貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
481 / 1,110
ゴブリンキングの脅威

第468話 救援活動

しおりを挟む
「お、おい……凄い一撃だったな」
「う、うむ……どうやら痛み止めのお陰のせいか、昔の様に身体が動かせるようになったらしい」


ドルトンは昔は優秀な冒険者であり、若い頃はアルと共に様々な魔物を打ち倒してきた。ナイが身に着けている闘拳は元々は彼の防具であると同時に武器でもあり、あらゆる敵を殴りつけてきた事を思い出す。

年老いたとはいえ、冒険者だったドルトンのレベルは一般人よりも高く、更にイーシャンの痛み止めのお陰で痛覚が麻痺しているため、普段以上に身体を動かす事ができた。これだけの力があればゴブリン程度ならば素手でも殴り倒せる事を確信する。


「イーシャン、やはりお主は優秀じゃな」
「いや、俺が用意したのはただの痛み止めなんだが……って、それよりも早く行くぞ!!ここまでもうゴブリンが潜り込んできたのなら急いで避難した方が良い!!」
「そうじゃな……」


二人は避難する前にここまで同行してくれた二人の男性に両手を合わせ、彼等の冥福を祈る。その後はすぐに避難場所に向けて移動を開始した。


「さっきのゴブリン、血塗れだったが防衛網を突破したのか!?」
「いや、奴は確かに血塗れだったが、血の方は乾いていた。恐らくは奴は以前にこの街に侵入した個体が潜んでおったのだろう」
「はあっ!?何言い出すんだ!?」


ドルトン達を襲ったゴブリンは負傷はしていたが、身体にこびり付いた血液は固まっている事をドルトンは見抜き、彼の予測では以前に街に入り込んだゴブリンが潜伏していた可能性が高い。

まだ防衛網は突破されていないと思われるが、もしも街の中に他にゴブリンが潜伏していた場合は厄介な事に陥り、ゴブリン達に一般人が下水道に避難している光景を見られるわけにはいかない。


「急ぐぞ、イーシャン!!もしかしたら既に下水道の存在は奴等に知られているかもしれん!!」
「くそ、ふざけやがって……うおっ!?」
「どうした!?」


走っている最中にイーシャンは立ち止まり、彼が何か発見したのかとドルトンは立ち止まると、イーシャンの視線の先には路地裏から出てくるゴブリンが存在した。


「ギギィッ……!!」
「く、くそっ……こんな所にもいやがったのか!!」
「くっ……!!」


姿を現したゴブリンは何処から盗んできたのか斧を手にしており、ドルトンとイーシャンの前に立ちはだかる。相手が武器を持っているとなると流石にドルトンでも分が悪く、せめてこちらも武器があれば戦えたが、生憎とドルトン達の手元にある道具で武器になりそうな物は注射器ぐらいしかない。

ドルトンはイーシャンを庇うように構えると、斧を手にしたゴブリンは笑みを浮かべ、真っ先にドルトンに襲い掛かろうとした。


「ギィイイイッ!!」
「いかん、離れていろっ!!」
「ドルトン!?」


イーシャンを守るためにドルトンは迫りくるゴブリンに対して拳を振りかざすが、相手は既に斧を横向きに構えて振り払おうとしていた。このままでドルトンが切られるかと思われた時、ゴブリンの後頭部に衝撃が走る。


「せいっ!!」
「アギャアッ……!?」
「ぬおっ!?」
「な、何だっ!?」


ゴブリンの後頭部にクナイが突き刺さり、脳にまで届いたのかゴブリンは白目を剥いて倒れ込む。そして路地裏から現れたのは冒険者であるクノであり、彼女は指先を手繰り寄せると、クナイに巻き付いていた糸を引き寄せて手元に戻す。


「大丈夫でござるか?まだここに避難していない者がいたとは思わなかったでござる」
「あ、あんたは……冒険者、か?」
「そうでござる。拙者の名前はクノ、ニーノからやってきた冒険者でござる」
「おお、噂は聞いておるぞ。あの白銀級冒険者の……」
「今は立ち話している暇はないでござる!!」


ドルトンはクノの名前を聞いて彼女の噂を思い出し、優秀な冒険者であるという噂をよく耳にしていた。クノはゴブリンを始末すると、二人に避難場所へ向かうように指示する。


「さあ、御二人とも早く避難場所へ!!ここは拙者に任せるでござる!!」
「すまない、助かる!!」
「助かったぞ、儂の名前はドルトンじゃ。この恩は決して忘れんぞ!!」


クノはドルトンとイーシャンを先に行かせると、彼女は倒れているゴブリンの様子を伺う。まさか街中にゴブリンが潜伏していたなど思わず、これは街中の警備を行っていた自分達の失態である。


(兄者はある程度戦ったら王子を連れて避難しろといったでござるが、こいつらがもしも他の仲間と遭遇したら大変な事になっていたでござる……もう一度、見回る必要があるかもしれぬ)


仮に他に街中に潜伏していたゴブリンが居た場合、他の仲間に住民達が下水道に避難している情報を漏らされる危険性が高い。そうなれば作戦は破綻し、ゴブリンの軍勢は下水道にも追いかけてくる。

ゴブリンの厄介な点はその知恵の高さであり、人間のように状況を共有できる点だった。通常種のゴブリンでも他の仲間に意思を伝える事が出来るため、仮に1匹でも下水道の情報を知ったゴブリンが他の仲間に知らせると大変な事態に陥る事を考慮し、クノは戦う事を決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...