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ゴブリンキングの脅威
第513話 新たな力
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(これで終わりだ、ガキが!!)
魔眼の目眩ましによって視界を封じられたナイに対し、ガルスは短剣を投擲する。彼は「命中」と「投擲」の技能を所有しており、狙いを外す事は絶対にあり得ない。
毒が塗られた短剣はナイの身体に掠りでもすれば確実に仕留められる。だからこそわざわざ急所を狙う必要もないが、いつもの癖でガルスはナイの心臓に目掛けて放った。
「っ――!!」
「なっ……馬鹿なっ!?」
しかし、刃がナイの胸元を貫く寸前、まるで短剣が来る事に気付いていた様にナイは瞼を閉じた状態で短剣を掴み取る。その行為を見てガルスは動揺を隠せず、その一方でナイも自分の仕出かした行為に驚く。
――短剣が放たれた時、ナイは異様な感覚を覚えた。それは目が見えていないはずなのに何故かガルスの行動が手に取るように分かった。気配感知とは違った感覚でナイはガルスの立っている位置や動作を理解し、彼が短剣を投げ込もうとしている事に気付く。
短剣が放たれた瞬間、反射的にナイの身体は動いていた。そして視界が封じられた状態で放たれた短剣を掴み取り、この時に迎撃の技能を発動させ、彼は自分の刺剣を取り出して放つ。
「ここだぁっ!!」
「ぐはぁああっ!?」
放たれた刺剣は油断していたガルスの足に的中し、彼の悲鳴が響き渡る。刺剣は見事にガルスの右足の太腿を貫き、階段から転げ落ちた。
「ば、馬鹿な……何故、居場所が分かった……!?」
「…………」
視界が戻るとナイは階段から転げ落ちたガルスを見下ろし、倒れている彼と自分の手元にある短剣を見て動揺する。ナイ自身もどうして視界が封じられた状態でこんな芸当が出来たのか理解できない。
最初は迎撃の技能が発動して肉体が勝手に動いたのかと思ったが、いくら迎撃でも目が見えない状態での攻撃までは反応しない。迎撃はあくまでも反撃に特化した技能であり、決して防御に向いているわけではない。
(今の感覚は……何だったんだ?)
ナイは自分自身の身体が勝手に反応し、放たれた短剣を掴んで相手に攻撃を返した事に不思議に思う。最初の頃に迎撃を覚えた時と同じような感覚に陥るが、短剣を掴み取れたのは迎撃の効果ではない。
(新しい技能なんて覚えていないぞ……いったい何が起きたんだ?)
最近は水晶板のペンダントを利用しておらず、新しい技能を覚えた記憶はない。それにも関わらずにナイは自分の身体の中に新しい力が芽生えた様な気がした――
――その後、逃走の際中に盗賊団の頭を戦闘不能に追い込んだナイは人質を連れて外へ抜け出すと、そこには改造した馬車を引いて街道を歩くビャクの姿が存在した。御者はニエルであり、彼はナイ達を見つけると急いで駆けつけてきた。
「おい!!お前等、無事だったのか!!」
「ウォンッ!!」
「ニエルさん!!」
「ニエルじゃと……」
「ま、魔獣!?」
「わあ、大きい狼!?」
ビャクの姿を見て母娘は驚くが、エルの方はニエルの姿を見て動揺する。一方でエルの方は作戦通りに本当に人質を救出したナイに驚いた。
「お前、本当にやり遂げたんだな……」
「話している暇はありません!!ほら、早く逃げましょう!!」
「お、おう!!」
「待ってください、まだ主人が……」
馬車の中にまずは母娘と怪我をしたニエルを避難させようとした時、母親が宿屋に残った主人を心配する。そんな彼女に対してナイは安心させるため、馬車に事前に乗せていた装備を回収した。
女物の衣服の下にはナイはいつも通りの服を着ており、その場で上着を脱ぐと改めて装備を整え、岩砕剣と旋斧を背中に装着する。この時にエルはナイの旋斧を見て目を見開くが、説明する暇はないのでナイはニエルに告げた。
「僕は宿に戻って店の主人を救ってきます!!警備兵に事情を伝えてこの宿屋を包囲するように伝えてください!!」
「あ、ああ……頼んだぞ!!」
「ま、待て!!お主のその剣はまさか……」
「ウォンッ!!」
エルはナイの旋斧を見て話しかけようとしたが、ビャクは駆け出して人質を安全な場所へ避難させる事を優先する。それを見届けたナイは宿屋に振り返ると、そこから数名の男性が現れた。
「くそ、逃げられたかっ!!」
「おい、てめえ……うちの頭をやったのはてめえか!?」
「ガルス盗賊団に喧嘩を売って生きて帰れるとは思うなよ!!」
「…………」
宿屋から続々と盗賊が現れ、その中には負傷したガルスの姿もあった。彼は太腿から血を流しており、他の部下に肩を借りてどうにか立っている状態だった。
「お前等、そいつを殺せ!!どんな手を使ってもだ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
「はあっ……」
盗賊達は一斉に武器を取り出し、ナイへと駆けつける。そんな彼等の姿を見てナイはため息を吐くと、旋斧と岩砕剣に手を伸ばす――
魔眼の目眩ましによって視界を封じられたナイに対し、ガルスは短剣を投擲する。彼は「命中」と「投擲」の技能を所有しており、狙いを外す事は絶対にあり得ない。
毒が塗られた短剣はナイの身体に掠りでもすれば確実に仕留められる。だからこそわざわざ急所を狙う必要もないが、いつもの癖でガルスはナイの心臓に目掛けて放った。
「っ――!!」
「なっ……馬鹿なっ!?」
しかし、刃がナイの胸元を貫く寸前、まるで短剣が来る事に気付いていた様にナイは瞼を閉じた状態で短剣を掴み取る。その行為を見てガルスは動揺を隠せず、その一方でナイも自分の仕出かした行為に驚く。
――短剣が放たれた時、ナイは異様な感覚を覚えた。それは目が見えていないはずなのに何故かガルスの行動が手に取るように分かった。気配感知とは違った感覚でナイはガルスの立っている位置や動作を理解し、彼が短剣を投げ込もうとしている事に気付く。
短剣が放たれた瞬間、反射的にナイの身体は動いていた。そして視界が封じられた状態で放たれた短剣を掴み取り、この時に迎撃の技能を発動させ、彼は自分の刺剣を取り出して放つ。
「ここだぁっ!!」
「ぐはぁああっ!?」
放たれた刺剣は油断していたガルスの足に的中し、彼の悲鳴が響き渡る。刺剣は見事にガルスの右足の太腿を貫き、階段から転げ落ちた。
「ば、馬鹿な……何故、居場所が分かった……!?」
「…………」
視界が戻るとナイは階段から転げ落ちたガルスを見下ろし、倒れている彼と自分の手元にある短剣を見て動揺する。ナイ自身もどうして視界が封じられた状態でこんな芸当が出来たのか理解できない。
最初は迎撃の技能が発動して肉体が勝手に動いたのかと思ったが、いくら迎撃でも目が見えない状態での攻撃までは反応しない。迎撃はあくまでも反撃に特化した技能であり、決して防御に向いているわけではない。
(今の感覚は……何だったんだ?)
ナイは自分自身の身体が勝手に反応し、放たれた短剣を掴んで相手に攻撃を返した事に不思議に思う。最初の頃に迎撃を覚えた時と同じような感覚に陥るが、短剣を掴み取れたのは迎撃の効果ではない。
(新しい技能なんて覚えていないぞ……いったい何が起きたんだ?)
最近は水晶板のペンダントを利用しておらず、新しい技能を覚えた記憶はない。それにも関わらずにナイは自分の身体の中に新しい力が芽生えた様な気がした――
――その後、逃走の際中に盗賊団の頭を戦闘不能に追い込んだナイは人質を連れて外へ抜け出すと、そこには改造した馬車を引いて街道を歩くビャクの姿が存在した。御者はニエルであり、彼はナイ達を見つけると急いで駆けつけてきた。
「おい!!お前等、無事だったのか!!」
「ウォンッ!!」
「ニエルさん!!」
「ニエルじゃと……」
「ま、魔獣!?」
「わあ、大きい狼!?」
ビャクの姿を見て母娘は驚くが、エルの方はニエルの姿を見て動揺する。一方でエルの方は作戦通りに本当に人質を救出したナイに驚いた。
「お前、本当にやり遂げたんだな……」
「話している暇はありません!!ほら、早く逃げましょう!!」
「お、おう!!」
「待ってください、まだ主人が……」
馬車の中にまずは母娘と怪我をしたニエルを避難させようとした時、母親が宿屋に残った主人を心配する。そんな彼女に対してナイは安心させるため、馬車に事前に乗せていた装備を回収した。
女物の衣服の下にはナイはいつも通りの服を着ており、その場で上着を脱ぐと改めて装備を整え、岩砕剣と旋斧を背中に装着する。この時にエルはナイの旋斧を見て目を見開くが、説明する暇はないのでナイはニエルに告げた。
「僕は宿に戻って店の主人を救ってきます!!警備兵に事情を伝えてこの宿屋を包囲するように伝えてください!!」
「あ、ああ……頼んだぞ!!」
「ま、待て!!お主のその剣はまさか……」
「ウォンッ!!」
エルはナイの旋斧を見て話しかけようとしたが、ビャクは駆け出して人質を安全な場所へ避難させる事を優先する。それを見届けたナイは宿屋に振り返ると、そこから数名の男性が現れた。
「くそ、逃げられたかっ!!」
「おい、てめえ……うちの頭をやったのはてめえか!?」
「ガルス盗賊団に喧嘩を売って生きて帰れるとは思うなよ!!」
「…………」
宿屋から続々と盗賊が現れ、その中には負傷したガルスの姿もあった。彼は太腿から血を流しており、他の部下に肩を借りてどうにか立っている状態だった。
「お前等、そいつを殺せ!!どんな手を使ってもだ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
「はあっ……」
盗賊達は一斉に武器を取り出し、ナイへと駆けつける。そんな彼等の姿を見てナイはため息を吐くと、旋斧と岩砕剣に手を伸ばす――
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