556 / 1,110
ゴブリンキングの脅威
第542話 ネズミ
しおりを挟む
「なら……ルナさんの居場所を知っていますか?」
「生憎とそこまでは知らないね。でも、少し時間をくれればその娘が何処に居るのか突き止められるよ。そうだね……30分程度で見つけ出せるよ」
「30分!?そんな馬鹿な……」
「信じるも信じないもあんた達次第さ」
「……どうするの、ナイ?」
ネズミの言葉にヒイロは信じられなかったが、ミイナはナイに尋ねる。ナイはネズミの言葉を信じるべきか悩み、少なくとも彼女は自分達の事もルナに関する詳細な情報も掴んでいたのは事実だった。
悩んだ末にナイは当てもなく探し回るよりもネズミに彼女の居場所を探し出して貰うべきだと判断し、まずは情報の対価を尋ねる。
「値段は?まさか無料で探し出してくれたりはしないんでしょう?」
「当たり前だね、あたしはこれで生計を立ててるんだからね……でも、そうだね。今回は初めての取引という事で……前払いで金貨1枚でどうだい?」
「き、金貨!?」
「それに前払いって……」
「分かりました」
ヒイロとミイナはネズミの要求に対して不満を抱き、もしも彼女が金貨を受け取って逃げ出してしまったら元も子もない。しかし、すぐにナイはネズミに対して金貨を一枚放り込むと、彼女は驚いた様に受け取る。
「金貨一枚、それで探してくれるんですよね?」
「……そんなにあっさりと渡していいのかい?」
「ナイさん!?本当にこんな人の言葉を信じるんですか!?」
「いくらなんでも怪しすぎる……止めて置いた方が良い」
ナイの行動に他の二人は戸惑い、ネズミの方もあっさりとナイが金貨を渡した事に訝しむが、そんな彼女達に対してナイは告げた。
「大丈夫だよ、もしもこの人が裏切ろうとしたら……その時はこの人を捕まえるだけでいいんだから」
「うっ……!?」
「ナ、ナイ……?」
「……こいつは、噂以上の人物だね」
3人はナイの言葉を聞いた瞬間に背筋が凍り、ナイ本人は別に何もおかしなことを言ったつもりはないが、最後の一言を言い放つ際に発した迫力は凄まじかった。
数々の死闘を乗り越え、より強くなった影響かナイの言葉には重みがあり、もしもネズミが裏切るような真似をすればナイは本当に彼女を捕まえるつもりだった。そして今のナイならば本当に彼女を捕まえる事ができる力を持っていた。
(こいつは思っていた以上に大物かもしれないね……)
ネズミは受け取った金貨を見つめ、彼女はため息を吐きながら頭に手を伸ばす。その行動にナイ達は不思議に思うが、ネズミは意識を集中させながら呟く。
「……見つけたよ、どうやらルナという小娘はあの建物の中に隠れているね」
「えっ!?」
「あそこに……?」
「丁度近くに居てくれて助かったよ。あたしの部下が見張っている、今の所は動く様子はないよ」
「どうして……そんな事まで分かるんですか?」
頭を触っただけでネズミはルナが隠れている場所を見抜き、彼女の立て籠もっている建物を指し示す。ナイ達はネズミの言葉に疑問を抱くが、ここで彼女は話題を変える。
「あんた達、どうしてあたしがネズミと名乗っているのか疑問を抱かなかったのかい?」
「え?」
「子供にネズミなんて名前を付ける馬鹿がいるはずないだろう?偽名だよ、偽名。正確に言えば渾名みたいなもんだけどね」
「ネズミが渾名?」
「そう……あたしがネズミと呼ばれる所以はこいつらのお陰さ」
「こいつら?」
ネズミは指を鳴らした瞬間、周囲の建物や路地裏から多数の鼠が出現し、彼女の元に集う。その数は数十匹は存在し、それを見たヒイロは悲鳴を上げてナイに抱きつく。
「ひいいっ!?ネ、ネズミ!?」
「ちょっ……落ち着いて、ヒイロ!?」
「ヒイロは大の鼠嫌い……私もあんまり好きじゃない」
「おいおい、そう言ってやるなよ。こいつらはあたしの可愛い部下さ、あたしが集めている情報はこいつらから教えてもらっているんだよ」
『チュチュッ!!』
大量の鼠を前にネズミは笑顔を浮かべると、彼女の言葉に反応するように鼠たちは一斉に鳴き声を上げた。この時にナイは鼠の額の部分に魔法陣のような紋様が刻まれている事に気付く。
どうやら何らかの手段でネズミは王都に潜む鼠たちを従え、その鼠を利用して情報収集を行っているらしい。彼女が集める情報は全て王都中の鼠が集めてくるらしく、ルナの居場所も彼等から教えてもらったと説明する。
「ルナの奴は誰も住んでいない廃墟に隠れているよ。今の所は逃げ出す様子はないから、急いでいけば間に合うかもね」
「あの建物に……」
「但し、行くときは気を付けな。どうやら様子が普通じゃないからね……下手に刺激すれば襲われる危険性もあるよ」
「……分かりました、ありがとうございます。でも……もしも嘘だったら許しませんからね」
「あ、ああっ……」
ナイはネズミに頭を下げた後、一言だけ忠告しておく。そのナイの迫力にネズミは表情を引きつらせるが、とにかくナイ達はルナが隠れているという廃墟へと向かう。
「生憎とそこまでは知らないね。でも、少し時間をくれればその娘が何処に居るのか突き止められるよ。そうだね……30分程度で見つけ出せるよ」
「30分!?そんな馬鹿な……」
「信じるも信じないもあんた達次第さ」
「……どうするの、ナイ?」
ネズミの言葉にヒイロは信じられなかったが、ミイナはナイに尋ねる。ナイはネズミの言葉を信じるべきか悩み、少なくとも彼女は自分達の事もルナに関する詳細な情報も掴んでいたのは事実だった。
悩んだ末にナイは当てもなく探し回るよりもネズミに彼女の居場所を探し出して貰うべきだと判断し、まずは情報の対価を尋ねる。
「値段は?まさか無料で探し出してくれたりはしないんでしょう?」
「当たり前だね、あたしはこれで生計を立ててるんだからね……でも、そうだね。今回は初めての取引という事で……前払いで金貨1枚でどうだい?」
「き、金貨!?」
「それに前払いって……」
「分かりました」
ヒイロとミイナはネズミの要求に対して不満を抱き、もしも彼女が金貨を受け取って逃げ出してしまったら元も子もない。しかし、すぐにナイはネズミに対して金貨を一枚放り込むと、彼女は驚いた様に受け取る。
「金貨一枚、それで探してくれるんですよね?」
「……そんなにあっさりと渡していいのかい?」
「ナイさん!?本当にこんな人の言葉を信じるんですか!?」
「いくらなんでも怪しすぎる……止めて置いた方が良い」
ナイの行動に他の二人は戸惑い、ネズミの方もあっさりとナイが金貨を渡した事に訝しむが、そんな彼女達に対してナイは告げた。
「大丈夫だよ、もしもこの人が裏切ろうとしたら……その時はこの人を捕まえるだけでいいんだから」
「うっ……!?」
「ナ、ナイ……?」
「……こいつは、噂以上の人物だね」
3人はナイの言葉を聞いた瞬間に背筋が凍り、ナイ本人は別に何もおかしなことを言ったつもりはないが、最後の一言を言い放つ際に発した迫力は凄まじかった。
数々の死闘を乗り越え、より強くなった影響かナイの言葉には重みがあり、もしもネズミが裏切るような真似をすればナイは本当に彼女を捕まえるつもりだった。そして今のナイならば本当に彼女を捕まえる事ができる力を持っていた。
(こいつは思っていた以上に大物かもしれないね……)
ネズミは受け取った金貨を見つめ、彼女はため息を吐きながら頭に手を伸ばす。その行動にナイ達は不思議に思うが、ネズミは意識を集中させながら呟く。
「……見つけたよ、どうやらルナという小娘はあの建物の中に隠れているね」
「えっ!?」
「あそこに……?」
「丁度近くに居てくれて助かったよ。あたしの部下が見張っている、今の所は動く様子はないよ」
「どうして……そんな事まで分かるんですか?」
頭を触っただけでネズミはルナが隠れている場所を見抜き、彼女の立て籠もっている建物を指し示す。ナイ達はネズミの言葉に疑問を抱くが、ここで彼女は話題を変える。
「あんた達、どうしてあたしがネズミと名乗っているのか疑問を抱かなかったのかい?」
「え?」
「子供にネズミなんて名前を付ける馬鹿がいるはずないだろう?偽名だよ、偽名。正確に言えば渾名みたいなもんだけどね」
「ネズミが渾名?」
「そう……あたしがネズミと呼ばれる所以はこいつらのお陰さ」
「こいつら?」
ネズミは指を鳴らした瞬間、周囲の建物や路地裏から多数の鼠が出現し、彼女の元に集う。その数は数十匹は存在し、それを見たヒイロは悲鳴を上げてナイに抱きつく。
「ひいいっ!?ネ、ネズミ!?」
「ちょっ……落ち着いて、ヒイロ!?」
「ヒイロは大の鼠嫌い……私もあんまり好きじゃない」
「おいおい、そう言ってやるなよ。こいつらはあたしの可愛い部下さ、あたしが集めている情報はこいつらから教えてもらっているんだよ」
『チュチュッ!!』
大量の鼠を前にネズミは笑顔を浮かべると、彼女の言葉に反応するように鼠たちは一斉に鳴き声を上げた。この時にナイは鼠の額の部分に魔法陣のような紋様が刻まれている事に気付く。
どうやら何らかの手段でネズミは王都に潜む鼠たちを従え、その鼠を利用して情報収集を行っているらしい。彼女が集める情報は全て王都中の鼠が集めてくるらしく、ルナの居場所も彼等から教えてもらったと説明する。
「ルナの奴は誰も住んでいない廃墟に隠れているよ。今の所は逃げ出す様子はないから、急いでいけば間に合うかもね」
「あの建物に……」
「但し、行くときは気を付けな。どうやら様子が普通じゃないからね……下手に刺激すれば襲われる危険性もあるよ」
「……分かりました、ありがとうございます。でも……もしも嘘だったら許しませんからね」
「あ、ああっ……」
ナイはネズミに頭を下げた後、一言だけ忠告しておく。そのナイの迫力にネズミは表情を引きつらせるが、とにかくナイ達はルナが隠れているという廃墟へと向かう。
10
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる