貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
457 / 1,110
ゴブリンキングの脅威

第445話 捕虜の対応

しおりを挟む
「捕まえた者達の様子は?」
「先に捕まえた二人は重要な情報を持っていないと判断し、現在は薬で眠らせています。ですけど、先ほど捕まえた二人は怪我の治療の後、未だに気を失っています」
「腕を刺された男の方は今すぐに起こして尋問を行え。もしも反抗的な態度を取るようならば拷問しても構わん」
「うむ、ならば自白剤を与えよう」
「そ、そんな物まで常備しているんですの?」
「イリアに作ってもらった物じゃ」


マホは怪しい色合いの液体が入った小瓶をアッシュに手渡し、最悪の場合はこれを飲ませて捕まえた者達から情報を引き出さねばならない。

捕まえた四人から引き出せた情報は闇ギルドが飛行船を爆破させ、邪魔者を排除しようとしたと事しか聞き出せていない。しかし、彼等の目的は他にもあるとアッシュは長年の勘が告げていた。


「闇ギルドの目的がこの飛行船だけとは思えん。もしかしたらこの船に忍び込んだのは他に目的があるのやもしれん」
「目的というと……」
「例えば……この船に乗った人間の魔剣や魔道具の回収かもしれん」
「なるほど……儂等を殺すだけではなく、儂等の所有物も狙いか」


現在の飛行船には魔剣や魔槍を所持した人物が乗っており、特にこの船に乗っている人間の魔剣や魔槍は価値が高い代物ばかりである。

ドリスが所有する「真紅」はフレア公爵家の家宝であり、リーナの「蒼月」もアッシュ公爵家の家宝である。ミイナの「如意斧」も元々は王国が管理していた魔斧である。そしてリンが所有している魔剣も有名な物だった。


「愚かな奴等だ。私のを他の人間が扱えると思っているのか……」
「扱える者が現れずとも、その脅威を取り除く事は出来ると判断したのかもしれん。しかし、闇ギルドの奴等も思い切った事をしてきたのう」
「うむ、マジク魔導士が死んだ事で奴等も調子に乗ってきたのかもしれん……これは帰還次第、本格的に奴等を始末する必要があるな」


アッシュは殺気を込めると、他の者達も顔色を変え、闇ギルドの報復を誓う。しかし、今は第二王子リノの救出を優先しなければならない。


「マホ魔導士、先ほどナイに渡したのは何という名前の植物だ?眠り薬だといっていたが……」
「ああ、あれは私が育てている香草の葉じゃ。実際の所は良い臭いがするだけで催眠効果などない」
「え?では何故、あんなことを……?」
「今のあの子に必要な事は心を落ち着かせる事……あの葉の臭いで心が落ち着かせて安心させれば疲れを癒すために身体の方が勝手に睡眠を求める。今頃は眠りこけているじゃろう」


マホの言う通り、現在のナイは彼女に渡された香草の葉の臭いを嗅いで落ち着くと、肉体の方が休息を求めて気絶する様に眠っていた――





――次にナイは目を覚ましたのは飛行船が激しく揺れた時であり、何事かとナイは窓を眺めると、飛行船が飛び立とうとしている事に気付く。


(飛行船が動いている……もう、出発の時刻だったのか)


昨夜に渡されたマホの葉のお陰か、ナイは目を覚ますと頭はすっきりとしており、昨日の動揺が嘘のように消えて心が落ち着いていた。部屋の中を見渡すと誰もおらず、どうやら全員帰ったらしい。


(昨日はみんなに心配をかけちゃったな……)


他の皆に迷惑をかけた事に悪いと思いながらもナイは身体を起き上げ、そして自分の掌を見つめる。昨夜の一件は忘れておらず、今更ながらにナイは自分自身の力と向き合うために瞑想を行う。

子供の頃は非力でアルの手助けがなければ日常生活もまともに送る事ができない日々を過ごしてきた。しかし、技能を覚え始めた時からナイは強くなるために訓練を行い、実際に自分が強くなっていく事を自覚し、より一層に強さを求めた。

だが、今の自分が事に関してはナイは気付けず、そのせいで昨日の戦闘では危うく人を殺しかけたてしまった。その事を理解した上でナイは自分自身の強さを正確に測る。


(もう子供の時とは違うんだ……この技能《ちから》はむやみやたらに使っていい力じゃない)


凶悪な魔物やテンのような強い武人と戦うならばともかく、相手が一般人や大した力量も持ち合わせていない敵に対してナイは「剛力」を使用する事を禁ずることにした。確かに剛力は強力な技能ではあるが、頼り過ぎると取り返しのつかない事態を引き起こす。

今後は対人戦の時はナイは剛力を極力使わないようにすると心で近い、仮に相手が犯罪者だとしても無暗に剛力に頼らない事を誓う。技能に頼らずとも今のナイならば十分に戦える力を持っていた。


「よし……皆の所へ行こう」


昨日の一件で心配をかけたので皆に謝りに行こうと考えたナイは部屋から出て行こうとした時、唐突に飛行船に振動が走る。この際に壁にぶつかってしまい、何が起きたのか分からずに混乱する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...