……ナイ、こいつを早く仕留めるんだ!!でないと取り返しの付かない事態になるよ!?」
「えっ!?」
『もう遅い』
テンの言葉にナイは彼女に振り返ると、この時に何処かから別の声が聞こえてきた。驚いたナイは声のした方向に振り返るが、そこには誰も存在せず、代わりに石柱の影の中で黒い物が沈んでいく光景を目撃した。
『ウウッ……アァアアアアッ!!』
「なっ!?ま、まだ動けたのでござるか!?」
イゾウは絶叫しながら立ち上がると、全身が黒に染まっていく。泥の様に身体がから放出されていた闇属性の魔力が覆い込み、それを見たナイはある事を思い出す。
強化術など発動させるとき、体内の聖属性の魔力を活性化させる事で全身に白色の炎のような魔力に包まれる。これは「白炎」と呼ばれ、聖属性の魔力その物である。この白炎は本当の炎のような性質はなく、触れても特に身体に害はない。だが、目の前のイゾウの場合は闇属性の魔力に包まれており、この状態で触れるとまずそうな気がした。
(闇属性の魔法剣は生物に触れると生命力を奪う力を持っていたはず……あれに触れるのはまずい!!)
何度かナイは闇属性の魔法剣を使用した事はあるが、生物が相手の場合は闇属性の魔法剣は絶大な効果を発揮した。実際に火竜との戦闘では闇属性の魔法剣のお陰で火竜を追い詰め、弱体化させる事に成功した。
しかし、そんな絶大な力を持つ闇属性の魔法剣をナイが多用しなかった理由、それは彼の本能が恐れたからとしか言いようがない。頭では闇属性の魔法剣が凄い効果を発揮する事が分かっていても、発動する度にナイは闇属性の魔法剣を恐れを抱いてしまう。
(嫌な感じだ……こうして目の前に立つだけで辛い)
これまでに火竜やゴブリンキングという圧倒的な存在と戦い続けたナイだが、強大な力を持つ生物と対峙する時とは異なる恐怖に襲われる。イゾウと対峙するだけでナイは不安を抱き、心が落ち着かない。
「ナイ、しっかりしな!!取り乱すんじゃないよ、あんたなら平気だ!!」
「テンさん!?」
「あんたの抱えている不安は闇属性の魔力の影響を受けているだけだ!!気をしっかり持て、恐怖に負けるんじゃないよ!!」
テンの激励にナイは頷き、不安に襲われながらもナイは旋斧を構えた。だが、身体が無意識に震えてしまい、思うように動けない。
その一方でイゾウの方は全身に纏わせていた魔力が徐々に彼の身体に吸い込まれるように消え去り、やがて黒色の炎のように変化を果たす。そして落ちている風魔を拾い上げると、風魔の全体にも「黒炎」が流れ込む。
『フウッ……フウッ……コロス、コロシテヤル!!ミナゴロシダァアアアッ!!』
「うっ!?」
「ナイ殿、気を付けて!!」
ナイはイゾウの気迫に気圧されるが、クノの言葉を聞いて旋斧を構えると、黒炎を纏った風魔と衝突する。その結果、風魔に纏った黒炎に反応したのか旋斧が変化する。
『ウオオオッ!!』
「くっ……うわっ!?」
「な、何だ!?どうしたんだい!?」
「ナ、ナイ殿の剣が!?」
風魔に纏った闇属性の魔力に反応したのか、旋斧の全体が漆黒へと染まり、咄嗟にナイはイゾウから離れる。どうやら勝手に旋斧が闇属性の魔力を吸収したらしく、しかも火竜の魔力を反応して黒炎を生み出す。
(まずい、このままだと抑えきれない!?)
黒炎を纏った旋斧を見て危険だと判断したナイはイゾウに視線を向け、イゾウは風魔を片手にナイの元へ迫る。それに対してナイは咄嗟に旋斧で受けるのはまずいと判断し、刃に纏った炎を放つ。
「このぉっ!!」
『ウガアアアッ!?』
「うひぃっ!?」
「まずいっ!?」
「キャインッ!?」
旋斧を突き出した瞬間、刃に纏っていた黒炎が放出され、イゾウの身体を吹き飛ばす。その際に他の者は巻き込まれない様に伏せると、イゾウは廃墟の壁に叩きつけられた。
魔力を放出した事で旋斧の刃の色は元に戻るが、ナイは嫌な汗を流しながらイゾウの様子を伺う。現在のイゾウは全身に黒炎が纏い、何時までも消える様子がない。それを見たナイは倒したのかと思ったが、イゾウは目を見開く。
クノに突き飛ばされたナイは身体を起き上げると、視界には信じられない光景が広がっていた。全身に火傷を負い、自ら心臓を突き刺したイゾウの身体は全身から黒色の泥のような物を生み出していた。
黒い泥の正体が闇属性の魔力だと気付くのにそれほど時間は掛からず、ナイは闇属性の魔法剣を発動させる時に味わう嫌な感覚を覚え、即座に距離を取る。
「な、何だい!?何が起きてるんだい!?」
「こ、こいつは……!?」
「これはいったい……!?」
「グルルルッ……!!」
イゾウの変化に戸惑っているのは他の者達も一緒であり、情報屋であるネズミも忍者のクノもイゾウの変化には心当たりがなかった。だが、テンだけは何か心当たりがあるのか顔色を変える。
「こいつ、まさか……ナイ、こいつを早く仕留めるんだ!!でないと取り返しの付かない事態になるよ!?」
「えっ!?」
『もう遅い』
テンの言葉にナイは彼女に振り返ると、この時に何処かから別の声が聞こえてきた。驚いたナイは声のした方向に振り返るが、そこには誰も存在せず、代わりに石柱の影の中で黒い物が沈んでいく光景を目撃した。
『ウウッ……アァアアアアッ!!』
「なっ!?ま、まだ動けたのでござるか!?」
イゾウは絶叫しながら立ち上がると、全身が黒に染まっていく。泥の様に身体がから放出されていた闇属性の魔力が覆い込み、それを見たナイはある事を思い出す。
強化術など発動させるとき、体内の聖属性の魔力を活性化させる事で全身に白色の炎のような魔力に包まれる。これは「白炎」と呼ばれ、聖属性の魔力その物である。この白炎は本当の炎のような性質はなく、触れても特に身体に害はない。だが、目の前のイゾウの場合は闇属性の魔力に包まれており、この状態で触れるとまずそうな気がした。
(闇属性の魔法剣は生物に触れると生命力を奪う力を持っていたはず……あれに触れるのはまずい!!)
何度かナイは闇属性の魔法剣を使用した事はあるが、生物が相手の場合は闇属性の魔法剣は絶大な効果を発揮した。実際に火竜との戦闘では闇属性の魔法剣のお陰で火竜を追い詰め、弱体化させる事に成功した。
しかし、そんな絶大な力を持つ闇属性の魔法剣をナイが多用しなかった理由、それは彼の本能が恐れたからとしか言いようがない。頭では闇属性の魔法剣が凄い効果を発揮する事が分かっていても、発動する度にナイは闇属性の魔法剣を恐れを抱いてしまう。
(嫌な感じだ……こうして目の前に立つだけで辛い)
これまでに火竜やゴブリンキングという圧倒的な存在と戦い続けたナイだが、強大な力を持つ生物と対峙する時とは異なる恐怖に襲われる。イゾウと対峙するだけでナイは不安を抱き、心が落ち着かない。
「ナイ、しっかりしな!!取り乱すんじゃないよ、あんたなら平気だ!!」
「テンさん!?」
「あんたの抱えている不安は闇属性の魔力の影響を受けているだけだ!!気をしっかり持て、恐怖に負けるんじゃないよ!!」
テンの激励にナイは頷き、不安に襲われながらもナイは旋斧を構えた。だが、身体が無意識に震えてしまい、思うように動けない。
その一方でイゾウの方は全身に纏わせていた魔力が徐々に彼の身体に吸い込まれるように消え去り、やがて黒色の炎のように変化を果たす。そして落ちている風魔を拾い上げると、風魔の全体にも「黒炎」が流れ込む。
『フウッ……フウッ……コロス、コロシテヤル!!ミナゴロシダァアアアッ!!』
「うっ!?」
「ナイ殿、気を付けて!!」
ナイはイゾウの気迫に気圧されるが、クノの言葉を聞いて旋斧を構えると、黒炎を纏った風魔と衝突する。その結果、風魔に纏った黒炎に反応したのか旋斧が変化する。
『ウオオオッ!!』
「くっ……うわっ!?」
「な、何だ!?どうしたんだい!?」
「ナ、ナイ殿の剣が!?」
風魔に纏った闇属性の魔力に反応したのか、旋斧の全体が漆黒へと染まり、咄嗟にナイはイゾウから離れる。どうやら勝手に旋斧が闇属性の魔力を吸収したらしく、しかも火竜の魔力を反応して黒炎を生み出す。
(まずい、このままだと抑えきれない!?)
黒炎を纏った旋斧を見て危険だと判断したナイはイゾウに視線を向け、イゾウは風魔を片手にナイの元へ迫る。それに対してナイは咄嗟に旋斧で受けるのはまずいと判断し、刃に纏った炎を放つ。
「このぉっ!!」
『ウガアアアッ!?』
「うひぃっ!?」
「まずいっ!?」
「キャインッ!?」
旋斧を突き出した瞬間、刃に纏っていた黒炎が放出され、イゾウの身体を吹き飛ばす。その際に他の者は巻き込まれない様に伏せると、イゾウは廃墟の壁に叩きつけられた。
魔力を放出した事で旋斧の刃の色は元に戻るが、ナイは嫌な汗を流しながらイゾウの様子を伺う。現在のイゾウは全身に黒炎が纏い、何時までも消える様子がない。それを見たナイは倒したのかと思ったが、イゾウは目を見開く。
10
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる