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ゴブリンキングの脅威
第495話 お守りの作り方
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「ううっ、またナイ君が危険な目に遭ったら……」
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
心配そうな表情を浮かべるモモに対してヒナは真面目に考え、とりあえずは討伐隊に同行する事は絶対に有り得ず、仮に同行を申し出てもアッシュが許すはずがない。
二人の実力は一般人と比べれば高い方だが、それでも討伐のために集められた武人達と比べると実力は相当な差が存在する。特にヒナの場合は自分が凡人だと理解しており、モモの場合も才能はあっても性格的に戦闘には不向きである。
(モモだけなら回復係として無理に頼めば同行できるかもしれないけど、皆結構無茶をするからこの子の場合だと無理をしてでも他の人を助けようとするかもしれない。そうなればモモの方が危ないわ……というかこの子の場合、放っておくと何をやらかすか分からないし、傍から離れられないわね)
モモの事はヒナは幼少の頃からの付き合いなので性格は知り尽くしており、もしも討伐部隊に同行でもすれば、彼女は自分の力で怪我をした人を救おうとするのは目に見えていた。
確かにモモの魔力量は凄まじく、純粋な魔力量ならば一流の魔術師にも劣らない。魔操術の技術はヒナよりもずっと上であり、彼女は自分の魔力を分け与える事で回復魔法のように他の人間を癒す力を持つ。
だが、魔力を他人に分け与えるという事は逆にいえば自分の肉体に負担を負う事を意味しており、もしも限界以上に魔力を他人に分け与えればモモが死んでしまう。それを避けるためにヒナはモモを討伐隊に参加させるわけにはいかなかった。
(モモを行かせるわけにはいかないけど、どうすればいいのかしら……待てよ、そういえば前に魔術師のお客さんから聞いたあれを作ればモモも納得できるかもしれないわ)
まだ二人が白猫亭で働いていた頃、ヒナは常連客の魔術師から魔法使いの間で流行しているお守りの話を思い出す。そのお守りといっても別に願掛けの類ではなく、ある意味では魔道具の製作に近い。
「モモ、あんたお守りを作ってあげなさい」
「えっ……お守り?」
「そうよ、ナイ君のためにあんただけの力で作り出せるお守りを渡すの。そうすればきっとナイ君も喜ぶわよ」
「私だけのお守り……?」
モモはヒナの言葉に首をかしげるが、ヒナはモモを連れて一先ずは会議室を離れる。これが功を奏し、二人が離れた直後に会議室の面々は出てきたため、盗み聞きしていた事は気づかれなかった――
――その日の昼、ヒナはモモにお守りの作り方を教えると、マホの治療を任されているイリアの元へ向かう。彼女の元に訪れたのはお守りの製作のために必要な素材を分けてもらうためである。
「えっ……魔力を失った聖属性の魔石を分けてほしい?」
「ええ、まあ……イリアさんなら持っていると思って」
「まあ、後でまとめて処分するつもりだったの持ってますけど、どうするつもりですか?」
普段から複数の魔石を所有しているイリアは聖属性の魔石も所持しており、彼女はその中でも魔力を切れた魔石を差し出す。その魔石を受け取ったヒナはモモに振り返り、彼女に渡す。
「どう、ヒナ?出来そう?」
「う、う~ん……多分、大丈夫だと思う」
「御二人とも何をするつもりですか?」
「実は……煌魔石を作ろうと思ってるんです」
煌魔石とは一度魔力が失われた魔石に魔力を送り込み、復活させた魔石の通称である。以前にナイ達が倒したゴーレムキングは魔力を吸収した魔石を溶岩の中に沈め、再度魔力を宿した状態で復活を果たした魔石もこれに当たる。
魔石に魔力を戻すというと簡単に聞こえるが、実際に行うとなるとかなりの労力を必要とする。例えば一度完全に失われた魔石は非常に脆く、簡単に壊れてしまう。それに送り込む魔力量の調整を失敗しても砕け散ってしまう。更に魔石が復活する程の魔力を送り込むとなるとかなりの魔力を消費してしまう。
その反面に煌魔石が完成した場合、質の良い魔力を封じる事が出来れば元の魔石よりも高い効果を発揮する。そしてヒナはモモの魔力ならば元の魔石よりも高純度で質の良い魔石を作り出せると考えていた。
「なるほど、煌魔石を作るんですか……でも、そんな簡単な方法じゃないですよ。私も実験のために煌魔石を何度か作った事はありますが、付与魔術師の私でもかなり難しいですよ」
「だ、大丈夫!!私、頑張るから!!」
「頑張ってどうにかなるとは思いませんけど……まあ、面白そうだから私も治療の合間に手伝ってあげますよ。魔力を送り込む時のコツぐらいなら教えてあげられますから」
「ありがとうございます!!じゃあ、モモ!!あんたの分の雑用は私がやるから、後は頑張りなさい!!」
「うん、任せてよ!!ありがとう、ヒナちゃっ……」
ヒナの言葉を聞いてモモは頷き、手にしていた魔石を強く握ってしまう。この際に魔石はモモの掌の中で砕け散り、地面に落ちてしまう。
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
心配そうな表情を浮かべるモモに対してヒナは真面目に考え、とりあえずは討伐隊に同行する事は絶対に有り得ず、仮に同行を申し出てもアッシュが許すはずがない。
二人の実力は一般人と比べれば高い方だが、それでも討伐のために集められた武人達と比べると実力は相当な差が存在する。特にヒナの場合は自分が凡人だと理解しており、モモの場合も才能はあっても性格的に戦闘には不向きである。
(モモだけなら回復係として無理に頼めば同行できるかもしれないけど、皆結構無茶をするからこの子の場合だと無理をしてでも他の人を助けようとするかもしれない。そうなればモモの方が危ないわ……というかこの子の場合、放っておくと何をやらかすか分からないし、傍から離れられないわね)
モモの事はヒナは幼少の頃からの付き合いなので性格は知り尽くしており、もしも討伐部隊に同行でもすれば、彼女は自分の力で怪我をした人を救おうとするのは目に見えていた。
確かにモモの魔力量は凄まじく、純粋な魔力量ならば一流の魔術師にも劣らない。魔操術の技術はヒナよりもずっと上であり、彼女は自分の魔力を分け与える事で回復魔法のように他の人間を癒す力を持つ。
だが、魔力を他人に分け与えるという事は逆にいえば自分の肉体に負担を負う事を意味しており、もしも限界以上に魔力を他人に分け与えればモモが死んでしまう。それを避けるためにヒナはモモを討伐隊に参加させるわけにはいかなかった。
(モモを行かせるわけにはいかないけど、どうすればいいのかしら……待てよ、そういえば前に魔術師のお客さんから聞いたあれを作ればモモも納得できるかもしれないわ)
まだ二人が白猫亭で働いていた頃、ヒナは常連客の魔術師から魔法使いの間で流行しているお守りの話を思い出す。そのお守りといっても別に願掛けの類ではなく、ある意味では魔道具の製作に近い。
「モモ、あんたお守りを作ってあげなさい」
「えっ……お守り?」
「そうよ、ナイ君のためにあんただけの力で作り出せるお守りを渡すの。そうすればきっとナイ君も喜ぶわよ」
「私だけのお守り……?」
モモはヒナの言葉に首をかしげるが、ヒナはモモを連れて一先ずは会議室を離れる。これが功を奏し、二人が離れた直後に会議室の面々は出てきたため、盗み聞きしていた事は気づかれなかった――
――その日の昼、ヒナはモモにお守りの作り方を教えると、マホの治療を任されているイリアの元へ向かう。彼女の元に訪れたのはお守りの製作のために必要な素材を分けてもらうためである。
「えっ……魔力を失った聖属性の魔石を分けてほしい?」
「ええ、まあ……イリアさんなら持っていると思って」
「まあ、後でまとめて処分するつもりだったの持ってますけど、どうするつもりですか?」
普段から複数の魔石を所有しているイリアは聖属性の魔石も所持しており、彼女はその中でも魔力を切れた魔石を差し出す。その魔石を受け取ったヒナはモモに振り返り、彼女に渡す。
「どう、ヒナ?出来そう?」
「う、う~ん……多分、大丈夫だと思う」
「御二人とも何をするつもりですか?」
「実は……煌魔石を作ろうと思ってるんです」
煌魔石とは一度魔力が失われた魔石に魔力を送り込み、復活させた魔石の通称である。以前にナイ達が倒したゴーレムキングは魔力を吸収した魔石を溶岩の中に沈め、再度魔力を宿した状態で復活を果たした魔石もこれに当たる。
魔石に魔力を戻すというと簡単に聞こえるが、実際に行うとなるとかなりの労力を必要とする。例えば一度完全に失われた魔石は非常に脆く、簡単に壊れてしまう。それに送り込む魔力量の調整を失敗しても砕け散ってしまう。更に魔石が復活する程の魔力を送り込むとなるとかなりの魔力を消費してしまう。
その反面に煌魔石が完成した場合、質の良い魔力を封じる事が出来れば元の魔石よりも高い効果を発揮する。そしてヒナはモモの魔力ならば元の魔石よりも高純度で質の良い魔石を作り出せると考えていた。
「なるほど、煌魔石を作るんですか……でも、そんな簡単な方法じゃないですよ。私も実験のために煌魔石を何度か作った事はありますが、付与魔術師の私でもかなり難しいですよ」
「だ、大丈夫!!私、頑張るから!!」
「頑張ってどうにかなるとは思いませんけど……まあ、面白そうだから私も治療の合間に手伝ってあげますよ。魔力を送り込む時のコツぐらいなら教えてあげられますから」
「ありがとうございます!!じゃあ、モモ!!あんたの分の雑用は私がやるから、後は頑張りなさい!!」
「うん、任せてよ!!ありがとう、ヒナちゃっ……」
ヒナの言葉を聞いてモモは頷き、手にしていた魔石を強く握ってしまう。この際に魔石はモモの掌の中で砕け散り、地面に落ちてしまう。
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