488 / 1,110
ゴブリンキングの脅威
第475話 イチノ到着
しおりを挟む
『――見えてきたぞ、あれがイチノか!!』
『よし、着陸だ!!』
船内にハマーンの声とアッシュの声が響き渡り、遂に窓からイチノを視界に捉える距離まで近づいた。船は地上へ向けて降下し、丁度大きさの丘の上に着地した。
本来は湖や川などに着地した方が安全なのだが、イチノの周辺には船が着地できるほどの大きな川や湖は存在せず、仕方なく地上へと胴体着陸する。地上へ降りる際は船が傾かない様に船の側面に設置さされている噴射口から風の魔力が放出される。
『着地成功!!』
『よし、全員甲板に移動しろ!!』
船が無事に降りたつとアッシュは指示を下し、全員を甲板へと移動させる。ナイ達が甲板に辿り着いた時には全員が揃っており、アッシュが改めて指示を出す。
「予定通り、この船の守護は冒険者達に任せる!!他の者達はイチノへ出発するぞ!!」
『はっ!!』
船の守備は黄金級冒険者であるリーナ、ハマーン、ガオウの3人と兵士達に任せ、他の王国騎士団とナイ達はイチノへ向けて出発を開始する。
ナイは即座に地上で先に待機していたビャクの背中に乗り込み、他の者達も馬に乗り込んで後を追う。この際に一番足が速いビャクが先頭を走る事になり、真っ先にナイはイチノの異変に気付いた。
(城門が壊されている!?という事はもう魔物は中に……!!)
飛行船で上空を確認した時から嫌な予感はしていたが、既にイチノの城門は破壊されており、既にゴブリンの軍勢が街中まで侵入していた。それを確認したナイは歯を食いしばり、希望を捨てずにビャクに街へ突入する様に告げた。
「行こう、ビャク!!」
「ウォオオンッ!!」
「ナイさん、一人で行くのは危険です!?」
「私達が追いかければいい……今のナイは止められそうにない」
ビャクに命じてナイは街の中に入り込み、他の者達も慌てて後を追う。街は酷い状態であり、一人も住民の姿を見かけず、間に合わなかったのかとナイは思いかけた時、不意に魔物の声が響く。
「ガアアッ!?」
「ギギィッ!?」
「こいつら……!!」
街中をファングに乗り込んだゴブリンが歩いている事に気付き、どうやら先の戦闘で生き延びたゴブリンとファングがまだ残っていたらしく、ビャクの背中の上でナイは旋斧を引き抜く。
ファングに乗り込んだゴブリンは唐突に現れた白狼種と人間の少年に戸惑うが、すぐに敵だと判断して慌てて逃げ出そうとした。しかし、白狼種の移動速度はファングの比ではなく、ナイはその背中に目掛けて容赦なく旋斧を放つ。
「邪魔だぁっ!!」
「ウォンッ!!」
「ギィアアアッ!?」
「ギャインッ!?」
旋斧の一撃によってゴブリンとファングの胴体は切り裂かれ、地面に倒れ込む。その様子を確認したナイは怒りの表情を浮かべ、街をこんな酷い状態に追い込んだゴブリンの軍勢を絶対に許さないと誓う。
「ビャク、ドルトンさんの屋敷へ……いや、教会の方へ向かおう!!もしも生き残っている人がいたらそこに集まるはずだ!!」
「ウォンッ!!」
ナイは最初はドルトンの屋敷へ向かおうとしたが、すぐに陽光教会の存在を思い出す。前に魔物が街を襲った時も陽光教会は被害を免れており、教会内ならば魔物は入ってこれない。
ビャクはナイの指示に従い、陽光教会が存在する方向へ駆け出す。この際にナイの後には馬に乗ったヒイロやミイナが続き、彼を見失わない様に注意する。
「な、何て速さ……このままだと置いて行かれますよ!?」
「弱音を言わない、見失わない様にしっかりとついていくしかない」
「あの白狼種、素晴らしい足の速さですわね」
「ああ、うちの隊に欲しいぐらいだ」
ヒイロとミイナ以外にもナイの後には王国騎士団が続き、本来であれば分散して街中の探索を行うのが無難なのだが、この街の事を良く知っているのはナイだけである。そのナイが向かう先に生存者がいる可能性が大きく、王国騎士団はナイの後を追う。
全体の指揮を執るはずのアッシュはこの場には存在せず、彼は別働隊を率いて街の周りを確認した後にイチノに突入する手はずだった。はた目から見ればナイが王国騎士団を率いているように見えなくもない。
「スンスンッ……ウォンッ!!」
「ビャク、見つけたか!?」
移動の際中にビャクは鼻を鳴らし、遂に敵の存在を感知する。それからしばらく街道を移動すると、破壊された家具が散乱し、建物が焼け焦げた場所へ辿り着く。
この場所は生き残った人間が築いた最初の防衛網であり、建物を燃やすことでゴブリンの侵攻を防いだ。そこを通過すると遂にナイはホブゴブリンの大群が街道を移動する姿を発見した――
『よし、着陸だ!!』
船内にハマーンの声とアッシュの声が響き渡り、遂に窓からイチノを視界に捉える距離まで近づいた。船は地上へ向けて降下し、丁度大きさの丘の上に着地した。
本来は湖や川などに着地した方が安全なのだが、イチノの周辺には船が着地できるほどの大きな川や湖は存在せず、仕方なく地上へと胴体着陸する。地上へ降りる際は船が傾かない様に船の側面に設置さされている噴射口から風の魔力が放出される。
『着地成功!!』
『よし、全員甲板に移動しろ!!』
船が無事に降りたつとアッシュは指示を下し、全員を甲板へと移動させる。ナイ達が甲板に辿り着いた時には全員が揃っており、アッシュが改めて指示を出す。
「予定通り、この船の守護は冒険者達に任せる!!他の者達はイチノへ出発するぞ!!」
『はっ!!』
船の守備は黄金級冒険者であるリーナ、ハマーン、ガオウの3人と兵士達に任せ、他の王国騎士団とナイ達はイチノへ向けて出発を開始する。
ナイは即座に地上で先に待機していたビャクの背中に乗り込み、他の者達も馬に乗り込んで後を追う。この際に一番足が速いビャクが先頭を走る事になり、真っ先にナイはイチノの異変に気付いた。
(城門が壊されている!?という事はもう魔物は中に……!!)
飛行船で上空を確認した時から嫌な予感はしていたが、既にイチノの城門は破壊されており、既にゴブリンの軍勢が街中まで侵入していた。それを確認したナイは歯を食いしばり、希望を捨てずにビャクに街へ突入する様に告げた。
「行こう、ビャク!!」
「ウォオオンッ!!」
「ナイさん、一人で行くのは危険です!?」
「私達が追いかければいい……今のナイは止められそうにない」
ビャクに命じてナイは街の中に入り込み、他の者達も慌てて後を追う。街は酷い状態であり、一人も住民の姿を見かけず、間に合わなかったのかとナイは思いかけた時、不意に魔物の声が響く。
「ガアアッ!?」
「ギギィッ!?」
「こいつら……!!」
街中をファングに乗り込んだゴブリンが歩いている事に気付き、どうやら先の戦闘で生き延びたゴブリンとファングがまだ残っていたらしく、ビャクの背中の上でナイは旋斧を引き抜く。
ファングに乗り込んだゴブリンは唐突に現れた白狼種と人間の少年に戸惑うが、すぐに敵だと判断して慌てて逃げ出そうとした。しかし、白狼種の移動速度はファングの比ではなく、ナイはその背中に目掛けて容赦なく旋斧を放つ。
「邪魔だぁっ!!」
「ウォンッ!!」
「ギィアアアッ!?」
「ギャインッ!?」
旋斧の一撃によってゴブリンとファングの胴体は切り裂かれ、地面に倒れ込む。その様子を確認したナイは怒りの表情を浮かべ、街をこんな酷い状態に追い込んだゴブリンの軍勢を絶対に許さないと誓う。
「ビャク、ドルトンさんの屋敷へ……いや、教会の方へ向かおう!!もしも生き残っている人がいたらそこに集まるはずだ!!」
「ウォンッ!!」
ナイは最初はドルトンの屋敷へ向かおうとしたが、すぐに陽光教会の存在を思い出す。前に魔物が街を襲った時も陽光教会は被害を免れており、教会内ならば魔物は入ってこれない。
ビャクはナイの指示に従い、陽光教会が存在する方向へ駆け出す。この際にナイの後には馬に乗ったヒイロやミイナが続き、彼を見失わない様に注意する。
「な、何て速さ……このままだと置いて行かれますよ!?」
「弱音を言わない、見失わない様にしっかりとついていくしかない」
「あの白狼種、素晴らしい足の速さですわね」
「ああ、うちの隊に欲しいぐらいだ」
ヒイロとミイナ以外にもナイの後には王国騎士団が続き、本来であれば分散して街中の探索を行うのが無難なのだが、この街の事を良く知っているのはナイだけである。そのナイが向かう先に生存者がいる可能性が大きく、王国騎士団はナイの後を追う。
全体の指揮を執るはずのアッシュはこの場には存在せず、彼は別働隊を率いて街の周りを確認した後にイチノに突入する手はずだった。はた目から見ればナイが王国騎士団を率いているように見えなくもない。
「スンスンッ……ウォンッ!!」
「ビャク、見つけたか!?」
移動の際中にビャクは鼻を鳴らし、遂に敵の存在を感知する。それからしばらく街道を移動すると、破壊された家具が散乱し、建物が焼け焦げた場所へ辿り着く。
この場所は生き残った人間が築いた最初の防衛網であり、建物を燃やすことでゴブリンの侵攻を防いだ。そこを通過すると遂にナイはホブゴブリンの大群が街道を移動する姿を発見した――
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる