527 / 1,110
ゴブリンキングの脅威
第513話 新たな力
しおりを挟む
(これで終わりだ、ガキが!!)
魔眼の目眩ましによって視界を封じられたナイに対し、ガルスは短剣を投擲する。彼は「命中」と「投擲」の技能を所有しており、狙いを外す事は絶対にあり得ない。
毒が塗られた短剣はナイの身体に掠りでもすれば確実に仕留められる。だからこそわざわざ急所を狙う必要もないが、いつもの癖でガルスはナイの心臓に目掛けて放った。
「っ――!!」
「なっ……馬鹿なっ!?」
しかし、刃がナイの胸元を貫く寸前、まるで短剣が来る事に気付いていた様にナイは瞼を閉じた状態で短剣を掴み取る。その行為を見てガルスは動揺を隠せず、その一方でナイも自分の仕出かした行為に驚く。
――短剣が放たれた時、ナイは異様な感覚を覚えた。それは目が見えていないはずなのに何故かガルスの行動が手に取るように分かった。気配感知とは違った感覚でナイはガルスの立っている位置や動作を理解し、彼が短剣を投げ込もうとしている事に気付く。
短剣が放たれた瞬間、反射的にナイの身体は動いていた。そして視界が封じられた状態で放たれた短剣を掴み取り、この時に迎撃の技能を発動させ、彼は自分の刺剣を取り出して放つ。
「ここだぁっ!!」
「ぐはぁああっ!?」
放たれた刺剣は油断していたガルスの足に的中し、彼の悲鳴が響き渡る。刺剣は見事にガルスの右足の太腿を貫き、階段から転げ落ちた。
「ば、馬鹿な……何故、居場所が分かった……!?」
「…………」
視界が戻るとナイは階段から転げ落ちたガルスを見下ろし、倒れている彼と自分の手元にある短剣を見て動揺する。ナイ自身もどうして視界が封じられた状態でこんな芸当が出来たのか理解できない。
最初は迎撃の技能が発動して肉体が勝手に動いたのかと思ったが、いくら迎撃でも目が見えない状態での攻撃までは反応しない。迎撃はあくまでも反撃に特化した技能であり、決して防御に向いているわけではない。
(今の感覚は……何だったんだ?)
ナイは自分自身の身体が勝手に反応し、放たれた短剣を掴んで相手に攻撃を返した事に不思議に思う。最初の頃に迎撃を覚えた時と同じような感覚に陥るが、短剣を掴み取れたのは迎撃の効果ではない。
(新しい技能なんて覚えていないぞ……いったい何が起きたんだ?)
最近は水晶板のペンダントを利用しておらず、新しい技能を覚えた記憶はない。それにも関わらずにナイは自分の身体の中に新しい力が芽生えた様な気がした――
――その後、逃走の際中に盗賊団の頭を戦闘不能に追い込んだナイは人質を連れて外へ抜け出すと、そこには改造した馬車を引いて街道を歩くビャクの姿が存在した。御者はニエルであり、彼はナイ達を見つけると急いで駆けつけてきた。
「おい!!お前等、無事だったのか!!」
「ウォンッ!!」
「ニエルさん!!」
「ニエルじゃと……」
「ま、魔獣!?」
「わあ、大きい狼!?」
ビャクの姿を見て母娘は驚くが、エルの方はニエルの姿を見て動揺する。一方でエルの方は作戦通りに本当に人質を救出したナイに驚いた。
「お前、本当にやり遂げたんだな……」
「話している暇はありません!!ほら、早く逃げましょう!!」
「お、おう!!」
「待ってください、まだ主人が……」
馬車の中にまずは母娘と怪我をしたニエルを避難させようとした時、母親が宿屋に残った主人を心配する。そんな彼女に対してナイは安心させるため、馬車に事前に乗せていた装備を回収した。
女物の衣服の下にはナイはいつも通りの服を着ており、その場で上着を脱ぐと改めて装備を整え、岩砕剣と旋斧を背中に装着する。この時にエルはナイの旋斧を見て目を見開くが、説明する暇はないのでナイはニエルに告げた。
「僕は宿に戻って店の主人を救ってきます!!警備兵に事情を伝えてこの宿屋を包囲するように伝えてください!!」
「あ、ああ……頼んだぞ!!」
「ま、待て!!お主のその剣はまさか……」
「ウォンッ!!」
エルはナイの旋斧を見て話しかけようとしたが、ビャクは駆け出して人質を安全な場所へ避難させる事を優先する。それを見届けたナイは宿屋に振り返ると、そこから数名の男性が現れた。
「くそ、逃げられたかっ!!」
「おい、てめえ……うちの頭をやったのはてめえか!?」
「ガルス盗賊団に喧嘩を売って生きて帰れるとは思うなよ!!」
「…………」
宿屋から続々と盗賊が現れ、その中には負傷したガルスの姿もあった。彼は太腿から血を流しており、他の部下に肩を借りてどうにか立っている状態だった。
「お前等、そいつを殺せ!!どんな手を使ってもだ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
「はあっ……」
盗賊達は一斉に武器を取り出し、ナイへと駆けつける。そんな彼等の姿を見てナイはため息を吐くと、旋斧と岩砕剣に手を伸ばす――
魔眼の目眩ましによって視界を封じられたナイに対し、ガルスは短剣を投擲する。彼は「命中」と「投擲」の技能を所有しており、狙いを外す事は絶対にあり得ない。
毒が塗られた短剣はナイの身体に掠りでもすれば確実に仕留められる。だからこそわざわざ急所を狙う必要もないが、いつもの癖でガルスはナイの心臓に目掛けて放った。
「っ――!!」
「なっ……馬鹿なっ!?」
しかし、刃がナイの胸元を貫く寸前、まるで短剣が来る事に気付いていた様にナイは瞼を閉じた状態で短剣を掴み取る。その行為を見てガルスは動揺を隠せず、その一方でナイも自分の仕出かした行為に驚く。
――短剣が放たれた時、ナイは異様な感覚を覚えた。それは目が見えていないはずなのに何故かガルスの行動が手に取るように分かった。気配感知とは違った感覚でナイはガルスの立っている位置や動作を理解し、彼が短剣を投げ込もうとしている事に気付く。
短剣が放たれた瞬間、反射的にナイの身体は動いていた。そして視界が封じられた状態で放たれた短剣を掴み取り、この時に迎撃の技能を発動させ、彼は自分の刺剣を取り出して放つ。
「ここだぁっ!!」
「ぐはぁああっ!?」
放たれた刺剣は油断していたガルスの足に的中し、彼の悲鳴が響き渡る。刺剣は見事にガルスの右足の太腿を貫き、階段から転げ落ちた。
「ば、馬鹿な……何故、居場所が分かった……!?」
「…………」
視界が戻るとナイは階段から転げ落ちたガルスを見下ろし、倒れている彼と自分の手元にある短剣を見て動揺する。ナイ自身もどうして視界が封じられた状態でこんな芸当が出来たのか理解できない。
最初は迎撃の技能が発動して肉体が勝手に動いたのかと思ったが、いくら迎撃でも目が見えない状態での攻撃までは反応しない。迎撃はあくまでも反撃に特化した技能であり、決して防御に向いているわけではない。
(今の感覚は……何だったんだ?)
ナイは自分自身の身体が勝手に反応し、放たれた短剣を掴んで相手に攻撃を返した事に不思議に思う。最初の頃に迎撃を覚えた時と同じような感覚に陥るが、短剣を掴み取れたのは迎撃の効果ではない。
(新しい技能なんて覚えていないぞ……いったい何が起きたんだ?)
最近は水晶板のペンダントを利用しておらず、新しい技能を覚えた記憶はない。それにも関わらずにナイは自分の身体の中に新しい力が芽生えた様な気がした――
――その後、逃走の際中に盗賊団の頭を戦闘不能に追い込んだナイは人質を連れて外へ抜け出すと、そこには改造した馬車を引いて街道を歩くビャクの姿が存在した。御者はニエルであり、彼はナイ達を見つけると急いで駆けつけてきた。
「おい!!お前等、無事だったのか!!」
「ウォンッ!!」
「ニエルさん!!」
「ニエルじゃと……」
「ま、魔獣!?」
「わあ、大きい狼!?」
ビャクの姿を見て母娘は驚くが、エルの方はニエルの姿を見て動揺する。一方でエルの方は作戦通りに本当に人質を救出したナイに驚いた。
「お前、本当にやり遂げたんだな……」
「話している暇はありません!!ほら、早く逃げましょう!!」
「お、おう!!」
「待ってください、まだ主人が……」
馬車の中にまずは母娘と怪我をしたニエルを避難させようとした時、母親が宿屋に残った主人を心配する。そんな彼女に対してナイは安心させるため、馬車に事前に乗せていた装備を回収した。
女物の衣服の下にはナイはいつも通りの服を着ており、その場で上着を脱ぐと改めて装備を整え、岩砕剣と旋斧を背中に装着する。この時にエルはナイの旋斧を見て目を見開くが、説明する暇はないのでナイはニエルに告げた。
「僕は宿に戻って店の主人を救ってきます!!警備兵に事情を伝えてこの宿屋を包囲するように伝えてください!!」
「あ、ああ……頼んだぞ!!」
「ま、待て!!お主のその剣はまさか……」
「ウォンッ!!」
エルはナイの旋斧を見て話しかけようとしたが、ビャクは駆け出して人質を安全な場所へ避難させる事を優先する。それを見届けたナイは宿屋に振り返ると、そこから数名の男性が現れた。
「くそ、逃げられたかっ!!」
「おい、てめえ……うちの頭をやったのはてめえか!?」
「ガルス盗賊団に喧嘩を売って生きて帰れるとは思うなよ!!」
「…………」
宿屋から続々と盗賊が現れ、その中には負傷したガルスの姿もあった。彼は太腿から血を流しており、他の部下に肩を借りてどうにか立っている状態だった。
「お前等、そいつを殺せ!!どんな手を使ってもだ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
「はあっ……」
盗賊達は一斉に武器を取り出し、ナイへと駆けつける。そんな彼等の姿を見てナイはため息を吐くと、旋斧と岩砕剣に手を伸ばす――
10
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる