貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第550話 褒美として…

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「――はんどぱわぁっ!!」
「ぶはっ!?こ、ここは……」
「良かった、目を覚ましたわ……でも、モモ。何、さっきの言葉?」
「よく分からないけど、この言葉を言うと何故か気合が入るんだよ~」


気絶していたテンにモモが魔力を分け与えてやると、彼女は目を覚ます。テンが目覚めた事に他の者達も安堵するが、そんな彼女に対してルナは胸を張る。


「どうしたテン?あんなに偉そうに威張ってたくせにナイに負けるなんて格好悪いぞ!!」
「う、うるさいね……あんたに負けたわけじゃないだろうが」
「そういうルナさんもこの間、ナイの兄貴に負けたんですよね?」
「う、うるさい!!あの時はその、お腹が減って力が出なかったんだ!!」
「あれだけ暴れておいて……」
「ていうか、兄貴って……何?」


テンはルナに言い返すと、エリナが口を挟む。実際にルナも先日にナイに敗れているのは事実であり、その事は既に他の者に知られている。そんな事よりもナイとしてはエリナの兄貴という言葉が気になって尋ねると、彼女は頭を下げてきた。


「いや、だってナイさんはテンさんの弟子みたいなものだといってたし、それならテンさんから指導を受けている私からすれば先輩に当たるわけで……これからは兄貴と呼ばせてほしいっす」
「どんな理屈?」
「別にあたしはナイを弟子にした覚えはないけどね……まあ、大剣の基礎は教えてやったけど」
「試合とはいえ、弟子に敗れたとなると師匠としては面目丸潰れだぞ」
「うるさいね……まあ、今回はあたしの負けだよ」


ランファンの言葉にテンは若干悔しそうな表情を浮かべるが、気絶まで追い込まれた以上は敗北を認めるしかなく、改めてナイと握手を行う。ナイとしてはまさかテンに勝てるとは思わなかったが、思っていた以上に二刀流の戦法でテンの意表を突く事が出来た。

大剣の二刀流など流石のテンも戦った事はなく、彼女からすれば初めての経験である。その一方でナイは二刀流に少しずつ慣れてきた気がした。


(ドルトンさんから教えてもらった技、意外と使いやすいな)


若い頃は「鉄拳のドルトン」と呼ばれた彼から教わった「弾撃」は思っていた以上に役立ち、生身の拳でもテンのような強者を倒せるだけの威力を発揮した。尤も大剣の二刀流に関してはまだ粗削りであり、もっと練習を重ねる必要がある。


(旋斧と岩砕剣を同時に扱えたらきっと今まで以上に強くなれるし、もっと練習しないとな……)


ナイはこれからも訓練を積んで二刀流を極めようと考えた時、聞き覚えのある声が響き渡る。それはアルトであり、彼は慌てた様子で駆けつけてきた。


「ナイ君、ここに居たか!!」
「アルト?どうしたの?」
「お、王子様!?どうしてこちらに!?」
「大変なことが起きたんだ!!」


アルトが現れると全員が驚くが、そもそもこの屋敷はアルトが管理しており、別に彼がここへ訪れる事自体はおかしくはない。だが、現れたアルトは珍しく非常に焦った様子を浮かべており、ナイの両肩を掴む。


「ナイ君、父上が明日にも表彰式を行うんだ!!今回の遠征に参加した人間全員に報酬を与える事が決まった!!」
「えっ!?」
「何だ、やっとかい……随分と遅くなったね」


テンはアルトの話を聞いて呆れた表情を浮かべ、既に討伐隊が戻ってきてからそれなりの時間は経過しているが、未だに表彰式は行われなかった事の方が不思議だった。

今回の遠征ではゴブリンキングという脅威を打ち倒し、無事にイチノの街とリノ王女を救い出す事に成功した。そして外部協力者である黄金級冒険者やナイは表彰式で勲章を受け取る事は既に確定している。


「表彰式という事は……ナイ君も勲章を貰えるの!?」
「それって凄い事じゃないの!?」
「凄いなんてものじゃありません!!歴史上でもナイさんのような一般人の方が勲章を貰える事例なんてありませんでしたよ!!」
「ナイを一般人と言い切れるかどうかは微妙だと思うけど……おめでとう、ナイ」
「兄貴、凄いっすね!?」
「おおっ、良く分からないけどそんなに凄い事をしたのか!!」
「君達、静かにしてくれ!!いっぺんに話さないでくれないか!?僕の話はまだ終わってないよ!!」


ナイが遂に国王から直々に勲章を賜るかもしれず、他の者達は盛り上がるが、それだけの事でアルトがここまで取り乱すとは思えず、実際に彼は続けてナイにだけ与えられる報酬を伝えた。


「父上はこうも言っていたんだ!!先日の火竜とゴーレムキングの討伐の功績を考慮し、ナイ君にだけ特別報酬を与える!!」
「特別報酬?」
「その内容は……君の望む物ならどんな物でも用意するとの事だ!!」
『なにぃいいいっ!?』


屋敷中の人間がアルトの言葉に驚愕の表情を浮かべ、特にテンや聖女騎士団の人間達はアルトの発言を聞いて事の重大さを知り、動揺を隠しきれない。




※作者「ん?今なんでもって……」
 アルト「いや、なんでもとは言ってないぞ!?というか誰!?」
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