貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第415話 まさかの再会

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「――ふうっ、近くに川があって良かったね」
「ウォンッ♪」


ナイとビャクは川で汚れを洗い流し、川原の岩の上に寝そべる。思っていたよりも大分早く目的物を回収し、これでハマーンに依頼物を渡せば約束は果たされる。

戻る前にナイは久々にビャクと二人でのんびりとした時間を過ごす。最近は忙し過ぎてのんびりと休む暇もなかった。


(魔物が増え始めてからは外にいると碌に休む事もできなかったしな……本当にビャクが居てくれて良かった)


近年に魔物が大量発生したせいで旅をする際は常に周囲に気を配らなければならず、仮に夜営を行う時は常に誰かが見張りに立って警戒しなければならない。だが、魔獣であるビャクならば眠っている間でも優れた野生本能で近付いてくる敵を感じ取ることができる。

ここまでの旅路でナイはビャクに色々と助けてもらっており、村や街などに滞在する時はビャクの餌代に苦労させられるが、外にいる間はビャクは勝手に獲物を狩るので餌を用意する必要もない。


「ビャクが居てくれて本当に良かったよ」
「ウォンッ」
「うわ、くすぐったいよ……」


ビャクは横になっているナイの頬を舐めやり、身体を擦りつける。このまま昼寝でもしようとした時、不意にビャクは何かに気付いた様に顔を上げる。


「ウォンッ!?」
「ビャク?どうかしたの……何だ!?」


ナイは遠くの方で魔物の悲鳴を聞こえ、何が起きたのかと身体を起き上げる。すると、川上の方で血を流したボアが逃げている事に気付き、先ほど遭遇したボアだとナイは見抜く。


(襲われている?他の魔物と戦っているのか?いや、あれは……人間か!?)


血を流したボアが川の方に逃げ込む姿を見たナイは武器に手を伸ばしたが、ボアの背後から近づく影を見て驚く。それは人の姿をしているが、頭には狼のような犬耳を生やした少年がボアの背中を切り刻む。


「牙斬!!」
「プギャアアッ!?」


ボアの悲鳴が川に響き渡り、少年の振り下ろしたの刃が見事に背中を貫く。それを見たナイは驚き、一方で少年の方は返り血を浴びながら呟く。


「ちっ……手こずらせやがって」
「まさか……ガロ!?」
「あんっ!?」


ボアを仕留めたのはマホの弟子にしてかつてイチノの街で共闘した「ガロ」である事にナイは気づき、反射的に声に出してしまった。そしてガロの方はナイに気付いて目を見開く。

お互いにまさかこんな場所で再会するとは思わず、特にガロの方はナイの姿を見た途端に頭に血が上る。そんな彼の様子にナイは戸惑うが、ガロは双剣をボアの背中から引き抜くと、ナイの元へ歩む。


「てめえ、どうしてここに……」
「え、いや……どうしてと言われても」
「丁度いい、てめえには言いたいことがあったんだ。この際にはっきりと言ってやるぜ」
「グルルルッ……!!」


まるで獲物を見つけた狼のようにガロはナイを睨みつけ、その態度にビャクは唸り声を上げる。ガロはビャクを見て前に会った時よりも成長している事を知り、鼻を鳴らす。


「白狼種か、随分とデカくなったな……お前に用はねえ、退け」
「ウォンッ!!」
「ビャク、止めろっ!!」


一触即発の雰囲気を感じ取ったナイはビャクを抑えつけようとすると、ここでガロの後方から複数名の人間の声が響く。


「おい、こっちにいたぞ!!」
「馬鹿野郎、一人で勝手に飛び出しやがって……」
「うおっ!?ボ、ボアが……一人で仕留めたのか?」
「ちっ……遅かったな、お前等」
「えっ……?」


ガロの後方から現れたのは数名の男性と一人の女性であり、年齢は全員が10代後半で女性だけ杖を握りしめていた。恐らくは魔術師だと思われるが、他の者達は剣や槍を握りしめている。

彼等全員が冒険者のバッジを身に着けており、ここでナイはガロが冒険者のバッジを装備している事に気付く。どうしてマホの弟子のガロが冒険者のバッジを付けているのかとナイは戸惑うが、後から現れた者達はガロに怒鳴りつけた。


「ガロ、何を考えているんだ!!作戦通りにどうして動かなかった!?」
「うるせえな、あんな獲物俺一人で十分なんだよ」
「そうだとしても今の君は冒険者集団《パーティ》の一員だ!!勝手な行動は許さないぞ!!」
「酷い有様だな……これだけ傷だらけだと査定の評価も下がるぞ」
「ここで解体して運び出すしかないな……くそっ、生け捕りなら楽だったのに」


冒険者達はどうやらガロと組んで依頼を引き受けていたらしく、彼等はガロが倒したボアの状態を見て眉をしかめる。どうやら彼等の目的はボアだったらしいが、話を聞く限りだとガロが作戦を無視して先走り、魔物を仕留めたらしい。
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