貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第421話 飛行船

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「騙すような形で試験を受けさせた事は謝ります。ですけど、私も魔導士として上からの命令には逆らえないんですよ。中間管理職は辛いんですよね~」
「こらこら、ナイ君に興味があると言ってたのは君だろう?」
「でも、どうして試験なんて……」
に乗り込める人数は限られているんです。だからゴブリンキングの討伐に向かう人員は本当に強い人間だけを選定する必要があったんですよ」
「飛行……船?」


聞きなれない単語にナイは首を傾げ、ヒナとモモも同じように初めて聞く単語なので首を傾げる。しかし、三人以外の人間は飛行船の存在を知っているらしく、ここでテンが口を挟む。


「まさか国王様があの船をまた動かすなんてね……」
「テンさんは知ってるんですか?」
「知ってるも何も、あの船は元々は王妃様の……いや、そんな話はどうでもいいね。あたしに聞くよりもアルト王子の方が上手く説明してくれるよ」


王妃の話題を口にしたテンだったが、思い直したようにアルトに説明を促す。そんな彼女の態度にアルトは頭を掻きながらも代わりに説明役を引き受ける。


「やれやれ……僕も知識として知ってはいるけれど、実物を見たのは最近なんだけどね」
「アルト、飛行船って……船が空を飛ぶの?」
「あ、もしかして……思い出したわ!!随分前に空を飛ぶ船を王国が所有していたってテンさん言ってたじゃない!!」
「えっ!?あの話は本当だったの!?」
「私としては俄かに信じがたい話なのですが……」
「私もその話を聞かされて驚いた」


ヒナとモモは飛行船なる存在を思い出したらしく、二十年近く前に王都で空を飛ぶ飛行船が存在したという話をテン本人から聞いた事があるらしい。

ヒイロとミイナは飛行船の存在を知っていたようだが、二人とも実際に飛行船が空を飛ぶ姿は見た事がないらしく、半信半疑という様子だった。


「飛行船とは王家に伝わる大型魔導船なんだ。君達はその前に魔導船の事を知っているかい?」
「魔導船……?」
「それなら私も聞いた事があるわ。確か、特別な大型魔道具を内蔵した船で風がない時でも自由に進む事が出来たり、船を後退させる事ができるとか……」
「その通りだ。魔導船は分かりやすく説明すると大型船と車輪型の魔道具を組み合わせた特殊な船と言った方がいいかな」


アルト曰く、魔導船なる大型船は特殊な魔道具を動力にして船を動かせるらしく、ヒナの言う通りに風が吹かない時間帯や場所でも自由に船を操作して動かす事ができるという。

ちなみに王国の所有する魔導船は船の左右に車輪型の魔道具が搭載され、これを魔石の力で車輪を回転させる事で動かす事ができる。普通の外輪船との違いは動力として魔石の力を利用している。


「魔導船を動かすには風属性の魔石を必要とするが、飛行船の場合は通常の魔導船よりも大量の魔石を必要とするんだ。だからそれだけの用意するのに時間もかかるし、費用も重なる事から滅多な事では飛行船を動かす事はない」
「へ、へえっ……本当に船が空を飛ぶんだ」
「あたしも最初はその話を聞いた時は信じられなかったね。船が空を飛ぶなんて……でも、実際に乗ってみるとあれは凄いよ。空の上を移動するから余計な障害物もないし、目的地まですぐに辿り着けたんだよ」
「え~!?そんなに凄いの~!?」
「飛行船の最大の利点は地上ではなく、空中を移動する事ですからね。山脈だろうと広大な森だろうと空を飛んで移動すれば道に迷う事も障害物に邪魔される事もありませんからね」


飛行船を利用すれば目的地まで地上の障害物を無視して移動する事ができる。何よりも空を飛べば地上に生息する魔物達の妨害を受ける事もなく、軍を移動させる事が出来る。

この世界では鳥獣型の魔物も存在するので絶対に魔物の妨害を受けないとは限らないが、その辺の魔物の対処も飛行船に工夫されており、とりあえずは船が空を飛べば魔物の妨害を受ける可能性は皆無に等しい。


「飛行船の整備が終わるまではもう少し時間が掛かります。現在は工場区中の鍛冶師を呼び集めて整備を行っていますから」
「あ、だからハマーンさんも用事があると言ってたのか……」
「ハマーン技師は国一番の鍛冶師ですからね、もしも飛行船に不備が起きた場合は彼と、彼の弟子たちが飛行船の修理を行う予定です」


今回の討伐部隊にはハマーンと彼の弟子たちも同行する事が決まっており、移動の際中に飛行船に不備が起きた場合は彼等が修理する手はずとなっている。だが、飛行船に乗れる人数と荷物は限られており、魔導士であるイリアも厳選を行っているという。


「今回の任務は私も非戦闘員なのに同行させられるんですよ。だから少しでも生き残る可能性をあげるため、強い人を厳選して飛行船に乗せようとしてるんですよ」
「え、そうなの!?でも、非戦闘員って……」
「イリアは魔導士だけど、彼女は攻撃系の魔法は不得手としているんだ。そもそも彼女の本職は薬師だからね。この王都で流通されている上級回復薬の製作方法を考えたのも彼女なんだよ!?」
「ええっ!?上級回復薬って、あの!?」


ヒナは上級回復薬を作り出したのがイリアだと知って驚き、王都で販売されている上級回復薬は回復効果が高い事で有名で非常に人気のある代物だった。
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