578 / 1,110
王都の異変
第574話 育ての親との再会
しおりを挟む
「罠だろうと行くしかないさ、他にイゾウとやらを掴む手がかりはないんだからね」
「そ、それはそうかもしれませんけど……」
「危険じゃないの?」
「危険?あんたら、誰に言ってんだい?あたしは聖女騎士団の団長だよ。妖刀の使い手だが何だか知らないけど、あたしに勝てる奴なんてそうはいないよ」
「……この間、ナイに負けた癖に」
「やかましい!!尻を引っ叩くよ!?」
「いやんっ」
心配する皆に対してテンは問題ないとばかりに力こぶを作り、その態度を見て止めても無駄だと悟った他の者はクノにテンを任せる事にした。
「クノ、何かあったらすぐに戻ってこい、犬笛は持っているな?」
「大丈夫でござる。もしも罠だった場合、すぐに助けを求めるでござるよ」
「クゥ~ンッ……」
シノビはクノに万が一の事態に陥った場合、犬笛を利用して自分達を呼び出す様に指示する。犬笛を吹けばクロとコクも異変に勘付いてシノビたちに二人の危険を知らせられる。
ネズミが指定した場所は以前にルナが身を隠していた廃墟であり、そこで彼女は待つという。ナイ達は連れてこない様に指示を出されているが、犬笛が届く範囲内までナイ達は付いて行くことにした。
「テン、油断するな。相手は妖刀の使い手だ……いざという時はお前もその魔剣の力を使え」
「ああ……分かってるよ」
「あれ?テンさんの魔剣って能力があるんですか?」
見送りに来たレイラの言葉を聞いてナイは驚き、テンの退魔刀に能力がある事を初めて知った。基本的には魔剣は魔力を扱える人間ならば魔法剣を扱えるが、テンが退魔刀を利用して魔法剣を扱う姿など見た事がない。
「あたしの退魔刀はちょっと特別でね……あんた達の魔剣と比べると少し使い勝手が悪いんだよ」
「へえ、そうなんですか……」
「テン殿、そろそろ目的地に向かわないと間に合わないでござる」
「おっと、こうしちゃいられないね……じゃあ、あんた達は打ち合わせ通りに動きな」
「気をつけるんだよ」
ナイ達は別々に屋敷から抜け出し、テンとクノは廃墟へ向かう一方でナイ達の方は廃墟から離れた場所にそれぞれが移動を行う。聖女騎士団は二手に分かれ、片方はクロを従えるシノビが指揮を執り、もう片方はコクとビャクを従えるナイが指揮を執る。
万が一にもネズミがイゾウと手を組み、テンに罠を嵌めるために待ち伏せていた場合を想定し、他の者達は犬笛がぎりぎり届く範囲に待機を行う。もしもクノが危険と判断して犬笛を吹いた場合、全員がすぐに動き出せるように待機しておく。
「ビャク、コク君。頼りにしてるよ」
「ウォンッ!!」
「クゥ~ンッ」
「本当にナイさんにだけは懐きますね、この狼……」
「私達には見向きもしないのに……」
コクはナイの言葉に頷き、甘える様に彼に擦り寄る。その様子を見てヒイロとミイナはため息を吐く。
クロの方も同じでシノビとクノが連れ出した忍犬(狼)たちは二人の飼い主とナイ以外の人間には決して懐かない。他に心を許しているのはビャクぐらいであり、ビャクの事を兄弟のように慕う。
「ペロペロッ……」
「クゥンッ……」
「ビャクがコクにじゃれついている……やっぱり、仲間ができて嬉しいんだね」
「そういえばビャクの家族はもういないんですよね……白狼種なんて滅多に見つかりませんし、仲間を探すのも一苦労ですね」
「ビャクがクロかコクと結婚したら子供は白狼種?それとも黒狼種?」
「そこら辺はどうなんだろうね、僕も気になるよ」
「……って、アルト王子!?付いて来てたんですか!?」
何故か王子であるはずのアルトもナイ達に同行しており、彼はビャクとコクを見て興味深そうに覗き込む。しかし、コクの方はアルトを見て警戒したように唸り声を上げる。
「グルルルッ……!!」
「おっと、落ち着いてくれ。僕は敵じゃないよ……ほら、干し肉をあげるから」
「ガウッ!!」
「あ、コク君駄目だよ……落ち着いて」
「クゥ~ンッ……」
干し肉を差し出してきたアルトに対してコクは牙を剥き出しにして唸り声を上げるが、ナイが声を掛けるとすぐに大人しくなってしまう。その様子を見てアルトは考え込み、シノビとクノとナイの共通点を見抜く。
「……そういえばシノビ君もクノ君もナイ君も黒髪だったね。もしかしたらクロ君とコク君は黒髪の人間が好きなのかな?」
「え?」
「言われてみれば……確かに黒髪の人は珍しいですよね」
「あんまりは見かけない気がする」
「確かに……」
「黒髪自体が珍しいからな」
アルトの言葉にナイ以外の者達も納得したように頷き、この世界では黒髪の人間は珍しく、アルトはある仮説を立てる。
「そういえば聞いた話によると、シノビ君もクノ君も黒髪だという事は和国の子孫という事だ。そして彼の一族が全員が黒髪だとしたら、クロ君とコク君はずっと黒髪の人間に育てられたから黒髪ではない人間に警戒心を抱くのかもしれないね」
「あ、なるほど……だから僕にも懐いたのかな?」
「クゥ~ンッ?」
ナイはアルトの言葉を聞いて納得し、コクの頭を撫でる。もしもアルトの仮説が正しければコクが黒髪ではないに人間に懐かない理由も納得できるが、同時に彼は別の事を考えていた。
「そ、それはそうかもしれませんけど……」
「危険じゃないの?」
「危険?あんたら、誰に言ってんだい?あたしは聖女騎士団の団長だよ。妖刀の使い手だが何だか知らないけど、あたしに勝てる奴なんてそうはいないよ」
「……この間、ナイに負けた癖に」
「やかましい!!尻を引っ叩くよ!?」
「いやんっ」
心配する皆に対してテンは問題ないとばかりに力こぶを作り、その態度を見て止めても無駄だと悟った他の者はクノにテンを任せる事にした。
「クノ、何かあったらすぐに戻ってこい、犬笛は持っているな?」
「大丈夫でござる。もしも罠だった場合、すぐに助けを求めるでござるよ」
「クゥ~ンッ……」
シノビはクノに万が一の事態に陥った場合、犬笛を利用して自分達を呼び出す様に指示する。犬笛を吹けばクロとコクも異変に勘付いてシノビたちに二人の危険を知らせられる。
ネズミが指定した場所は以前にルナが身を隠していた廃墟であり、そこで彼女は待つという。ナイ達は連れてこない様に指示を出されているが、犬笛が届く範囲内までナイ達は付いて行くことにした。
「テン、油断するな。相手は妖刀の使い手だ……いざという時はお前もその魔剣の力を使え」
「ああ……分かってるよ」
「あれ?テンさんの魔剣って能力があるんですか?」
見送りに来たレイラの言葉を聞いてナイは驚き、テンの退魔刀に能力がある事を初めて知った。基本的には魔剣は魔力を扱える人間ならば魔法剣を扱えるが、テンが退魔刀を利用して魔法剣を扱う姿など見た事がない。
「あたしの退魔刀はちょっと特別でね……あんた達の魔剣と比べると少し使い勝手が悪いんだよ」
「へえ、そうなんですか……」
「テン殿、そろそろ目的地に向かわないと間に合わないでござる」
「おっと、こうしちゃいられないね……じゃあ、あんた達は打ち合わせ通りに動きな」
「気をつけるんだよ」
ナイ達は別々に屋敷から抜け出し、テンとクノは廃墟へ向かう一方でナイ達の方は廃墟から離れた場所にそれぞれが移動を行う。聖女騎士団は二手に分かれ、片方はクロを従えるシノビが指揮を執り、もう片方はコクとビャクを従えるナイが指揮を執る。
万が一にもネズミがイゾウと手を組み、テンに罠を嵌めるために待ち伏せていた場合を想定し、他の者達は犬笛がぎりぎり届く範囲に待機を行う。もしもクノが危険と判断して犬笛を吹いた場合、全員がすぐに動き出せるように待機しておく。
「ビャク、コク君。頼りにしてるよ」
「ウォンッ!!」
「クゥ~ンッ」
「本当にナイさんにだけは懐きますね、この狼……」
「私達には見向きもしないのに……」
コクはナイの言葉に頷き、甘える様に彼に擦り寄る。その様子を見てヒイロとミイナはため息を吐く。
クロの方も同じでシノビとクノが連れ出した忍犬(狼)たちは二人の飼い主とナイ以外の人間には決して懐かない。他に心を許しているのはビャクぐらいであり、ビャクの事を兄弟のように慕う。
「ペロペロッ……」
「クゥンッ……」
「ビャクがコクにじゃれついている……やっぱり、仲間ができて嬉しいんだね」
「そういえばビャクの家族はもういないんですよね……白狼種なんて滅多に見つかりませんし、仲間を探すのも一苦労ですね」
「ビャクがクロかコクと結婚したら子供は白狼種?それとも黒狼種?」
「そこら辺はどうなんだろうね、僕も気になるよ」
「……って、アルト王子!?付いて来てたんですか!?」
何故か王子であるはずのアルトもナイ達に同行しており、彼はビャクとコクを見て興味深そうに覗き込む。しかし、コクの方はアルトを見て警戒したように唸り声を上げる。
「グルルルッ……!!」
「おっと、落ち着いてくれ。僕は敵じゃないよ……ほら、干し肉をあげるから」
「ガウッ!!」
「あ、コク君駄目だよ……落ち着いて」
「クゥ~ンッ……」
干し肉を差し出してきたアルトに対してコクは牙を剥き出しにして唸り声を上げるが、ナイが声を掛けるとすぐに大人しくなってしまう。その様子を見てアルトは考え込み、シノビとクノとナイの共通点を見抜く。
「……そういえばシノビ君もクノ君もナイ君も黒髪だったね。もしかしたらクロ君とコク君は黒髪の人間が好きなのかな?」
「え?」
「言われてみれば……確かに黒髪の人は珍しいですよね」
「あんまりは見かけない気がする」
「確かに……」
「黒髪自体が珍しいからな」
アルトの言葉にナイ以外の者達も納得したように頷き、この世界では黒髪の人間は珍しく、アルトはある仮説を立てる。
「そういえば聞いた話によると、シノビ君もクノ君も黒髪だという事は和国の子孫という事だ。そして彼の一族が全員が黒髪だとしたら、クロ君とコク君はずっと黒髪の人間に育てられたから黒髪ではない人間に警戒心を抱くのかもしれないね」
「あ、なるほど……だから僕にも懐いたのかな?」
「クゥ~ンッ?」
ナイはアルトの言葉を聞いて納得し、コクの頭を撫でる。もしもアルトの仮説が正しければコクが黒髪ではないに人間に懐かない理由も納得できるが、同時に彼は別の事を考えていた。
10
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる