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ゴブリンキングの脅威
第528話 強すぎる
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――要塞内部に潜んでいたホブゴブリンの掃討を終えた後、討伐隊は死骸の処理と要塞内の調査を行う。この時、ドリスはリンの元に赴くと質問を行う。
「リンさん、お聞きしたいことがあるのですけど……貴女、前にナイさんと戦ったと言ってましたわね」
「……それがどうした?」
「彼は……強すぎませんか?よくリンさんは勝てましたわね」
ドリスの言葉にリンは黙り込み、確かに前にリンは組手という形でナイと戦った。結果から言えばリンはナイに勝利はしたが、今のナイとあの時のナイでは実力に大きな差がある。
「私が戦った時よりも今のナイは明らかに強くなっている……もしも今戦えば、私が勝てるという保証はない」
「自信家の貴女にそこまで言わせるなんて……凄いを通り越して少し怖くなりましたわ」
リンの言葉を聞いてドリスは改めてナイの成長力を思い知り、仮にもリンは王国騎士の中では三本指には入る実力者である。ちなみに一番上は猛虎騎士団の団長を務めるロランであり、二番目に関しては当然だがドリスは自分が入っていると考えている。
最もリンからすれば自分が二番目でドリスが三番目だと考えているだろうが、重要なのは王国騎士の中でも指折りの実力者であるリンでさえも今のナイに確実に勝つ自信はないという事である。つまり、それはナイの実力がリンと殆ど差がない事を意味していた。
「リンさんはどう思います?ナイさんの事を……本当に騎士団に入れるつもりですの?」
「何だ?その言い方だと、お前はナイの事を諦めたのか?」
「違いますわ、別に私はナイさんを加入させる事を諦めたつもりはありません……但し、彼の場合はいくらなんでもおかしいと思いますわ」
「おかしい、か……」
ナイが強い事は二人も認めるが、彼の場合はあまりにも成長速度が普通ではなかった。ドリスとリンはナイを初めて見たのはバーリの屋敷で彼がガーゴイル亜種と戦う場面であり、あの時から普通の子供とはかけ離れた実力を身に着けていた。
当時からナイはガーゴイル亜種という凶悪な魔物を相手に戦い抜き、見事に勝利した。別にナイだけがガーゴイル亜種と戦っていたわけではないが、それでもナイが止めを刺した事に変わりはない。
――その後、ナイは街中で現れたミノタウロスや闘技場でリーナと激戦を繰り広げ、勝利する度に着実に力を身に着けていた。そして今では王国騎士のドリスやリンに迫る、あるいはそれ以上の力を身に着けているかもしれない。
先のゴブリンキングとの戦闘に置いてもナイの功績は大きく、彼が居なければゴブリンキングを倒すのにどれほどの被害が生まれていたのかは分からない。討伐隊の戦力ならばナイが居なくてもゴブリンキングを倒せた可能性はあるが、その場合は討伐隊の戦力は半分は失っていたかもしれない。
今現在のナイの実力はドリスやリンでさえも正確に測る事は出来ず、あまりにも強すぎる。少なくとも15才という年齢でここまでの強さを持つ人間など見た事も聞いた事もない。
この国で最強の王国騎士と呼ばれるロラン、聖女騎士団を率いた王女ジャンヌ、そのジャンヌにも渡り合える力を持つと言われたテン、黄金級冒険者のリーナの父親であるアッシュ、他にもこの国には有名な武人は多い。しかし、そんな彼等でさえもナイと同じ年齢の時は彼と同程度の実力を持っていたとは考えられなかった。
『強すぎる』
ナイの戦いぶりを見た討伐隊の人間の感想はこの一言だけで共有し、明らかにナイの強さは異常だった。もしもナイの力が味方ではなく、敵として発揮された場合、ドリスとリンは彼を止める事が出来る自信がない。
(まるで抜き身の刃だな……取り扱いに失敗すると、自分が傷つけかねない)
(正に諸刃の剣ですわ……)
二人は強化術の影響で現在は岩の上に座って休んでいるナイに視線を向け、こうしてみると何処にでもいる普通の少年なのだが、先ほどの戦いぶりは正に「鬼」だった。
圧倒的な力でホブゴブリンを屠り、敵を討つ姿は正に鬼のような姿だった。しかし、今のナイは戦っていた時と一変し、普通の少年にしか見えない。それだけにドリスとリンは恐ろしく思う。
(これほどの力を持つのにどんな人生を送ってきたのか……)
(彼は……危険ですわ、目を離してはいけません)
王国の軍陣としてドリスとリンはナイから目を離せず、彼を自分達が監視できる場所に留めなければならないと思う。そうなると必然的にナイを自分達の騎士団に招く事を考える。
(もう手段は選んではいられないな……これほどの力を持つ人材を逃すわけには行かない)
(どんな手を使っても我が騎士団に招かなければ……)
ドリスとリンは互いに顔を向けて火花を散らし、どんな手を使ってもナイを自分の団員として招き入れる事を誓う――
「リンさん、お聞きしたいことがあるのですけど……貴女、前にナイさんと戦ったと言ってましたわね」
「……それがどうした?」
「彼は……強すぎませんか?よくリンさんは勝てましたわね」
ドリスの言葉にリンは黙り込み、確かに前にリンは組手という形でナイと戦った。結果から言えばリンはナイに勝利はしたが、今のナイとあの時のナイでは実力に大きな差がある。
「私が戦った時よりも今のナイは明らかに強くなっている……もしも今戦えば、私が勝てるという保証はない」
「自信家の貴女にそこまで言わせるなんて……凄いを通り越して少し怖くなりましたわ」
リンの言葉を聞いてドリスは改めてナイの成長力を思い知り、仮にもリンは王国騎士の中では三本指には入る実力者である。ちなみに一番上は猛虎騎士団の団長を務めるロランであり、二番目に関しては当然だがドリスは自分が入っていると考えている。
最もリンからすれば自分が二番目でドリスが三番目だと考えているだろうが、重要なのは王国騎士の中でも指折りの実力者であるリンでさえも今のナイに確実に勝つ自信はないという事である。つまり、それはナイの実力がリンと殆ど差がない事を意味していた。
「リンさんはどう思います?ナイさんの事を……本当に騎士団に入れるつもりですの?」
「何だ?その言い方だと、お前はナイの事を諦めたのか?」
「違いますわ、別に私はナイさんを加入させる事を諦めたつもりはありません……但し、彼の場合はいくらなんでもおかしいと思いますわ」
「おかしい、か……」
ナイが強い事は二人も認めるが、彼の場合はあまりにも成長速度が普通ではなかった。ドリスとリンはナイを初めて見たのはバーリの屋敷で彼がガーゴイル亜種と戦う場面であり、あの時から普通の子供とはかけ離れた実力を身に着けていた。
当時からナイはガーゴイル亜種という凶悪な魔物を相手に戦い抜き、見事に勝利した。別にナイだけがガーゴイル亜種と戦っていたわけではないが、それでもナイが止めを刺した事に変わりはない。
――その後、ナイは街中で現れたミノタウロスや闘技場でリーナと激戦を繰り広げ、勝利する度に着実に力を身に着けていた。そして今では王国騎士のドリスやリンに迫る、あるいはそれ以上の力を身に着けているかもしれない。
先のゴブリンキングとの戦闘に置いてもナイの功績は大きく、彼が居なければゴブリンキングを倒すのにどれほどの被害が生まれていたのかは分からない。討伐隊の戦力ならばナイが居なくてもゴブリンキングを倒せた可能性はあるが、その場合は討伐隊の戦力は半分は失っていたかもしれない。
今現在のナイの実力はドリスやリンでさえも正確に測る事は出来ず、あまりにも強すぎる。少なくとも15才という年齢でここまでの強さを持つ人間など見た事も聞いた事もない。
この国で最強の王国騎士と呼ばれるロラン、聖女騎士団を率いた王女ジャンヌ、そのジャンヌにも渡り合える力を持つと言われたテン、黄金級冒険者のリーナの父親であるアッシュ、他にもこの国には有名な武人は多い。しかし、そんな彼等でさえもナイと同じ年齢の時は彼と同程度の実力を持っていたとは考えられなかった。
『強すぎる』
ナイの戦いぶりを見た討伐隊の人間の感想はこの一言だけで共有し、明らかにナイの強さは異常だった。もしもナイの力が味方ではなく、敵として発揮された場合、ドリスとリンは彼を止める事が出来る自信がない。
(まるで抜き身の刃だな……取り扱いに失敗すると、自分が傷つけかねない)
(正に諸刃の剣ですわ……)
二人は強化術の影響で現在は岩の上に座って休んでいるナイに視線を向け、こうしてみると何処にでもいる普通の少年なのだが、先ほどの戦いぶりは正に「鬼」だった。
圧倒的な力でホブゴブリンを屠り、敵を討つ姿は正に鬼のような姿だった。しかし、今のナイは戦っていた時と一変し、普通の少年にしか見えない。それだけにドリスとリンは恐ろしく思う。
(これほどの力を持つのにどんな人生を送ってきたのか……)
(彼は……危険ですわ、目を離してはいけません)
王国の軍陣としてドリスとリンはナイから目を離せず、彼を自分達が監視できる場所に留めなければならないと思う。そうなると必然的にナイを自分達の騎士団に招く事を考える。
(もう手段は選んではいられないな……これほどの力を持つ人材を逃すわけには行かない)
(どんな手を使っても我が騎士団に招かなければ……)
ドリスとリンは互いに顔を向けて火花を散らし、どんな手を使ってもナイを自分の団員として招き入れる事を誓う――
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