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ゴブリンキングの脅威
第427話 聖女騎士団の復活を……
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聖女騎士団に所属していた者達の殆どが新しい居場所を探すために王都を離れたが、アリシアのように未だに聖女騎士団に未練を抱く者は多い。彼女の傭兵団の仲間の中には聖女騎士団に所属していた団員も多く、アリシアのように昔を懐かしむ光景を子供の頃からイリアはよく見ていた。
「アリシアは言っていましたよ。聖女騎士団を解散した時、どうして自分は止めなかったんだろうとね……聖女騎士団こそが自分達が最も輝ける場所だと遅れて気付いたそうです」
「あの馬鹿……まだそんな事を」
「失った後に大切な物を思い出す事はよくあります。確かにアリシアは聖女騎士団が解散する事を止めはしなかった。でも、心の底では納得はしていなかったはずです。それは御二人も一緒じゃないですか?」
「それは……」
「ちぃっ……」
エルマもテンもイリアの言葉は否定できず、確かに聖女騎士団を解散させるときは彼女達も本当に正しい事なのかと思った。しかし王妃が亡くなった事で彼女達は喪失感に苛まれ、冷静な判断力を失う。
王妃がいなければ聖女騎士団は成り立たないと思い込み、テンは解散する事を告げた。その事に団員達は反対はしなかったが、それは自分達の居場所を捨てる事に等しい。
テンの場合は白猫亭の主人に救われ、新しい居場所を得た。エルマの場合はマホの元へ戻り、古巣に戻った形となる。しかし、アリシアを始めとした他の者達は聖女騎士団の代わりになる居場所を見つけるのに苦労した。
「正直になればいいじゃないですか。本当は後悔してるんでしょう?聖女騎士団を解散させた事を……そして今でも聖女騎士団に戻りたいという気持ちはあるんでしょう」
「……あんたの言いたい事は分かったよ。後悔しているのは私達だけじゃないという事を伝えたいんだね?けどね、王妃様がいないのに聖女騎士団なんて何の価値があるんだい」
「そう思い込んでいるのは自分だけだと思わなかったんですか?王妃様の代わりに自分が頑張って他の者達を導こうと考えた事はなかったんですか」
「それは……無理に決まってんだろう」
「アリシアはそう思っていません。少なくとも、彼女は貴女が団長の座に就く事には賛成していたんですよ。他の人もそうだったんでしょう?」
王妃が亡くなった後、真っ先に聖女騎士団の次の団長の座に就くのはテンが相応しいと国王は判断した。実はこの時に他の者達もテンならば団長の座に相応しいと考えた居た者も多い。
勿論、王妃様以外に団長の座に誰かが就くなど有り得ないという考えたを持つ者も居た。しかし、殆どの人間はテンならば新しい団長に就くべきだと考えていた。だが、彼女はそれを拒否して騎士団を解散させた事にイリアは納得していない。
「もしも貴女が聖女騎士団を引き継ぎ、王妃様の代わりに騎士団を引っ張っていればアリシアも夜に酒に溺れる事もなかったでしょうね。まあ、その場合は私は今でも孤児院の世話になっていた可能性もありますけど……」
「……私が間違っていたというのかい?」
「間違っていたかどうかは分かりません。ですけど、他にも道はあった。私が言いたいのはそれだけです」
「何だい、それは……」
「話は長くなりましたが、要するに自分が納得したからといって他の人間が必ずしも納得するとは限らないという話です。アリシアは今でも期待していますよ。聖女騎士団が復活する事を……」
「…………」
「後は貴女次第です。うちの義理の母親を救えるのは貴女だけですからね、よく考えて下さい」
イリアはそれだけを告げると部屋を立ち去り、残された者達はテンを見つめる。しばらく時間が経過すると、彼女は何も言わずに部屋を立ち去った――
「――まさか、あのマジクが死ぬとはな……」
「ひひひっ……やっとくたばったか、あの老害め」
「これで王都を守護する存在が一人消えたか……」
王都のとある廃屋にフードで全身を覆い隠した者達が集まり、彼等は円卓を囲んで座り込む。その中には「疾風のダン」を処刑した男達も混じっていた。
この場に集まったのは王都に存在する闇組織の代表たちであり、ここに集まったのは一流の暗殺者、殺人鬼、他にも漆黒のローブを纏う魔術師も座っていた。
「雷の守護神と恐れられたマジクが死ぬとは……だが、火竜と引き換えに死んだのであれば奴も満足だろう」
「それに王国騎士や魔術兵も大きな損害を受けたそうだ。王都の戦力も大分削られたな……」
「これで我々も動きやすくなるのう……しかし、喜んでばかりはいられぬ」
円卓の中でただ一人だけフードを纏っていない人物が存在し、彼は小髭族の老人だった。年齢はかなり年老いており、右腕は義手で左腕には髑髏を想像させる紋様を刻んでいた。
「王国は火竜という脅威を除く事に成功したが、三人しか存在しない魔導士の中で最も優秀な男を失った。警戒すべきはマホのみ……もう一人の小娘など放置しても構わん」
「うむ、確かにその通りだ。しかし、それで何故喜んでばかりはいられぬというのだ?」
「マジクを失った以上、国王は王都の戦力を強化するために人材を募集するだろう。マジク程の力を持つ存在が簡単に見つかるとは思えぬがな」
「当然だな」
「もしも……あくまでも仮の話だが、その戦力の強化のためにあのテンが現役に復帰すればどうなる」
「テン……聖女騎士団の副団長だった女か!?」
老人の言葉に円卓に座っていた殆どの人物がざわつき、先日にテンは王都の闇組織の一つを壊滅した記憶に新しい。
「聖女騎士団が健在だった時代、我々がどれほど追い詰められたのかは知っているだろう。王妃が無くなったとはいえ、あのテンという女は王妃に匹敵する力を持つ」
「しかし、奴はもう引退したはずでは……」
「引退と言っても奴は未だに指導官の座に就き、王国騎士や兵士の指導を行っている。しかも、聞くところによれば火竜とゴーレムキングの討伐にも参加していたようだ」
「あの女め……引退したのならば大人しくしておけばいい物を!!」
裏社会に暮らす人間達の間ではテンは危険人物として捉えられ、彼女が所属していた聖女騎士団が健在の頃は王都の闇組織は幾度も壊滅の危機を迎えた。
もしも聖女騎士団のような組織が復活すれば再び闇組織が危機に晒される恐れがあり、何としてもそれを避けねばならない。そのため、どうしてもテンを現役に復帰させるわけにはいかなかった。
「あのテンという女、始末できないのか?」
「無駄だ。奴には何百人もの暗殺者を送り込んだが、全員が返り討ちにあった」
「ならば人質を取って奴を罠に嵌めるとか……」
「先日にその方法で組織が一つ壊滅した事を忘れたのか?」
「では、どうすれいばいいのだ!?」
「……実は、面白い情報が手に入った。国王が飛行船の整備を命じた事は知っているな?」
第二王子のリノを救うため、国王は飛行船を利用して彼を助け出すために工場区の鍛冶師に整備を命じた。それを利用し、邪魔者を一掃しようと老人は計画を告げる。
「――いっその事、邪魔者を全て空の上で葬ってしまうのはどうじゃ?」
老人の言葉に他の者達は驚き、彼の恐るべき計画を伝えられる――
――王城から戻った後、ナイはアルトの屋敷にて窓から夜空を眺めていた。昼間の出来事を思い返し、ナイはイリアの話を聞いて色々と思う所があった。
「死んだ人のせいにして逃げ出した、か……」
ナイは自分が守ると誓ったアルやゴマンを失った時、守れなかった自分自身に嫌気を差して自暴自棄になっていた。もしもイチノに魔物が襲撃し、ドルトン達を守るために行動を起こしていなければ今も陽光教会の元で管理されていたかもしれない。
もしもイチノへ戻った時、ドルトン達が既に亡くなっていた場合、ナイは自分がどうするべきかを考える。大切な人たちを失う悲しみはもう二度と味わいたくはないが、覚悟を決めなければならない。
「……生きよう」
仮にもしも既にドルトン達が死んでいたとしても、ナイはその死を乗り越えて生きる事を決意する。無論、彼等が今でも死んでいない事を信じているが、それでもナイはもう自分の人生を棒に振るような真似はしない事を誓う。
(爺ちゃんやゴマンの分まで……生き残ってみせるよ)
自分のために死んだ養父、そして自分のために大切な家宝である反魔の盾を貸してくれたゴマンの事を思い出し、ナイは二人のためにもこれからは強く生きていくことを誓う。
「アリシアは言っていましたよ。聖女騎士団を解散した時、どうして自分は止めなかったんだろうとね……聖女騎士団こそが自分達が最も輝ける場所だと遅れて気付いたそうです」
「あの馬鹿……まだそんな事を」
「失った後に大切な物を思い出す事はよくあります。確かにアリシアは聖女騎士団が解散する事を止めはしなかった。でも、心の底では納得はしていなかったはずです。それは御二人も一緒じゃないですか?」
「それは……」
「ちぃっ……」
エルマもテンもイリアの言葉は否定できず、確かに聖女騎士団を解散させるときは彼女達も本当に正しい事なのかと思った。しかし王妃が亡くなった事で彼女達は喪失感に苛まれ、冷静な判断力を失う。
王妃がいなければ聖女騎士団は成り立たないと思い込み、テンは解散する事を告げた。その事に団員達は反対はしなかったが、それは自分達の居場所を捨てる事に等しい。
テンの場合は白猫亭の主人に救われ、新しい居場所を得た。エルマの場合はマホの元へ戻り、古巣に戻った形となる。しかし、アリシアを始めとした他の者達は聖女騎士団の代わりになる居場所を見つけるのに苦労した。
「正直になればいいじゃないですか。本当は後悔してるんでしょう?聖女騎士団を解散させた事を……そして今でも聖女騎士団に戻りたいという気持ちはあるんでしょう」
「……あんたの言いたい事は分かったよ。後悔しているのは私達だけじゃないという事を伝えたいんだね?けどね、王妃様がいないのに聖女騎士団なんて何の価値があるんだい」
「そう思い込んでいるのは自分だけだと思わなかったんですか?王妃様の代わりに自分が頑張って他の者達を導こうと考えた事はなかったんですか」
「それは……無理に決まってんだろう」
「アリシアはそう思っていません。少なくとも、彼女は貴女が団長の座に就く事には賛成していたんですよ。他の人もそうだったんでしょう?」
王妃が亡くなった後、真っ先に聖女騎士団の次の団長の座に就くのはテンが相応しいと国王は判断した。実はこの時に他の者達もテンならば団長の座に相応しいと考えた居た者も多い。
勿論、王妃様以外に団長の座に誰かが就くなど有り得ないという考えたを持つ者も居た。しかし、殆どの人間はテンならば新しい団長に就くべきだと考えていた。だが、彼女はそれを拒否して騎士団を解散させた事にイリアは納得していない。
「もしも貴女が聖女騎士団を引き継ぎ、王妃様の代わりに騎士団を引っ張っていればアリシアも夜に酒に溺れる事もなかったでしょうね。まあ、その場合は私は今でも孤児院の世話になっていた可能性もありますけど……」
「……私が間違っていたというのかい?」
「間違っていたかどうかは分かりません。ですけど、他にも道はあった。私が言いたいのはそれだけです」
「何だい、それは……」
「話は長くなりましたが、要するに自分が納得したからといって他の人間が必ずしも納得するとは限らないという話です。アリシアは今でも期待していますよ。聖女騎士団が復活する事を……」
「…………」
「後は貴女次第です。うちの義理の母親を救えるのは貴女だけですからね、よく考えて下さい」
イリアはそれだけを告げると部屋を立ち去り、残された者達はテンを見つめる。しばらく時間が経過すると、彼女は何も言わずに部屋を立ち去った――
「――まさか、あのマジクが死ぬとはな……」
「ひひひっ……やっとくたばったか、あの老害め」
「これで王都を守護する存在が一人消えたか……」
王都のとある廃屋にフードで全身を覆い隠した者達が集まり、彼等は円卓を囲んで座り込む。その中には「疾風のダン」を処刑した男達も混じっていた。
この場に集まったのは王都に存在する闇組織の代表たちであり、ここに集まったのは一流の暗殺者、殺人鬼、他にも漆黒のローブを纏う魔術師も座っていた。
「雷の守護神と恐れられたマジクが死ぬとは……だが、火竜と引き換えに死んだのであれば奴も満足だろう」
「それに王国騎士や魔術兵も大きな損害を受けたそうだ。王都の戦力も大分削られたな……」
「これで我々も動きやすくなるのう……しかし、喜んでばかりはいられぬ」
円卓の中でただ一人だけフードを纏っていない人物が存在し、彼は小髭族の老人だった。年齢はかなり年老いており、右腕は義手で左腕には髑髏を想像させる紋様を刻んでいた。
「王国は火竜という脅威を除く事に成功したが、三人しか存在しない魔導士の中で最も優秀な男を失った。警戒すべきはマホのみ……もう一人の小娘など放置しても構わん」
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「マジクを失った以上、国王は王都の戦力を強化するために人材を募集するだろう。マジク程の力を持つ存在が簡単に見つかるとは思えぬがな」
「当然だな」
「もしも……あくまでも仮の話だが、その戦力の強化のためにあのテンが現役に復帰すればどうなる」
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「しかし、奴はもう引退したはずでは……」
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もしも聖女騎士団のような組織が復活すれば再び闇組織が危機に晒される恐れがあり、何としてもそれを避けねばならない。そのため、どうしてもテンを現役に復帰させるわけにはいかなかった。
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もしもイチノへ戻った時、ドルトン達が既に亡くなっていた場合、ナイは自分がどうするべきかを考える。大切な人たちを失う悲しみはもう二度と味わいたくはないが、覚悟を決めなければならない。
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仮にもしも既にドルトン達が死んでいたとしても、ナイはその死を乗り越えて生きる事を決意する。無論、彼等が今でも死んでいない事を信じているが、それでもナイはもう自分の人生を棒に振るような真似はしない事を誓う。
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