427 / 1,110
ゴブリンキングの脅威
第415話 まさかの再会
しおりを挟む
「――ふうっ、近くに川があって良かったね」
「ウォンッ♪」
ナイとビャクは川で汚れを洗い流し、川原の岩の上に寝そべる。思っていたよりも大分早く目的物を回収し、これでハマーンに依頼物を渡せば約束は果たされる。
戻る前にナイは久々にビャクと二人でのんびりとした時間を過ごす。最近は忙し過ぎてのんびりと休む暇もなかった。
(魔物が増え始めてからは外にいると碌に休む事もできなかったしな……本当にビャクが居てくれて良かった)
近年に魔物が大量発生したせいで旅をする際は常に周囲に気を配らなければならず、仮に夜営を行う時は常に誰かが見張りに立って警戒しなければならない。だが、魔獣であるビャクならば眠っている間でも優れた野生本能で近付いてくる敵を感じ取ることができる。
ここまでの旅路でナイはビャクに色々と助けてもらっており、村や街などに滞在する時はビャクの餌代に苦労させられるが、外にいる間はビャクは勝手に獲物を狩るので餌を用意する必要もない。
「ビャクが居てくれて本当に良かったよ」
「ウォンッ」
「うわ、くすぐったいよ……」
ビャクは横になっているナイの頬を舐めやり、身体を擦りつける。このまま昼寝でもしようとした時、不意にビャクは何かに気付いた様に顔を上げる。
「ウォンッ!?」
「ビャク?どうかしたの……何だ!?」
ナイは遠くの方で魔物の悲鳴を聞こえ、何が起きたのかと身体を起き上げる。すると、川上の方で血を流したボアが逃げている事に気付き、先ほど遭遇したボアだとナイは見抜く。
(襲われている?他の魔物と戦っているのか?いや、あれは……人間か!?)
血を流したボアが川の方に逃げ込む姿を見たナイは武器に手を伸ばしたが、ボアの背後から近づく影を見て驚く。それは人の姿をしているが、頭には狼のような犬耳を生やした少年がボアの背中を切り刻む。
「牙斬!!」
「プギャアアッ!?」
ボアの悲鳴が川に響き渡り、少年の振り下ろした双剣の刃が見事に背中を貫く。それを見たナイは驚き、一方で少年の方は返り血を浴びながら呟く。
「ちっ……手こずらせやがって」
「まさか……ガロ!?」
「あんっ!?」
ボアを仕留めたのはマホの弟子にしてかつてイチノの街で共闘した「ガロ」である事にナイは気づき、反射的に声に出してしまった。そしてガロの方はナイに気付いて目を見開く。
お互いにまさかこんな場所で再会するとは思わず、特にガロの方はナイの姿を見た途端に頭に血が上る。そんな彼の様子にナイは戸惑うが、ガロは双剣をボアの背中から引き抜くと、ナイの元へ歩む。
「てめえ、どうしてここに……」
「え、いや……どうしてと言われても」
「丁度いい、てめえには言いたいことがあったんだ。この際にはっきりと言ってやるぜ」
「グルルルッ……!!」
まるで獲物を見つけた狼のようにガロはナイを睨みつけ、その態度にビャクは唸り声を上げる。ガロはビャクを見て前に会った時よりも成長している事を知り、鼻を鳴らす。
「白狼種か、随分とデカくなったな……お前に用はねえ、退け」
「ウォンッ!!」
「ビャク、止めろっ!!」
一触即発の雰囲気を感じ取ったナイはビャクを抑えつけようとすると、ここでガロの後方から複数名の人間の声が響く。
「おい、こっちにいたぞ!!」
「馬鹿野郎、一人で勝手に飛び出しやがって……」
「うおっ!?ボ、ボアが……一人で仕留めたのか?」
「ちっ……遅かったな、お前等」
「えっ……?」
ガロの後方から現れたのは数名の男性と一人の女性であり、年齢は全員が10代後半で女性だけ杖を握りしめていた。恐らくは魔術師だと思われるが、他の者達は剣や槍を握りしめている。
彼等全員が冒険者のバッジを身に着けており、ここでナイはガロが冒険者のバッジを装備している事に気付く。どうしてマホの弟子のガロが冒険者のバッジを付けているのかとナイは戸惑うが、後から現れた者達はガロに怒鳴りつけた。
「ガロ、何を考えているんだ!!作戦通りにどうして動かなかった!?」
「うるせえな、あんな獲物俺一人で十分なんだよ」
「そうだとしても今の君は冒険者集団《パーティ》の一員だ!!勝手な行動は許さないぞ!!」
「酷い有様だな……これだけ傷だらけだと査定の評価も下がるぞ」
「ここで解体して運び出すしかないな……くそっ、生け捕りなら楽だったのに」
冒険者達はどうやらガロと組んで依頼を引き受けていたらしく、彼等はガロが倒したボアの状態を見て眉をしかめる。どうやら彼等の目的はボアだったらしいが、話を聞く限りだとガロが作戦を無視して先走り、魔物を仕留めたらしい。
「ウォンッ♪」
ナイとビャクは川で汚れを洗い流し、川原の岩の上に寝そべる。思っていたよりも大分早く目的物を回収し、これでハマーンに依頼物を渡せば約束は果たされる。
戻る前にナイは久々にビャクと二人でのんびりとした時間を過ごす。最近は忙し過ぎてのんびりと休む暇もなかった。
(魔物が増え始めてからは外にいると碌に休む事もできなかったしな……本当にビャクが居てくれて良かった)
近年に魔物が大量発生したせいで旅をする際は常に周囲に気を配らなければならず、仮に夜営を行う時は常に誰かが見張りに立って警戒しなければならない。だが、魔獣であるビャクならば眠っている間でも優れた野生本能で近付いてくる敵を感じ取ることができる。
ここまでの旅路でナイはビャクに色々と助けてもらっており、村や街などに滞在する時はビャクの餌代に苦労させられるが、外にいる間はビャクは勝手に獲物を狩るので餌を用意する必要もない。
「ビャクが居てくれて本当に良かったよ」
「ウォンッ」
「うわ、くすぐったいよ……」
ビャクは横になっているナイの頬を舐めやり、身体を擦りつける。このまま昼寝でもしようとした時、不意にビャクは何かに気付いた様に顔を上げる。
「ウォンッ!?」
「ビャク?どうかしたの……何だ!?」
ナイは遠くの方で魔物の悲鳴を聞こえ、何が起きたのかと身体を起き上げる。すると、川上の方で血を流したボアが逃げている事に気付き、先ほど遭遇したボアだとナイは見抜く。
(襲われている?他の魔物と戦っているのか?いや、あれは……人間か!?)
血を流したボアが川の方に逃げ込む姿を見たナイは武器に手を伸ばしたが、ボアの背後から近づく影を見て驚く。それは人の姿をしているが、頭には狼のような犬耳を生やした少年がボアの背中を切り刻む。
「牙斬!!」
「プギャアアッ!?」
ボアの悲鳴が川に響き渡り、少年の振り下ろした双剣の刃が見事に背中を貫く。それを見たナイは驚き、一方で少年の方は返り血を浴びながら呟く。
「ちっ……手こずらせやがって」
「まさか……ガロ!?」
「あんっ!?」
ボアを仕留めたのはマホの弟子にしてかつてイチノの街で共闘した「ガロ」である事にナイは気づき、反射的に声に出してしまった。そしてガロの方はナイに気付いて目を見開く。
お互いにまさかこんな場所で再会するとは思わず、特にガロの方はナイの姿を見た途端に頭に血が上る。そんな彼の様子にナイは戸惑うが、ガロは双剣をボアの背中から引き抜くと、ナイの元へ歩む。
「てめえ、どうしてここに……」
「え、いや……どうしてと言われても」
「丁度いい、てめえには言いたいことがあったんだ。この際にはっきりと言ってやるぜ」
「グルルルッ……!!」
まるで獲物を見つけた狼のようにガロはナイを睨みつけ、その態度にビャクは唸り声を上げる。ガロはビャクを見て前に会った時よりも成長している事を知り、鼻を鳴らす。
「白狼種か、随分とデカくなったな……お前に用はねえ、退け」
「ウォンッ!!」
「ビャク、止めろっ!!」
一触即発の雰囲気を感じ取ったナイはビャクを抑えつけようとすると、ここでガロの後方から複数名の人間の声が響く。
「おい、こっちにいたぞ!!」
「馬鹿野郎、一人で勝手に飛び出しやがって……」
「うおっ!?ボ、ボアが……一人で仕留めたのか?」
「ちっ……遅かったな、お前等」
「えっ……?」
ガロの後方から現れたのは数名の男性と一人の女性であり、年齢は全員が10代後半で女性だけ杖を握りしめていた。恐らくは魔術師だと思われるが、他の者達は剣や槍を握りしめている。
彼等全員が冒険者のバッジを身に着けており、ここでナイはガロが冒険者のバッジを装備している事に気付く。どうしてマホの弟子のガロが冒険者のバッジを付けているのかとナイは戸惑うが、後から現れた者達はガロに怒鳴りつけた。
「ガロ、何を考えているんだ!!作戦通りにどうして動かなかった!?」
「うるせえな、あんな獲物俺一人で十分なんだよ」
「そうだとしても今の君は冒険者集団《パーティ》の一員だ!!勝手な行動は許さないぞ!!」
「酷い有様だな……これだけ傷だらけだと査定の評価も下がるぞ」
「ここで解体して運び出すしかないな……くそっ、生け捕りなら楽だったのに」
冒険者達はどうやらガロと組んで依頼を引き受けていたらしく、彼等はガロが倒したボアの状態を見て眉をしかめる。どうやら彼等の目的はボアだったらしいが、話を聞く限りだとガロが作戦を無視して先走り、魔物を仕留めたらしい。
10
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる