496 / 1,110
ゴブリンキングの脅威
第483話 蒼月の強化
しおりを挟む
『ガハァッ――!?』
『くたばれ化物がぁああっ!!』
「爺さん!?」
船にハマーンの声が響き渡り、どうやら拡音石を利用して放送しているらしく、飛行船を発進させて巨人を押し潰す勢いで突っ込む。
飛行船の後部に設置されている噴射口から火属性の魔力が放出され、巨人よりも巨大な飛行船が突進し、遂には飛行船を支えきれずに巨人は地面に倒れ込む。この際に飛行船にも相当な衝撃が走ったが、どうにか甲板に立っている者は吹き飛ばされない様にしがみつく。
「くっ……なんて無茶をしやがる!?」
「だが、お陰で助かった……ハマーンよ、聞こえておるか!?飛行船をこのまま上空へ……」
『うおおっ!?』
飛行船が体当たりした事で巨人に反撃を繰り出す事に成功はしたが、この際に飛行船が上昇しようとした時、途中で何故か浮上しなくなる。
「な、何だ!?爺さん、なんで逃げないんだ!?」
『どうなっとるんじゃ!?何故、浮かばない!?』
「み、皆!!下を見て!!」
リーナは飛行船の下を指差すと、全員が覗き込む。飛行船に轢かれて地面に倒れていたと思われた巨人が船底を掴み、力ずくで飛行船を引きずり降ろそうとしていた。
『ウガァアアアアッ!!』
『ぬおおっ!?ま、まずい……このままでは持たんぞ!?』
「そ、そんなっ!?」
「くっ……この位置からでは攻撃できぬぞ!?」
巨人は飛行船の船底を掴んだ状態で立ち上がり、力の限りに引き寄せて飛行船を地面に叩きつけようとする光景を見てマホは杖を構えるが、この位置からでは広域魔法を発動したら飛行船まで巻き込んでしまう。
どうにか飛行船を引き剥がさなければいけないが、位置的にマホの魔法は当てには出来ない。エルマの魔弓術ならば巨人を攻撃できるが、有効打を与える事は不可能。
「くそ、離しやがれ!!」
「老師、どうすれば!?」
「くっ……」
「仕方ありません……リーナさん、貴女の出番ですよ!!」
「えっ!?」
イリアはマホから離れるとリーナの元に駆けつけ、彼女の手にする蒼月に右手を伸ばす。彼女の右手には水属性の魔石が嵌め込まれた指輪も取り付けられており、今回は所有者のリーナ自身にではなく、魔槍の方に直接魔力を送り込む。
「私の魔石の魔力を全て注ぎ込みます!!そうすれば貴女の魔槍も一時的にですが強化されるはずです!!後は何とかして下さい!!」
「何とかって……」
「いいから何とかして下さい!!」
「ええっ!?」
普段のイリアらしからぬ慌てた態度にリーナは戸惑うが、彼女の付与魔法のお陰で魔槍は水属性の魔力を取り込み、刃が光り輝く。その魔槍の変化を見てリーナは今ならば普段以上に蒼月の力を使いこなせると確信した。
「わ、分かったよ……何とかしてみせる!!」
「おい、何をする気だ!?」
「無茶です、この高さから落ちたら死にますよ!?」
蒼月を片手にリーナは船底に存在する巨人を見下ろし、彼女は覚悟を決める様に船から飛び降りた。その光景を見てゴンザレスとエルマは慌てて止めようとしたが、二人の心配とは裏腹にリーナは空中で蒼月を振りかざす。
船底を掴む巨人に対してリーナは蒼月を構えると、槍の先端に巨大な氷の刃を形成し、下りる際に一緒に握りしめていた鎖を利用して接近する。
「やぁあああっ!!」
『ウガァッ!?』
リーナが掴んでいた鎖は先ほどゴンザレスが投擲した碇の鎖であり、碇は巨人の胸元に突き刺さったままだが、鎖だけはまだ残っていた。それを利用してリーナは空中で鎖をロープ代わりに利用して巨人に接近する。
蒼月に纏わせた氷の刃を利用してリーナは船底を掴む巨人の右腕に切りかかり、この際に巨人の右手首に血が滲む。巨人は予想外の攻撃を受けて右手の力が抜けてしまい、飛行船を手放してしまう。
『ガアアッ……!?』
「やった……うわっ!?」
「やばい、おい早く鎖を引き上げろ!!」
「ふんっ!!」
巨人が船底を手放した途端に飛行船は一気に浮上し、リーナが掴んでいた鎖をゴンザレスとガオウが握りしめ、彼女を急いで引き上げる。結果から言えば飛行船は巨人から逃げる事に成功した。
「よし、あと少しだ……良くやったな、嬢ちゃん!!」
「お陰で助かったぞ」
「はあっ……はあっ……ど、どういたしまして」
鎖を引き上げられてリーナはどうにか甲板に帰還する事に成功し、彼女のお陰で飛行船は巨人から逃れる事は出来た。だが、巨人は諦めるつもりはないらしく、上空へ浮き上がった飛行船へ向けて咆哮を放つ。
――ウオオオオオッ!!
怒り狂ったように泣き喚く巨人の姿に甲板に立つ者達は震え上がるが、そんな巨人を船首から見下ろす影が存在し、その人物は杖を構える。
『荒れ狂う竜巻よ、我が敵を薙ぎ払え……トルネード!!』
船首に立ったマホが杖を振り下ろした瞬間、彼女の杖の先端の魔石が光り輝き、地上に強烈な竜巻が発生した。その竜巻は巨人の元へ真っ直ぐに向かい、その巨体を包み込む。
『くたばれ化物がぁああっ!!』
「爺さん!?」
船にハマーンの声が響き渡り、どうやら拡音石を利用して放送しているらしく、飛行船を発進させて巨人を押し潰す勢いで突っ込む。
飛行船の後部に設置されている噴射口から火属性の魔力が放出され、巨人よりも巨大な飛行船が突進し、遂には飛行船を支えきれずに巨人は地面に倒れ込む。この際に飛行船にも相当な衝撃が走ったが、どうにか甲板に立っている者は吹き飛ばされない様にしがみつく。
「くっ……なんて無茶をしやがる!?」
「だが、お陰で助かった……ハマーンよ、聞こえておるか!?飛行船をこのまま上空へ……」
『うおおっ!?』
飛行船が体当たりした事で巨人に反撃を繰り出す事に成功はしたが、この際に飛行船が上昇しようとした時、途中で何故か浮上しなくなる。
「な、何だ!?爺さん、なんで逃げないんだ!?」
『どうなっとるんじゃ!?何故、浮かばない!?』
「み、皆!!下を見て!!」
リーナは飛行船の下を指差すと、全員が覗き込む。飛行船に轢かれて地面に倒れていたと思われた巨人が船底を掴み、力ずくで飛行船を引きずり降ろそうとしていた。
『ウガァアアアアッ!!』
『ぬおおっ!?ま、まずい……このままでは持たんぞ!?』
「そ、そんなっ!?」
「くっ……この位置からでは攻撃できぬぞ!?」
巨人は飛行船の船底を掴んだ状態で立ち上がり、力の限りに引き寄せて飛行船を地面に叩きつけようとする光景を見てマホは杖を構えるが、この位置からでは広域魔法を発動したら飛行船まで巻き込んでしまう。
どうにか飛行船を引き剥がさなければいけないが、位置的にマホの魔法は当てには出来ない。エルマの魔弓術ならば巨人を攻撃できるが、有効打を与える事は不可能。
「くそ、離しやがれ!!」
「老師、どうすれば!?」
「くっ……」
「仕方ありません……リーナさん、貴女の出番ですよ!!」
「えっ!?」
イリアはマホから離れるとリーナの元に駆けつけ、彼女の手にする蒼月に右手を伸ばす。彼女の右手には水属性の魔石が嵌め込まれた指輪も取り付けられており、今回は所有者のリーナ自身にではなく、魔槍の方に直接魔力を送り込む。
「私の魔石の魔力を全て注ぎ込みます!!そうすれば貴女の魔槍も一時的にですが強化されるはずです!!後は何とかして下さい!!」
「何とかって……」
「いいから何とかして下さい!!」
「ええっ!?」
普段のイリアらしからぬ慌てた態度にリーナは戸惑うが、彼女の付与魔法のお陰で魔槍は水属性の魔力を取り込み、刃が光り輝く。その魔槍の変化を見てリーナは今ならば普段以上に蒼月の力を使いこなせると確信した。
「わ、分かったよ……何とかしてみせる!!」
「おい、何をする気だ!?」
「無茶です、この高さから落ちたら死にますよ!?」
蒼月を片手にリーナは船底に存在する巨人を見下ろし、彼女は覚悟を決める様に船から飛び降りた。その光景を見てゴンザレスとエルマは慌てて止めようとしたが、二人の心配とは裏腹にリーナは空中で蒼月を振りかざす。
船底を掴む巨人に対してリーナは蒼月を構えると、槍の先端に巨大な氷の刃を形成し、下りる際に一緒に握りしめていた鎖を利用して接近する。
「やぁあああっ!!」
『ウガァッ!?』
リーナが掴んでいた鎖は先ほどゴンザレスが投擲した碇の鎖であり、碇は巨人の胸元に突き刺さったままだが、鎖だけはまだ残っていた。それを利用してリーナは空中で鎖をロープ代わりに利用して巨人に接近する。
蒼月に纏わせた氷の刃を利用してリーナは船底を掴む巨人の右腕に切りかかり、この際に巨人の右手首に血が滲む。巨人は予想外の攻撃を受けて右手の力が抜けてしまい、飛行船を手放してしまう。
『ガアアッ……!?』
「やった……うわっ!?」
「やばい、おい早く鎖を引き上げろ!!」
「ふんっ!!」
巨人が船底を手放した途端に飛行船は一気に浮上し、リーナが掴んでいた鎖をゴンザレスとガオウが握りしめ、彼女を急いで引き上げる。結果から言えば飛行船は巨人から逃げる事に成功した。
「よし、あと少しだ……良くやったな、嬢ちゃん!!」
「お陰で助かったぞ」
「はあっ……はあっ……ど、どういたしまして」
鎖を引き上げられてリーナはどうにか甲板に帰還する事に成功し、彼女のお陰で飛行船は巨人から逃れる事は出来た。だが、巨人は諦めるつもりはないらしく、上空へ浮き上がった飛行船へ向けて咆哮を放つ。
――ウオオオオオッ!!
怒り狂ったように泣き喚く巨人の姿に甲板に立つ者達は震え上がるが、そんな巨人を船首から見下ろす影が存在し、その人物は杖を構える。
『荒れ狂う竜巻よ、我が敵を薙ぎ払え……トルネード!!』
船首に立ったマホが杖を振り下ろした瞬間、彼女の杖の先端の魔石が光り輝き、地上に強烈な竜巻が発生した。その竜巻は巨人の元へ真っ直ぐに向かい、その巨体を包み込む。
10
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~
月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―
“賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。
だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。
当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。
ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?
そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?
彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?
力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる