貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
522 / 1,110
ゴブリンキングの脅威

第508話 盗賊の拘束

しおりを挟む
――場所はニーノの店に戻り、シノビとクノは捕縛した盗賊二人を店の中に連れ込み、改めて尋問を行う。ちなみに怪我はナイが回復魔法を施して治療を行う。


「さあ、洗いざらい話して貰うぞ」
「……俺達が口を割ると思ってんのか?」
「ひいいっ!?」
「ゆ、許してくれぇっ……!!」
「簡単に口を割りそうな者も居るでござるが……」


拘束した三人は椅子に固定された状態でシノビたちと向き合い、こんな状況だというのにガルソンだけは不敵な笑みを浮かべていた。だが、その表情を見てシノビは只の虚勢だと見抜く。

表情だけは余裕の態度を貫いているが、足元が震えている事をシノビは鋭い洞察力で見抜いた。ガルソンにとってもこの状況自体が予想外の展開であり、内心では酷く動揺していた。


「ガルソン、お前は賞金首だな。しかも金貨15枚の高額賞金首だ……このまま警備兵に差し出せば俺は大金を得られるわけだ」
「はんっ、それで脅しているつもりか?言っておくが、捕まった所で俺はすぐに脱出してやる」
「その時はまたお前を捕まえて賞金をもう一度受け取る事が出来るな……だが、お前も分かっているはずだ。高額賞金首の場合は即刻に始末される事をな」
「…………」


ガルソンのような金貨単位の高額賞金首の場合、捕まった場合は即座に処刑が実行される。賞金首の金額が高い人間ほどに凶悪な犯罪をしており、そんな人間の場合は更生の余地は低いと判断され、すぐに処刑を実行するのがこの国の方針だった。


「お前の命は俺達が握っていると思え……さあ、情報を吐いてもらうぞ」
「そ、そんな脅しに俺が屈すると思っているのか?」
「お前でなくても情報は聞き出せるんだぞ」


シノビは他の二人に視線を向け、その内の一人はエルの居場所を確実に知っているはずであり、彼は短刀の刃を首元に構えながら尋ねた。


「おい、貴様……エルの飯係を命じられていたそうだな。という事はエルが何処に捕まっているのか知っているな?」
「ひいっ!?は、はひっ……知っています!!」
「馬鹿野郎、喋るんじゃねえっ!!喋ったら殺す……ふぐっ!?」
「お主は黙っているでござる」


ガルソンは情報を漏らしそうになった男を脅そうとしたが、すかさずにクノが顔面を掴んで口元を塞ぐ。予想以上の力強い握力にガルソンは苦し気な表情を浮かべ、一方でシノビは男を問い質す。


「さっさと答えろ、でないとこのまま首を切り落とすぞ」
「ひいいっ!?」
「お、おい!?やり過ぎじゃないのか?」
「そうですよ、止めてください!!」


傍観していたニエルとナイはシノビの迫力に本当に斬るつもりなのと焦った表情を浮かべ、盗賊の男は涙を流しながら二人に助けを求める。


「お、お願いします!!助けてください、何でも話しますから……」
「……ならさっさと話せ」
「落ち着いて話してください。正直に言えば殺したりなんてしませんから」


シノビが離れるとナイは男に安心させるように語り掛け、その彼の態度に盗賊の男は安心感を抱く。男は完全に警戒心を解いてしまった。

この状況で敢えてシノビは拷問紛いの方法で情報を聞き出すより、ナイとニエルが介入して彼を止める事で敢えてシノビは悪役を演じる。そのお陰で盗賊は二人を味方のように錯覚させ、ナイは優しく語り掛けて盗賊に話を促す。


「深呼吸して……心を落ち着かせてゆっくりと話してください」
「すぅっ……はあっ……エ、エルが捕まっているのは俺達が泊まっている「白銀亭」という宿屋の地下にある倉庫にいる。そこにはエル以外にも宿屋の店主の家族も捕まっているから、そいつらを監禁して俺達は宿屋を拠点にしているんだ」
「なるほど、やはり宿屋の店主を脅していたか……」
「あ、ああ……頭が言うには宿屋の店主を殺すと色々とまずいから、家族を人質にして生かしておくように言われたんだ。もしも警備兵が訪れた時、俺達が店主に化けて対応するわけにはいかないからって……」
「中々に知恵が回るでござるな」


仮に店主を殺して宿屋を乗っ取った場合、もしも警備兵が宿屋に訪れた時、別の人間が店主のふりをしていれば怪しまれるだろう。そんな状況を想定して盗賊の頭であるガルスは店主を生かしているという。


「お前達の仲間の数はどの程度だ?」
「し、知らない……少なくともうちの宿屋に居る奴等だけでも60人はいる。でも、他の場所に隠れている奴等もいるから……多分、100人ぐらいじゃないか?」
「100人……そんな数の盗賊が街の中に入っていたなんて」
「おい、こいつはまずいぞ……早く警備兵に連絡した方が良いんじゃないのか?」
「いや、それはまずいな……そんな事をすれば宿屋に捕まっている人質の身が危ない」


仮に警備兵に報告して盗賊団を逮捕させるにしても、100人の盗賊が相手となると相当な数の警備兵が動く必要があり、当然だが大人数の警備兵が動けば盗賊団も気づき、その場合は捕まえた人質を利用される危険性もあった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...