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ゴブリンキングの脅威
第492話 王女に戻る時
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「先生、ここまで僕が生き延びる事が出来たのは先生のお陰です。本当にありがとうございました」
「ナイ……」
ナイはヨウに頭を下げ、彼女に深く感謝する。この言葉は決して嘘ではなく、ヨウがいたからこそ今のナイは存在するといっても過言ではない。
予知夢でヨウはナイの悲しい運命を見たため、彼に同情して水晶板の破片をナイが持ち帰った時も止めず、家族や親しい友人を失って自暴自棄になっていたナイを受け入れ、彼を引き取って回復魔法を授けてくれた。
他にもナイが旅立ちの時は水晶のペンダントを渡してくれ、これのお陰でナイは様々な技能を覚える事ができた。そして巨人に踏み潰される運命をナイに教えてくれた事で、彼は命拾いをした。
「先生は立派な人です。だから、もう泣かないでください」
「ナイ、違います……それは私の台詞です。貴方に出会えた事を誇りに思います」
ヨウはナイのその言葉を聞いただけで胸が温かくなり、二人は握手を行う。その光景を見ていた他の者達も優しい笑みを浮かべるが、この時に民兵が駆けつけてきた。
「お~い!!皆、外に逃げた連中と他の街の奴等が戻って来たぞ!!」
「何だって!?」
「凄い数の人がこっちへ来てるんだ!!もう城壁の前まで来ている!!」
民兵の言葉に全員が驚き、急いで城壁へと向かうとそこには確かに大勢の人間がイチノへ向けて移動していた。その数は数千人は存在し、他の街から派遣された兵士や冒険者らしき姿の人間も含まれていた。
「こ、これはいったい……どうして?」
「ふふふ……我々が何の考えも無しにここへ来たとお思いか?実はこの場所に到着する前にいくつかの街に尋ねて援軍の要請を行っていたのですよ」
驚愕の表情を浮かべて城壁の外を眺めるリノに対し、アッシュは彼等を呼び寄せたのは自分達だと告げる。実は飛行船でイチノへ向かう際、途中で兵士だけを下ろして他の街に派遣させていた。
兵士達はアッシュが直筆した手紙を持参し、彼は王命を受けてリノ王子の救出へ向かう旨を記していた。それを確認した街を管理する領主たちは慌てて援軍を派遣し、イチノへと向かわせる。
他の街の領主はゴブリンの軍勢が自分達の街を襲ってくる場合を考慮してイチノへの援軍を避けていたのだが、王都の公爵家の手紙となれば無視できるはずがない。しかも王命を賜っているのならば援軍の派遣を拒否すれば国王に逆らう事を意味する。そのため、今まで援軍を渋っていた他の街の領主も兵士を派遣せざるを得なかった。
「ゴブリンの軍勢は潰滅したが、この街を復興させるには人手がいるだろう。しかし、時間さえあれば必ずや復興する」
「ええ、その通りですね……」
「それよりもリノ王子、その格好で動き回るのは問題があるのでは?」
「あっ……しまった、忘れていました」
リノはアッシュに指摘されて自分の格好を振り返り、今は男装を辞めていた事を思い出す。どうせ死ぬのならばありのままの自分の姿で死にたいと思って正体を明かしてしまったが、その姿を見てアッシュは笑みを浮かべる。
「いや、もうリノ王子が正体を隠す必要はないのかもしれませんな」
「アッシュ公爵?」
「王都へ戻りましょう……リノ王女様」
アッシュの言葉にリノは驚いた表情を浮かべるが、リノが男装をしていたのは獣人国との関係を悪化させないためだが、その獣人国と王国は同盟を結んだ以上はもう彼女が正体を隠す必要はない。
彼女の意志を汲み取ってアッシュはリノにこれからは王女として生きる様に助言する。リノはそんなアッシュの言葉を聞いてもう自分を偽らずに生きていけるという事を知り、涙を流す――
――同時刻、街に戻ってくる人間の中にはドルトンとイーシャンの姿も存在し、二人は街の出入口で待機していたナイの姿を見ると、自分達の怪我を忘れてナイの元へ向かう。
「ナイ!!そこにいるのはナイか!?」
「おおっ、ナイじゃないか!!どうしてここにいるんだ、お前!?」
「ドルトンさん!!イーシャンさんも……良かった、二人とも無事だったんですね!!」
三人は再会を喜び合い、我慢できずにお互いに抱きしめ合う。しかし、この際にナイは興奮のあまりに手加減を忘れ、重傷人である二人を強く抱きしめてしまう。
「「あだだだだっ!?」」
「あっ……ご、ごめんなさい!!すぐに回復魔法を掛けますね!!」
昔よりも力が強くなったナイに抱きしめられ、怪我をしていた二人は悲鳴を上げてしまい、慌ててナイは二人を直すために回復魔法を施そうとする。
怪我をした箇所にナイは回復魔法を発動すると、昔よりも魔力の操作が上手くなったお陰で二人とも怪我の治りが早く、すぐに負傷した箇所が復元する。ドルトンは折れていた足が動けるようになり、驚いた様子を浮かべた。
(信じられん、あのナイがこれほどの回復魔法を扱えるようになったとは……)
回復魔法を覚えたての頃のナイは重傷者を直すだけの力はなかったが、今のナイは骨折のような怪我であろうと瞬く間に回復させる程の魔力を持ち合わせ、その事にドルトンは改めてナイが成長した事を思い知る。
「ナイ……」
ナイはヨウに頭を下げ、彼女に深く感謝する。この言葉は決して嘘ではなく、ヨウがいたからこそ今のナイは存在するといっても過言ではない。
予知夢でヨウはナイの悲しい運命を見たため、彼に同情して水晶板の破片をナイが持ち帰った時も止めず、家族や親しい友人を失って自暴自棄になっていたナイを受け入れ、彼を引き取って回復魔法を授けてくれた。
他にもナイが旅立ちの時は水晶のペンダントを渡してくれ、これのお陰でナイは様々な技能を覚える事ができた。そして巨人に踏み潰される運命をナイに教えてくれた事で、彼は命拾いをした。
「先生は立派な人です。だから、もう泣かないでください」
「ナイ、違います……それは私の台詞です。貴方に出会えた事を誇りに思います」
ヨウはナイのその言葉を聞いただけで胸が温かくなり、二人は握手を行う。その光景を見ていた他の者達も優しい笑みを浮かべるが、この時に民兵が駆けつけてきた。
「お~い!!皆、外に逃げた連中と他の街の奴等が戻って来たぞ!!」
「何だって!?」
「凄い数の人がこっちへ来てるんだ!!もう城壁の前まで来ている!!」
民兵の言葉に全員が驚き、急いで城壁へと向かうとそこには確かに大勢の人間がイチノへ向けて移動していた。その数は数千人は存在し、他の街から派遣された兵士や冒険者らしき姿の人間も含まれていた。
「こ、これはいったい……どうして?」
「ふふふ……我々が何の考えも無しにここへ来たとお思いか?実はこの場所に到着する前にいくつかの街に尋ねて援軍の要請を行っていたのですよ」
驚愕の表情を浮かべて城壁の外を眺めるリノに対し、アッシュは彼等を呼び寄せたのは自分達だと告げる。実は飛行船でイチノへ向かう際、途中で兵士だけを下ろして他の街に派遣させていた。
兵士達はアッシュが直筆した手紙を持参し、彼は王命を受けてリノ王子の救出へ向かう旨を記していた。それを確認した街を管理する領主たちは慌てて援軍を派遣し、イチノへと向かわせる。
他の街の領主はゴブリンの軍勢が自分達の街を襲ってくる場合を考慮してイチノへの援軍を避けていたのだが、王都の公爵家の手紙となれば無視できるはずがない。しかも王命を賜っているのならば援軍の派遣を拒否すれば国王に逆らう事を意味する。そのため、今まで援軍を渋っていた他の街の領主も兵士を派遣せざるを得なかった。
「ゴブリンの軍勢は潰滅したが、この街を復興させるには人手がいるだろう。しかし、時間さえあれば必ずや復興する」
「ええ、その通りですね……」
「それよりもリノ王子、その格好で動き回るのは問題があるのでは?」
「あっ……しまった、忘れていました」
リノはアッシュに指摘されて自分の格好を振り返り、今は男装を辞めていた事を思い出す。どうせ死ぬのならばありのままの自分の姿で死にたいと思って正体を明かしてしまったが、その姿を見てアッシュは笑みを浮かべる。
「いや、もうリノ王子が正体を隠す必要はないのかもしれませんな」
「アッシュ公爵?」
「王都へ戻りましょう……リノ王女様」
アッシュの言葉にリノは驚いた表情を浮かべるが、リノが男装をしていたのは獣人国との関係を悪化させないためだが、その獣人国と王国は同盟を結んだ以上はもう彼女が正体を隠す必要はない。
彼女の意志を汲み取ってアッシュはリノにこれからは王女として生きる様に助言する。リノはそんなアッシュの言葉を聞いてもう自分を偽らずに生きていけるという事を知り、涙を流す――
――同時刻、街に戻ってくる人間の中にはドルトンとイーシャンの姿も存在し、二人は街の出入口で待機していたナイの姿を見ると、自分達の怪我を忘れてナイの元へ向かう。
「ナイ!!そこにいるのはナイか!?」
「おおっ、ナイじゃないか!!どうしてここにいるんだ、お前!?」
「ドルトンさん!!イーシャンさんも……良かった、二人とも無事だったんですね!!」
三人は再会を喜び合い、我慢できずにお互いに抱きしめ合う。しかし、この際にナイは興奮のあまりに手加減を忘れ、重傷人である二人を強く抱きしめてしまう。
「「あだだだだっ!?」」
「あっ……ご、ごめんなさい!!すぐに回復魔法を掛けますね!!」
昔よりも力が強くなったナイに抱きしめられ、怪我をしていた二人は悲鳴を上げてしまい、慌ててナイは二人を直すために回復魔法を施そうとする。
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(信じられん、あのナイがこれほどの回復魔法を扱えるようになったとは……)
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