貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第552話 表彰式

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――後日、遂に王城内にて表彰式が行われた。今回表彰されるのは討伐隊の中でも功績を遺した人間が選出され、国王から直々に勲章を授かる形式となっていた。


「皆の者、よく来てくれた。この国の平和を守ったのはこの場に存在する者達のお陰……さあ、英雄達を称えようではないか!!」


国王の前には黄金級冒険者のハマーン、ガオウ、リーナ、そしてナイも跪いていた。他にもドリスやリン、それにアッシュの姿もあり、他の王国騎士達も後ろに並んでいる。

今回勲章が与えられるのは四人であり、黄金級冒険者達は事前に勲章を授かる事を条件に今回の救出の依頼を引き受けた。そしてナイの場合は前回の任務の報酬を受け取るという名目で勲章を授与される。


「君達のお陰で儂のも助かった。リノよ、お前の手から勲章を授けるのだ」
「はい、お父様」
「おおっ……見違えたのう」
「お姫様、綺麗……」
「……良い女になったな」
「わあっ……」


ナイ達の前に現れたのは男装でもなければ騎士団の制服でもなく、女性用のドレスに着替えたリノが訪れる。彼女は他の人間に注目される事を恥ずかしがっているのか頬を赤らめるが、国王の代わりにそれぞれに勲章を差し出す。

勲章は硝子張りの木箱の中に収められており、剣の紋様が刻まれた盾のような形をしている。これを国内で与えられた人間は限られており、冒険者からすれば国から信頼されている証にも等しく、より冒険者活動に励める。


「どうぞ、お受け取り下さい」
「ふむ、儂は前にも貰っているんだがのう」
「うわぁっ……ありがとうございます」
「へへっ……」
「あ、どうも……」


ハマーンだけは以前から王城とは縁があり、かなり前に勲章を授かった事がある。最も彼の場合は冒険者というよりは鍛冶師としての腕を買われた結果であり、冒険者として勲章を受け取るのは今回が初めてだと言える。

リーナとガオウは初めて勲章を受け取り、二人とも緊張と喜びが入り混じった表情を浮かべていた。その一方でナイの方は勲章を渡された時は反応に困り、まさか自分がこんな物を貰う日が訪れるとは思わなかった。


「さて、では続けてナイよ。お主に特別報酬を与えようではないか。事前に通達しておいた通り、お主の望む物を与えよう。さあ、何を望む?」
「「「…………」」」


国王がナイに報酬の内容を問い質すと、静寂が訪れる。全員の注目を浴びながらナイは緊張した様子で国王の前に膝を着き、報酬の内容を伝えた。


「国王様……僕の望みは国王様にある人の話を聞いてほしいんです」
「何……儂が?」
「どういう意味じゃ、それは?」


ナイの発言に国王は戸惑いの表情を浮かべ、すぐにシンが間に割って入る。報酬の内容を問い質したというのにナイが国王に会わせたい人物がいると告げると、他の者も戸惑いを隠せない。

しかし、ここで家臣の中から一人の人物が姿を現す。それはシノビであり、彼を見たリノは驚いた表情を浮かべる。シノビは家臣に紛れてこの場に存在した事にリノは動揺の声を上げる。


「シ、シノビ!?どうしてここに!?」
「貴様、何者だ!?」
「何時の間に入っていた!?」
「……どうかご無礼をお許しください、陛下」


シノビが表彰式に紛れ込んでいた事に騎士達は警戒するが、彼は抵抗せずにその場で膝を着く。そんな彼の元にナイは訪れて同じように膝を着いて国王に頼む。


「国王様、どうか彼の話を聞いて下さい。それば僕の望みです」
「なんと……その者はお主の知り合いか?」
「父上!!彼は最近、私の側近として雇った人間です。決して怪しい者ではありません」
「何っ……?」
「リノ王女、そのような事は聞いておりませんぞ」


リノが慌ててシノビが自分の側近である事を伝えると、国王は驚いた表情を浮かべ、宰相のシンでさえもシノビの事は把握していなかった。リノはシノビを庇うように前に出ると、ここでナイも一緒に頼み込む。


「お願いします、国王様……僕の願いは国王様に彼の話を聞いて欲しいんです。どうか、話を聞いて下さい」
「話を聞く……それがお主の望みか?言っておくが、お主の代わりにその者の望みを聞く事は出来ぬぞ?」
「はい、承知の上です」


国王が望みを許したのはあくまでもナイであり、彼の代わりに他の人間の望みを叶える事はできない。しかし、あくまでもシノビを呼び出した理由が彼の話をだけならば国王も無下には扱えない。


「……良かろう、そこまで言うのであれば後で話を聞いてやろう。今はまずは式を終わらせねばならん。文句はないな?」
「はっ……承知しました」


しばらくの間は悩んだ国王だったが、公衆の面前でナイの願いを聞き遂げると告げ、その彼の願いがシノビの話を聞くという事であれば断る理由はない。しかし、表彰式に突然入り込んだシノビに対して国王はあまりいい感情は抱いておらず、場所を変えて話を聞く事にした――
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