525 / 1,110
ゴブリンキングの脅威
第511話 救出作戦開始
しおりを挟む
――ナイ達が事前に打ち合わせた作戦の内容は、ガルソンに変装したシノビが女装したナイとクノを連れて宿屋へ侵入する。その後、夜が更けるのを待ってシノビとクノは上階へと移動し、各部屋に仕掛けを施す。
仕掛けとはシノビが作り出した「煙玉」なる道具を使用し、部屋の中で煙を炊く。この煙玉はシノビが作り出した専用の道具であり、使い方も作り方も彼しか知らない。
誰もいない部屋、あるいは既に眠っている盗賊の部屋にシノビとクノは忍び込み、煙玉を投げ込む。すると煙玉の煙が部屋中に蔓延し、やがて窓から煙が噴き出す。当然だが他の人間は火事が起きたのかと錯覚して騒ぎ出す。
『お、おい!!上の階で煙があがっているぞ!?』
『何だと、まさか火事か!?』
『分からねえよ!!くそ、どうなってるんだ!!』
『早く火を消せ!!警備兵が来る前に煙を消さないとまずい事になるぞ!?』
ナイが待機しているガルソンの部屋の外から盗賊達の騒ぐ音が聞こえ、どうやら作戦通りに盗賊達は上階で異変が起きた事を察知し、行動に移った様子だった。階段を駆け上がる音が聞こえ、やがて声は小さくなっていく。
(……よし、今なら動けそうだ)
この時にナイは「気配感知」「隠密」「無音歩行」の技能を同時に発動させ、行動を開始した。気配感知の技能で常に周囲を警戒し、更に隠密の技能で存在感を消し、無音歩行の技能で足音を完璧に消し去る。
最もナイの隠密の技能はシノビやクノには及ばず、二人の様に完全に姿が見えなくなるほどではない。それでも相手の視界に入ってもナイの姿はまるで半透明のように見えるため、暗闇などの見えにくい場所ならば気づかれる事は無い。
(観察眼と暗視、それに索敵も発動させれば……あった、ここが地下の倉庫に繋がる階段だな)
複数の技能を発動すると体力の消耗は激しいが、以前よりも成長したナイならば昔と違って扱いこなせる。ナイは一階を歩きながら通路の様子を確認し、事前に盗賊から聞きだした情報を頼りに倉庫へ繋がる階段に辿り着く。
階段を降りる際、ナイの気配感知に反応があった。どうやら倉庫には見張りが立っているらしく、それは先ほどナイの尻を鷲摑みにした男だと判明した。
「ひっくっ……うるせえな、何が起きてるんだ?」
「…………」
どうやら男は見張りを任せているにも関わらずに酔っぱらっているらしく、そんな男に対してナイは冷めた視線を向けると、敢えて隠密を解除して姿を現す。
「んんっ……あれ?あれれ?お前さん、さっきの可愛い子ちゃんじゃねえか?どうしてここにいるんだ?」
「ふうっ……」
「ん?どうしたんだ?分かった、俺に会いに来たのか?おいおい、困るな……ガルソンさんに飽きて俺の所に来るなんて嬢ちゃんも結構な男好き……」
「せいりゃあっ!!」
「ぶふぅうううっ!?」
勝手な勘違いをする男に対してナイは容赦なく腹部に強烈な一撃を食らわせ、男は口元から酒を噴き出しながら倒れ込む。その様子をナイは冷たい瞳で見下ろすと、倉庫を前に立った。
倉庫には南京錠が施されており、外側から出られない様にされていた。だが、ナイは鍵が扉に内蔵されていない事に安堵すると、南京錠を握りしめる。
(よし、これぐらいなら開けられる)
ナイは刺剣を取り出すと先端部を鍵穴に差し込み、養父譲りの鍵開けの技術で解除する。鋼鉄製の南京錠を取り外したナイは倉庫を開く。
「大丈夫ですか!?助けに来ましたよ!!」
「えっ……」
「助けに……」
「何じゃと……?」
部屋の中に入った途端、ナイは部屋の中から悪臭を感じ取り、そして倒れている三人の男女を発見した。誰もが身体をまともに洗っていないのか臭いが酷く、髪の毛もぼさぼさで痩せ細っていた。
部屋の中で倒れていたのは若い娘とその母親だと思われる女性、そして全身に包帯を巻かれた状態の老人が横たわっており、彼こそがニエルの父親のエルだとナイは勘付く。
「貴方がエルさんですか!?」
「だ、誰じゃ、お前は……?」
「詳しい話は後でします!!すぐにここから逃げましょう!!」
「に、逃げる?本当に?」
「ああ……やっと、助けが来てくれたのね」
ナイの言葉を聞いて母娘は歓喜の表情を浮かべるが、エルの方は重傷でまともに身体を動かす事もできず、苦しそうな表情を浮かべてナイに告げた。
「お主、何者かは知らんが……その二人を連れて早く逃げろ。儂はもう助からん……お主等だけでも逃げるのじゃ」
「……嫌です、貴方も一緒に連れて行きます。ニエルさんが心配していますよ」
「ニエルじゃと……うおっ!?」
エルはナイがニエルの名前を口にした事に驚くが、すぐにナイは彼を持ち上げ、この宿屋の店主の妻と娘と思われる二人にも付いてくるよう指示する。
仕掛けとはシノビが作り出した「煙玉」なる道具を使用し、部屋の中で煙を炊く。この煙玉はシノビが作り出した専用の道具であり、使い方も作り方も彼しか知らない。
誰もいない部屋、あるいは既に眠っている盗賊の部屋にシノビとクノは忍び込み、煙玉を投げ込む。すると煙玉の煙が部屋中に蔓延し、やがて窓から煙が噴き出す。当然だが他の人間は火事が起きたのかと錯覚して騒ぎ出す。
『お、おい!!上の階で煙があがっているぞ!?』
『何だと、まさか火事か!?』
『分からねえよ!!くそ、どうなってるんだ!!』
『早く火を消せ!!警備兵が来る前に煙を消さないとまずい事になるぞ!?』
ナイが待機しているガルソンの部屋の外から盗賊達の騒ぐ音が聞こえ、どうやら作戦通りに盗賊達は上階で異変が起きた事を察知し、行動に移った様子だった。階段を駆け上がる音が聞こえ、やがて声は小さくなっていく。
(……よし、今なら動けそうだ)
この時にナイは「気配感知」「隠密」「無音歩行」の技能を同時に発動させ、行動を開始した。気配感知の技能で常に周囲を警戒し、更に隠密の技能で存在感を消し、無音歩行の技能で足音を完璧に消し去る。
最もナイの隠密の技能はシノビやクノには及ばず、二人の様に完全に姿が見えなくなるほどではない。それでも相手の視界に入ってもナイの姿はまるで半透明のように見えるため、暗闇などの見えにくい場所ならば気づかれる事は無い。
(観察眼と暗視、それに索敵も発動させれば……あった、ここが地下の倉庫に繋がる階段だな)
複数の技能を発動すると体力の消耗は激しいが、以前よりも成長したナイならば昔と違って扱いこなせる。ナイは一階を歩きながら通路の様子を確認し、事前に盗賊から聞きだした情報を頼りに倉庫へ繋がる階段に辿り着く。
階段を降りる際、ナイの気配感知に反応があった。どうやら倉庫には見張りが立っているらしく、それは先ほどナイの尻を鷲摑みにした男だと判明した。
「ひっくっ……うるせえな、何が起きてるんだ?」
「…………」
どうやら男は見張りを任せているにも関わらずに酔っぱらっているらしく、そんな男に対してナイは冷めた視線を向けると、敢えて隠密を解除して姿を現す。
「んんっ……あれ?あれれ?お前さん、さっきの可愛い子ちゃんじゃねえか?どうしてここにいるんだ?」
「ふうっ……」
「ん?どうしたんだ?分かった、俺に会いに来たのか?おいおい、困るな……ガルソンさんに飽きて俺の所に来るなんて嬢ちゃんも結構な男好き……」
「せいりゃあっ!!」
「ぶふぅうううっ!?」
勝手な勘違いをする男に対してナイは容赦なく腹部に強烈な一撃を食らわせ、男は口元から酒を噴き出しながら倒れ込む。その様子をナイは冷たい瞳で見下ろすと、倉庫を前に立った。
倉庫には南京錠が施されており、外側から出られない様にされていた。だが、ナイは鍵が扉に内蔵されていない事に安堵すると、南京錠を握りしめる。
(よし、これぐらいなら開けられる)
ナイは刺剣を取り出すと先端部を鍵穴に差し込み、養父譲りの鍵開けの技術で解除する。鋼鉄製の南京錠を取り外したナイは倉庫を開く。
「大丈夫ですか!?助けに来ましたよ!!」
「えっ……」
「助けに……」
「何じゃと……?」
部屋の中に入った途端、ナイは部屋の中から悪臭を感じ取り、そして倒れている三人の男女を発見した。誰もが身体をまともに洗っていないのか臭いが酷く、髪の毛もぼさぼさで痩せ細っていた。
部屋の中で倒れていたのは若い娘とその母親だと思われる女性、そして全身に包帯を巻かれた状態の老人が横たわっており、彼こそがニエルの父親のエルだとナイは勘付く。
「貴方がエルさんですか!?」
「だ、誰じゃ、お前は……?」
「詳しい話は後でします!!すぐにここから逃げましょう!!」
「に、逃げる?本当に?」
「ああ……やっと、助けが来てくれたのね」
ナイの言葉を聞いて母娘は歓喜の表情を浮かべるが、エルの方は重傷でまともに身体を動かす事もできず、苦しそうな表情を浮かべてナイに告げた。
「お主、何者かは知らんが……その二人を連れて早く逃げろ。儂はもう助からん……お主等だけでも逃げるのじゃ」
「……嫌です、貴方も一緒に連れて行きます。ニエルさんが心配していますよ」
「ニエルじゃと……うおっ!?」
エルはナイがニエルの名前を口にした事に驚くが、すぐにナイは彼を持ち上げ、この宿屋の店主の妻と娘と思われる二人にも付いてくるよう指示する。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
45
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる