494 / 1,110
ゴブリンキングの脅威
第481話 観察
しおりを挟む
「――呆けている場合か!!早く、動かんかっ!!」
『っ……!?』
マホの怒鳴り声が甲板に広がり、ずっと彼女と共に生きてきたエルマでさえも初めて見るほどに彼女は激高していた。マホの言葉を聞いて身体を硬直させていた者達は動き出す。
即座にハマーンは船内へ向けて駆け込み、彼の弟子たちも後に続く。この飛行船を動かせるのはハマーンだけであるため、他の者は巨人の動向を伺う。
「エルマ、ゴンザレス……決して儂の傍から離れるでないぞ」
「は、はい……」
「な、何という威圧感だ……!!」
弟子であるゴンザレスとエルマをマホは傍に寄せると、彼女は杖を構えて準備を行う。この時にマホはイリアに視線を向け、彼女の力を借りることにした。
「イリアよ!!お主の付与魔法で儂を強化しろ!!」
「えっ!?本気ですか!?」
「いいから早くせいっ……あちらはもう気付いておるぞ」
マホに呼び寄せられたイリアは慌てて彼女の元に駆けつけると、地中から現れた緑の巨人は身体にこびり付いた土砂を振り払い、改めて飛行船の方向に視線を向けた。距離は離れているが、決して安心はできない。
最初の内は飛行船を見て巨人は首を傾げるが、やがて自分よりも巨大な飛行船を「敵」だと捉えたのか、おぞましい咆哮を放つ。
『ウオオオオッ――!!』
その咆哮を耳にしただけで鼓膜が敗れそうになり、特に聴覚が鋭い森人族のマホやイリア、獣人族のガオウは耐え切れずに耳元を抑え込む。
「ぐっ……なんて声を出しやがる!?」
「どうやらこちらを敵と認識したようじゃな……エルマ、少しでも時間を稼げ!!」
「は、はい!!」
エルマはマホの指示を受けて弓矢を構えると、この時に矢に風属性の魔力を付与させて狙いを定めた。距離は離れていようとエルマの風属性の付与魔法ならば狙いを外さない。
彼女は最初に狙ったのは巨人の顔面であり、風属性の魔力を付与させた矢を放つ。放たれた矢は風属性の魔力によって真っ直ぐに巨人の顔面へと向かう。
(当たった!!)
放たれた矢は巨人の右目に目掛けて突っ込み、確実に的中するとエルマは確信した。しかし、巨人は右腕を伸ばすと信じられない事に指先で矢を摘まみ、止めてしまう。
「えっ……嘘、止められた……!?」
「ば、馬鹿な……あの巨体で、何と俊敏な……!?」
「おいおい、マジかよ……」
信じられない事に巨人はエルマの矢を意図も容易く摘まみ取り、しかも矢を壊さない程度の力加減で指先に摘まむ。それどころか巨人は摘まんだ矢を確認するように覗き込む。
エルマの放った矢は鏃の部分に風属性の魔力を纏い、その魔力を利用して軌道を自由自在に変化させる事ができる。しかし、この矢の魔力は時間経過と共に消えるため、やがて風の魔力が切れて元の矢に戻ると巨人は興味を失せた様に捨て去る。
「あの野郎……そこの嬢ちゃんの矢を観察してやがったぞ」
「くっ……そんなはずはありません、これならばっ!!」
ガオウの言葉を聞いてエルマは歯を食いしばり、自分の矢が止められたという事実が認められず、彼女は今度は一度に三本の矢を番えて放つ。
今度は直線に放つのではなく、不規則な軌道でそれぞれの矢を操作し、三つの矢が別々の方向から巨人の顔面へと向かう。しかし、それに対して巨人は冷静に顔面に掌を構えて矢を受け止めた。
エルマの放つ矢は風属性の魔力を宿している事から威力も高く、鋼鉄であろうと貫ける力は持つ。だが、巨人の掌に矢は突き刺さるが、この際に鏃の風属性の魔力が消散し、矢の方が逆に壊れてしまう。
『フンッ……』
ごみでも捨てるかのように巨人は腕を振り払うと、矢の残骸が地面に散らばる。その光景を目にしてエルマは膝を突き、自分の攻撃が通じない事を悟る。
(そんな……私の、魔弓術が通じないなんて!?)
何十年もの時を費やして作り上げた自分の魔弓術が破られた、否、通じなかった事にエルマの心は折れかけるが、マホはエルマを叱咤した。
「エルマ!!儂の前で諦めるつもりか!?」
「っ……!!」
尊敬する師の言葉を聞いてエルマは正気を取り戻し、彼女は新しい矢を番える。ガオウはこの時にもう矢など通じないだろうと思ったが、エルマの狙いは別だった。
巨人に直接攻撃を仕掛けようと通じない可能性が高く、だからこそエルマは狙いを巨人本隊ではなく、別の場所を狙う。彼女の狙いは巨人が起き上がった時に盛り上がった大量の土砂であり、そこに目掛けてエルマは矢を放つ。
「これなら!!」
『ッ……!?』
土砂に向けて複数の矢が放たれた瞬間、大量の土砂が吹き飛び散って土煙と化す。それによって巨人は土煙によって視界を奪われ、顔面を覆い込む。その隙を逃さずにマホはイリアに指示を出す。
『っ……!?』
マホの怒鳴り声が甲板に広がり、ずっと彼女と共に生きてきたエルマでさえも初めて見るほどに彼女は激高していた。マホの言葉を聞いて身体を硬直させていた者達は動き出す。
即座にハマーンは船内へ向けて駆け込み、彼の弟子たちも後に続く。この飛行船を動かせるのはハマーンだけであるため、他の者は巨人の動向を伺う。
「エルマ、ゴンザレス……決して儂の傍から離れるでないぞ」
「は、はい……」
「な、何という威圧感だ……!!」
弟子であるゴンザレスとエルマをマホは傍に寄せると、彼女は杖を構えて準備を行う。この時にマホはイリアに視線を向け、彼女の力を借りることにした。
「イリアよ!!お主の付与魔法で儂を強化しろ!!」
「えっ!?本気ですか!?」
「いいから早くせいっ……あちらはもう気付いておるぞ」
マホに呼び寄せられたイリアは慌てて彼女の元に駆けつけると、地中から現れた緑の巨人は身体にこびり付いた土砂を振り払い、改めて飛行船の方向に視線を向けた。距離は離れているが、決して安心はできない。
最初の内は飛行船を見て巨人は首を傾げるが、やがて自分よりも巨大な飛行船を「敵」だと捉えたのか、おぞましい咆哮を放つ。
『ウオオオオッ――!!』
その咆哮を耳にしただけで鼓膜が敗れそうになり、特に聴覚が鋭い森人族のマホやイリア、獣人族のガオウは耐え切れずに耳元を抑え込む。
「ぐっ……なんて声を出しやがる!?」
「どうやらこちらを敵と認識したようじゃな……エルマ、少しでも時間を稼げ!!」
「は、はい!!」
エルマはマホの指示を受けて弓矢を構えると、この時に矢に風属性の魔力を付与させて狙いを定めた。距離は離れていようとエルマの風属性の付与魔法ならば狙いを外さない。
彼女は最初に狙ったのは巨人の顔面であり、風属性の魔力を付与させた矢を放つ。放たれた矢は風属性の魔力によって真っ直ぐに巨人の顔面へと向かう。
(当たった!!)
放たれた矢は巨人の右目に目掛けて突っ込み、確実に的中するとエルマは確信した。しかし、巨人は右腕を伸ばすと信じられない事に指先で矢を摘まみ、止めてしまう。
「えっ……嘘、止められた……!?」
「ば、馬鹿な……あの巨体で、何と俊敏な……!?」
「おいおい、マジかよ……」
信じられない事に巨人はエルマの矢を意図も容易く摘まみ取り、しかも矢を壊さない程度の力加減で指先に摘まむ。それどころか巨人は摘まんだ矢を確認するように覗き込む。
エルマの放った矢は鏃の部分に風属性の魔力を纏い、その魔力を利用して軌道を自由自在に変化させる事ができる。しかし、この矢の魔力は時間経過と共に消えるため、やがて風の魔力が切れて元の矢に戻ると巨人は興味を失せた様に捨て去る。
「あの野郎……そこの嬢ちゃんの矢を観察してやがったぞ」
「くっ……そんなはずはありません、これならばっ!!」
ガオウの言葉を聞いてエルマは歯を食いしばり、自分の矢が止められたという事実が認められず、彼女は今度は一度に三本の矢を番えて放つ。
今度は直線に放つのではなく、不規則な軌道でそれぞれの矢を操作し、三つの矢が別々の方向から巨人の顔面へと向かう。しかし、それに対して巨人は冷静に顔面に掌を構えて矢を受け止めた。
エルマの放つ矢は風属性の魔力を宿している事から威力も高く、鋼鉄であろうと貫ける力は持つ。だが、巨人の掌に矢は突き刺さるが、この際に鏃の風属性の魔力が消散し、矢の方が逆に壊れてしまう。
『フンッ……』
ごみでも捨てるかのように巨人は腕を振り払うと、矢の残骸が地面に散らばる。その光景を目にしてエルマは膝を突き、自分の攻撃が通じない事を悟る。
(そんな……私の、魔弓術が通じないなんて!?)
何十年もの時を費やして作り上げた自分の魔弓術が破られた、否、通じなかった事にエルマの心は折れかけるが、マホはエルマを叱咤した。
「エルマ!!儂の前で諦めるつもりか!?」
「っ……!!」
尊敬する師の言葉を聞いてエルマは正気を取り戻し、彼女は新しい矢を番える。ガオウはこの時にもう矢など通じないだろうと思ったが、エルマの狙いは別だった。
巨人に直接攻撃を仕掛けようと通じない可能性が高く、だからこそエルマは狙いを巨人本隊ではなく、別の場所を狙う。彼女の狙いは巨人が起き上がった時に盛り上がった大量の土砂であり、そこに目掛けてエルマは矢を放つ。
「これなら!!」
『ッ……!?』
土砂に向けて複数の矢が放たれた瞬間、大量の土砂が吹き飛び散って土煙と化す。それによって巨人は土煙によって視界を奪われ、顔面を覆い込む。その隙を逃さずにマホはイリアに指示を出す。
10
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる