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ゴブリンキングの脅威
第420話 推定レベル60
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「どうやら自覚していなかったようだが、死線を生き延びる度に君の肉体は強くなっているんだ。ちなみにテン指導官、今のレベルを教えてくれるかい?」
「は?いきなりなんだい……あたしのレベルは確か58だよ」
「58って……凄いですね」
基本的にはレベル50を超える人間は滅多におらず、この王都の冒険者でもレベル50を超える人間は黄金級冒険者か、白銀級冒険者の中でも一握りしかいない。
テンの場合は若い頃は王国騎士団の副団長を務め、常に前線に立って来た。しかし、引退をしてから碌に戦う機会も減ったので昔と比べたら多少は力が衰えてしまった。それでもレベル50程度の人間と同程度の力は健在である。
だが、そんなテンですらも破壊できなかった鎧人形をナイは壊した事により、単純に考えれば今のナイの筋力はテンと同等か、それ以上の力を誇る事になる。
「現在のナイさんの腕力は推定レベル60以上ですね……これだけの力を持つ人間なんてそうはいませんよ」
「60ですって!?し、信じられない!!」
「まあ、もちろん鎧人形を壊す前にテンさんが破損させていた事、それに君の旋斧も変化した事を加味すれば少々大げさな数値かもしれないが……それでも君がレベル60近くの剣士と同じぐらいの力を持っているのは確かだよ」
「す、凄いです!!レベル50の剣士なんて、王国騎士の中でもドリス副団長やリン副団長ぐらいですよ!!」
「えっ!?そうなの!?ナイ君、凄~い!!副団長さんぐらい強いってことだよね?」
「そんな単純な話ではないと思うけど……」
「私とヒイロなんてまだ30ちょっとなのに……」
「参ったね……本格的にあたしも鍛え直す必要があるかもね」
ナイの強さがレベル60程度だとは判明し、それを知ったヒイロ達は素直に賞賛し、テンは見事に破壊された鎧人形を見て頭を掻く。
レベル60といっても人によっては身に着ける技能の違いによって戦闘力は大きく異なる。ナイはどちらかというとテンのような「剛剣」の使い手であるため、リンのような素早さや精密性に優れた剣士とは違い、ドリスの場合も魔法剣を得意とするため、一概にも二人を越えたとは言い切れない。
だが、少なくともナイはレベル1でありながらレベル60の剛剣を得意とする剣士と同程度の力を手にした事になる。今の彼ならば剛力に頼らずとも赤毛熊程度の敵は簡単に倒せるかもしれない。
(俺がレベル60なんて信じられないけど……でも、本当に強くなったんだな)
ナイは罅割れた鎧人形を見下ろし、自分自身の成長に戸惑う一方で嬉しく思う。もっと早く、これだけの力を身に着けていればアルやマジクを失う事もなかったのかと思うが、そんな事を考えてもどうしようもない。
「どうだい、イリア。僕の言った通り、面白い子だろう」
「まあ、そうですね……確かに普通の人じゃない事は認めます。ですけど、実験はまだ終わってませんよ」
「え?まだするの?」
「当然ですよ。今のはあくまでも戦闘力の測定です。今度は体力と速度の実験を行いますよ」
「ええっ……」
その後もナイはイリアの実験に付き合わされ、王城を走りまわされたり、どれだけ重い物を持てるのかなど、色々な事をさせられた――
――結局は全ての実験を終える時は夕方を迎え、ここまでの実験で分かった事はナイの肉体はレベル1の範疇を越えており、城内に勤務する王国騎士と比べても高い水準に達している事が判明した。
「流石はアルト王子が自慢するだけの事はありますね。実験の結果、腕力も体力も耐久力も飛びぬけています。確かにこれだけの力があれば戦力としては申し分ないですね」
「はあっ、はあっ……」
「だ、大丈夫ナイ君?」
「な、なんとか……ふうっ、落ち着いてきた」
「ふむ、回復力も高いようですね」
様々な実験に付き合わされたナイは疲労困憊だったが、イリアの方は満足したのか羊皮紙に文章を書き込むとアルトに差し出す。
「私の方からは問題ありません。これなら討伐部隊に参加しても問題ないでしょう」
「討伐部隊?」
「あ、言ってませんでしたが私は仕事でゴブリンキングの討伐に向かう人員の選定も任されているんですよ」
「えっ!?そうなの!?」
「はい、それで今日はナイさんの実験も兼ねて調べさせてもらいましたが……特に問題はありませんね。合格です、明日の討伐部隊の参加を認めましょう」
「アルト王子……あんた、どうしてわざと黙ってたね?」
「いや、試験がある事を伝えるとナイ君も緊張するだろう?だからいつも通りの実験と称して協力してもらった方が彼も緊張しないかと思って……」
さらりと重要な事を話したイリアに驚き、テンは呆れたようにアルトを問い質すと彼は悪びれもせずに答えた。何時の間にか自分が試験を受けていた事にナイは驚くが、どうやらゴブリンキングの討伐に向かう人員は試験を受ける決まりらしい。
「は?いきなりなんだい……あたしのレベルは確か58だよ」
「58って……凄いですね」
基本的にはレベル50を超える人間は滅多におらず、この王都の冒険者でもレベル50を超える人間は黄金級冒険者か、白銀級冒険者の中でも一握りしかいない。
テンの場合は若い頃は王国騎士団の副団長を務め、常に前線に立って来た。しかし、引退をしてから碌に戦う機会も減ったので昔と比べたら多少は力が衰えてしまった。それでもレベル50程度の人間と同程度の力は健在である。
だが、そんなテンですらも破壊できなかった鎧人形をナイは壊した事により、単純に考えれば今のナイの筋力はテンと同等か、それ以上の力を誇る事になる。
「現在のナイさんの腕力は推定レベル60以上ですね……これだけの力を持つ人間なんてそうはいませんよ」
「60ですって!?し、信じられない!!」
「まあ、もちろん鎧人形を壊す前にテンさんが破損させていた事、それに君の旋斧も変化した事を加味すれば少々大げさな数値かもしれないが……それでも君がレベル60近くの剣士と同じぐらいの力を持っているのは確かだよ」
「す、凄いです!!レベル50の剣士なんて、王国騎士の中でもドリス副団長やリン副団長ぐらいですよ!!」
「えっ!?そうなの!?ナイ君、凄~い!!副団長さんぐらい強いってことだよね?」
「そんな単純な話ではないと思うけど……」
「私とヒイロなんてまだ30ちょっとなのに……」
「参ったね……本格的にあたしも鍛え直す必要があるかもね」
ナイの強さがレベル60程度だとは判明し、それを知ったヒイロ達は素直に賞賛し、テンは見事に破壊された鎧人形を見て頭を掻く。
レベル60といっても人によっては身に着ける技能の違いによって戦闘力は大きく異なる。ナイはどちらかというとテンのような「剛剣」の使い手であるため、リンのような素早さや精密性に優れた剣士とは違い、ドリスの場合も魔法剣を得意とするため、一概にも二人を越えたとは言い切れない。
だが、少なくともナイはレベル1でありながらレベル60の剛剣を得意とする剣士と同程度の力を手にした事になる。今の彼ならば剛力に頼らずとも赤毛熊程度の敵は簡単に倒せるかもしれない。
(俺がレベル60なんて信じられないけど……でも、本当に強くなったんだな)
ナイは罅割れた鎧人形を見下ろし、自分自身の成長に戸惑う一方で嬉しく思う。もっと早く、これだけの力を身に着けていればアルやマジクを失う事もなかったのかと思うが、そんな事を考えてもどうしようもない。
「どうだい、イリア。僕の言った通り、面白い子だろう」
「まあ、そうですね……確かに普通の人じゃない事は認めます。ですけど、実験はまだ終わってませんよ」
「え?まだするの?」
「当然ですよ。今のはあくまでも戦闘力の測定です。今度は体力と速度の実験を行いますよ」
「ええっ……」
その後もナイはイリアの実験に付き合わされ、王城を走りまわされたり、どれだけ重い物を持てるのかなど、色々な事をさせられた――
――結局は全ての実験を終える時は夕方を迎え、ここまでの実験で分かった事はナイの肉体はレベル1の範疇を越えており、城内に勤務する王国騎士と比べても高い水準に達している事が判明した。
「流石はアルト王子が自慢するだけの事はありますね。実験の結果、腕力も体力も耐久力も飛びぬけています。確かにこれだけの力があれば戦力としては申し分ないですね」
「はあっ、はあっ……」
「だ、大丈夫ナイ君?」
「な、なんとか……ふうっ、落ち着いてきた」
「ふむ、回復力も高いようですね」
様々な実験に付き合わされたナイは疲労困憊だったが、イリアの方は満足したのか羊皮紙に文章を書き込むとアルトに差し出す。
「私の方からは問題ありません。これなら討伐部隊に参加しても問題ないでしょう」
「討伐部隊?」
「あ、言ってませんでしたが私は仕事でゴブリンキングの討伐に向かう人員の選定も任されているんですよ」
「えっ!?そうなの!?」
「はい、それで今日はナイさんの実験も兼ねて調べさせてもらいましたが……特に問題はありませんね。合格です、明日の討伐部隊の参加を認めましょう」
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「いや、試験がある事を伝えるとナイ君も緊張するだろう?だからいつも通りの実験と称して協力してもらった方が彼も緊張しないかと思って……」
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