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ゴブリンキングの脅威
第482話 鬼人化
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「イリア、今じゃ!!今しかない!!」
「……後でどうなっても知りませんよ!?」
イリアは指輪を取り出すと、その指輪には風属性の魔石が取り付けられており、それを利用してイリアはマホに指輪を向けると付与魔法を発動させた。
「風属性付与《エンチャント》!!」
「ぐうっ……!?」
「イリアさん!?」
「老師、いったい何を……!?」
指輪が光り輝くとイリアは呻き声を上げ、彼女の身体が緑色に輝く。その輝きは風属性の魔力で間違いなく、イリアは指輪を利用してイリアに風属性の魔力を送り込んでいた。
イリアが扱う付与魔法は物体に魔力を宿す魔術であり、例えばナイのような聖属性の適正が高い人間に聖属性の魔力を付与させれば肉体を一時的に強化する事が出来る。
だが、聖属性以外の適正を持つ人間の場合だと発生する現象は異なり、マホはイリアの指輪の魔石から風属性の魔力を送り込まれ、それを吸収して自分の魔法の力へと帰る。魔操術を扱えるマホならば魔石があれば自力で魔力を吸収する事もできるが、今回の場合は風の魔力の供給はイリアに頼み、自分は広域魔法を発動させる事に集中する。
(奴を仕留める事は恐らくはできぬが、損傷を与える事はできるはず……!!)
イリアの指輪から送り込まれる魔力を受け入れながらもマホは広域魔法を発動させる事に集中し、その間にエルマは矢を放ち続けた。まだ飛行船が動き出す様子はなく、巨人が近付かない様に時間を稼ぐ必要があった。
「くっ……止まれぇっ!!」
『ウオオッ……!!』
巨人に向けてエルマは何十発も矢を放ち、土砂を巻き上げて土煙で視界を封じたり、あるいは足元を狙い撃って巨人の体勢を崩そうとした。しかし、巨人はそれらの攻撃を振り払いながら飛行船へと近づく。
巨体でありながら移動速度は早く、このままではマホが広域魔法を発動させる前に到達してしまう。それを阻止するためにゴンザレスは甲板を見渡し、この際に碇を発見した。
「うおおおっ!!」
「おおっ!?何をする気だ、おい!?」
甲板に置かれていた碇を持ち上げると、彼は鎖が繋がれている事に気付き、リーナとガオウに声を掛けた。
「この鎖を早く切ってくれ!!」
「鎖!?」
「わ、分かった!!ガオウさん、僕が凍らせるからその間にお願いします!!」
「あ、ああ!!」
ゴンザレスの言葉を聞いてリーナは蒼月を繰り出し、鎖に向けて刃を放つ。蒼月の能力を発動させて刃から冷気を放つと、鎖の一部が凍り付き、その隙を逃さずにガオウが鍵爪を放つ。
「おらぁっ!!」
「切れたっ!!」
「助かったぞ……そりゃあああっ!!」
鎖が切れた碇をゴンザレスは持ち上げ、そのまま身体を回転させながら遠心力を加える。この際にゴンザレスの身体の血管が浮き上がり、全身の皮膚が赤みを帯びて「鬼」のような風貌へと変化を果たす。
「うおりゃあああっ!!」
「わああっ!?」
「うおおっ!?」
ゴンザレスの変貌にガオウもリーナも驚くが、彼はナイが扱う「強化術」と同じように聖属性の魔力で身体能力を限界まで上昇させたに過ぎない。巨人族が強化術を扱う場合、人間よりも筋力に優れた彼等は皮膚が赤みを帯び、驚異的な力を発揮する。
獣人族の場合は強化術を発動させると運動能力が強化され、同時に獣のように理性を失い、暴れ狂う事がある。この現象は「獣化」と呼ばれ、巨人族の場合は鬼のような風貌に変化する事から「鬼人化」と呼ばれていた。
渾身の力を込めてゴンザレスは怒りを振りかざし、緑の巨人に目掛けて放つ。まるで砲弾の如く放たれた碇は巨人族の胸元に目掛けて放たれ、先ほどはエルマの魔弓術でさえも通じなかった肉体に衝撃が走る。
『ガハァッ……!?』
「怯んだ!?あの化物が……」
「す、凄いっ!!」
「はあっ……はあっ……!!」
ゴンザレスの攻撃によって巨人の胸元に血飛沫が舞い上がり、彼の放った碇は胸元へ食い込む。鋼鉄を貫通するエルマの魔弓術でさえも巨人の肉体を傷つける事は出来なかったが、鬼人化を発動させたゴンザレスの攻撃は通じた。
しかし、胸元に食い込んだといっても所詮は表面の皮膚を破ったに過ぎず、碇は分厚い筋肉によって阻まれ、致命傷にまでは至らない。それどころか巨人は攻撃を受けた事に怒りを抱き、両腕を伸ばして飛行船に掴みかかろうとする。
『ウオオオオオッ!!』
「くっ、こっちに来るぞっ!?」
「ちょっと、魔法はまだですか!?」
「急かすでないっ……!!」
迫りくる巨人の姿を見てイリアはマホの広域魔法の準備はまだ終わらないのか尋ねるが、彼女も必死に杖に魔力を送り込んでいる最中であり、発動までもうしばらく時間は掛かった。
このままでは巨人に飛行船が破壊されると思われた瞬間、唐突に飛行船の各所に配置されている風属性の魔石が光り輝き、飛行船の後部に取り付けられている噴射口から火属性の魔力が放出された。
巨人が飛行船に掴みかかる前にハマーンが起動に成功したらしく、突っ込んできた巨人に対して逆に飛行船が動き出し、体当たりを仕掛けた。
「……後でどうなっても知りませんよ!?」
イリアは指輪を取り出すと、その指輪には風属性の魔石が取り付けられており、それを利用してイリアはマホに指輪を向けると付与魔法を発動させた。
「風属性付与《エンチャント》!!」
「ぐうっ……!?」
「イリアさん!?」
「老師、いったい何を……!?」
指輪が光り輝くとイリアは呻き声を上げ、彼女の身体が緑色に輝く。その輝きは風属性の魔力で間違いなく、イリアは指輪を利用してイリアに風属性の魔力を送り込んでいた。
イリアが扱う付与魔法は物体に魔力を宿す魔術であり、例えばナイのような聖属性の適正が高い人間に聖属性の魔力を付与させれば肉体を一時的に強化する事が出来る。
だが、聖属性以外の適正を持つ人間の場合だと発生する現象は異なり、マホはイリアの指輪の魔石から風属性の魔力を送り込まれ、それを吸収して自分の魔法の力へと帰る。魔操術を扱えるマホならば魔石があれば自力で魔力を吸収する事もできるが、今回の場合は風の魔力の供給はイリアに頼み、自分は広域魔法を発動させる事に集中する。
(奴を仕留める事は恐らくはできぬが、損傷を与える事はできるはず……!!)
イリアの指輪から送り込まれる魔力を受け入れながらもマホは広域魔法を発動させる事に集中し、その間にエルマは矢を放ち続けた。まだ飛行船が動き出す様子はなく、巨人が近付かない様に時間を稼ぐ必要があった。
「くっ……止まれぇっ!!」
『ウオオッ……!!』
巨人に向けてエルマは何十発も矢を放ち、土砂を巻き上げて土煙で視界を封じたり、あるいは足元を狙い撃って巨人の体勢を崩そうとした。しかし、巨人はそれらの攻撃を振り払いながら飛行船へと近づく。
巨体でありながら移動速度は早く、このままではマホが広域魔法を発動させる前に到達してしまう。それを阻止するためにゴンザレスは甲板を見渡し、この際に碇を発見した。
「うおおおっ!!」
「おおっ!?何をする気だ、おい!?」
甲板に置かれていた碇を持ち上げると、彼は鎖が繋がれている事に気付き、リーナとガオウに声を掛けた。
「この鎖を早く切ってくれ!!」
「鎖!?」
「わ、分かった!!ガオウさん、僕が凍らせるからその間にお願いします!!」
「あ、ああ!!」
ゴンザレスの言葉を聞いてリーナは蒼月を繰り出し、鎖に向けて刃を放つ。蒼月の能力を発動させて刃から冷気を放つと、鎖の一部が凍り付き、その隙を逃さずにガオウが鍵爪を放つ。
「おらぁっ!!」
「切れたっ!!」
「助かったぞ……そりゃあああっ!!」
鎖が切れた碇をゴンザレスは持ち上げ、そのまま身体を回転させながら遠心力を加える。この際にゴンザレスの身体の血管が浮き上がり、全身の皮膚が赤みを帯びて「鬼」のような風貌へと変化を果たす。
「うおりゃあああっ!!」
「わああっ!?」
「うおおっ!?」
ゴンザレスの変貌にガオウもリーナも驚くが、彼はナイが扱う「強化術」と同じように聖属性の魔力で身体能力を限界まで上昇させたに過ぎない。巨人族が強化術を扱う場合、人間よりも筋力に優れた彼等は皮膚が赤みを帯び、驚異的な力を発揮する。
獣人族の場合は強化術を発動させると運動能力が強化され、同時に獣のように理性を失い、暴れ狂う事がある。この現象は「獣化」と呼ばれ、巨人族の場合は鬼のような風貌に変化する事から「鬼人化」と呼ばれていた。
渾身の力を込めてゴンザレスは怒りを振りかざし、緑の巨人に目掛けて放つ。まるで砲弾の如く放たれた碇は巨人族の胸元に目掛けて放たれ、先ほどはエルマの魔弓術でさえも通じなかった肉体に衝撃が走る。
『ガハァッ……!?』
「怯んだ!?あの化物が……」
「す、凄いっ!!」
「はあっ……はあっ……!!」
ゴンザレスの攻撃によって巨人の胸元に血飛沫が舞い上がり、彼の放った碇は胸元へ食い込む。鋼鉄を貫通するエルマの魔弓術でさえも巨人の肉体を傷つける事は出来なかったが、鬼人化を発動させたゴンザレスの攻撃は通じた。
しかし、胸元に食い込んだといっても所詮は表面の皮膚を破ったに過ぎず、碇は分厚い筋肉によって阻まれ、致命傷にまでは至らない。それどころか巨人は攻撃を受けた事に怒りを抱き、両腕を伸ばして飛行船に掴みかかろうとする。
『ウオオオオオッ!!』
「くっ、こっちに来るぞっ!?」
「ちょっと、魔法はまだですか!?」
「急かすでないっ……!!」
迫りくる巨人の姿を見てイリアはマホの広域魔法の準備はまだ終わらないのか尋ねるが、彼女も必死に杖に魔力を送り込んでいる最中であり、発動までもうしばらく時間は掛かった。
このままでは巨人に飛行船が破壊されると思われた瞬間、唐突に飛行船の各所に配置されている風属性の魔石が光り輝き、飛行船の後部に取り付けられている噴射口から火属性の魔力が放出された。
巨人が飛行船に掴みかかる前にハマーンが起動に成功したらしく、突っ込んできた巨人に対して逆に飛行船が動き出し、体当たりを仕掛けた。
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