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ゴブリンキングの脅威
第554話 秘伝の書
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「国王陛下、こちらをお受け取り下さい」
「それは?」
「我が一族が和国を抜け出す際に持ち出してきた巻物でございます」
「巻物?」
「……見せてくれ」
巻物という言葉に国王は首を傾げ、王国では巻物は存在しないので彼が何を取り出したのか皆は理解できないが、ここでバッシュが前に出て巻物を受け取る。
バッシュは巻物を受け取ると中身を確認するが、訝し気な表情を浮かべた。危険はない事を確認すると、彼は父親の前で巻物を広げて中身を確認させた。
「父上、記されているのは絵図と文章のようですが……文字は読めません」
「これは……」
「それは数百年前に記された和国の地図であり、記されているのは我が先祖が書き残した文章でございます」
シノビが差し出した巻物には数百年前の和国の領内の地図が記され、文章も地図の隣に記されていた。それを確認した国王はこんな物を見せて何のつもりかと思ったが、シノビは話を続ける。
「当時の和国には名工が多く、その中には妖刀を作り出す技術を持つ者もおりました」
「妖刀?」
「この国では魔剣と呼ばれる代物でございます」
「ほう、和国では魔剣の事を妖刀と呼んでいたのか」
和国では魔剣の事を妖刀と称し、当時の和国には妖刀(魔剣)を作り出す技術を持つ名工が数多く存在した。彼等の作り出す妖刀は並の武器よりも優れており、どうして和国が小国でありながら他の大国に屈せず、国として成り立っていたのかはこの妖刀が関わっている。
和国は領民の数こそは少ないが、優れた剣士は非常に多かった。彼等が妖刀を手にして戦った時、一人一人が一騎当千の実力を発揮して何度も和国に攻め寄せてきた大国の軍隊を撃退してきた。つまり、妖刀こそが和国の誇る最強の兵器だと言えた。
しかし、和国が崩壊した時に数々の名工は命を落とし、僅かに生き延びた物も他国へ逃げ込むのが精いっぱいだった。だが、名工たちが残した妖刀の数々は現在も残っているはずであり、シノビの一族に伝わる巻物にはその在処が示されていた。
「和国が崩壊する時、国内に存在した数十本の妖刀は未だに和国の領内で隠されているはずっです。その巻物に記されているのは暗号……つまり、妖刀の在処を示す手がかりでございます」
「何じゃと!?では、和国の領地には未だに妖刀が残っているというのか!?」
「はい、その通りでございます。ご存じの通り、妖刀……いや、この国では魔剣と呼ばれていましたな。魔剣の類は普通の武器とは違い、簡単に壊れる代物ではありません。今も和国の領地には数百年前に残した妖刀(魔剣)が多数残されております」
「数十本の……魔剣があの地に眠っていたというのか!?」
「し、信じられませんわ……」
「だが、その話が事実ならば……とんでもない事だぞ」
魔剣は簡単に手に入る代物ではなく、能力は千差万別で中には恐るべき力を秘める魔剣も少なくはない。この世界では魔剣その物が兵器と言っても過言ではなく、その魔剣が数十本も和国の領内に未だに封じられているのであれば国王も無視する事は出来ない。
数十本の魔剣を手に入れればどれほどの戦力を増強化できるか想像するのも恐ろしく、下手をしたら数万の軍隊に匹敵する戦力を得られるかもしれない。そして妖刀の手掛かりを記されているのはシノビの所有する巻物だけであり、彼は頼み込む。
「陛下、その巻物はシノビ一族が何時の日か和国を取り返すために守り続けてきた代物でございます。その巻物の暗号を解く事が出来れば数十本の妖刀を手に入れられます」
「むむむ……この暗号、お主はもう解いたのか?」
「いいえ、残念ながらまだ完全には解けておりません。しかし、その記されている文章は和国の文字でございます。解読できるのは恐らくは我々だけだと……」
「お主……まさか、この妖刀を取引として和国の領地を返還しろというのか?」
「陛下を相手に取引など恐れ多い……私が言いたいのはこの妖刀を見つけ出し、全て献上した暁にはどうか和国の復興を宣言し、和国を属国として扱って欲しいのです」
「属国……シノビ、貴方はそこまでして国を……!?」
属国という言葉にリノは衝撃の表情を浮かべ、他の者達も驚く。シノビの言っている事は和国の領地内に封じられている妖刀を全て王国に差し出し、その手柄を認めさせて和国を再興させる。
しかし、復興した和国は王国の属国として扱うのであれば和国は王国には逆らえず、完全な上下関係を築く。それでも服従が条件だとしても国として認められるのであればシノビはどんな手段でも国を再興させる事を誓う。
「どうか、お考え下さい。ここで私を不届き物として切るのは容易いでしょう。しかし、その場合は王国は数十本の魔剣を手に入れる機会を永遠に失います」
「むうっ……」
「シノビさん……」
シノビの言葉に国王は非常に思い悩み、数十本の魔剣と引き換えに和国の返還を認め、今後は属国として和国を取り扱うべきか判断に迫られる――
「それは?」
「我が一族が和国を抜け出す際に持ち出してきた巻物でございます」
「巻物?」
「……見せてくれ」
巻物という言葉に国王は首を傾げ、王国では巻物は存在しないので彼が何を取り出したのか皆は理解できないが、ここでバッシュが前に出て巻物を受け取る。
バッシュは巻物を受け取ると中身を確認するが、訝し気な表情を浮かべた。危険はない事を確認すると、彼は父親の前で巻物を広げて中身を確認させた。
「父上、記されているのは絵図と文章のようですが……文字は読めません」
「これは……」
「それは数百年前に記された和国の地図であり、記されているのは我が先祖が書き残した文章でございます」
シノビが差し出した巻物には数百年前の和国の領内の地図が記され、文章も地図の隣に記されていた。それを確認した国王はこんな物を見せて何のつもりかと思ったが、シノビは話を続ける。
「当時の和国には名工が多く、その中には妖刀を作り出す技術を持つ者もおりました」
「妖刀?」
「この国では魔剣と呼ばれる代物でございます」
「ほう、和国では魔剣の事を妖刀と呼んでいたのか」
和国では魔剣の事を妖刀と称し、当時の和国には妖刀(魔剣)を作り出す技術を持つ名工が数多く存在した。彼等の作り出す妖刀は並の武器よりも優れており、どうして和国が小国でありながら他の大国に屈せず、国として成り立っていたのかはこの妖刀が関わっている。
和国は領民の数こそは少ないが、優れた剣士は非常に多かった。彼等が妖刀を手にして戦った時、一人一人が一騎当千の実力を発揮して何度も和国に攻め寄せてきた大国の軍隊を撃退してきた。つまり、妖刀こそが和国の誇る最強の兵器だと言えた。
しかし、和国が崩壊した時に数々の名工は命を落とし、僅かに生き延びた物も他国へ逃げ込むのが精いっぱいだった。だが、名工たちが残した妖刀の数々は現在も残っているはずであり、シノビの一族に伝わる巻物にはその在処が示されていた。
「和国が崩壊する時、国内に存在した数十本の妖刀は未だに和国の領内で隠されているはずっです。その巻物に記されているのは暗号……つまり、妖刀の在処を示す手がかりでございます」
「何じゃと!?では、和国の領地には未だに妖刀が残っているというのか!?」
「はい、その通りでございます。ご存じの通り、妖刀……いや、この国では魔剣と呼ばれていましたな。魔剣の類は普通の武器とは違い、簡単に壊れる代物ではありません。今も和国の領地には数百年前に残した妖刀(魔剣)が多数残されております」
「数十本の……魔剣があの地に眠っていたというのか!?」
「し、信じられませんわ……」
「だが、その話が事実ならば……とんでもない事だぞ」
魔剣は簡単に手に入る代物ではなく、能力は千差万別で中には恐るべき力を秘める魔剣も少なくはない。この世界では魔剣その物が兵器と言っても過言ではなく、その魔剣が数十本も和国の領内に未だに封じられているのであれば国王も無視する事は出来ない。
数十本の魔剣を手に入れればどれほどの戦力を増強化できるか想像するのも恐ろしく、下手をしたら数万の軍隊に匹敵する戦力を得られるかもしれない。そして妖刀の手掛かりを記されているのはシノビの所有する巻物だけであり、彼は頼み込む。
「陛下、その巻物はシノビ一族が何時の日か和国を取り返すために守り続けてきた代物でございます。その巻物の暗号を解く事が出来れば数十本の妖刀を手に入れられます」
「むむむ……この暗号、お主はもう解いたのか?」
「いいえ、残念ながらまだ完全には解けておりません。しかし、その記されている文章は和国の文字でございます。解読できるのは恐らくは我々だけだと……」
「お主……まさか、この妖刀を取引として和国の領地を返還しろというのか?」
「陛下を相手に取引など恐れ多い……私が言いたいのはこの妖刀を見つけ出し、全て献上した暁にはどうか和国の復興を宣言し、和国を属国として扱って欲しいのです」
「属国……シノビ、貴方はそこまでして国を……!?」
属国という言葉にリノは衝撃の表情を浮かべ、他の者達も驚く。シノビの言っている事は和国の領地内に封じられている妖刀を全て王国に差し出し、その手柄を認めさせて和国を再興させる。
しかし、復興した和国は王国の属国として扱うのであれば和国は王国には逆らえず、完全な上下関係を築く。それでも服従が条件だとしても国として認められるのであればシノビはどんな手段でも国を再興させる事を誓う。
「どうか、お考え下さい。ここで私を不届き物として切るのは容易いでしょう。しかし、その場合は王国は数十本の魔剣を手に入れる機会を永遠に失います」
「むうっ……」
「シノビさん……」
シノビの言葉に国王は非常に思い悩み、数十本の魔剣と引き換えに和国の返還を認め、今後は属国として和国を取り扱うべきか判断に迫られる――
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