貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第478話 もう一人じゃない

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「流石はミイナ、やりますね!!」
「えっへん……それに、今の私にはこれもある」
「えっ……それって!?」


ヒイロに褒められたミイナは手斧を想像させる武器を取り出し、それを見た途端にナイとヒイロは驚く。それは先日に飛行船を襲撃した盗賊の頭が所持していた魔斧で間違いない。

ミイナは魔斧を構えると、狙いを定めて放つ。この魔斧の正式名称は「輪斧」と呼ばれ、空中であろうと回転しながら所有者の指示に従って軌道を変更させる武器である。


「喰らえっ」
「ギアッ!?」
「ウギャッ!?」
「ギアアッ!?」


屋根の上に立つゴブリンメイジに目掛けて放たれた輪斧は高速回転しながら接近し、次々と切り裂く。これで合計で五体のゴブリンメイジを仕留める事に成功し、輪斧はミイナの元へ戻って来た。


「す、凄い!!その魔斧、何時の間に使いこなせるように……って、危ない!?」
「うわっ!?」
「キャインッ!?」
「あ、ごめん……まだ使い慣れていない」


輪斧はミイナの元へ戻るかと思ったが、腕を伸ばした彼女の手には収まらず、そのまま通り過ぎて危うくナイ達に切りかかる所だった。咄嗟に三人が避けたので惨事は免れたが、輪斧を取り損ねたミイナは謝罪する。


「まだ使いこなせていないから気を付けて」
「そ、そういう事は早く言ってください!!危うく切り裂かれる所でしたよ!?」
「危なかった……あ、ビャクの頭の毛皮が少し剥げてる!?」
「ウォンッ!?(ええっ!?)」
「本当にごめん」


ビャクは完全には避け切れずに毛皮の一部が剥げてしまい、その事にミイナは頭を下げる。だが、結果的には厄介なゴブリンメイジを五匹も倒す事に成功し、残りのゴブリンメイジ達は警戒心を抱く。


「「「ギアアアッ!!」」」
「させませんっ!!」


同胞を殺された事で怒りを抱いたゴブリンメイジ達は杖を構え、今度は別々に魔法を放ち、攻撃箇所をばらけさせる。しかし、それに対してヒイロは烈火を構えると、彼女は仲間達に目掛けて放たれた火球を切り裂く。

どうやらヒイロの烈火は炎を放つだけではなく、火属性の魔法を切り裂く事で火力を強化させる能力を備わっているらしく、彼女は火球を切り裂く度に刀身の炎が強化され、一気に解き放つ。


「お返しです!!」
『ギアアアッ!?』


ヒイロが烈火に纏った火炎を振り払うと、火炎の斬撃と化して三体のゴブリンメイジを焼き払う。その光景を見てナイは驚き、一方でヒイロも誇らしげに語る。


「安心して下さい、どんな攻撃だろうと私が守ってみせます!!」
「ヒイロ、調子に乗り過ぎると駄目……二体も仕留めそこなっている」
「じ、自分の方が多く倒しているからって偉そうにしないでください!?」


誇らしげな表情を浮かべるヒイロにミイナは指摘すると、彼女は恥ずかし気に烈火を振り払い、改めて残りの二体に視線を向けた。


「さあ、もう魔法を放ちなさい!!そうすれば今度こそ仕留めますよ!!」
「おっと……ここは私に任せて貰おうか」
「えっ?」


ゴブリンメイジの魔法を待ち構えるヒイロに対して誰かが声を掛けると、直後に屋根の上に立つ2体のゴブリンメイジの首が切断され、胴体と頭部が切り裂かれる。


「「ギアッ――!?」」


2体のゴブリンメイジは何が起きたのか分からない表情を浮かべた状態で地上へ向けて落下し、その様子を見ていたナイ達は唖然とした。そしてこのような芸当を出来る人物は一人しか心当たりはなく、彼等は振り返るとそこには「暴風」を手にしたリンが立っていた。

リンは暴風の能力で風の斬撃を放ち、屋根の上に立つゴブリンメイジの首を容易く切り裂く。更に彼女はホブゴブリンの大群に視線を向け、暴風を構えると新しい技を放つ。


「螺旋斬!!」
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
「ウォンッ!?」
「おおっ……!!」


円を描くようにリンは刃を振り払うと、その直後に強烈な風圧が発生し、風の斬撃が放たれる。この際に斬撃は螺旋を描くような軌道で放たれ、広範囲に斬撃が散らばってホブゴブリンの大群を切り裂く。


「ギィアアアッ!?」
「ギャウッ!?」
「グギャアッ!?」


リンの魔法剣によって一気に十数匹のホブゴブリンの肉体に鮮血が走り、その様子を見ていたリンは笑みを浮かべるが、その直後に彼女を通り過ぎる人影があった。


「爆槍!!」
『グギャアアアッ!?』


真紅の光を放つランスを構えたドリスは現れると、彼女はひと突きで多数のホブゴブリンを吹き飛ばし、この際に強烈な爆発を引き起こす。その爆発の余波で他のホブゴブリンも巻き込まれ、ドリスは魔槍「真紅」で黒炎を振り払う。


「乱戦ならば私の真紅の方が有利ですわね」
「ちっ……余計な真似を」
『うおおおおっ!!』


ドリスの言葉にリンは眉をしかめ、一方で遅れて他の王国騎士達も到着する。王国騎士達はドリスとリンの攻撃を受けた事で怯んでいるホブゴブリンの大群に目掛けて攻撃を開始した。
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