貧弱の英雄

カタナヅキ

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王都の異変

第558話 黄金級冒険者の集結

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「何を騒いでおるんじゃ、お主等……」
「何かあったんですか?」
「ちっ……爺さんと嬢ちゃんか」
『おおっ、お前達久しぶりだな!!リーナはまた大きくなったか?爺さんは相変わらず小さいな!!』
『どうも』


ギルドの出入口からハマーンとリーナが訪れると、これで王都に存在する黄金級冒険者が全員集う。その光景を見た他の冒険者達は圧倒され、ここにいる一人一人が一騎当千の強者揃いである。

国内でも最速で黄金級冒険者に昇格を果たしたリーナ、冒険者であると同時に鍛冶師としても超一流のハマーン、獣剣士の異名を誇るガオウ、剣聖の称号を持つゴウカ、魔導士に匹敵する実力を誇ると呼ばれるマリン、この5名が同時に集まる事は滅多にない。

黄金級冒険者は最高階級の冒険者であるため、最も仕事の依頼が多い。実際にリーナ達も王都へ帰還してからは新しい依頼を次々と受けており、今も仕事帰りで戻って来た所だった。


「俺達が五人共揃うとはな……いつ以来だ?」
「一年ぶりぐらいかもしれんのう、そこの二人は長い間随分と離れて負ったようじゃが……」
『ふはははっ!!リーナ、久しぶりに手合わせするか!?お前がどれくらい強くなったのか確かめてやるぞ!!』
「え、遠慮しておきます。これから、用事があるので……」
『リーナちゃん、用事って?』


リーナの言葉を聞いたマリンは首を傾げながら水晶板を掲げると、彼女の文章を読んだリーナは少し照れくさそうな表情を浮かべながら告げる。


「えっと、最近仲良くなった友達と一緒に遊びに行く予定で……」
「ほう、でぇとという奴か?」
「いや、遊びに行くといっても二人っきりじゃなくて、皆で遊びに行くというか……」
「はは~んっ……その反応から察するにあの坊主と遊びに行くのか?」
『坊主?』
『ほほう、リーナちゃんの彼氏?』
「ち、違うよ!?」


リーナの話を聞いてガオウはすぐに彼女が遊びに行く相手を見抜き、何かを察したマリンは指先を高速に動かして水晶板に文字を書き込む。

実は今日はリーナはナイ達と共に商業区へ赴く約束をしており、今回はヒナやモモ、それにナイも一緒に行く予定だった。なんでもナイは商業区の方はあまり出歩いた事はないらしく、皆で遊びに行くのも兼ねて道案内する約束をしていた。


「じゃあ、僕はこれで失礼します。ゴウカさん、手合わせはまた今度お願いします」
『ふむ、約束があるなら仕方ないな!!』
「意外と聞き分けが良いんだな、あんた……」
『ではガオウ!!お前が俺の相手をしてくれるか!?』
「何でそうなるんだよ!?」
「ほう、そう言わずにやってみたらどうだ?お主だってここ最近は碌な相手がいないと嘆いていたではないか」


ギルドを立ち去ったリーナの代わりにゴウカはガオウと戦おうとすると、彼は嫌がるように距離を置く。その一方でマリンの方は走り去ったリーナを見て水晶板に文字を書き込む。


『さっき、ガオウさんはリーナさんが遊ぶ相手の事を知っていたようですけど、ガオウさんも知り合いですか?』
「知り合いと言えば……まあ、知り合いだな」
「儂も知っておるぞ。中々に面白い小僧でな、このガオウなんか危うく敗れかけた程じゃ……」
「てめっ、爺っ!!余計な事を!!」
『ほほう、ガオウが……』
『それは本当ですか?』


ガオウが破れかけたという話にゴウカとマリンは食いつき、その態度を見てハマーンはナイの事を話す。


「うむ、名前はナイと言ってな。今から二か月ぐらい前にこの王都にやってきたという少年じゃ」
『ナイ?聞いた事がないな……冒険者か?それとも傭兵か?』
「いや、本人は旅人を自称しておったが……どうも王族と深い関りがあるようでな」
『王族と?』
「俺はアルト王子に気に入られて今は王子の屋敷に暮らしていると聞いたぜ。言っておくが、下手な事を考えるなよ。相手は王子のお気に入りだからな……」
『アルト王子というと……第三王子?』


ナイという少年が王族と関わりがあり、俄然にゴウカとマリンは興味を惹かれ、どのような人物なのか詳しく尋ねる。


『増々気になるな、どんな坊主だ?』
『リーナちゃんが気になる子という事は、顔はイケてる?それとも可愛い系?』
「お、おう……まあ、顔は悪くないんじゃないのか」
「うむ、一見すると女にも見えなくなないぐらいに顔立ちは整っておるな」
『なるほど、ではそいつは強いのか?』
「だから、下手な事を考えるんじゃねえよ!!言っておくが、ナイに手を出したら王族が黙っていないからな!!間違っても手を出すなよ!?」


ゴウカの反応にガオウは注意を行うが、当のゴウカはナイに対して興味津々であり、それはマリンも同じ様子だった。

しかし、ここで冒険者ギルド内の扉が乱暴に開かれ、驚いた者達は出入口に視線を向けると、そこには獣人族の少年が不機嫌そうに出ていく姿があった――
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